第 8 回中国地区血管内治療研究会
(第 8 回 CJET)
1. 内頸動脈解離による急性閉塞に対し緊急ステント留置術を施行した1例 川崎医科大学 脳神経外科 松下展久 木下景太 平井聡 高井洋樹 原慶次郎 戸井宏行 松原俊二 宇野昌明 脳卒中医学 向井智哉 北野貴也 八木田佳樹 特発性内頚動脈解離は保存的加療で良好な予後が得られるとされるが、内科的治療に 抵抗性の症例もある。今回特発性内頚動脈解離による急性内頚動脈閉塞に対し緊急ス テント留置術を施行した1例を経験した。症例は 44 歳の男性。某日、左片麻痺出現し 救急要請。JCS1、軽度の左感覚障害と無視を認めるも、左片麻痺は改善傾向であった。 右中大脳動脈領域に急性期梗塞を認め、MRA で右内頚動脈は起始部から信号途絶してい た。心房細動や動脈硬化を示唆する所見は無く、緊急で脳血管撮影を行ない high cer vical portion での右内頚動脈閉塞を確認した。症状が軽微で保存的治療の方針とした が、検査終了直後から左上肢麻痺は 3-/V まで悪化、MRI の再検所見で脳梗塞の拡大を 認めたため緊急ステント留置術を行うことにした。抗血小板薬を loading して発症か ら約 6 時間後に手技を開始した。右内頚動脈に 9Fr- optimo を誘導すると閉塞してい た内頚動脈に順行性血流が得られ解離腔と思われる狭窄性病変が確認できた。近位遮 断にて浮遊血栓を吸引した後にマイクロガイドワイアーで狭窄部を通過し、PRECISE s tent を留置したところ、順行性血流の著明な改善が得られた。術後、神経症状は改善、 独歩可能となり、軽度の左上肢麻痺を残し、mRS 3 で第 10 病日にリハビリ目的で転科 となった。特発性内頚動脈解離で症状の進行する症例においてはステント留置による 緊急血行再建が有効であると考えられた。
2. 鎖骨下・腕頭動脈狭窄・閉塞症に対する血管内治療 岡山大学病院 脳神経外科 高橋 悠、杉生 憲志、菱川 朋人、平松 匡文、春間 純、 高杉 佑二、新治 有径、西廣 真吾、木谷 尚哉、伊達 勲 【緒言】鎖骨下動脈及び腕頭動脈狭窄・閉塞症に対する治療として、以前は直達手術が外 科的治療の主役を担ってきたが、最近では低侵襲な血管内治療が第一選択の治療法となっ ている。今回、我々は当院及び関連施設で鎖骨下動脈及び腕頭動脈狭窄・閉塞症に対する、 血管形成術の手術手技及び成績を報告する。 【対象と方法】当院及び関連病院で2005 年 8 月〜2016 年 4 月の 11 年間に、鎖骨下動脈及 び腕頭動脈狭窄・閉塞症に対して血管内治療(経皮的血管拡張術(PTA: Percutaneous Transluminal Angioplasty)もしくはステント留置術)を行った 19 例を retrospective に検 討した。適応は1)症候性(上肢虚血症状、鎖骨下動脈盗血症候群など)、かつ 2)狭窄率が 75% 以上で、原則として局所麻酔下に、可能な限り椎骨動脈(鎖骨下動脈症例)/内頸動脈(腕頭 動脈症例)への塞栓予防としてballoon protection を併用している。 【結果】対象19 例のうち男性 15 例、女性 4 例であり平均年齢は 64.2 歳 (33-86 歳)であっ た。病変は鎖骨下動脈が狭窄14 例・閉塞 2 例、腕頭動脈が狭窄 1 例・閉塞 2 例であった。 手術成績はtechnical success が 18/19 例 (89.7%)であり、術前症状は全ての症例で改善し た。合併症は3/19 例 (15.8%)に認め、脳梗塞が 1/19 例 (5.3%)、dissection が 2/19 例 (10.5%) であったが、いずれも無症候性であった。術後再狭窄はステント留置症例のうち2/15 例 (内 1 例は閉塞)に、PTA 症例のうち 1/3 例に認め、再狭窄 2 例に対して再手術 (ステント留置 術)を行い、閉塞 1 例に関しては無症状で経過したため経過観察としている。 【結論】過去の文献では合併症も少なく、長期成績も良好であることが多く報告されてき たが、当科における治療成績も同様の結果であった。鎖骨下動脈及び腕頭動脈狭窄・閉塞 症に対する血管内治療の手術成績は良好であり、安全性も高く有効であると考えられた。
3. 急性冠症候群に類似した症状で発症した、特発性縦隔型気管支動脈瘤破裂の1例 心臓病センター榊原病院 循環器内科 吉岡 亮、山本 桂三 71歳女性が、入浴中に突然発症した強い胸部絞扼感を主訴に当院救急外来受診。当初、急 性冠症候群、もしくはたこつぼ型心筋症が疑われたが、心電図、心エコー所見は特に壁運 動異常なく、心筋逸脱酵素の上昇も認めなかった。大動脈解離を鑑別する目的で造影CT検 査を行ったところ、縦隔に腫瘤及び流入する異常血管を認めた。その時点では腫瘍性病変 も考えられるとして、総合病院に転院したが、翌日、放射線科から気管支動脈仮性瘤及び その破裂が疑われると連絡があった。転院先に連絡したところ、肺小細胞癌を疑い精査中 と回答があったが、当院での所見を説明し、当院再入院となった。 再入院時の諸検査で、出血の持続が疑われたため、緊急コイル塞栓術で救命した。特発性 の気管支動脈出血の中でも縦隔型は稀であり、また症状が冠動脈疾患と類似する上、適切 な診断治療を行わなければ3割が死亡すると報告されているため、今回自戒の意味も込めて 報告する。
