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after/withコロナ時代におけるESD for SDGsとは

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Rikkyo ESD Journal No.5 (October 2020)

COVID-19と人間の安全保障

 COVID-19(新型コロナウィルス感染症)は世界中に広 がり、現代社会の脆弱性をあからさまに露呈させている。

既に先進国・途上国を問わず、計り知れないマイナスの影 響を社会や経済に及ぼしており、それは歴史の転換点にな るかも知れないほどのインパクトだ。

 一方で、私たちはSDGs(国連持続可能な開発目標)を 共有し、2030年に持続可能で包摂的な地球社会を実現する ことを目指している。「危機の真っただ中でSDGsどころで はない」とも考えがちだが、むしろこの状況が生まれたこ とで、SDGsの意義・重要性がより明確になってきている。

COVID-19のためにSDGsへのアクションを中断したり方 向転換したりする必要は全くなく、反対にその努力をさら に加速させるべきであろう。

 その意味で、改めて注目したいのは「人間の安全保障」

という考え方だ。1994年にUNDP(国連開発計画)が提唱 したもので、日本政府が資金を提供し緒方貞子氏が共同議 長となって2001年に設立された「人間の安全保障委員会」

でその概念が深められた。伝統的な国家中心の安全保障概 念とは異なり、人間中心の考えに立って、一人ひとりの人 間を取り巻く様々な脅威に着目し、それらを総体的に安全 保障の問題ととらえて解決する方法を考える。具体的な脅 威は、気候非常事態、生態系破壊、極度の貧困、内戦、難 民化、感染症、麻薬蔓延、人身売買など、さまざまである が、現実のものとなってしまったパンデミックはまさに脅 威の代表例のひとつだ。

 人間の安全保障論は、右肩上がりの成長論とは一線を画 し、下降リスクに着目する。そして、最も脆弱な層に特別 の関心を向けることを強調する。この点において「誰ひと り置き去りにしない」とうたうSDGsと軌を一にするもの である。そして人間をとりまく脅威の現実に目を向けるこ とを通じて、私たちにSDGsがなぜ必要かを深く理解する ためのインスピレーションを与えてくれる。

 人間の安全保障論から得られる重要な示唆は、以下のよ うなものだ。

・数々の脅威を、それぞれ独立したものととらえずに、

因果関係やつながりを理解して取り組むべきこと。

・政府だけではなくすべてのセクターが解決の担い手で あること。

・事後的な対処療法ではなく、危機を回避するための予 防的措置が極めて重要であること。

・保護と能力強化、特に教育が重要であること。

 なかでも最も重要な示唆は、SDGsへの取り組みにおい

て、人間を中心に置き人間の尊厳を守り人権を尊重するこ とを中核に据えるべき、という点であろう。

 COVID-19からの回復は、元の社会に戻すのではなくよ り良い社会を創造することだ、という意味を込めて「build back better(よりよい再構築)」という言葉がよくつかわ れる。一体これまでの社会の何が問題だったのか、何をど う変えるべきか、原点に戻って考え直さなければならない。

その際に、人間の安全保障は、私たちが実現をめざすべき 社会は人間中心の社会、つまり「すべての人が人間らしく、

尊厳を持って生きることのできる社会」であることを再認 識させてくれる。

問題の根本解決に必要な、トランスフォー メーション

 「誰ひとり置き去りにしない」と並ぶSDGsのもうひとつ の重要な理念は、採択文書のタイトルにもある「トランス フォーメーション(大変革)」である。漸進的に改善を積 み重ねるだけでは事足りない。気候非常事態や貧困・格差 問題などの難問を解決し、持続可能で包摂的な社会をつく るためには、様変わりするほどの大変革が必要だ。

