• 検索結果がありません。

雑誌名 教育実践開発研究センター研究紀要

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "雑誌名 教育実践開発研究センター研究紀要"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

ICTを活用した授業展開システムの研究開発 −研 究開発初年度の成果−

著者 神谷 友久

雑誌名 教育実践開発研究センター研究紀要

巻 23

ページ 13‑19

発行年 2014‑03‑31

その他のタイトル The R&D of a Real‑time Feedback System using ICT and used in Education

URL http://hdl.handle.net/10105/9843

(2)

1.研究開発の概要

本研究開発は、スマートフォン等を用いて、ミニレポー トや設問選択などを行い、サーバーに集約された情報を 分析し、授業にフィードバックする授業展開システムの研 究開発を行うものである。

初年度(平成25年度)は、教育心理学の授業者である 豊田弘司教授の協力を得て、教育心理学の授業を対象 に、研究開発及び試用による効果検証を行った。

2.期待される成果

①実際の授業ニーズを汲み取り、システム開発を行うこと から、高い活用が期待できる。

②情報の集約力が飛躍的に高まるため、データ分析や研 究に弾みがつく。

③学生の理解度や関心に応じた授業展開の観点から、

ICT活用の可能性を探る。

④データの集約・分析・フィードバックという一連のデー タ分析手法を学生が理解・体験し、将来、先生になっ た時に、授業で実践できるようにする。

3.研究開発のスキーム

①授業におけるビジョンやニーズを提示(豊田)

②ニーズを分析し、ICTの活用によって実現可能か検討

(神谷)

③システム設計、プロトタイプの作成(神谷)

④授業における試用、改善点の提示(豊田)

⑤システムの改修(神谷) 以下④⑤の繰り返し

4.システム構成・準備

システム開発を素早く円滑に行うため、システム構成と して典型的なLAMPを採用した。

すなわち、OS:Linux、ウェブサーバ:Apache、データ ベース管理:MySQL、開発言語:PHPを構成要素とする オープンソースソフトウェアによるシステム構成である。

本構成に基づき、次の準備を行った。

①サーバー機の用意

②OSのインストール

③ネットワーク関係の設定

④ウェブサーバ、データベース管理ソフト、開発言語のイ ンストール及び設定

5.第8回授業における開発・試用

上記の準備を経て、教育心理学第8回の授業をター ゲットに授業展開システムの開発・試用を行った。この回 の授業では、3枚のプリントが学生に配られた。

図1 第8回授業のプリント

プリントは、①4つの心理テスト、②小テスト、③感想

-研究開発初年度の成果-

神谷友久

(奈良教育大学 次世代教員養成センター)

The R&D of a Real-time Feedback System using ICT and used in Education TomohisaKAMIYA

(TeacherEducationCenterfortheFutureGeneration,NaraUniversityofEducation)

要旨:スマートフォン等を用いて、情報を集約・処理し、授業にフィードバックする授業展開システムの研究開発を 行った。実際の授業でシステムを試用したところ、学生の授業への集中力の向上などの効果が見られた。

キーワード: リアルタイムreal-time、フィードバックfeedback、情報通信技術ICT

(3)

欄の3つのパートから構成されている。

システム開発に当たっては、まず、事前に授業者である 豊田教授から、このプリントの原稿を送って頂き、授業内 容の理解に努めた。

そのうえで、①システム利用による時間的なロスを極力 少なくする、②万一システム不具合が発生した場合は授 業へ影響を与えないようにする、③学生に分かりやすく 結果をフィードバックする、にはどうすればよいかを考え た。

熟慮の末、従来の紙によるシステムを補完する形、いわ ば紙媒体の良さと情報通信媒体の良さを組み合わせた ハイブリッドシステムとなるようにし、データを集約し処 理した結果についてはグラフで分かりやすく且つリアルタ イムに提示することにした。

この方針に沿って、データベースの設計(図2)とプログ ラムの開発(図3)を行った。

図2 データベース(データ構造)の設計

図3 開発したプログラム(冒頭部分)

5.1. 心理テストその1の1「自尊感情」

第8回授業で最初に行う心理テストは「自尊感情」(山 本・松井・山成、1982)である。

設問は下記のとおりであり、学生はまず用紙上の括弧 内に、5:あてはまる 4:ややあてはまる 3:どちらで もない 2:ややあてはまらない 1:あてはまらない、

に該当する数字を記入する。

「その1の1 自尊感情」の設問

1(  )少なくとも人並みには、価値のある人間である 2(  )色々な良い素質をもっている

3(  )敗北者だと思うことがよくある 4(  )物事を人並みには、うまくやれる 5(  )自分には自慢できるところがあまりない 6(  )自分に対して肯定的である

