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北田実男 中島節子 大阪市立総合医療センター小児循環器内科

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日本小児循環器学会雑誌 IO巻4号 557〜564頁(1994年)

先天性心疾患児(未手術および既手術)の 小・中・高校在学中の予後

(平成6年6月9日受付)

(平成6年9月16日受理)

大阪府立成人病センター循環器検診第3科

北田実男 中島節子

大阪市立総合医療センター小児循環器内科

    杉 本  久 和

key words:先天性心疾患,自然歴,術後遠隔期,年間総死亡率,年間急死率

      要  約

 先天性心疾患の未手術例18,048人年と既手術例9,377人年の小・中・高校在学中の追跡調査(1962〜1990 年度)により次の結果を得た.

 1)総死亡率は未手術例,既手術例共年々低下しているが,同時代,同年齢の一般人の死亡率との比で みるとその10〜15倍で横ばいである.管理区分E可では一般人と有意差がなく,E禁は一般人の約4倍,

Dは約20倍,Cは約50倍, Bは100〜200倍であった.

 2)死因の年次推移をみると,心臓手術関連,慢性心不全,細菌性心内膜炎が減少している反面,既手 術例では急死が増加している.

 3)急死率はE区分では一般人と有意差がなく,D(既手術例の場合)は約100倍, Cは約300倍, Bは 700〜1,000倍であった.

 4)運動中の急死例の約40%は許容限界を超えた運動中であった.激しい運動ではその終了前後に多 く,中等度以下の運動では開始直後に多かった.

 5)大動脈弁狭窄症,肺高血圧合併症および重症複合心奇形などでは運動中の急死がふえており,その 判定,管理指導には特に注意が必要である.

         緒  言

 先天性心疾患は児童・生徒にみられる器質的心疾患 の中で最も多いものである.特に,従来は乳幼児期に 自然淘汰されていたような重症例の術後遠隔期症例

(既手術例)が医学,医術,殊に心臓外科の進歩により 年々ふえてきている.そのこと自体は喜ばしいことで あるが,それらの症例には急死,特に運動中の急死が 少なくなく,管理上新たな問題が発生している.他方,

手術の低年齢化の陰で,予後良好な自然治癒の可能性 すらある症例まで早期に手術が行われている場合もあ

別刷請求先:(〒537)大阪市東成区中道1−3 3      大阪府立成人病センター  北田 実男

る.

 適正な手術適応基準,末手術例および既手術例の長 期管理基準の確立には自然歴の解明が不可欠である が,自然歴をみることは今後ますます困難になると思 われる.そこで私達は先天性心疾患の未手術例および 既手術例の学齢期におけるこれまでの経過を検討し,

管理指導上の問題点や軽症例の手術の是非などについ て若干の考察を加えたので報告する.

         対象と方法

 昭和37〜平成2年度の大阪府立成人病センターまた は大阪市立小児保健センターの学校心臓検診で先天性 心疾患と診断し,追跡してきた未手術患者18,048人と 既手術患者9,377人を調査対象とした.追跡期間中に管

(2)

理区分の判定基準が数回改訂されたので,議論の混乱 を避けるため,管理区分は現在の基準りによって評価 し直した上で集計した.

 死亡例の把握は追跡検診欠席者調査,転校,進学,

連絡先調査などを通じて行い,該当例の家庭,医療機 関,さらに必要に応じて監察医事務所,警察署などへ の訪問調査を行い,生前の生活実態,管理指導状況,

死因,誘因などについて調査,検討した.

      結  果

 表1は管理指導区分別の年間総死亡率と急死率であ る.追跡症例数は人年単位で示し,年間総死亡率およ び急死率はパーミル単位で示した.

 未手術例では管理区分が重くなるほど総死亡率は急 激に高くなっている.急死例はE可に2例あり,E禁 とD区分には1例もないといったでこぼこがみられ るが,C区分, B区分で急激に上昇している.

 既手術例についてみると,総死亡率はE可が年間 0.16%。で,未手術例に比べて低いが,E禁以上では未手 術例と同様の傾向がみられた.急死率は管理区分が重

くなるほどさらに急激な上昇がみられた.