4. カテーテル検査・治療に難渋した異所性副甲状腺機能亢進症の一例 下関市立市民病院 循環器内科 辛島 詠士、森山 祥平、田中 洋光、金子 武生 症例は 61 歳男性。膜性腎症にて 13 年前に血液透析が導入された。5 年前に異所性副甲状腺 腫を指摘され、薬剤コントロール不能であったため、今回手術目的に当院紹介。術前の心 エコーにて心機能低下と僧房弁逆流を認めたため術前精査目的に当科紹介となった。 冠動脈造影検査のために左肘穿刺行ったが、左鎖骨下動脈閉塞を認めた。このため比較的 蛇行の少ない左鼠径部より逆行性にシースを挿入した所、左外腸骨動脈に解離を作成。EPIC ステントを 2 本留置した。左総腸骨動脈に全周性の石灰化を有する高度狭窄を認めたが、 十分なサイズの Balloon expandable stent を常備していなかった事もあり、一旦手技は終 了した。なお、CAG もトライしたが、カテーテルが左総腸骨動脈の高度狭窄で引っかかって 進まなかったため、CAG は断念した。 後日、改めて EVT を施行。右鼠径穿刺し 6Fr シース挿入。右総腸骨入口部にも石灰化を伴 う高度狭窄があることが判明した。石灰化の中にチャンネルを認めたが、0.035J stiff ワ イヤーも 0.014 ワイヤーも、そのチャンネルを逆行性に通過させることはできなかった。 このため左鼠径より 6Fr シース挿入し、まず左腸骨入口部に ASSURANT 10.0×30mm を留置。 その後、右総腸骨動脈のチャンネルに対して、4Fr AL1.0 を用いて Chevalier floppy+ Prominent を順行性に通過させた。ワイヤーをスネアで保持したが、石灰化を通過したワイ ヤーの抵抗が非常に強く、ワイヤーが何度もスネアから脱落した。何とか 0.014 ワイヤー を pull through させたが、今度は Prominent が全く抜けなくなった。このため、まず右総 腸骨動脈の狭窄を Mustang 4.0×20mm で拡張し、次に Mustang 6.0×20mm で拡張した。 ASSURANT 10.0×30mm を持っていこうとしたが、ASSURANT が右鼠径の 6Fr シース内でスタ ックし、上がっていかなかった。このため 0.035J stiff ワイヤーを挿入し、抜けなくなっ た Prominent ごと 0.014 ワイヤーを抜去したあと、6Fr シースを 6.5Fr Parent に変更。右 総腸骨動脈に ASSURANT を留置した。 最終的にはきれいに仕上げることが出来たが、反省点が非常に多かったため報告する。
5. 重度石灰化を伴う Common femoral artery に対する EVT
広島市立広島市民病院 循環器内科&救命救急センター
井上一郎、正岡佳子、塩出宣雄、嶋谷祐二、西岡健司、酒井孝裕、大塚雅也、末成和義、 中間泰晴、川瀬共治、臺 和興、大井邦臣、檜垣忠直、播磨綾子、竹内有則、池上雄紀、 中尾恭久、小林佑輔
重度の石灰化を伴った Common femoral artery に対しては、non-stent zone と云うことで、 一般的には外科的治療が選択されている。しかし、いつまでも外科的治療に頼るのでは医 学の進歩はないし、TASC 分類でさえ、ある日、突然に変更されるのが現状である。
EVT の器具や手技は、日々、進歩しており、今回、重度の石灰化を伴った Common femoral artery に施行した EVT 治療について紹介する。
6. 腸骨動脈の CTO 病変に対して自作の Re-entry システムにて治療を行った一症例 国立浜田医療センター 循環器内科 松田 晋、飯田 博、明石 晋太郎、森田 祐介 症例は 70 歳後半の男性。今回数年前から続く間欠性跛行を主訴に受診し、3 年前の CT にて 右総腸骨動脈の閉塞性病変を認めた。今回同部位に対して治療を行った。同側逆行性と上 肢から順行性の両方向性に治療を開始した。逆行性のワイヤー操作にて Subintimal space にワイヤーが進んだため、順行性のワイヤー操作に切り替えるも閉塞近位部の Cap にワイ ヤーが進入しなかった。アプローチ部位の変更などを試みるも状況は変わらず、最終的に 逆行性のワイヤーにて方向性を決めて、穿通を行った。Crusade および荷重の重いワイヤー だけでは Subintimal space から穿通できなかったため、自作の Re-entry システムを用い て穿通を行った。35 ワイヤーを用いた Tail attack などの方法もあり得たが、病変が腸骨 動脈であり、より方向性をコントロールするという意味で今回の手技を施行したため報告 を行う。
7. 下肢閉塞性動脈硬化症例に振動型閉塞血管貫通ディバイス(Crosser)使用中にチップ 離断が発生した3例。 チップ離断時の対処法について
土谷総合病院 放射線科 佐藤友保
Experience of 3 cases of tip separation during recanalization of severely calcified lower extremity arteries using Crosser. How to manage separated tip.
