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時に左肺動脈分岐部狭窄を認めたため,6歳時

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日本小児循環器学会雑誌 11巻5号 654〜658頁(/995年)

バルーン拡大術無効のフォンタン術後肺動脈狭窄例に 対するステントの使用経験

(平成7年4月3口受付)

(平成7年7月17日受理)

長野県立こども病院循環器科1),心臓血管外科2),臨床工学部3}

東京女子医大付属日本心臓血圧研究所循環器小児科4〕

今井 寿郎1) 安河内 聰1)

竹内 敬昌2) 長津 正芳2)

金子  克3) 太田 喜義2)

里見 元義1) 原田 順和2)

後藤 博久2) 坂本 貴彦2)

中西 敏雄4)

key words:ステント,フォンタン手術,肺動脈狭窄,バルーン血管拡大術,先天性心疾患

      要  旨

 自己心膜片による左肺動脈形成術とフォンタン型手術を施行後左肺動脈狭窄を起こした術後8カ月の 症例(7歳男児)にステント植え込み術を施行した.バルーン肺動脈拡大術はrecoi1のため無効だった

が,ステント植え込み術は狭窄解除に非常に有用であり,左肺動脈は3.4mmから9.Ommに拡大し圧差

も消失した.本法実施にあたり末梢肺動脈枝閉塞を防ぐため留置部位の決定には細心の注意が必要で あったが,施行後6カ月の現時点では特に血栓等の合併症は確認されていない.しかし長期的予後は未 だ不明であるため今後も注意深いフォローが必要であり,また他症例への使用にあたっては慎重に適応 を判断する必要があると考えられた.

         はじめに

 末梢肺動脈狭窄病変は種々の疾患に合併して生じる が,手術後に起こった場合は特に治療法に難渋するこ とが多く,今日第1選択となったバルーン血管拡大術 によっても狭窄解除不能例が少なからず存在する1).

不成功例の中で,バルーン拡大時には一旦拡大するが recoilあるいは血管の変形により再狭窄してしまう症 例は拡大した血管の形状をそのまま保持できれば狭窄 解除が可能である.Mullinsらはそのような症例に対

しステントの留置による狭窄解除術を試み,良好な成 績を発表している2)3).我々は術後末梢肺動脈狭窄病変 にバルーン血管拡大術を行ったがrecoilのため再狭 窄してしまった症例に,彼らと同じステントを留置し たところ非常に良好な結果が得られたので報告する.

別刷請求先:(〒399−82)長野県南安曇郡豊科町豊科      3100

     長野県立こども病院循環器科

       今井 寿郎

         症  例  7歳5カ月男児.

 〔診断〕{S,D, D},右室性単心室,両大血管右室起 始,肺動脈弁狭窄,共通房室弁,左肺動脈低形成.

 〔主訴〕術後左肺動脈狭窄.

 〔家族歴〕特記すべきことなし.

 〔現病歴〕生後まもなくチアノーゼを認められ,某病 院にて上記診断されたが,家族がそのまま放置してい た.5歳時心臓カテーテル検査を行い左肺動脈低形成

が認められたため,5mmのGolasky tubeでleft

modified BT shuntをおこなった.6カ月後の心臓カ テーテル検査で肺血管抵抗1.3単位/m2,平均肺動脈圧 11mmHg, PA index 352(RPA 17mm, LPA gmrn),

RVEDV 142%of normal, RVEF 56.3%であり,同

時に左肺動脈分岐部狭窄を認めたため,6歳時

Fontan型手術(Total cavo−pulmonary connection)

と自己心膜を用いた左肺動脈血管形成術を施行した.

術後経過は順調で3週間後に退院した.術後5カ月の 心臓カテーテル検査で左肺動脈狭窄(圧差3mmHg,最

(2)

日小循誌 11(5),1995 655 (45)

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図1 Fontan型手術(Total cavo・pulmonary connection)と自己心膜移植による左肺動脈血管形  成術後5カ月の心臓カテーテル検査.A:左肺動脈狭窄(圧差3mmHg,最狭窄部2.3mm)が認め  られた.B:バルーン血管拡大術(Ultrathin:8mm balloon dilatation catheter)により,一旦  waistは消失した. C:検査終了時には4.7mmにrecoilしていた.

狭窄部2.3mm)が認められた(図1). Meditech:

Ultra−thin 6mm,8mmのバルーンカテーテルを用い て血管拡大を計ったが,バルーンの膨張に伴い一旦血

管径は拡張するものの検査終了時には4.7mmに

recoilし圧差の改善も見られなかった.そのまま放置

すると狭窄が進行すると考えられたため,3カ月後(術 後8ヵ月)同部位にステント挿入を計画した.

 〔入院時現症および検査結果〕心音:正常,心雑音:

無し.肝2cm触知.体重26.5kg.心電図:心拍数73,

正常洞調律,電気軸一72度,右脚ブロックパターン.

胸部レ線:CTR 49.5%.毛細管採血による血液ガス:

pH 7.452 pO262.7mmHg pCO232.7mmHg BE−0.2 mMol/L.血算,血清生化学には特記すべき異常所見は 認められなかった.