 表2は未手術例の病型別年間総死亡率と急死率であ る.総死亡率が最も高かったのはFallot四徴症で,以 下,大動脈弁狭窄症,Eisenmenger症候群,大動脈弁 閉鎖不全を伴った心室中隔欠損症,心内膜床欠損症の 順であり,心室中隔欠損症,心房中隔欠損症,動脈管 開存症,肺動脈弁狭窄症などの総死亡率は格段に低

かった.

 急死率は大動脈弁狭窄症が最も高く,次いでEisen−

menger症候群, Fallot四徴症,大動脈弁閉鎖不全を 伴った心室中隔欠損症の順であった.

 表3は未手術例の死因の年次推移である.全期間の 合計で最も多かった死因は心臓手術関連(心臓手術入 院中の死亡:以下同じ)によるものであるが,これは 昭和57年度以降は急減している.急死は昭和47〜56年 度がピークであった.細菌性心内膜炎,脳梗塞,慢性 心不全などの死因は着実に減少傾向を示している.一 般病死はむしろ増加傾向がみられる.

 表4は既手術例の死因の年次推移である.全期間の

表1 管理区分別年間総死亡率と急死率     (昭和37〜平成2年度)

E可 E禁

D

C B

患者数(人年) 11,853 3,065 1,933 826 371 18,048

未手術例

   実人数 総死亡 ………

    %。

  9≡≡一一≡≡一≡一 一一

 〇.76

  5−一一一一〕一一一一一一

 L63

 16−一一●一一,≡一●≡≡

 8.28

  23≡一≡≡≡≡一一一←一一

 27.85

 36一婚婿一=一一一一一一

 97.04

  89−一一一一一一−一◆≡

 4.93

   実人数

急 死 一一一一…一一

    %。

  2−一≡一一≡一⌒⌒ −

 0.17

  0−一一一一一一一一一一一   0−一一一一一一一→曽

 一

  7≡≡■・.一≡一←一一,

 8.47

 12−一一一一一一一一一一一

 32.35

  21−一一一一←,一一一一一

 1.16

患者数(人年) 6,079 1,562 1,055 427 254 9,377

   実人数

総死亡 …一…一     %。

  1−≡≡一≡一一,一一一

 〇.16

  2一」一一−一一一一一

 1.28

  8−一一一一一一一一一一一

 7.58

  11−一一一一一一一一一一一

 25.76

 12−一←一一一一一一一一

 4724

  34−一一一一一一一,,■−

 3.63    実人数

急 死 一………

    %。

  0,一A⊥ 一⇒一一〔一

 一

  0 一一一一一一一一一一≡

  一

  4,,一一一一一一一一一一

 3.79

  4−≠一≡≡一●一⇒一一

 9.37

  5−一一一一 一一一←一←

 19.69

  13⌒一⌒一一一一一⇔≒−

 1.39

表2 未手術例の病型別年間総死亡率と急死率

VSD VSD十AR ASD ECD PDA

Eisen−

menge「 PS

AS TF

Others

患者数(人年) 7,684 126 2,944 263 1,055 120 1,973 267 335 3,281

       実人数

総死亡・………

        %。

   20−≡,一}一一一一一一一

  2.60

    2−一一一■一一一一一一一一一一,A−≡一一●一一,一一

   15.87  4 1.36

   4

曽一←一一一〉一一一一

  15.21

   4−一一一一一一一一一一

  3.79

   4−一一一一一一一一一一

  33.33

   2−一一一一一一参一一一一

  1.01

   9−一一一一一一一一,,,

  33.71

   15    25 ≡一一一一≡≡一一■一甲}一一一一一一一一一,

 44.78   7.62        実人数

急 死・………

        %。

    2−■←一一一一一一一一−

  0.26

    1 ←一一一一一一一一一一一一一

    7.94

    0A−一一一一一一一一一一

   一

   0一一曽A−一一一一一一

   一

   1−一一一一一一一一一一

  〇.95

   2←・一一一≡−w=,一

  16.67

   0−一一一一一一一一一一

    

   5− 一一一一一一一一一一

  18.73

    4−一一一一一一一一←一一

 11.94

    6−一 一一一≡■一一一一

  L83

(3)

平成6年12月1日 559 (67)