はじめに:動脈硬化性疾患に発生した下肢動脈閉塞再開通ディバイスとして Crosser が発 売された。透析症例が多く、他のデバルキングデバイスのない本邦では、海外に比しより 高度な動脈病変を有する症例に使用されることも多い。このため種々のトラブルに遭遇す ることもある。 症例1:浅大腿動脈拡張閉塞貫通時のため Crosser 使用中にコアワイヤ離断が発生しチッ プが残存した。gooseneck snare にて逆行性に回収した。 症例2:前脛骨動脈拡張中にチップが離断した。足背動脈を追加穿刺し、シース挿入しシ ース経由で順行性に押出し、回収した。
症例3:Below the ankle 領域で Crosser 使用中に、動脈弓でチップが離断した。動脈硬化 性変化が強く回収は断念することとした。 考察:今回われわれは下肢動脈拡張時に、カテーテル先端の金属チップが離断した3症例 を経験した。1例では穿刺ルートからチップを回収した。1例では末梢側を追加穿刺し、 チップを押し出す形で回収した。残りの1例ではチップ回収を断念し手技を終了すること となった。これらの症例を供覧するとともに、 Crosser 使用時におけるカテーテルトラブルとその対処法について報告する。
8. 【演題名】OPTIMO PPI 適正使用についての検討 福山市民病院 循環器内科 藤原 敬志 【症例】66 歳 男性【主訴】両側間歇性跛行【現病歴】Lerish 症候群に対し腹部大動脈-両 側総腸骨動脈に対し stent 留置後当科外来継続中であった。EVT 施行 2 年経過し徐々に増悪 する両側間歇性跛行を認め外来受診。精査の結果、両側 stent 内再閉塞を認め、EVT による 血行再建とした。distal embolization の可能性が十分に考えられたため protection device として OPTIMO PPI を両側大腿動脈より留置した。stent は両側外腸骨動脈にまで及んでお り stent distal の内腔は保持されていたためステント内にシース先端を留置し推奨投与量 を投与し distal protection を施行した。両側総腸骨動脈から腹部大動脈へワイヤー通過 後に Kissing balloon technique でステント内拡張、POBA 施行後に OPTIMO PPI バルーン 部分を確認するとすでに balloon rupture をきたしていた。balloon rupture したものの幸 い両側とも distal embolization を認めず血行再建を終了し得た。【考察】distal protection device として OPTIMO PPI は非常に有用と思われるが実臨床において balloon 拡張部位の動 脈損傷、また本症例のような balloon rupture が少数ではあるが報告されており使用にあ たっては十分な注意が必要である。
本症例において balloon ruputre に至った原因について検討したため若干の文献的考察を 交え報告する。
9. 下腿動脈病変に対する治療戦略 血管攣縮性の閉塞に対する薬剤は? 広島赤十字・原爆病院 血管外科 大峰高広 近年のデバイスの改善により末梢血管疾患(PAD)に対する血管内治療成績は改善している. 大動脈-腸骨動脈領域や大腿-膝窩動脈領域では Rutherford3 以上の患者に対する治療とし て EVT-First で行うことが妥当である。 下腿動脈病変に対する血行再建の適応は Rutherford4 以上すなわち安静時疼痛か潰瘍壊死 である。下腿動脈病変に対する血行再建は足部バイパスが Gold Standard であるが 全身状態や施設の社会的事情から現実的ではなく EVT を行わざるを得ない症例もあるであ ろうと予想される。下腿動脈病変に対する血管内治療は同側順行性か、対側山越えか、 DistalPuncture を行うか否かなどの手技や血管攣縮の際の使用薬剤など術者によってさま ざまである。 今回、我々の症例で、下腿動脈病変に対する血管内治療で血管攣縮を呈し薬剤にて軽快し た症例と血管攣縮による閉塞で足部バイパスを行い救肢した症例を供覧する。