7(  )だいたいにおいて、自分に満足している 8(  )もっと自分自身を尊敬できるようになりたい 9(  )自分は全くだめな人間と思うことがある 10(  )何かにつけて、自分は役に立たない人間と思う

ここまでは、教育心理学の授業で従来行われてきた通 りであり、以降、授業展開システムの試用が始まる。

学生がプリントへ記入を終えた時点で、授業展開システ ムにアクセスするよう誘導した。その際、スムーズにシステム にアクセスでできるよう、授業展開システムのアドレスとそ の2次元バーコードが予めプリントの末尾に記してある。

学生がスマートフォンを使用してシステムにアクセスす ると、画面1が表示される。

画面1 ホーム画面

このホーム画面の構造は、プリントの構造と同じであ る。

「その1の1 自尊感情」を選択すると、画面2に遷移 する。

(4)

画面2 入力画面

q1~q10は、紙面上の設問1~10に対応している。学 生は、学籍番号と氏名を入力し、q1~q10の設問に対 し、紙面の括弧内に記入した数字を参照しながら、スマ ホの画面上の該当する数字をタッチしていく(画面3)。

画面3 入力例

入力後、送信ボタンを押すと、通信ネットワークを介し て情報がサーバーに送られ、処理され、入力確認を促す 画面が現れる。

画面4 入力確認画面

サーバーに送られたデータは、プログラムされたロジッ クに従い、個人の合計点が計算され、送られたデータと 併せてデータベースのテーブルの1つに格納される(図 5)。

データは、画面3の入力項目と図5の各カラムが対応し ており、gakusekiカラムには、学籍番号が、shimeiカラム には、学生の氏名が入る。q1~q10のカラムも一対一に対 応している。

図5 テーブルに格納されたデータ(一部)

gokeiカラムは、q1~q10の合計が格納されるが、問の 3、5、8、9、10番は、反転項目であるため、単純合計では なく、回答値を反転した上で、合計値を算出する必要が

(5)

ある。反転とは、例えば5の場合1、4の場合2というよう に数字をひっくり返すことを指し、数式的に言えば、反転 値=設問回答最大値+1-回答値である。

心理学では、反転という操作は頻繁に行われるため、

データベースの設問テーブルには、反転項目であることを 示すカラムを設けている。合計値を算出する際には、ス マホからサーバーに回答データが送られた時点でプログ ラムがデータベースから反転項目の情報を読み取り、反 転ロジックに従って、合計値を算出している。

スマホを用いて入力する時点では、既に、学生は紙面 に書かれた設問を読み、回答を考え、回答を紙面に記入 を終えている。スマホ上では、単純に回答を転記するだ けなので、システムへの回答にそれほど時間は要しない。

教員からの指示があって数分後には大方の学生が入力 を終えていた。

この入力の速さは、紙媒体と情報通信媒体を併用する ハイブリットシステムの利点である。スマホの小さな画面 は、広大な紙面には敵わない。紙媒体は、問題文を読ん だり、手を動かして思考しながら回答を記入するのに適し ている。一方、スマホの場合は、情報処理や通信のため の媒体として優れており、本システムでは、素早く情報を 入力・送信してもらうため、問題文を省き、回答の入力の みに集中するようにした。

ハイブリッドシステムの利点を更に挙げれば、従来通 りプリントを回収し、そこに書かれている回答をマスター データとして扱っているので、スマホを持っていない学生 に対する不利益はない。また、データを送れないなどのシ ステムトラブルに対しても、紙媒体を使用すれば、通常の 授業として続けられるので、運用上も安心である。

入力開始から数分後、大方のデータが揃ったと判断 し、開発したプログラムにより即時データ処理された結果 グラフを、学生に提示した。

図6 結果グラフ

図6は、反転処理を行った合計値の分布を示してい る。学生はデータを送った直後の確認画面で自分の合計 点を知っているので、プロジェクターに表示されている全 体の分布の中で、自分のどの(分布)位置にいるのかを 認識することができる。

プロジェクターやコンピュータなどの機器を操作し、グ ラフを提示するのは神谷が行った。

豊田教授は、グラフを参照しながら、結果を踏まえた 分析や解説をされた。

このような役割分担・分業を行うことで、高度な授業を 円滑に進めることができ、授業者は授業の中身に集中す ることができる。

学生の様子を見ていると、従来は1週間後の授業で結 果を知っていたものが、入力直後にリアルタイムに分かる のは新鮮であったようだ。また、教員の側にとっても、実 データを踏まえたグラフを見るのは初めてであったので、