表3 未手術例の年間致命率および死因の年次推移

 死 因

年 度

菌性心内膜炎 亘脳膿瘍

関連

因死

間致命率%︒

昭和37〜46年度 5 4 5 5 18 1 2 40 723

昭和47〜56年度 2 1 2 13 15 2 0 35 4.89

昭和57〜平成2年度 1 0 2 3 3 4 1 14 2.61

 No

合計  …一…一一一

 %

8−一一一一一一一一

9.0

5−一一一一一一一一

5.6

9−一一一一一一一一

10.1

21−一一一一←一一一

23.6

36−一一一一一一一一

40.4

7−一一一一←一一一

7.9

3−一一一一一一一一

3.4

89−一一一一一一一一

100.0

4.93−一一一一一一一一

表4 既手術例の年間致命率および死因の年次推移

 死 因

年 度

内膜炎

俘脳膿瘍

関連

外因死

間致命率%︒

昭和37〜46年度 0 0 1 0 2 0 0 3 6.16

昭和47〜56年度 1 1 1 4 4 1 1 13 4.08

昭和57〜平成2年度 0 2 1 9 4 1 1 18 3.15

 No

合計  一…一一…一

 %

1−一一一一一一一一

2.9

3−一一一一一一一一

8.8

3−一一一一一一一一

8.8

13−一一一一一一一一

38.2

10−一一一一一一一一

29.4

2−一一一一一一一一

5.9

2−一一一一一一一一

5.9

34−一一一一一一一一

100.0

3.63−一一一一一一一一

表5 未手術例の管理区分別年間致命率および死因

 死 因

管理区分

菌性心内膜炎 竺脳膿瘍

(※)

(※)

関連

因死

年間致命率%︒

E可 4 0 0 2(0) 0 1 2 9 0.76

E禁 1 0 0 0 2 2 0 5 1.63

D

1 2 0 0 11 1 1 16 8.28

C 0 0 3(2) 7(2) 12 1 0 23 27.85

B 2 3 6(3) 12(1) 11 2 0 36 97.04

8 5 9(5) 21(3) 36 7 3 89 4.93

※()内の数値は呼吸器感染罹患中の症例数の再掲

合計で最も多かったのは急死で,特に最近増加傾向が みられる.次いで多かったのは心臓再手術関連(心臓 再手術入院中の死亡:以下同じ)で,保存的術後例に 対する根治的修復術の増加に伴って増加している.

 表5は未手術例の管理区分別年間致命率および死因 である.E可の死因のトップは細菌性心内膜炎であっ

た.E禁では心臓手術関連と一般病死が2例ずつで,残 りの1例が細菌性心内膜炎であった.D区分では16例 中11例,約70%が心臓手術関連による死亡例であった.

C区分も約半数が心臓手術関連による死亡であり,次 いで急死が多かった.B区分では急死が30%強で最も 多く,次いで心臓手術関連死がほぼ同率の2位であり,

(4)

表6 既手術例の管理区分別年間致命率および死因

 死 因

管理区分

菌性心内膜炎 竺脳膿瘍

(※)

(※)

関連

因死

年間致命率%︒

E可 0 0 0 0 0 1 0 1 0.16 E禁 0 0 0 0 0 0 2 2 1.28

D

0 0 4(0) 2 1 0 8 7.58

C 0 0 2(1) 4(1) 5 0 0 11 25.76

B 0 3 1(0) 5(1) 3 0 0 12 47.24

1 3 3(1) 13(2) 10 2 2 34 3.63

※()内の数値は呼吸器感染罹患中の症例数の再掲

表7 急死例の急死時の体調と行動

未  手  術  例 既  手  術  例

  行  動

体  調

しい運動中 中運等鯖下の中

用便中

その他の覚醒中

しい運動中 中運閲下の中

用便中

その他の覚醒中

合計

呼吸器感染罹患中 0 0 0 2 1 3 0 0 1 1 0 2 5

疲労・その他体調不良 0 0 1 2 0 3 0 0 0 0 2 2 5

失神の既往(+) 0 0 1 2 1 4 0 0 0 0 0 0 4

平常と

変らず 失神の既往(一) 4 2 0 4 1 11 4 2 0 3 0 9 20

4 2 2 10 3 21 4 2 1 4 2 13 34

3位は慢性心不全であった.

 表6は既手術例の管理区分別年間致命率および死因 である.E区分では一般病死が1例,外因死が2例で,

急死例はなかった.C区分では心臓再手術関連死が最 も多く,次いで急死が多かった.B区分では急死が最 も多く,心臓再手術関連と脳梗塞が同率の2位と3位 であった.

