九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
破骨細胞様細胞の形成、活性化および延命効果に関 与する因子の研究
自見, 英治郎
九州大学歯学研究科歯学臨床系専攻
https://doi.org/10.11501/3081190
出版情報:Kyushu University, 1994, 博士(歯学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
破骨細胞様細胞の形成、 活性化および延命効果に 関与する因子の研究
1 995年
自見 英治郎
九州大学歯学部口腔外科学第一講座
九州大学歯学部口腔外科学第一講座
指導教官 大石 正道 教授
九州大学歯学部生化学講座
研究指導者 古賀 敏生 教授
略語表
1α, 25(OH)2 D3 : 1α,25-dihydroxyvitaminD3・ ・ ・ 活性型ビタミンD3
PTH: parathyroid hormone . . . �IJ甲状腺ホルモン
IL-1 : interleukin-1 IL-6 : interleukin-6
- インターロイキン1 . インターロイキン 6 IL-11 : interleukin-11 . ・ ・ インターロイキン11
cr : calcitonin . ・ ・ カノレシトニン
廿@α: tumor necrosis factor-α ・ ・ ・ 腫第壊死性因子α PGE2 : prostaglandin E2・ ・ ・ プロスタグランジンE2
TGF-ß : transforming growth factor-ß . ・ ・ 腫蕩増殖性因子P
BMP : bone morphogenetic proteins . ・ ・ 骨形成蛋白
TRAP : tartrate-resistant acid phosphatase . , ・ 酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ FGF : fibroblast growth factor . ・ ・ 線維芽細胞増殖因子
bFGF: basic fibroblast growth factor . ・ ・ 塩基性線維芽細胞増殖因子 aFGF : acidic fibroblast growth factor . ・ ・ 酸性線維芽細胞増殖因子 LPS : lipopolysaccharide . ・ ・ リポ多糖
Dex : dexamethasone . ・ ・ デキサメサゾン
M-CSF: macrophage colony stimulating factor . ・ ・ マクロフアージコロニー刺激
因子
GM-CSF : granulocyte-macrophage colony stimulating factor . ・ ・ 頼粒球ーマクロ ファージコロニー刺激因子
FBS : fetal bovine serum . ・ ・ ウシ胎児血清
PBS : phospha te buffered saline . ・ ・ リン酸緩衝生理食塩水
A加1p : adenosine monophosphate . ・ ・ アデノシンモノリン酸
目次 緒言 ・
第1章:塩基性線維芽細胞成長因子 ( basic fibroblast growth factor : bFGF )の破骨細 胞様細胞形成および骨吸収におよぼす効果
1 - 1 :序論・
1 - 2 :材料と方法 ・
1 - 3 :結果 ・ 1 -4 : :考察 ・
. . . .
. . . .
4
5
9 . 17
第2章 マクロファージコロニー刺激因子(M-岱F)およびインターロイキン1 a
(IL-1 a)の破骨細胞様細胞におよぼす延命効果
2 - 1 :序論・
2 - 2 :材料と方法 ・ 2 - 3 :結果 ・
2・4 . .考察 ・
結論・
謝辞 ・ 参考文献・
. . . .
. . . .
本研究は下記の論文の内容を合む。
. . . . . . . .
. . . .
. . . .
. . . . . . . .
Jim i E, Shuto T, Koga T 1995 Macrophage colonystimulating factor and interleukin-lαmaintain the survival of osteoclast-like cells. Endorinology in press
. 19 . 20 . 21 . 27
31 32 33
Jim i E, Shuto T, Ikebe T, Jingushi S, Hirata M, Kog a T 1995 Basic fibroblast growth factor inhibits osteoclast-like cell formation by suppressing differentiation of osteoclast-like cells. 投稿中
