日本小児循環器学会雑誌 14巻1号 83〜84頁(1998年)
第1回福島県小児循環器研究会
日時平成9年9月20日 場所福島テルサ(福島市)
代表世話人 鈴木 仁
1.乳時期早期に経皮的バルーン右室流出路拡大術 を施行した2症例
福島県立医科大学小児科
佐藤 守弘,桃井 伸緒,佐藤 敬 佐藤 知子,増子 晴美,鈴木 仁 ファロー四徴症(TOF)に対するバルーン右室流出 路拡大術は,その適応にまだ議論があるが,その有効 性が報告され,新しい治療法として近年積極的に試み られている.今回,我々は強いチアノーゼを有する新 生児および早期乳児のファロー四徴症の患児2例に対
し,Lipo・PGE1を使用し動脈管(PDA)を開存させ,
低酸素血症を改善させた後に,経皮的バルーン右室流 出路拡大術を施行した.術中,PDAの開存が,酸素飽 和度を60%以下に低下するのを防ぎ,比較的安全に経 皮的バルーン右室流出路拡大術を施行でき,同時に姑 息的体肺短絡術を回避し得た.以上より下記の結論を
得た.
結論11.経皮的バルーン右室流出路拡大術を施行 する際,PDAは重度の低酸素血症を予防し,安全性を 高めるのに有効であった.2.経皮的バルーン右室流出 路拡大術は,新生児期および乳児早期に姑息的体肺短 絡術を回避する有効な治療になると思われた.
2.僧帽弁置換術が必要であった心房中隔欠損,僧 帽弁閉鎖不全の1例
太田西ノ内病院心臓血管外科
松尾 義昭,松岡 穣,数馬 博 心房中隔欠損症に合併した僧帽弁閉鎖不全症に対し 人工弁置換術を施行した1治験例を報告する.症例は 17歳,男性.1歳時に心雑音を指摘,心臓カテーテル 検査にて心房中隔欠損+僧帽弁逸脱+肺動脈弁狭窄と 診断された.平成9年1月に再評価した結果,左・右
シャント率67%,肺体血流比2.6,肺動脈圧は45/25(37)
mmHg, III度の僧帽弁逆流を認め手術適応となる.心 臓超音波検査では右室径は43mm,心室中隔は扁平化
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し右室容量負荷を認めた.僧帽弁はfloppy valveを呈 していた.体外循環下に右心房切開後,経心房中隔に て僧帽弁に到達,前尖・後尖は肥厚し逸脱が著明であ るためbi−leaHet機械弁(27mm)を縫着,欠損孔は馬 心膜を用いて閉鎖した.術前自己血貯血の併用により 無輸血手術が可能であった.若年者における人工弁置 換術では,人工弁の選択,患児の成長に伴う弁サイズ の不一致と再手術,術後抗凝固療法など検討するべき 問題があり,弁置換は躊躇されることが多い.本症例 では耐久性・血行力学面・容積占有の点から機械弁を 選択した.弁サイズに関しては,諸家の報告ではSJM 弁では25mmが基準となることから心機能に問題ない と考えられる.しかしながら長期に亘る抗凝固療法が 必要である点で経過観察を要する.
3.失神発作にて発見された染色体22q11欠失の ファロー四徴症術後の1例
財団法人脳神経疾患研究所附属南東北病院小 児科1),循環器内科2),心臓血管外科3},神経内 科4)
辻 徹1)小野 正博2)池田 豊秀3)
菅野 恵3)樽川由里子4)
今回,我々は,副甲状腺機能低下による低Ca血症の ため,頭蓋内石灰化,脳波異常を来したことが原因で 失神発作をおこしたと考えられた22q11欠失のファ ロー四徴症術後の1例を経験したので報告する.症例 は15歳男児,4歳時に某院にて心内修復術を施行,そ の後外来経過観察されていたが,本人の都合で約2年 間通院していなかった.今回,台所に倒れているとこ ろを家族に発見され,救急車にて当院に搬送され,精 査,経過観察のために入院した.入院後,心エコー,
ホルター心電図では,失神発作の原因となる異常は認 められなかった.血液検査にて副甲状腺機能低下によ る低Ca,高P血症を認め,頭部CTでは淡蒼球周辺に 石灰化,脳波ではparieto−occipital dominantにspike waveを認めた.患児の特徴ある顔貌と検査結果より 22q11欠失症候群を疑い, Fish法にて確定診断した.以 上のことより患児の失神発作の原因として22ql1欠失
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症候群の臨床症候としておこる.副甲状腺の無形成,
または低形成により低Ca血症を来たし,頭蓋内石灰 化による脳波の異常を起こしててんかん発作を起こし たものと考えられた.