 表7は急死時の体調と行動である.体調の分類は便 宜上普段との比較で行い,自・他覚的症状が多少あっ ても,その程度が普段とあまり変りがないものは平常

と変らずに分類した.

 未手術例では21例中呼吸器感染罹患中が3例,疲労,

その他の体調不良が3例,合計6例,約30%に何らか の体調不良がみられた.体調は正常とかわらなかった 15例中4例に急死のニアミスともいえる失神の既往が みられた.なお,体調不良も失神の既往もなく急死し

た11例中6例は運動中の急死であった.

 一方,既手術例では13例中4例,約30%に何らかの

表8 運動中の急死例の運動強度・経過時相との関連

強度 経過時相 未手術例 既手術例 合計(※)

開始直後 AS:可

DORV:D

2

最 中 0 0 0

激しい運動

終了前・後 VSD:E可

謬§iε  AS:D

※TF:D

※DORV:C

6(4)

開始直後 VSD十AR:C

※CHD:B

TGA:D

VSD:C

(III度AVB)

4(1)

中等度の以運下動

最 中 0 0 0

終了前・後 0 0 0

6(3) 6(2) 12(5)

※は明らかに許容限界を超えた運動中の急死例

(5)

平成6年12月1日 561 (69)

表9 病型別・管理区分別急死時の行動

未  手  術  例 既  手  術  例

病   型

激運動 中以下

運動

日 常

動 作 睡眠中 小 計 激運動 中以下

運動

日 常

動 作 睡眠中 小 計

AS

E可:l

C:2(2) B:1 C:1 5(2) D:1 1 6(2)

VSD

E可:1 C:1 2 C:1 B:1 2 4

VSD十AR

C:1 1 0 1

非チアノーゼ性

PDA十PH

B:1(1) 1(1) 0 1(1)

Eisenmenger B:2 2 0 2

Others B:1(1) C:1

B:1

3(1) 0 3(1)

TF

C:1

B:2 B:1 4

D:1(1) C:1

B:1

3(1) 7(1)

TGA

B:1 1 D:1 1 2

    

DORV

0 D:1

C:1(1) C:1 3(1) 3(1)

Pseudotruncus 0 B:1 1 1

SV 0 B:1(/) 1(1) 1(1)

Others B:1 B:1 2 B:1 1 3

4(2) 2(1) 12(1) 3(0) 21(4) 4(2) 2(0) 5(1) 2(0) 13(3) 34(7)

()内の数値は明らかに許容限界を超えた運動中の急死例数の再掲

体調不良がみられた.残りの9例,約70%は体調不良 も失神の既往もなかったが,その9例中6例は運動中 の急死であった.

 表8は運動中に急死した12例の運動強度および運動 開始からの経過時相をみたものである.未手術例と既 手術例と同様の傾向がみられた.すなわち,いずれの 場合も激しい運動ではその終了前後の急死が多く,中 等度以下の運動では運動開始直後が多かった.なお,

星印の症例(合計欄ではカッコ内の数値)は管理区分 の許容限界を超えた運動中の急死例で,それが12例中

5例,約40%を占めていた.

 表9は病型別に急死時の行動をみたもので,管理区 分も同時に示した.

 未手術例では,急死21例中14例,67%が非チアノー ゼ型病型であった.運動中の急死6例はすべて非チア ノーゼ型で,うち3例が大動脈弁狭窄症であった.カッ コ内の数値は管理区分の許容限界を超えた運動による 急死例数の再掲である.なお,日常生活で許容限界を 超えたものとは,具体的に自転車通学中の急死であっ

た.

 既手術例では13例中10例,約77%がチアノーゼ型病 型の術後例であった.なお,日常生活で許容限界を超

表10 軽症VSDの小・中・高校年齢における自然治癒  率と大動脈閉鎖不全新発生率(年間)

年 度 追跡例数

 人年 実人数(%)自然治癒 AR新発生

実人数(%)

前 期 1,824 6(0.33) 3(0.16)

中 期 2,733 7(0.26) 3(0、11)

後 期 2,190 5(0.23) 1(0.05)

合 計 6,747 18(0.27) 7(0.10)

えた運動による急死例とは先の未手術例の場合と同 様,自転車通学中の急死例であった.