占町T・ =
11'1:f 仁コ
骨組織は強靭な支持札織であり、 筋組織と共同で、運動や姿勢の維持をはかっているが、
一方ではまたカルシウム代謝において重要な役割を担っているヘ骨は一見静的な組織 のように思われるが、 骨組織内部では生理的に骨形成と骨吸収をバランス良く繰り返し ている非常に動的な 組織である。 この過程を骨のリモデリングというゆ。 骨形成をつか さどる細胞は骨芽細胞であり、 骨吸収をつかさどる細胞が破骨細胞である川。 これらの 細胞は様々な全身性ホルモンや局所での成長因子やサイトカインによって制御されてい る。 例えば活性型ビタミンD3 [1α, 25(OH)2D3t,5)、 冨IJ甲状腺ホルモン(YfH)4-6)、 インタ ーロイキン1(IL_1)7,8)、 腫療壊死性因子α(TNF-α)9)、 プロスタグランジンE2(PGE2)10,11) などは破骨細胞の形成を促進したり、 活性化することによって骨吸収を促進することが 報告されているがその作用は骨芽細胞を介したものである。 しかし、 カルシトニン(
Cf)は破骨細胞に直接的 に作用し、 骨吸収を抑制する止13Lまた、 腫療増殖性因子p (TGF-ß)14)や骨形成蛋白(BMP)瓜16) は生体内で骨形成を促進することが報告されている。
健常時においてはこの骨形成と骨吸収のバランスは保持されているが何らかの原因で このバランスが壊されると骨硬化症17)や骨粗穀症18)などの骨病変により骨格に異常が生 じる。 したがって骨芽細胞と破骨細胞の分化過程や活性化に影響をおよぼす因子に関す る研究は骨の代謝を理解する上で非常に重要であると思われる。 破骨細胞は骨組織には 少数しか存在しないので多数の破骨細胞を得ることが困難である。 さらに破骨細胞は終 末的に分化した多核細胞であり、 継代培養が不可能である。 これらのことから破骨細胞 の研究は骨芽細胞に比べて著しく遅れていた。 しかし、 近年になり試験管内で破骨細胞 を形成させる試みが成功し、 破骨細胞に対する理解が急速に深められてきた。
破骨細胞の骨吸収過程は破骨細胞の形成と活性化の2つの過程に分けられるべ破骨 細胞の形成過程は破骨細胞の前駆細胞から成熟細胞への分化過程であり、 活性化は成熟 破骨細胞が骨基質を認識し、 実際に骨吸収を行う過程である川口 骨のリモデリングを制 御する因子がこれら2つの過程のそれぞれにおよぼす影響について検討することはこれ
まで困難であった。 Raizらは骨器官培養系を確立し、 骨吸収におよぼす因子の検討をお こなったお)。 この実験系は妊娠マウスを45Caで標識した後、 胎児の頭蓋骨または榛骨、
尺骨を取り出し培地中に被検する因子を添加し、 骨に残存する45Caと培地中に放出され た45Caとの割合で骨吸収活性を表わす方法である。 しかし、 この方法では細胞増殖を抑 制するハイドロキシウレアを添加しでも骨吸収は誘導されるため、 主として破骨細胞前 駆細胞の分化と活性化を反映するものと考えられる。 またコラーゲン分解を抑制すると 骨吸収が抑制されること21)から、 この方法では実際の破骨細胞による骨吸収ではない類 骨の消化吸収過程をも同時に評価していることになる。
Chambersらは新生児ラットの長管骨を機械的に刺激して破骨細胞を合む全骨細胞を 遊離させ、 培養プレートなどへの付着力の差を利用して破骨細胞を生きたまま回収する 方法を確立した22)。 これまでに破骨細胞の骨吸収機構や本細胞におよぼすホルモン、 サ イトカインの影響などがこの方法を用いて研究されてきた。 しかし、 破骨細胞の形成過 程におよぼす影響についてはなお検討の余地がある。
高橋らはマウス骨髄細胞に活性型ビタミンD3を添加することによって酒石酸抵抗性 酸ホスファターゼ(T孔ザ)陽性で、カルシトニン受容体を多数持ち、 象牙片上で吸収簡を 形成するなど破骨細胞の性格を備えた多核細胞を試験管内で形成させる方法を確立し4)、
この方法を用いて 様々な局所因子の破骨細胞形成におよぼす影響を報告したお)。 このほ かにもいくつかのグループによって破骨細胞の形成過程と活性化を異なる分化段階で評 価する実験系が確立されており2ゆ)、 これらの方法が有用であることが示された。
また従来は、 破骨細胞を多量に純化した状態で得ることが困難であったために破骨細 胞の生化学的、 分子生物学的解析はほとんど、行われなかった。 赤津らはコラーゲンゲル 上でマウス骨髄細胞とマウス骨芽細胞を共存培養させることによって、 三次元的により 多数の破骨細胞様細胞を形成させる方法を確立したお)D また手塚らはウサギ全骨細胞か ら大量の破骨細胞を得る方法を確立し、 破骨細胞に特異的に発現している蛋白をコード する遺伝子の解析を行った初。 このように現在では破骨細胞の研究は形態学的なものか ら生化学的、 分子生物学的分野にまで拡がりを見せている。