 〔心臓カテーテル検査およびステント挿入〕ステント の使用は両親および当院倫理委員会の承諾を得て行っ た.全身麻酔下,右大腿動脈,右大腿静脈,左大腿静 脈を穿刺し,それぞれ5F,8F,7Fのシースを挿入した.

術中はヘパリンを初回100U/kg,以後1時間毎50U/kg の追加静注により抗凝固療法を行った.通常どおり心 臓カテーテル検査を行ったところ左肺動脈から右房

(TCPC)の引き技きで圧差は1mmHg(右房圧12

mmHg)であったが,右房(TCPC)造影にて左肺動 脈を描出したところ,図2Aのごとく狭窄は3.4mmに 進んでいた.また,左肺動脈は上葉枝分枝まで27mmで あったため,ステントの適応と判断した.Meditech:

superstiff guide wire(0.035 , flex lcm)を留置した 後,右大腿静脈のシースをCook:12F long sheathに 入れ換え,左肺動脈狭窄部位まで挿入した.Palmatz 型の3.4mln×30mmのステント(Johnson&John−

son)をMansfield:10mm balloon dilatation cath−

eterに固定装着してlong sheath内を進め,左肺動脈 狭窄部位まで挿入した(図2B).10ng sheathをバルー ンカテーテルが露出するまでゆっくり抜去した後,左 大腿静脈から挿入したカテーテルから少量ずつ造影剤

を流し,ステントの位置確認を行った.ステントが拡

(3)

656 (46) 日本小児循環器学会雑誌 第11巻 第5号

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図2 ステント留置術(Fontan型手術後8カ月). A:右房(TCPC)造影で, F肺動脈狭窄は34  mmに進んでいた. B:34mm×30mmのステントを10mm ballOOn dllatatlOn Catheterに固定  装着してlong sheath内を進め,左肺動脈狭窄部位まで挿人した. C:生食でバルーンを拡大しス  テントを拡張留置した.D:左肺動脈造影でステント装着部位は9mmに拡大していた.ステント  は拡張に伴い長さ26mmに短縮していた.

張する様子を見やすくするため,生食でバルーンを ゆっくり拡大しながらステントを拡張留置した(図2 C).再度左肺動脈を造影しステント装着部位が9mm

に拡大し前後の肺動脈と差がないことを確認した(図 2D).ステントは拡張に伴い長さ26mmに短縮してい た.また,血管内エコー(IVUS)用カテーテルを挿入 し,左肺動脈枝を閉塞していないことおよびステント が網目状に9mmに拡大しているのを確認した(図3).

IVUSの装置はHewlett Packard Sonus M2400A

を,IVUS用カテーテルはMansfield:Sonlcath;62 F;20MHzを使用し, Frarne rate:30Hzで観察し た.カテーテル検査終了時止血はプロタミンを使用せ ずに行い,ヘパリンを5U/kg/hで24時間持続点滴し た.また以前から内服していたアスピリン,ジピリダ モール(それぞれ5rng/kg/day)を引き続き経口続行と した.また,感染予防のためセファゾリンを1日(90 mg/kg/day)静注後3日間セファクロルの内服を行っ

た.

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図3 血1管内エコーでステントが網目状に9mmに拡  大しているのを確認した.IVUS装置にPlcture in  plcture system(FOR A MV 112)を接続し, X線  透視画像を同時表示しながら観察した.

 〔合併症〕カテーテル挿入部位からwhoozingが続 き,輸血を行った.

(4)

平成7年10月1口

 〔退院後経過〕退院後も身体所見は変わらず,元気で 徒歩通学している.現時点で胸部レ線,超音波検査で はステント挿入部の内径は9mmに保持されており,血 栓等の合併症も確認されていない.

      考  察

 近年,末梢肺動脈狭窄解除を目的とした血管形成術 に自己心膜移植片が使用されることが多いが,その目 的は自己組織使用により低速低圧系での血栓形成の危 険を回避するためと説明される.しかし遠隔期に移植 心膜が収縮あるいは屈曲し再狭窄を生ずることがあ り,その解決法についてはまだ外科領域でも一定の結 論が得られていない.フォンタン型手術施行例のよう

に静脈圧が直接的に肺環流に関与する場合,末梢肺動 脈狭窄病変はとくに重大な問題である.バルーンカ テーテルによる血管拡大術の普及により比較的容易に 狭窄解除が試みられるようになったが,拡大術無効例 が少なからず存在することも明らかになってきた1).

今回の報告例もバルーン血管拡大術により一旦waist が消失したが,recoilにより有効な血管拡大が得られ ない症例であった.

 バルーン拡大術無効例には,全く拡張不可能なもの と,一時的には拡大するがrecoilしてしまうものがあ る.前者の一部は,バルーン拡大の時期的な検討や使 用バルーンの耐圧,形状の工夫などにより今後ある程 度は解決されるものと思われ,症例の蓄積が待たれる.

