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イネの致死性ネクロシス突然変異体に関する遺伝学 的研究

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

イネの致死性ネクロシス突然変異体に関する遺伝学 的研究

ムバラカ, サイディ, ルマンチ

http://hdl.handle.net/2324/1931960

出版情報:Kyushu University, 2017, 博士(農学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

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氏 名 ムバラカ サイディ ルマンチ

論 文 名 Genetic studies on lethal necrotic mutants in rice (Oryza sativa L.) (イネの致死性ネクロシス突然変異体に関する遺伝学的研究) 論文調査委員 主 査 九州大学 准教授 安井 秀

副 査 九州大学 教 授 吉村 淳 副 査 九州大学 教 授 熊丸 敏博

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

トウモロコシやシロイヌナズナの致死性ネクロシス突然変異体は、植物の栄養欠乏症や環境スト レス応答に必須な遺伝子の同定に有用であると考えられるが、それら変異体の原因遺伝子が同定さ れた研究は限られている。本研究では、イネの多数の致死性ネクロシス突然変異体を用いて、その 遺伝的・生理的特徴を明らかにするとともに、その原因遺伝子の同定を目的とした。

まず、ガンマ線照射後代で得られた18系統のイネのネクロシス突然変異体は致死であるため、各 変異体をヘテロ接合体で系統維持した。 これらのうち、5系統についてはそれぞれ遺伝的背景が異 なる2品種(‘ヒノヒカリ’および‘台中65号’)との交雑F2集団を用いて連鎖解析を行った。18系統 のイネのネクロシス突然変異体は、いずれも単劣性の遺伝様式を示したので、これらの遺伝子を NECROTIC LETHALITYと命名し、それぞれの劣性遺伝子座をnec1 – nec18 とした。 18系統中5系 統 (nec1、nec13nec16nec17nec18) については、SSRマーカーとInDelマーカーを用いた遺伝 分析により詳細な座乗位置が特定された。 nec1nec13は染色体2の長腕に位置づけられ、対立 性検定により同座であることが明らかになった。一方、nec17は染色体2の短腕に、 nec16nec18 は染色体4の長腕のそれぞれ異なる場所に位置づけられた。

次に、5系統のネクロシス突然変異体については、DAB (3’, 3’-diaminobenzedine) 染色法により幼 苗における活性酸素量を推定し、トリパンブルー(trypan blue)染色法により葉身ならびに葉鞘に おける細胞死を評価した。 DAB 染色により、全 5系統の葉身全体が茶色に染色され、ネクロシス 部分では活性酸素量が多いことが明らかとなった。さらに、nec17 については幼苗の葉脈に対して 横縞(ゼブラ)状に強く染色された。トリパンブルー染色については、DAB染色と同様に、5系統 の葉身全体が青色に染色され、葉身ならびに葉鞘における細胞死が推察された。

最後に、致死性ネクロシス突然変異体nec1の原因遺伝子の特定のために連鎖解析および全ゲノム 配列の解読を行った。連鎖解析の結果、nec1は染色体2の長腕領域の 0.72Mbに絞り込まれた。候 補領域内のゲノム配列を正常型と突然変異型で比較した結果、突然変異は Os02g0581400 遺伝子の 第 2 イ ン ト ロ ン の ス プ ラ イ シ ン グ 供 与 部 位 に 起 こ っ た 1 塩 基 置 換 (G → A) の み で あ っ た 。 Os02g0581400 遺伝子はシロイヌナズナにおいてフィロキノン(ビタミン K1)の生合成を担う

PHYLLO遺伝子のイネオーソログであり、シロイヌナズナのPHYLLOノックアウト株は幼苗致死の

表現型を示す。これらの結果から、Os02g0581400遺伝子における一塩基置換が、nec1突然変異体の 致死性ネクロシスの原因であることが強く示唆された。

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以上要するに、本論文では、複数のイネ致死性ネクロシス突然変異体に関する遺伝的・生理的特 徴を明らかにするとともに、致死性ネクロシス突然変異体の一つであるnec1の原因遺伝子を特定し たものであり、植物遺伝育種学の発展に寄与する価値ある業績である。よって、本論文は博士(農 学)の学位に値すると認める。

参照

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