それを踏まえた授業展開は、エキサイティングな体験で あった。

5.2. 心理テストその2「同一性地位」

第8回授業の心理テストその2は、「同一性地位」(加 藤、1983)を問うものである。設問は以下の通りである。

次のことはあなたにどの位あてはまりますか。

「まったくそのとおりだ」(6)から「全然そうではない」

(1)までの該当する数字を記入してください。

*1( )私は今、自分の目標をなしとげるために努力して いる。

2( )私には、特にうちこむものはない。

*3( )私は、自分がどんな人間で何を望み行おうとし ているのかを知っている。

4( )私は、「こんなことがしたい」という確かなイメー ジをもっていない。

5( )これまで、自分について自主的に重大な決断を したことはない。

*6( )自分がどんな人間なのか、何をしたいのかという ことを、かつて真剣に迷い考えたことがある。

7( )親やまわりの人の期待に沿った生き方をするこ とに疑問を感じたことはない。

*8( )以前に、自分のそれまでの生き方に自信がもて なくなったことがある。

*9( )一生懸命にうちこめるものを積極的に探し求め ている。

10( )これから環境に応じて何をすることになっても 特にかまわない。

*11( )私は、自分がどういう人間であり、何をしようと しているのかを、今、いくつかの可能な選択を 比べながら真剣に考えている。

12( )私には、自分がこの人生で何か意味あることが できるとは思えない。

上記の12項目は、1~4が現在のコミット、5~8が過去 の危機、9~12が将来のコミットの項目である。各4項目 の合計点を出し(その際、*印のついた項目はそのまま6

(6)

のとき6点、*印のないものは反対に1のとき6点と逆転し てから足す)、3つの合計の値から以下のように同一性地 位が決まる。

図7 同一性地位判定ロジック(山岸、1997)

プログラム開発に当たっては、図7のフローチャートの 様なものからアルゴリズムを読み解くのに少々時間がか かったが、最終的にプログラムを以下のように開発した。

図8 開発したプログラム(判定ロジック部分)

一見コード量があるように見えるが、アルゴリズムが一 旦分かればそれほど複雑ではないため、判定ロジックの コア部分は以下に示すように短く簡潔である。

if ($genzai>=20) {

if ($kako>=20) $jyotai='A';

if ($kako<20 and $kako>14) $jyotai='AF';

if ($kako<=14) $jyotai='F';

} else {

if ($shorai>=20) $jyotai='M';

else if ($genzai<=12 and $shorai<=14) $jyotai='D';

else $jyotai='DM';

}

心理テストその1の1と同様に、学生は用紙に回答を記 入した後、スマホに入力し、サーバーに情報を送信する。

サーバーで集約・判定処理された情報は、データベース に結果が格納され、開発したプログラムにより、結果がリ

アルタイムにグラフ化され、プロジェクターに投影される。

図9 同一性地位の分布図

グラフから見て明らかなように、学生で一番多い同一性 地位はDM中間であった。DM中間とは、同一性拡散(D)

と積極的モラトリアム(M)の中間の状態を意味する。

同一性拡散(D) 積極的関与(コミットすること)、

すなわち、自分自身を選択・限定することを避けようとす る状態である。危機を経験する前と危機を経験した後の 両者が含まれる。スチューデント・アパシーが典型の一 つであるが、自分を決めず自由なモラトリアムのままでい るあり方を選ぶ状態、いわゆるモラトリアム人間もこれに 該当する。彼らは自分を限定することを避けて、就職しな かったりフリーターに留まったりする(山岸、1997)。

積極的モラトリアム(M) 現在危機を経験している 最中で、いくつかの選択肢について迷いながら自分積極 的に関与する対象(コミットする対象)を得ようと努力し ており、エリクソンの青年期真最中の状態であるといえる

(山岸、1997)。

結果グラフを見た豊田教授の解説によると、DM中間 が占める割合はかなり多く、受講生は1回生が多いので、

まだ積極的なモラトリアムに至っていない状況を示す結 果となった。

6.第10回授業における開発試用

第8回授業に続き、第10回授業においてシステムを開 発試用した。配布されたプリントは2枚であり、2つの調 査内容が含まれている。

図10 第10回授業のプリント

(7)

図10-1 調査その1(プリント1枚目)