著者らはこれらの方法を用いて、 破骨細胞の形成および活性化についての研究(第 1章)を進めるとともに破骨細胞の延命効果におよぼす因子の研究(第2章)を行い、
いくつかの新しい知見を得た。
第1章 塩基性線維芽細胞成長因子(
basic fibroblast growth1 - 1序論
factor: bFGF
)の破骨細胞様細胞形成および骨吸収に
およぼす効果
様々な方法で試験管内で破骨細胞を形成させることが可能になって、 骨のリモデリン グに関与していると考えられる因子の破骨細胞の形成過程、 および活性化におよぼす影 響について報告がなされてきたり1,23)。
われわれはこれまでにマウス骨髄細胞培養系ならびにマウス骨髄細胞とマウス骨儲間 質細胞株ST2との共 存培養系を用いて、 リポ多糖(Lipopolysaccharide:LPS) の破骨 細胞形成過程におよぼす影響について検討した到。 その結果、 LPSはデキサメサゾン存 在、 非存在下によって破骨細胞形成の促進と抑制の両面の作用を持つことが明らかにな った。 この両面の作用はデキサメサゾン存在、 非存在下でのLPS刺激による培地中へ のGM-岱F産生量の差によるものであり、 共存培 養系にお いてデキサメサゾン存在下 でGM-仁志F を添加すると破骨細胞の形成が抑制されることを報告した沼,mo このように 試験管内で破骨細胞を形成させる方法は 骨吸収の促進因子や抑制因子の作用を検討する のに有用であることが証明された。
線維芽細胞成長因子(fibroblast growth factor : FGF )は下垂体や脳の抽出物から3T 3線 維芽細胞の成長を促進する物質として見い出 されたぺFGF には等電点が塩基性(PI
9-10)のbFGF と酸性(PI 5-6) のaFGF が知られている が、 ともにヘパリンに強い親
和性を有し、 酸性条件や600C以上の熱処理で失活する31)。 この2 つのFGF のアミノ酸 配列の相向性は約百%程度であり共通の受容体に作用すると考えられている31)。
FGF は試験管内で骨芽細胞の増殖を 促進し丸33)、 また全身投与により著明に骨形成を 促進することが報告されている34)ことから、 骨のリモデリングの制御因子であると考え られる。 さらに、 FGF は試験管内で骨芽細胞の分化を抑制することが知られており、
例えばアルカリホスファターゼ活性ゃあぷ)、 I型 コラーゲンの産生を抑制当局)したり、 成 熟骨芽細胞のマー カーとして知られているオステオカルシンの産生を抑制するあ)こと な どが報告されている 。 興味深いことに骨 芽細胞は自分自身でFGFを産生し、 骨基質中 に蓄積す ること ができる汽このことは骨基質中に存在する FGFが骨 吸収後に放出さ れ骨のカップリング因子として作用してい る可能性も考えられる。 骨のリモデリングに は骨芽細胞 と破骨細胞の相互作用が重要であるゆが FGFのこの相互作用に およぼす影 響、 特に破骨細胞の形成および活性化におよぼす影響について検討した報告 はみられな
し、。
上述のLPS の効果を明らかにした方法を用いてbFGFの培養破骨細胞様細胞の形成お よび活性化について検討し、 bFGFは破骨細胞の前駆細胞の分化を抑制することによっ て破骨細胞の形成を抑制すること、 また骨芽細胞を介して骨吸収を抑制することを見い 出した。
1-2材料と方法 1 )動物 と試薬
1日齢 のddYマウスと 5・8週齢の雄性 ddYマウスは成和実験動物研究所より得た。
活性型ビタミンD3 [1α, 25(OH)2D3]はBiomol研究所より、 デキサメサゾン (D ex)、 プ ロスタグランジン E2 (PGE2) は Sigma社より、 ヒトリコンビナントインターロイキン11 (IL-11)はR&D社より、 ヒトリコンビナントM-仁志Fは Genzyme社よりサケカルシトニ ンは Penninsula社より得た。 ヒトリコンビナントbFGFは科研製薬鮒より供与された。
2 )マウス骨髄細胞とマウス骨髄間質細胞株ST2細胞との共存培養
マウス骨髄細胞は高橋らの方法のにしたがって調製した。 テ8週齢の雄性マウスから腔 骨、 大腿骨を無菌的に取り出し、 その骨端を切り落とした。 遠心端より2幻7Gの針をつ
けたシリン ジでα-minimum ess ential m edium (いα
細胞を試験管に集めた。 骨髄細胞は遠心法(150∞O回転/分、 5分)で集め、 少量の