 しかし、大変革には痛みも伴う。まして、今の日本社会 は残念ながら変化に対してきわめて消極的である。世界的 に進行する脱炭素の動きにしても、今回COVID-19対応で 顕在化した行政手続きや学校授業のオンライン化にして も、日本社会が必要な変化を起こせないでいることは明ら かである。では今後、どうしたらトランスフォーメーショ ンを起こすことが可能になるのか、少し考えてみたい。

現実の直視

 まずは第一に、現実から目を逸らさないことであろう。

例えば、アフリカ諸国におけるCOVID-19の目をそむけた くなるような悲惨な状況とも向き合う必要がある。また、

「地球に住めなくなる日」(David Wallace-Wells著・NHK 出版)という本がある。膨大なデータと事実を示し、気候 変動の深刻さや戦慄するような将来予測を伝えており、正 直言って読み進むのがつらい本だ。できればこうした現実 は信じたくないのが人情だろう。しかし、COVID-19がも たらしていること、あるいは時間切れが迫っている気候非 常事態などの現実から目をそらさず、直視することが必要 だ。

システム思考

 時代が抱える大きな課題を解決するためには、個別事象 のつながりを理解し全体的に問題をとらえ、解決にはどこ をどう変えればよいのかをシステム思考で検討することが 必要だ。根本原因にまで掘り下げて考え、そして解決にあ after/withコロナ時代に必要なことは何であろうか。それは、人間中心のリジリエントな社会を構築することであり、と りもなおさずSDGsが描く社会を実現することである。しかし、そのためには社会を大変容させることが必要である。コ ロナは本気で社会の大変容に取り組むチャンスを私たちに与えてくれた。どういう社会を作りたいのか、作らなければい けないのか、改めて考えるべき時がきた。

関 正雄

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Rikkyo ESD Journal No.5 (October 2020) たっては、社会や経済のルール変更にまで踏みこんで全体

システムを変容させることが重要である。対症療法的な措 置でやり過ごすだけでは難題は決して解決しない。このよ う な シ ス テ ム 思 考 で の 解 決 策 が 必 要 で あ る こ と を、

COVID-19は改めて考えさせてくれた。

企業と投資家の力

 トランスフォーメーションをもたらす企業と投資家の役 割に注目することだ。政府、NPO/NGOの役割はもちろん 重要だが、企業、投資家の役割が極めて重要な推進力とな る。企業向けのアンケート調査でも、「SDGsの実現に最も 影響のあるセクターは企業や投資家だ」という答えが顕著 に増加し、反対に政府という答えは大幅に減少している。

 環境・社会・ガバナンスへの配慮を投資判断に組み込む ESG投資は、国内外で近年急激に伸長している。また、規 模だけではなく質的にも進化しつつあり、特にSDGsの実 現に向けたダイナミックな変革を求める投資家の声が高ま りつつある。

 例えば、2020年3月 26日に公表された、経 団連、東京大学、GPIF の3者による共同研究 の報告書では、SDGs の実現に向けた企業と 機関投資家の協働を強 調している。経団連が 主導する、デジタル・ト ランスフォーメーショ ンをSDGs達成の推進 力にするというSociety 5.0 for SDGs戦略を、世 界最大の政府年金基金 であるGPIFが組んで 共に実践しようという

行動宣言である。そのためにESG投資の進化が必要である とし、必要な政策環境整備も提言している。

インパクト評価

 こうした協働による社会的イノベーションを生むために 不可欠なのは、インパクト評価である。社会にどれだけの 変化をもたらすかを常に意識し、その大きさを測定する。

トランスフォーメーションに関わる政府・企業・市民社会 組織などすべての主体間でこの点が共有されることが大切 である。インパクトを評価し、最大化をめざすことは、社 会イノベーションや社会の変容を加速する。

 こうしたインパクトへの投資・金融サイドからの関心の 高まりは、UNEP-FI が立ち上げた、2017年のポジティブ・

インパクト原則や2019年の責任銀行原則にも見ることがで き、金融機関は投融資が生む社会的インパクトを評価し公 表すると宣言している。ESG(環境・社会・ガバナンス)

