平成20年7 月 1 日 57
抄 録
第48回北海道小児循環器研究会
PEDIATRIC CARDIOLOGY and CARDIAC SURGERY VOL. 24 NO. 4 (565–566)
1.Brockenbrough針を用いて経心房中隔肺静脈バルー ン拡大術を施行した総肺静脈還流異常の 1 歳女児例
旭川医科大学小児科
中右 弘一,真鍋 博美,杉本 昌也 梶野 浩樹,藤枝 憲二
同 第一外科
角浜 孝行,浅田 秀典,赤坂 伸之 笹島 唯博
同 救急医学 郷 一知
症例はTAPVD(下心臓型)の 1 歳 4 カ月女児.新生児期 に心内修復術,生後 4 カ月時に左PVOに対してPVO解除 およびASD作成術を施行した.ASD作成の際,その近傍 にマーカーを置いた.しかしその後も再狭窄を繰り返 し,2 度PTAを施行した.1 歳 4 カ月時にASD完全閉鎖し たため,挿管管理下にてBrockenbrough針による心房中隔 穿刺を行い,引き続きPTAを施行した.PTA後左肺血流量 は術前の1.8倍に増加した.Brockenbrough法は,ASD作成 の際に取り付けたマーカーがよい指標となり,経胸壁エ コーガイド下で体重7.8kgの児でも安全に施行することが できた.
2.右室ぺーシングを併用した遺残大動脈縮窄に対する ステント留置術
北海道立小児総合保健センター循環器科 畠山 欣也,富田 英,早田 航 3.大血管スイッチ手術後大動脈リザーバー機能
北海道大学病院小児科
村上 智明,武井 黄太,上野 倫彦 武田 充人,八鍬 聡
目的:大血管スイッチ手術(ASO)は完全大血管転換症 の標準術式であるが,遠隔期上行大動脈伸展性低下が報 告されている.冠血行動態に関して検討した.
方法:ASO後就学齢(5〜9 歳)24例(ASO時0.40 0.69 歳)の術後心カテ時に大動脈のdistensibility,%diastolic run off(%DRO),subendocardial viability ratio(SEVR)を計測 し,年齢マッチした小短絡疾患児と比較検討した.
結果:ASO群では収縮期血圧,脈圧が有意に上昇,大 動脈基部径は拡大し,distensibilityは低下していた.%
DROおよびSEVRに差は認めなかった.
総括:ASO群は大動脈伸展性は低下しているが心内膜
下灌流は維持されていた.大動脈拡張によるリザーバー 機能の代償と考えられた.大動脈基部拡大,伸展性低 下,収縮期血圧・脈圧増大は心血管病のリスクであり,
注意深い経過観察が必要であると考えられた.
4.一期根治した大動脈弓離断症の 3 例の検討―より安 全,確実な手術とするための補助手段
手稲渓仁会病院心臓血管外科
八田英一郎,俣野 順,酒井 圭輔 同 小児循環器科
武井 黄太,佐々木 康,衣川 佳数 はじめに:2006年 1 月から大 動脈弓離断症に対する治 療方針を一期根治とし,2007年 3 月までに 3 例を経験.
手術をより安全・確実とするための人工心肺補助手段の 工夫を報告.
対象:症例 1;女児,3.2kg,生後 7 日目に手術.診断 は大動脈弓離断症(B型),膜様部心室中隔欠損,卵円孔開 存,右鎖骨下動脈起始異常.症例 2;男児,2.5kg,生後 3 日にductal shock状態で搬送され13日目に手術.診断は大 動脈弓離断症(B型),両大血管右室起始症,両大血管下型 心室中隔欠損,卵円孔開存.症例 3;女児,2.8kg,生後 12日目に手術.診断は大動脈弓離断症(B型),漏斗部心室 中隔欠損,卵円孔開存.
手術方法:大動脈弓再建は下行大動脈を遮断した 上行 大動脈に端側吻合し広い吻合口を確保.人工心肺は上半 身(腕頭動脈または右総頸動脈)および下半身(横隔膜上の 下行大動脈)への 2 本送血で行い虚血を回避.症例 2 およ び 3 では大動脈弓再建の間,冠動脈に順行性に血液を灌 流.心筋保護液による心停止は心内修復の間のみとして 心筋虚血時間を短縮.
結果:症例 1,2 は二期的胸骨閉鎖,方法が安定した症 例 3 は一期的閉鎖.全症例元気に自宅退院.術後入院期 間は縦隔炎を発症した症例 1 が47日,CATCH22のため哺 乳確立に時間がかかった症例 2 が40日を要したが,症例 3 は15日.follow up 0〜12カ月で上下肢圧較差なく心内修復 の問題なし.