α- MEM培地で懸濁し、 有核細胞数を計測した。 骨髄細胞は10 %ウシ胎児血清(FBS) を合むαー恥ffiM培地に1.5X 106細胞/mlになるよう調節した 。 マウス骨髄間質細胞株 ST2 は理研細胞銀行より得た。 マウス骨髄細 胞(1 x 10 5細胞/ウエノレ) とST2 細胞( 5 x 10 4細胞/ ウエノレ)を字国川らの方法制にしたがって 、 1α25(OH) 2D3 (10・8M)とDex
(10・7M)存在下で被検する試薬を添加して48穴プレート (ωrning)にて10 % ウシ胎児 血清(FBS) を合むαふ1EM培地で 培養し、 培地は3日おきに全量交換した。
3 ) マウス骨髄細胞とマウス骨芽細胞との共存培養
新生児マウス( 1日齢)の頭蓋骨を無菌的に取り出したあ)。 頭蓋骨は0.1 9るコラゲナ ーゼ(細胞分散用、 和光純薬 )と0.2 %ディスパーゼ(合同酒精)を合むリン酸緩衝生 理的食塩水(PBS)に入れ( 50個の頭蓋骨につき10ml) 370Cの恒温槽にて10分間 振とうし、 浮遊してきた細胞は酵素溶液とともに集め 、 さらに新しい酵素溶液 を入れ 10分間酵素消化 した。 この 酵素消化を5回繰り返し、 2-5回目の消化で浮遊してきた細 胞を骨芽細胞として回収した。 骨芽細胞は10%FBS入りα-MEM培地に懸濁し、 5x 10 5細胞/10 cmディッシュにて培養し、 コン フルエントになった時点で 、 トリプシン
ーEDTA で細胞を回収し、 1 x 106細胞/ mlの密度でセルバンカー(ダイヤトロン側) に 懸濁し、-800Cにて凍結保存 した。 上記方法で採取した 骨髄細胞(1 x 10 5細胞/ウエノレ) と骨芽細胞( 2 x 10 4細胞細胞/ウエノレ) を48穴プレートにまき込み、 破骨細胞を誘導 するために1α,25( OH)2D3 (10・8M)、 ITH (10・7M)、IL・11 (10 ng/ml ) などの 骨吸収因子 を添加した39)。
4 )形成され た破骨細胞の同定
上記すべての培養は370C 95 %空気5%二酸化炭素存在下で約7・10日間培養した後、
10 %ホノレマリンを合むPBSで細胞を10分間固定した。 続いて 、 エタノールーアセトン (1:1 )で1分間再固定し、 酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ( TRAP)染色を行った。
TRAP染色は高橋らの方法勺ζしたがい、 基質としてNaphtholAS-MX (Sigma)と色素
としてred violet LB (Sigma)を 50mMの酒石酸 を合む酢酸バッフアー(pH 5 ) に添加 し 染色後、 3核以上の多核細胞を破骨細胞様細胞として数えた。
5) ST2細胞のチミジンの取り込み、 および、アルカリホスファターゼ染色
sτ2細胞(7 x 10 2細胞/ウェル)を96平底プレートにまき込み、 1 ) 1α,25(OH) 2D3 (10-8M), Dex (10・7M)非存 在下、 2 ) 1α,25(OH)2D3存 在下、 3 ) Dex存在下、 4 ) 1α3 25( OH)2D3, Dex 存在下でそれぞれ bFGF(10 ng/ml )存在下または非存在下にて図4 A に示す日数にトリチ ウムで標識したチミジン ( 0. 5μ C i /ウエノレ)を添加し24時間培養 した後にチミジンの細胞DNAへの取り込み をシンチレーションカ ウンターにて測定し
た。 アル カリ ホ ス ファ ターゼ染 色は Burstoneら の方法的にし た がい基質と して Na phtho l AS-MXと色素としてfast blue B salt (Sigma )を合むトリスバッファー(pH
6.8 )で15分、 室温にて染色した。
6)メチルセルロースを用いたコロニー形成法
マ ウス骨髄細胞(2.5X 105細胞/ウエノレ)は 0.88 %メチノレセルロー ス、 100μM2 - メル カプトエタノールと 10 % FBSを合むα-MEM培地中でM-CSF(50, 500, 5000単位/m l) とbFGF(0, 1, 10 ng/ml)存在下で7日間培養したお)。 またいくつかの実験においては、
ST2細胞をbFGFで処理、 または非処理した培養上清をこの培地に添加し、 7日間培養 した。 7日後に形成されたコロニーの数を数えた。
7 )コラーゲンゲル上 での共存培養法によって形成された 破骨細胞様細胞を用いた骨 吸収能の測定法
田村らの方法41 )にしたがって、 コラーゲンゲル(セルマトリックス タイプ1-A) を 10倍濃度の α-MEM(炭酸水素ナトリウム不合)と 2.2 %炭酸水素ナトリウムを合む 200mMヘベス緩衝液(pH7. 4 )で8:1:1の割合(合計5 ml/デ、イツシュ)で混合した。