調査その1(図10-1)は、仮想場面を用いた教師の児 童・生徒に対する言葉かけの調査である。

これに対応するデータ入力画面(画面5)では、新たに 男女の別を入力する欄を設けている。これは、第8回の 授業中において、豊田教授から男女別に比較分析できな いかとの問い掛けを受けて、今回反映したものである。

画面5 調査その1、データ入力画面

図11 調査その1、集計結果のグラフ

図11は、プロジェクターを通じて、学生に提示した集 計結果のグラフである。新設した男女の入力欄の情報を もとに、各集計では、男女、男、女の3つの男女別集計を

(8)

この集計結果を見ると、男女別に大きな差異は生じな かったが、豊田教授からは、教師としての児童・生徒に対 する配慮等の望ましい特性をもつ学生が多い可能性を示 唆する等の解説がなされた。

7.学生のシステム試用の感想

第8回の授業の最後に、学生にシステムを通じて、授業 の感想・コメントを入力してもらい、103人から回答を得 た。その内の17人はシステムについての感想を述べてお り、以下にその内容を記す。

1. パソコンのシステムがとても良かったです。これから も活用していって欲しいです。

2. 今回から、心理テストの結果がグラフにすぐに表され るようになって、傾向がよく分かりました。

3. 全員の心理テストの結果がその場で、グラフとして見 ることができて、すごくわかりやすかったです。

4. スマホを使って授業ができるなんて楽しいですね!

5. 携帯を使って集計するのが分かり易かった

6. 奈良教生はモラトリアム(DとMの中間)の状態の子 が多いと知った

7. システムの結果が見やすくてよかった。

8. この授業スタイルは面白かった。 またやってみた い。

9. 携帯電話で結果を集計するのは、グラフなども出て 便利だなと感じた。

10.心理学はとても興味深いです。今回のシステムを利 用した授業はたのしかったです。

11.すぐに問いの結果が目で見えて、良かった。

12.結果がグラフで見れるので楽しかった。

13.システムを使って集計が即時に行われるのがとても面 白かった。

14.グラフによって自分がどの位置にいるのかが分かり やすくなりました。

15.いろんな自分の心理状態が分かってよかった!

16.スマホを使って、データを入力するやり方がいいと思 いました。その場で全部の合計が見れるのが良かっ たです。

17. みんなのデータの結果をグラフで見ることができて、

色々勉強になったと思います。

8.効果の考察、謝辞

実際の授業において、スマホを使って入力し、即座に 結果が示され、グラフ等で分かりやすく、全体における自 分の位置が認識できたことは、いずれも学生にとって初 めての経験であり、興味関心を引いたようである。

このことは、アンケート結果からも伺えることである

勢が前向きで、その表情からも、授業に対する集中力が 明らかに増していると分かるものであった。

システム的な目新しさは、回を重ねるごとに慣れてくる ことが予想される。この目新しさによる集中力は徐々に 低減するであろうが、リアルタイムに結果が分かるという 利点は今後も保たれるであろう。

何にも増して、授業そのものに魅力がなければ、システ ムの効果は十分に発揮できない。今回の試用に十分な効 果を上げることができたのは、心理学という興味深い学 問に加え、授業者の授業力に依るところが大きい。この 場を借りて、改めて豊田弘司教授に感謝申し上げたい。

引用文献

加藤 厚 1983 大学生における同一性の諸相とその 構造 教育心理学研究,26,20-31.

山岸明子 1997 第12章 アイデンティティの確立 

『ばーじょんあっぷ 自分でできる心理学』宮沢 秀次・二宮克美・大野木裕明編著 ナカニシヤ出版 pp.48-51. 

山本真理子・松井豊・山成由起子 1982 認知された自 己の諸側面の構造 教育心理学研究,30,64-69.

参照

関連したドキュメント

しかし、近年は遊び環境の変化や少子化、幼 児の特性の変化に伴い、体力低下、主体的な遊

ても情報活用の実践力を育てていくことが求められているのである︒

それは,教育工学センターはこれで打切りで ございますけれども,名前を代えて,「○○開

大学教員養成プログラム(PFFP)に関する動向として、名古屋大学では、高等教育研究センターの

名刺の裏面に、個人用携帯電話番号、会社ロゴなどの重要な情

さらに体育・スポーツ政策の研究と実践に寄与 することを目的として、研究者を中心に運営され る日本体育・ スポーツ政策学会は、2007 年 12 月

1)研究の背景、研究目的

1、研究の目的 本研究の目的は、開発教育の主体形成の理論的構造を明らかにし、今日の日本における