まとめ:人工心肺補助手段の工夫により新生児期に行 う大動脈弓離断症に対する一期根治術を初期症例から安 全・確実に行うことが可能.
日 時:2007年 4 月 7 日
会 場:札幌医科大学記念ホール(大ホール)
会 長:俣野 順(手稲渓仁会病院心臓血管外科)
58 日本小児循環器学会雑誌 第24巻 第 4 号 566
5.Multidetector CT(MDCT)が術前診断に有効であった 新生児大動脈縮窄症の 1 手術例
市立旭川病院胸部外科
大場 淳一,青木 秀俊,宮武 司 吉本 公洋,安達 昭,南田 代朗 同 小児科
小西 貴幸
生 後18日 の 男 児. 心 雑 音, 心 不 全 兆 候 で 発 症. 心 エ コ ーで 大 動 脈 縮 窄 症 + 心 室 中 隔 欠 損 症 の 診 断.64列 MDCTの画像から,左鎖骨下動脈長,縮窄部長,弓部大動 脈形態などの情報が得られ,鎖骨下動脈フラップ法によ る縮窄解除,肺動脈絞扼術を行った.3 カ月後に心室中隔 欠損のパッチ閉鎖,肺動脈絞扼解除,肺動脈形成拡大を 行い元気に退院した.MDCT検査時は末梢静脈から造影剤 を20秒かけて注入しスキャン開始のタイミングは目視で 決定した.X線被曝量は2.2mGyであった.MDCTは任意の 方向から見た三次元画像が低侵襲に得られることから多 くの情報を提供してくれる.しかしX線被曝と造影剤使用 は避けられず,またベッドサイドでリアルタイムに血流 と心機能評価ができるという点では心エコーに劣る.現 時点で利用できる各種の診断モダリティの特徴と限界を 理解し,適切に組み合わせて少ない侵襲で有用な情報を 得ることが大切である.
6.三尖弁閉鎖,肺動脈閉鎖に肺静脈狭窄を合併した 1 例
旭川医科大学心臓血管外科
永峯 晃,角浜 孝行,中西 啓介 浅田 秀典,赤坂 伸之,笹嶋 唯博 同 救急医学
郷 一知 同 小児科
梶野 浩樹,真鍋 博美,中右 弘一 藤枝 憲二
7.PA/VSD/MAPCAに対する一期的根治手術の経験 北海道大学循環器外科
村下十志文,橘 剛,若狭 哲 杉木 孝司,松井 欣哉,松居 喜郎 動脈管が欠如し,太い側副動脈が末梢肺動脈に接続す るPA/VSD/MAPCAに対し,一期的根治術を施行した.10 カ月,男児.術前造影にて下行大動脈から中下肺葉に分 布する左右 1 本ずつの太い側副動脈と左上葉への細い側 副動脈を認めた.胸骨正中切開で自己心膜ロールによる 主肺動脈再建と術中同定された右上葉に分岐する 4 本の MAPCAを統合した.RVOTRはGoreTex一弁付きパッチで 行った.術後,左気管支狭窄からcheck valve,肺高血圧と なりPCPSを要した.3D-CTにて別に下行大動脈から起始 するMAPCAが左気管支を圧迫していることが判明し,同 血管を切離することによりPCPSからの離脱が可能となっ
た.退院時UCGにてRVp/LVpは0.5であった.
8. 心 室 中 隔 欠 損 閉 鎖, 部 分 肺 静 脈 環 流 異 常 修 復
(Williams法)を行った乳児例の経験 北海道大学循環器外科
松井 欣哉,村下十志文,橘 剛 若狭 哲,松居 喜郎
背景:PAPVCの修復方法はWilliams法をはじめ,数多く 報告されているが,乳児例,ASD自然閉鎖例,VSD合併 例の修復報告は少ない.また,SVCに接続するタイプ は,術後心房性不整脈,SVC,PVの閉塞の合併症が報告 されている.
症 例:3 カ 月 の 女 児, 体 重4.67kg(体 表 面 積0.26m2),
VSD,PAPVC(高位接続型),PH,ASD自然閉鎖の診断
で,当科紹介.
手術,術後経過:正中切開にて部分肺静脈環流異常修 復(Williams法)で修復.術後 3 日目でPH crisisを認めた が,術後11日目で抜管,14日目でICU退室.心房性不整 脈,PV,SVC occlusionは認めなかった.
結語:Williams法は,乳児例にも適応し得る術式であ る.