この混合溶液を 10 cmディッシュに加え370C恒温槽に入れた。 硬化した後に上記方法
で採集した 骨髄細胞と骨芽細胞をい,25(OH)2D3 (10�M) 、 PGE 2(10-6M)存在下で共存 培養した。 2日おきに培地を新しい培地に全量交換し、 約7日後に0.1 %コラゲナーゼ (5 ml/デ、イツシュ)を添加し 370Cの恒温槽上で20分振とうし、 細胞を遊離させた。
カルスピペットを用いて丁寧に細胞を 懸濁させ、 50 mlチューブに移し、 遠心分離 ( 1 500 回転/分、 5分)で細胞を回収し10 %FBSを合むαふ伍M培地(10 ml/プレート ) に懸濁した (破 骨細胞画分)0 98 穴プレー トに 10 % FBSを合むα-MEM培地(100μl /ウエノレ)を加え、 さらに象牙片(直径4mm、 厚さ0.3 mm、 1枚/ウエノレ)を沈め、
破骨細胞画分(100μ1/ウェノレ)を象牙片の入ったウェルに加え、 370Cインキ ュベータ ーに放置した。 2時間後、 この象牙片をbFGF(0,1,10 ng/ml)、cr(10、のを添加し たα-MEM培地の入った 48穴プレート(300μVml)に移し、 さらに48時間培養した。
培養後、 培養液を除き、 1Mアンモニア溶液を加え、 超音波細胞破砕機にて細胞を完全 に象牙片より除去した。 象牙片をアンモニア溶液より取り出し、 ヘマトキシリン溶液に 入れ約 1分染色した 後、 水洗すると吸収禽は赤紫色に 染色される。 象牙片上の吸収禽の 面積はPIAS社の画像解析装置を用いて測定した。
1 - 3結果
1 )マウス骨髄細胞とマウス骨髄間質細胞株ST2細胞との共存培養系におよぼす bFGFの影響
マウス 骨髄 細胞とマ ウス骨 髄間 質細 胞 株 ST2細 胞との 共存 培養 系に お い て 1α3 25(OH)2D3 (10�M), Dex (10・7M)を添加し、 約 10 日間培養すると、 多数の多核細胞が
形成される。 形成された これらの多核細胞はT孔ぜ陽性(図1 A)で、 また1勺で標識 した カノレシトニンを添加すると特異的な結合が認められることから 多数のカルシトニン レセプターを有する(図1 B)。 さらにこれらの細胞を象牙片上で培養すると吸収禽を
形成する(図1 C)。 以上のことからこれらの多核細胞は破骨細胞としての性格を備え ており、 これらの多核細胞を破骨細胞様細胞として以下の実験に用いた。
A B
C
(図1 )マウス骨髄細胞とマウス骨髄間質細胞株ST2細胞との共存培養(1α3 25(OH)2D3: 10・3M, Dex: 10・7M)で形成された破骨細胞様細胞
A酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRAP)染色(x40)
B1おIで標識したカルシトニンによるオートラジオグラフフィー(x 100) C象牙片上に形成された吸収寓(x 100)
この培養系において培地にbFGFを添加する と破骨細胞様細胞の形成は濃度依存的に 抑制され た(図2 A)。 すなわち1 ng/mlの濃度でわずかに抑制効果が認めら れ、 10 ng/mlの濃度でほぼ90%の多核細胞の形成が抑制された。 さらに高濃度(0.1-1陀Iml) では破骨細胞様細胞の形成は全く認められなかった。 図2BはbFGFの存在下、 非存在
下での破骨細胞様細胞形成の経時的変化を示す。 bFGFは培養開始から 21日目までのい ずれの時期においても破骨細胞様細胞の形成を抑制した。 このことからbFGFは単にそ
さらにbFGF存在 の形成を遅らせるのみならず形成過程を停止させるものと思われる。
5核以上を有する多核細 下で形成された破骨細胞様細 胞は小型のものが多く(図2 C)
胞の占める割合についてbFGF存在下、 非存在下で検討したところbFGF存在下では このこ とからbFGF 10.6:t2.1 %であったのに対して非存在下では65:t3.7 %であった。
が破骨細胞の前駆細胞の分化を抑制する可能性が示唆された。
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bFGF concenlralion (ng/ml)
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C
(図2)bFGFによる破骨細胞様細胞の形成抑制効果 A濃度変化による検討 pく0.01 (*), pく0.001 (**)
経時的変化による検討: (0)は非添加、 (・) pく0.005(*), Pく0.001 (**)
C bFGF (10 ng/ml)添加、 非添加によって形成された破骨細胞様細胞の比較 (x100)矢印はTRAP陽性多核細胞、 矢頭は T孔ぜ陽性単核細胞を示す Bar: 100μm