 表10は未手術先天性心疾患の約40%を占める軽症心 室中隔欠損症の小・中・高校年齢における自然閉鎖率 と大動脈弁閉鎖不全の発生率を年代別にみたものであ る.自然閉鎖率は平均年間0.27%で,前・中・後期で 有意差はみられなかった.大動脈弁閉鎖不全の新発生

は減少傾向を示しているが,後期にも1例みられた.

その症例は室上稜下部の心室中隔欠損で,大動脈弁は 二尖弁性であった.

 軽症心室中隔欠損症患者の細菌性心内膜炎罹患率は 正確には把握できていないので表示していないが,こ

(6)

こ10年間では約2,400人年中2人(年間罹患率0.08%)

にすぎず,死亡例はなかった.

      考  察

 児童・生徒にみられる器質的疾患で最も多いのは先 天性心疾患であり,そのうち既手術例の占める割合が 年々ふえてきている.特に,最近は重症複合心奇形の 既手術例の増加が目立つ.一方,未手術例の大部分は 手術不要の軽症例であるが,中には手術ができない重 症例もみられる.

 先天性心疾患児の管理区分判定基準は疾病構造の変 化,医療水準の向上に合せてこれまで幾度か改訂され てきた.また,これまで統一基準がなかった重症複合 心奇形の術後長期管理基準も最近公表された2).ただ

し,その基準は術後遺残症や続発症の多様な組合せ,

各術式に特有な問題点等がからみ,煩雑で,その基準 作成に関与した専門家でないとなかなか使いこなせな いのが難点である.ともかく,管理区分判定基準の改 訂はこれまで一貫して運動制限を緩和する方向で進め られてきた.心疾患児の心身の発育,発達を運動制限 によって阻害することがないよう留意すべきであると の指摘に応えたもので,その方向性に異論はない.し かし,その余波として,自・他覚的症状に乏しい場合 は適正な運動制限まで軽視されがちな風潮もみられ,

それが災いしたと考えられる運動中の急死例がふえて いる点は看過できない.

 以下,先天性心疾患児の予後と管理について,今回 の追跡調査結果を中心に考察する.

 先天性心疾患児の小・中・高校在学中の年間総死亡 率は表1に示したように,未手術例,既手術例とも管 理区分が重くなるほど急激に高くなる.これを同時代,

同年齢の一般人の死亡率3)との比でみると,未手術例 ではE可は約2倍,E禁は約4倍, Dは約20倍, Cは 約50倍,Bは約200倍であった.既手術例の場合でもほ ほ伺様の結果であった.

 急死率についてみると,同じ表1に示したように,

未手術例ではE可が0.17%・と少し高いようにみえる が,統計的には一般人の急死率3)と有意差はみられな かった.D区分には今回の調査では急死例はみられな かった.C区分は一般人の約300倍, B区分は約1,000倍 であった.既手術例では,E区分は一般人と有意差がな かった.D区分は一般人の約100倍, C区分は約300倍,

B区分は約700倍であった.

 未手術例の急死率は昭和47〜56年度にピークがみら れたことは表3に示した通りである.昭和46年以前に

急死が少なかったのは,重症例のほとんどが就学前に 自然淘汰されていた上,生存例は慢性心不全状態を経 て死亡することが多かったことによる.昭和47〜56年 当時になると,重症で外科的治療が困難な症例でも,

内科的治療によって就学年齢に達するものがふえた.

そのような症例では普段は健常児とあまり違いがない ようにみえても,体調不良時や運動中に急死する症例 が少なくなかったのである.昭和57年以後は,その数 年前から急速に進んだ心筋保護法の著明な改善による 重症複合心奇形の手術適応の拡大および手術の低年齢 化を反映して,重症例が未手術のまま就学してくる症 例は急激に減少したのである.

 既手術例の急死率が最近増加傾向を示していること は表4に示したが,重症複合心奇形の術後症例の増加 を反映したものである.重症複合心奇形では,いわゆ る根治的修復術後といえども術後遺残症や続発症が多 い4)ことが最大の原因である.

 未手術例の死因を管理区分別にみると表5に示した ように,E可では9例中4例が細菌性心内膜炎であっ た.ただし,最近は本症の罹患率も致命率も低下して

いる.