に満遍なく配慮しているかだけではなく、SDGsの実現に 向けて社会に変化をもたらすインパクトを生むかどうかを 評価して投資判断に組み込もうとしているのである。

市民の力と教育

 なお、デジタル技術はトランスフォーメーションを導く 有用な武器ではあっても、デジタル技術それ自身が社会を 変えてくれるわけではない。人間のために活用してよりよ い社会へとトランスフォームする主体は、あくまでも人間だ。

 また、企業・投資家が、そしてもちろん政府がリーダー シップを持って大きな力を発揮すべきであるが、それだけ ではトランスフォーメーションは決して起きない。変化の 力になるのは、市民の声であり行動である。特に、変化に 慎重な日本において、そうした変化を起こすことを望み、

声にする市民の力がなければならない。SDGsに関する市 民の役割の重要性はこの視点から理解する必要がある。

 その意味で、WBCSD(持続可能な開発のための世界経 済人会議)ほかが策定した、市民一人ひとりがSDGs達成 のために何をするべきかをまとめたGood Life Goalsは興味 深い(下図)。そこには、17の目標ごとにそれぞれ5つの 推奨アクションが書かれている。そのうち1から3までは、

「気候変動の対策について学ぼう」など、自分自身の身の まわりの行動について書かれている。しかし、5には「気 候変動に対して大胆なアクションを今すぐ起こすよう指導 者に要求しよう」と書かれ、大きな変革のために政治家な どに対して要求の声をあげるべきとしているのである。

 言うまでもなくSDGsの達成には、目標4「教育」のタ ーゲット4.7に明記されたように、達成に向けて取り組む 人を育むこと、つまり「持続可能な発展のための教育

(ESD)」が欠かせない。そして教育においては、このよう に大きな変革を求めて意思表示し、周囲に働きかける態度 を育むことがますます必要になってきている。加えて言え ば、政府・行政と市民の間に、また企業と消費者との間に、

信頼感や共通の理解がなければ、今必要なトランスフォー メーションは決して起こせないであろう。

 ある意味で、COVID-19は本気で社会の変容に取り組む チャンスを私たちに与えてくれたともいえる。どういう社 会を作りたいのか、作らなければいけないのか、大きなシ ステム的変化を起こすために、何をしなければならないか を、改めて考えるべき時がきた。

経団連・東京大学・GPIFの共同研究報告書 https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/026.html

関 正雄(せき・まさお)損保ジャパンCSR室シニアア ドバイザー、明治大学経営学部特任教授。東京大学法学部 卒。SDGsを組み込んだ経団連企業行動憲章改定で座長を 務めるなど、産業界へのSDGs浸透に尽力。著書に「SDGs 経営時代に求められるCSRとは何か」(第一法規)ほか。

1. 農業、漁業、食物生産について学ぼう 2. 果物や野菜をもっと食べよう

3. 地元のもの、旬のもの、公正な取引が行われた食品 を買おう

4. 子ども、お年寄り、妊娠中の女性が健全な食生活を 実践するための力になろう

5. 世界の飢餓をなくすよう要求しよう よりよい食生活を

しよう 貧困をなくす力に なろう

1. 自分の国や海外の貧困の原因について学ぼう 2. できることを分かち合い寄付しよう

3. 公正な賃金・労働条件を満たした企業の製品を買おう 4. 貯金、借金、投資には責任を持とう

5. すべての人に対する適切な賃金と機会を要求しよう

Good Life Goalsから(一部抜粋)

気候変動に対して アクションを起こ そう

1. 気候変動の対策について学ぼう

2. 自分の国で再生可能エネルギーの普及を求めよう 3. もっと植物性食品を摂取し、肉の消費量を減らそう 4. 車よりも徒歩や自転車にしよう

5. 気候変動に対して大胆なアクションを今すぐ起こす よう指導者に要求しよう

https://sdghub.com/goodlifegoals/

参照

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