bFGF (10 ng/ml) control
はbFGF (10ng/ml)添加 B
2) 破骨細胞様細胞形成におよぼすbFGF添加時期の検討
この共存培養系にお いて、 破骨細胞の前駆細胞は骨髄細胞中に存在し、 ST2 細胞はそ の分化 を支持する 細胞であるべ前駆細胞は成熟破骨細胞へといく つ かの段階を経て分 化していく。 そこでどの分化段階にbFGFが効果をもつかを 検討するために、 培養期 間 を0-6、 3-9、 6・12日の3群に分け6日間bFGFを添加した。 破骨細胞様細 胞は培養子9 日の6日間 添加すると12日間の全期に渡っ て添加した場合と同様に破骨細 胞様細胞の 形成を抑制した。 最初の6日間の添加 でも抑制効果は認められたが12日間の全期に渡 って添加した場合と比較するとその抑制効果は弱かった。 培養最後の6日聞に bFGFを 添加しでも抑制効果 はほとんど認められなかった。 この結果から3-9日の細胞がbFGF
の作用を受けることが明らかとなった(図3) 。
A B
Schedule of bFGF addition (10 ng/ml)
包
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(図3) bFGF (10ng/ml)の添加時期による抑制効果の検討
A bFGFの添加時期を示す
A 8 C (day)
B添加時期による破骨細胞様細胞の形成抑制効果pく0.005(*), Pく0.001( **)
3) ST2細胞の増殖、 および分化におよぼすbFGFの影響
つぎにbFGFが破骨細胞の前駆細胞に直接作用するか否かを検討するためにまずST2
細胞におよぼすbFGFの影響をチミジンの取り込みとアルカリホスファターゼ染色で 検 討した。 bFGFは1α,25(OH)2D3単独の存在下、 Dex単独の存在下、 両者の存在下、 お
いずれの場合において も チミジンの取り込みを促進し たが、 特に1α,
よび非存在下、
25(OH)2D3、 およびDex存在下で はその効果が著明に認められた(図4A)。 形態的に もbFGF添加3日日頃からST2細胞 は多角形から針状形へと変化していった(図4B)。
さらに bFGF はST2細胞の アルカリホスファターゼ陽性細胞の数を減少させることか これらの結果 から共存培養系においてST2細胞がbFGFに直接的に応答するものと思われた。
らST 2細胞の骨芽細胞への分化を抑制することが示唆された(図4C)。
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(図4) bFGF添加によるST2細胞の増殖、 および分化におよぼす影響
A bFGF (10 ng/ml)存在下でのST2細胞の�で標識したチミジンの取り込み (0)はbFGF(10ng/ml)非存在下、 (・)は存在下を表す
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4) M-CSF依存性コロニー形成におよぼすbFGFの影響
破骨細胞は単球-マクロファージ系細胞から分化することが知られて いるペ骨髄細胞 をメチルセルロース培地で M-CSF存在下で培養すると多数のコロニー が 形成される 。 形成されたこれらのコロニーは破骨細胞の前駆細胞の コロニーであり、 コロニー数 の 増加は破骨細胞の前駆細胞の増殖を示すと考えられる包)。 このコロニー形成法において bFGFはM-CSF依存性コロニー形成に何ら影響をおよぼさなかった(図5A)。 すなわ ち、 bFGFは 破骨細胞 の前駆細胞の増殖に直接的には影 響しないことを示 す 。 また bFGFの刺激によってST2細胞から産生さ れる可溶性因子 が間接的に破骨細胞の前駆細 胞の増殖を抑制する可能性も 考えられる。 そこで bFGFで処理したST 2細胞の培養上 清(bFGF -CM) 、 未処理 の培養上清(con-CM) の コロニー形成におよぼす影響を検討 した がbFGF-CMには何の効果も見られなかった(図5 B)。 こ のことからbFGFの刺 激によって ST2細胞から 産生される可溶性因子も破骨 細胞の前駆細胞の増殖を抑制し ないものと思われた。
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図 conlrol-CM
• bFGF-01
coロlrol M-CSF 5%
5 Ou/rn 1 10% 20%
(図5 ) 破骨細胞様細胞の前駆細胞の増殖におよぼすbFGF、 およびbFGFで処理 した ST2細胞の培養上清の影響
A M-CSF依存性コロニー形成におよぼすbFGFの影響