 E可で急死した症例が2例あり,1例は大動脈弁狭 窄症,他の1例は心室中隔欠損症であった.大動脈弁 狭窄症の急死例は心電図で心肥大所見はなく,心エ コー検査では大動脈弁は三尖弁性で,軽度の狭窄が認 められたものの,少なくとも安静時の心機能には異常 が認められなかった症例である.本人が運動好きで,

両親も普通に運動させてやりたいとの希望が強かった ことから,危惧しながらも小学生低学年なら危険は少 ないだろうとの考えに迎合してE可と判定された,い わくつきの症例である.危惧していたことが現実とな り学校の体育で持久走開始後間もない約300m地点に て急死した.大動脈弁狭窄症は軽症でも失神を起こす ことが知られている5).本症例の急死の機序として,運 動による血管拡張→血圧低下→冠灌流減少→急性心機 能不全→失神から急死に至ったと推定される.結果的 に管理区分が緩すぎたことを思い知らされた症例であ

る.

 心室中隔欠損症の急死例は心臓性急死ではなく,脳 血管病変に起因した急死であった.

 この2例を除けば,管理区分が重い者ほど急死率は 極端に高かった.

 既手術例の急死率も管理区分が重い者ほど極端に高 かった.ただし,未手術例ではD区分には急死例がな

(7)

平成6年12月1日

かったのに,既手術例では4例あり,いずれも運動中 の急死であった.既手術例の管理区分判定および実際 の管理導のむすかしさを物語っている.

 検査所見以外にも何か急死の予知,予防に役立つ手 掛かりがないか探るため,急死時の体調,行動,失神 の既往歴などについて検討してみた.表7に示したよ

うに,未手術例と既手術例の合計でみると,呼吸器感 染罹患中の急死が5例,疫労,過労のあったものが2 例,その他の体調不良が3例で,合計10例に何らかの 体調不良がみられた.また,体調が普段と変らなかっ た24例中4例に急死のニアミスともいえる失神の既往 がみられた.残りの20例,すなわち急死例の大半は患 者本人や周囲の者にとって検査所見以外には急死の予 知,予防に役立つ異常はみられなかった.その20例中 12例は運動中の急死であり,急死の誘因として運動の 重要性が窺えた.

 運動中の急死について,運動強度と運動開始からの 経過時相を組合わせてみると,表8に示したように,

未手術例,既手術例とも激しい運動ではその終了前後 の急死が多く,中等度以下の運動では運動開始直後の 急死が多かった.

 激しい運動中の急死8例中4例と中等度以下の運動 中の急死4例中1例は管理区分の許容限界を超えた運 動中の急死であり,これらの症例では管理区分を厳格

に守らせていたなら急死を予防できた可能性が高いも のである.

 一方,激しい運動中の急死8例中2例と中等度以下 の運動中の急死4例全例が運動開始直後の急死であっ た.このような急死は運動量が心臓予備力の限界を超 えた為に急性心不全に陥り死亡したと考えるよりも,

急性冠不全や交感神経の過緊張に起因した重篤な不整 脈が急死の主原因と考えられる.この場合は運動制限 の緩和条件としてよく出される「ただし疲れたら休む

こと」というような注意事項は急死予防に役立たない.

また,運動耐容能の測定値による運動処方もこのよう な機序による急死の予知,予防にはあまり役立たない と思われる.常識的ではあるが体調の調整,ウォーミ ングアップなどの重要性を再認識する必要があること を示唆していると考えられる.

 病型別にみると表9に示したように未手術例では特 に大動脈弁狭窄症の急死例が多く,既手術例ではチア ノーゼ群,特にFallot四微症と両大血管右室起始症の いわゆる根治的修復術後の急死が多かった.前者は一 般に自覚症状が乏しく,外見的にも重症感がないこと,

563 (71)

後者は術後の自・他覚症状の著明な改善に惑わされて 管理区分の判定が甘くなったり,管理区分の遵守がお ろそかになりがちなことが大きな要因と考えられる.

 なお,日常生活で身体活動が許容限界を超えたとみ なした2例はいずれも自転車通学中の急死で,自転車 の運動強度に対する認識不足が悲劇を招いたものであ

る.