4.教室における小児無輸血開心術の現状
福島県立医科大学心臓血管外科,*同 小児科 小野 隆志,星野 俊一,岩谷 文夫 猪狩 次雄,佐戸川弘之,緑川 博文 高瀬 信弥,小川 智弘,佐藤 一也 安藤 精一,高橋 皇基,佐藤 晃一 三沢 幸辰,石川 和徳,桃井 伸緒*
佐藤 守弘*,鈴木 仁*
教室で施行した小児無血体外循環85例を検討した.
対象は1987年より無血体外循環を施行した15歳以下の 先天性心疾患85例で年齢8.1±3.5歳,体重27.5±12.4 kgであった.手術3週前より術前自己血貯血を外来に て開始し,体重あたり15mユの貯血量を目標とした.体 外循環は無血充填とし,体外循環中のHct値を低体温 時15%,体外循環離脱時20%以上として,限外濾過法 を併用した.また体外循環離脱後には回路内残留血を 限外濾過装置にて濃縮し返血した.同種血輸血を回避 し得たのは85例中68例80%であり,1995年以降の同種 血輸血回避率は100%であった.術前自己血貯血施行例 66例中62例94%,非施行例19例中7例37%と同種血輸 血回避率の明らかな差を認めた.また,無輸血群と同 種血輸血群に分け,年齢,体重,体外循環時間,大動 脈遮断時間,希釈率,術前自己血貯血量,術中出血量,
術後出血量の各因子について比較すると貯血量が無輸 血群で17.8±9.1ml/kgで同種血輸血群の1.8±3.4 ml/kgに比し有意に高値であった.術前自己血貯血の 施行,体外循環回路の低容量化により,5歳,15kgま では安全に無輸血開心術を施行できるようになった.
日小循誌 14 (1),1998
5.家族性肥大型心筋症の2家系
星総合病院小児科 高橋 和博 家族性に発病している肥大型心筋症の3症例を報告
した.症例1は8歳女児で父親の突然死を主訴に初診.
父親の2兄弟を含め,親戚には急死者や心臓病罹患者 が多数いた.患児は駆出性心雑音を聴取.胸部X−Pで CTR 48%,心電図の胸部誘導でT波が軽度変形,
UCGでは心室中隔が軽度肥大していた.4年後に運動 中に意識消失.心雑音が2/6度と強くなり,CTRは59%
と拡大.心電図には虚血性変化があり,運動負荷で左 側胸部誘導のSTが低下した. UCGではASI{が見ら れたが,流出路狭窄は認めなかった.左室造影でも心 室中隔の肥厚があり,生検は光顕で軽度の肥大所見が 見られ,電顕像ではHCMの所見以外に虚血性変化が 目立っていた.症例2は8歳男児.咳で病院を受診し た際に心拡大を指摘された.駆出性心雑音を聴取.X−P でCTR 54%.心電図はV1がQSパターンで左側胸部 誘導が高電位.UCGではすでに心室中隔肥厚を認め た.症例3は症例2の弟.前年の心電図健診ですでに 左室肥大を指摘されていた.症状なく,心雑音もない.
X・PでCTR 51%.心電図では左室肥大は軽度だが,
胸部誘導のT波が平低化の傾向にあった.UCGでは 中隔の肥厚が見られた.本症の診療では家族歴が重要 である.心筋の変化の評価には心電図が最も鋭敏と思 われた.指導にあたり不良の予後を理解させる必要が ある.不整脈で急変することもあり,心筋虚血をおこ す可能性もある.
特別講演
染色体22q11欠失の先天性心疾患
東京女子医科大学心臓血圧研究所小児科教授 門間 和夫先生
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