BST2の培養上清、 bFGF (10 ng/ml)処理した培養上清によるコロニー 形成の影響 pく0.05(つ
マウ ス骨髄細 胞と マウ ス骨芽 細 胞との共 存培養系 におよぽす bFGFの影 響 5 )
破骨細胞様細胞の形成におよぼすbFGFの抑制効果がST2細胞に特異的な現象では な その 結果 、 いことを示すために ST2細胞の代りにマウス骨芽細胞を用いて検討した。
bFGFは 骨髄細胞と骨芽細胞との共存培養系においても同様に破骨細胞様細胞の形成抑 さらに1α,25(OH)2D3 (10-8M)の代り に破骨細胞様細胞を試験管 制効果が認められた。
内で誘導できるPGE2(10・7M)またはIL-11 (10 ng/ml)についてもbFGFによる抑制効 果を検討した。 bFGFは PGE2またはIL-11で誘導される破骨細胞様細胞の形成 も濃度 これらの結果からbFGFは1α,25(OH)2D3と同様にPGE2、
依存的に抑制した(図6)。
IL-11 が誘導する破骨細胞の前駆細胞の分化を抑制し、 結果的に破骨細胞様細胞の形成 を抑制することが示唆された。
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bFG F concentration (ng/ml)
マウス骨髄細胞とマウス骨芽細胞との共存培養系におけるbFGFの影響 pく0.05 (*), Pく0.005 (**), Pく0.001 (***)
(図6)
6 )破骨細胞様細胞の骨吸収におよぼすbFGFの影響
コラーゲンゲル上で形成された 破骨細胞様細胞を回収し、 象牙片上にまき、 bFGF ( 0,1,10 ng/ml)、cr(10・7M)を合む培地中で48時間培養した。 形成された吸収禽を ヘ マトキシリン染色後、 画像解析装置で面積を測定し、 bFGFの骨吸収 におよぼす影響を 評価した。 bFGFは吸収禽の形成を濃度依存的に抑制したが(図7)、 その効果はcr
と比較すると非常に弱い も のであった(図7 B)。 ファロイジンによるF-アクチンの 染 色 においてもcrのようにアクチンリングの破壊は認められなかった(未発表データ)。
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bF"GF concenlralion ( ng/ml) CT
(図7 )マウス骨髄細胞とマウス骨芽細胞との共存培養によって形成された破骨細胞 様細胞の骨吸収能におよぼすbFGFの影響
A bFGF (10 ng/ml)添加による吸収寓形成抑制効果 (ヘマトキシリン染色, x100)
B濃度変化による検討 pく0.01 (つ, Pく0.005(**), Pく0.001(***)
1・4考察
本研究でわれわれは マウス骨髄細胞とマウス骨髄間質細胞株ST2細胞との共存培養系 においてbFGFが破骨細胞様細胞の形成を濃度依存的に抑制することを見い出した。 骨 髄間質細胞は骨芽細胞と同様にbFGFの標的細胞であることが知ら れている的。 本研究 ではbFGFは ST2細胞のチミジン の取り込みを促進 したが、 アルカリホスファターゼ 陽性細胞の数を減少させたことからbFGFが ST2細胞の骨芽細 胞への分化を 抑制する こと、 さらに ST2細胞もbFGFの標的細胞であ ることが示された。 また、 ST2細胞の 代りに骨芽細胞を用いてもbFGFは 破骨細胞様細胞の形成を抑制することからbFGFは ST2細胞の骨芽細胞への分化を抑制するだけではなく破骨細胞の形成を支持するような ST2細胞の何らかの機能を抑制するものと思われる。 後者の機構としてはbFGF刺激に よって ST2細胞から破骨 細胞形成 を支持する 因子の産生が抑制されたり、 ま た は破骨
細胞形成を抑制する因子の産生が促進される可能性が考えられる。
破骨細胞の形成過程は前駆細胞の増殖、 前駆細胞から前破骨細 胞への分化、 前破骨細 胞から成熟破骨細胞への成熟の3つの段階が考えられる。 M-岱Fはメチルセルロース 培地で破骨細胞の前駆細胞の増殖を促進することが知られているお)。 この方法において bFGFはM-CSF依存性のコロニー 形成に全く影響しないことからbFGFは前駆細胞の 増殖には抑制効果を持たないと思われ る。 またbFGF刺激によってST2細胞からの産生 が促進または抑制されるような因子も同様に前駆細胞の増殖には抑制効果を持たなかっ た。 さらに破骨細胞形成過程の初期では なく中間期にbFGFを添加することによって 破 骨細胞様細胞の形成が抑制されることからbFGFは前駆細胞の増殖過程を過ぎた分化 過 程に ST2細胞や骨芽細胞を介して作用していることが示唆された。