 次に軽症心室中隔欠損症の手術の是非について若干 の考察を加えたい.小・中・高校年齢でみられる未手 術先天性心疾患の約40%を占める心室中隔欠損症のほ とんどは室上稜下部または筋性部の小欠損である.こ の場合,一般に心雑音が強大なことから,健診や日常 診療の場で手術の是非が再々問題にされることが少な くない.しかし,この型の軽度心室中隔欠損症の長期 予後は一般に良好と考えられているように,今回の追 跡調査でも予後良好であった.表10に示したようにこ の年齢での自然治癒は少ないが,大動脈弁閉鎖不全の 続発も少ない.大動脈弁閉鎖不全の続発が後期にも1 例みられたが,その症例は室上稜下部の小欠損で,大 動脈弁が二尖弁の症例であり,大動脈二尖弁が大動脈 弁閉鎖不全の主因と考えられた6}.

 なお,表には示していないが,細菌性心内膜炎の合 併例は後期には1例もなかった.

 かかる症例は若年成人期の予後も良好なことは私達 の高卒後追跡調査7)でも明らかである.

 以上のことから,室上稜下部または筋性部の軽症心 室中隔欠損症の場合は,大動脈弁閉鎖不全や細菌性心 内膜炎の予防を大義名分にした心臓手術の必要性はな いと考えられる.

      文  献

 1)北田実男:突然死を起こしやすい疾患と管理区分    の決め方の実際.小児メディカルチェックと運動    指導の実際.大国真彦編,東京,文光堂,1989;pp16    −27

 2)神谷哲郎:先天性心疾患修復術後の一般的管理基    準(門間基準).厚生省循環器病委託研究班会議・

   2指一5「先天性心疾患に対する修復術後状態の評    価とそれに基づく術後の管理基準の確立」(神谷    班),1993

 3)Kitada M, Nakagawa T, Yamaguchi Y:A    survey of sudden death among school children    in Osaka prefecture. Jpn Circ J 1990;54:401    −411

 4)門間和夫:先天性心疾患術後の遠隔期の問題点.

   臨胸外 1991;11:138−141

 5)Wagner HR, Weidman WH, Ellison RC,

(8)

  Miettinen OS:Indirect assessment of severity   in aotic stenosis. Circulation 1977;56(Suppl 1):

  1−20−1−23

6)龍野勝彦,今野草二,今村栄三郎,高尾篤良:心室   中隔欠損症に合併する大動脈弁閉鎖不全症の発症   機序,心室中間欠損症における欠損孔と大動脈弁

7

との関係.心臓 1971;3:741−748

Kaitada M, Uheda K, Nakagawa T, Yamagu−

chi Y: Follow−up study into early adulthood of patients with congenital heart diseases. Jpn Circ J 1987;51:1409  1414

Follow−up Study of Children with Congenital Heart Disease at Elementary, Junior     High, and Senior High Schools who Had or Had not Undergone Surgery

      Mitsuo Kitadai), Setsuko Nakajima1)and Hisakazu Sugimoto2)

i)Department of Epidemiology and Mass Examination for Cardiovascular Diseases,

       The Center for Adult Diseases, Osaka

       2)Division of Pediatric Cardiology, Osaka−city General Hospital

   Children at elementary, junior high, and senior high schools who had congenital heart disease were followed up from 1962−1990. Those who had undergone surgery represented 9,377 Patient・

years, and those who had not 18,048. The following results were obtained:

    1. The total mortality declined every year regardless of a history of surgery. However,

when compared at the same time to children in general of the same age, mortality remained unchanged, i.e.10 to 15 times higher. Children who came under category E(permitted)in the classification for methods of management did not show any significant difference from children in general. However, mortality was approximately four times higher in children belonging to category E(prohibited), approximately 20 times higher in those in category D, approximately 50 times higher in those in category C, and approximately 100−200 times higher in those in category

B.

   2. As cause of death, events related to heart surgery, chronic heart failure, and bacteriaI endocarditis decreased every year, while sudden death increased in children with a history of surgery,

   3. The incidence of sudden death was not significantly different from children in general in category E, but 100 times higher in children in category D(only those with a history of surgery), approximately 300 times higher in those category C, and 700−1,000 times higher in those category B.

   4. Approximately 40%of case of sudden death that occurred during exercise took place during exercise exceeding the limit of tolerance. Sudden death occurred more frequently just before and just after the end of vigorous exercise, and immediately after the beginning of moderate exercise.

    5. Sudden death during exercise increased in children accompanied by aortic stenosis or pulmonary hypertension and in children who had undergone surgery for complicated heart malformation. Paticular attention is needed for evaluating, managing, and counselling such children.

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