一方,recoilしてしまう症例ではバルーン拡大術の繰 り返しは無効と考えられ,根本的には何か内側から支 持し拡張を保持するものが必要と考えられる.ステン

ト留置術はその一解決策としてMullinsらにより先天 性心疾患での臨床応用が報告され非常に期待されてい

る治療法である2ト4).しかし,本邦での使用経験は未だ 少なく中西らによる報告例があるのみである5).特に Fontan型手術後症例にステントを留置した報告はま だ少数である3)5).今回の症例は良い適応であったため ステント留置術を実施し,バルーン拡大術後recoi1し てしまう肺動脈狭窄症例で本法が非常に有用であるこ と,これまで6カ月の経過観察では再狭窄も血栓形成 も起こさないことを確認した.

 今回の経験からステント留置における問題点を考察 すると,まず現時点ではステント挿入にあたって12F という太いsheathが必要であり,大腿静脈等末梢静脈 の太さから適応症例の体の大きさに制限が加えられる 点が挙げられる.中西らの適応基準によれば,年齢8 歳,体重20kg以上とされている6}.将来の後拡張を考

657−(47)

慮すると致し方ないのかもしれないが,根治的手術が 低年齢でおこなわれる傾向にあり,血管狭窄解除が必 要な症例が低年齢に多いことを考えると使用器具の早 期改良が望まれる.また,今回使用したステントは後 拡張が可能なタイプである(最大径18mm,そのときの 長さ22mm2).ただし,メーカー推奨最大径は12mm)

が,中西らは留置後数カ月では,あまり有意な後拡張 ができなかったと報告している5)6).同様の報告が0 Laughlinらからもなされている3}.おそらく周辺組織 の癒着癩痕が原因だろうが,だとすれば初回留置時に できるだけ拡張させたほうが得策なのかもしれない.

拡張時の形態はバルーンの予備拡張である程度推測可 能であるが,ステント留置部位は注意深く場所を設定 しても多少目的とする部位からはずれる.ステント留 置部位が末梢肺動脈分枝を塞ぐ位置になってもその部 位は内膜に覆われず血流が保持されると報告されてい る4}7)が,Fontan術後のように血流が遅く停滞しやす い場合もおなじことが言えるのかは不明である.血栓 予防のための抗凝固療法は,留置後数カ月でステント 内腔面は内皮で覆われるというこれまでの報告2)7)を 参考にして6カ月継続としたが,方法や期間について

も今後より詳しく検討していく必要があると考えられ る.ステント内側の内膜形成については,IVUS検査が 補助的診断手段となりうるかもしれないため確認予定 である.今後適応範囲の拡大が予想されるが,ステン

トはあくまで異物であり長期的経年変化もまだ不明で ある.最近右室流出路狭窄に対するステント留置の報 告が散見されるようになった3)8)が,材質の劣化は徐々 に進むことが予想されるため,中西らの報告5)にある ように動きの激しい心室内に留置するには危険が大き いと思われる.

 今後さらに基礎的実験が必要と考えられたが,ステ ント留置以外に良い治療法がない患者が現時点でも多 数存在するという事実もある.我々の報告例のように 適応を慎重に検討し,起こりうる合併症に注意して適 切な血栓形成予防を行えば,非常に有用な治療手段で あることは間違いないと考えられた.

 本論文の要旨は第6回日本Pediatric Interventional Cardiology研究会(1995年1月,大宮)において発表した.

      文  献

 1)Ring JC, Bass JL, Marvin W, Fuhrman BP,

  Kulik TJ, Foker JE, Lock JE:Management of   congerlital stenosis of a branch pulmonary   artery with balloon dilation angioplasty. J

(5)

658−(48) 日本小児循環器学会雑誌第11巻第5号

2

3

4

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genital heart disease. Circulation 1993;88:605

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Mu川ns CE, O Laughlin MP, Vick GW III,

Mayer DC, Meyers TJ, Kearney DL, Schard RA, Palmatz JC:Implantation of balloon−

expandable intravascular grafts by catheteriza−

tion in pulmonary arteries and systemic veins、

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Toshiro Imaii), Satoshi Yasukochi1), Gengi Satomi1), Yorikazu Harada2),

    Takamasa Takeuchi2), Masayoshi Nagatsu2), Hirohisa Gotoh2),

     Takahiko Sakamoto2), Tsuyoshi Kaneko3), Yoshinori Ohta2)

      and Toshio Nakanishi4)

       Divisions of Pediatric Cardiologyl), Cardiovascular Surgery2),

       Clinical Engineering3), Nagano Children s Hospital     Department of Pediatric Cardiology4), The Heart Institute of Japan,

      Tokyo Women s Medical College

    Balloon expandable stent was implanted in a case(a seven−year−old boy)with left pulmonary artery stenosis, eight months after the Fontan operation and left pulmonary artery angioplasty using autologous pericardium. Balloon dilatation of the left pulmonary artery stenosis,3.4mm in diameter at the narrowest size, was not successful due to the elastic recoil of the tissue, but the expanded stent was very useful to avoid the restenosis and to keep the vascular diameter in 9.Omm. Although careful treatment had been necessary to determine the successful placement and to prevent the pulmonary artery branch obstruction, no complications have been noted so far in this case. It is conceivable that the careful follow−up will be needed and the indication for stent implantation should be considered with discretion, since the long term outcome has never been clear.

参照

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