ところで骨芽細胞の情報伝達系である が、 田村らは破骨細胞様細胞の形成を誘導する ための骨芽細 胞 の情報伝達系 が少 なくとも3種存在す ることを報告して いるベ(1) ITHやIL-1、 PGE2などの刺激が骨 髄細胞にサイクリックAMPの産生を引き起こし、
これがセカンドメッセンジ、ヤーとして作用し破骨細胞様細胞の形成 に関与するもの口)、
(2) IL-llやオン コスタチンM、 白血病抑制 因子(Leukemia inhibitory factor :LlF)な
どが情報伝達系として骨芽細胞上のそれぞれの受容体と共役しているgp 130分子が関
与するもの玖仰5)、(3) 1α,25(OH)2D3刺激に見られるようにcA恥Eもgp 130分子も 破 骨細胞様細胞の形成に関与しないものll,:mに分け られる。 bFGFはいずれの誘導機構にお いても破骨細胞様細胞の形成を抑制することからこれ ら3つの異なる骨芽細胞情報伝達 系に共通する部分に作用し破骨細胞様細胞の形成を抑制する可能性も考えられる。
FGFは間葉系細胞の増殖、血管新生や軟骨形成を促進する働きを 持つ必)ことから創傷 治癒や骨折治癒に深く関与していることが考えられる。 さらに、FGFは様々な全身性ホ ルモンや骨のリモデリングに関与している局所因子と互いに相互作用を持つことが知ら れているべ例えば骨芽細胞においてFGFはTGF-ß48)やFGF自身のmRNAの発現を 促進 し たり側、 逆に TGF-ßに よって FGF のm町吋Aの発 現が 促進 され るべ ま た TGF-ßは破 骨細胞の形 成や骨吸収を抑制することが報告されている珂,51)こ とから 、 bFGF刺激に よってST2細胞や骨 芽細胞から産生される 可溶性因子 のーっとして TGF-ßの 関与も考えられる。
上皮細胞成長因子(EGF)旬、 血小板成長因子(PDGF)53)、 インシュリン様成長因子
- 1 (IGF-1 )到などの成長因子は破骨細胞の形成や骨吸収を促進することが報告され ている。 Shenら35)はaFGFが骨器官培養系で骨吸収を促進することを報告しているが 、 FGFがプロテアーゼ産生を促進し、 類骨が溶出することによるカルシウム溶解を観察 している可能性 も高い。 本研究では、bFGFは破骨細胞による骨吸収をわずかに抑制し た。 さらに、bFGFで 処理 、または非処理した骨芽細胞の培養上清中に象牙片を入れて 培養しでも、bFGFで処理したもの に骨吸収抑制効果が認められた(未発表データ)。
このことから、bFGFはcrの ように破骨細胞に直接 的に作用して骨吸収を抑制する の ではなく、骨芽細胞を介して間接的に抑制するものと思われる。
本研究においてbFGFは単に、骨芽細胞の増殖を促進するだけではなく、破骨細胞の 形成を抑制し、ひいては骨吸収を抑制することによって骨形成を促進する可能性が示唆
された。
第2章 マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)およびインター ロイキン1α(IL-lα)の破骨細胞様細胞におよぼす延命効果
2 -1序論
破骨細胞は骨吸収をつかさどる細胞であり 、 造血幹細胞より分 化することが知られて いる乳幼。 その過程においてはインターロイキン3(1し3)、 頼粒球-マクロファージコロ ニー刺激因子(GM-CSF)、 マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、 頼粒球コロニー 刺激因子(G-仁志F) などの造血因子が造血幹細胞の増殖、 分化を調節しているおタ)。 この ことからも破骨細胞の分化にこれらの造血因子が関与している可能性が示唆されるお)。
遺伝性骨硬化症モテ、ルマウスであるop/opマウスは単球、 マクロファージや破骨細胞 が欠損し、 骨吸収が起らないぺこのop/opマウスは他の遺伝性骨硬化症モデ、ルマウス とは異なり、 骨髄移植によって治癒しないことから破骨細胞の前駆細胞ではなくその分 化を支持する微細環境に問題があると考えられていた到。 近年、 M-仁志Fの構造遺伝子に 変異が存在することによってop/opマウスが活性を有するM-αFを産生しないことが 明らかになった59)。 実際に、 M-CSFをop/opマウスに投与すると破骨細胞が形成され、
骨吸収が起こる白川ことからもM-αFが破骨細胞形成過程に必須の因子であることが強 く示唆された。 さらに 、 破骨細胞の前駆細胞 のみならず成熟破骨細胞にもM-岱Fの受 容体が存在することが証明された臼,ペしかし、 成熟破骨細胞においてM-αFの受容体 の役割についてはなお不明な点が多い。
破骨細胞は頼粒球ーマクロファージ系統の細胞より分化してくることが明らかになって いるペGM-CSF、 M‘αF、 G-αFなどの造血因子は頼粒球、 マクロファージの前駆 細胞の増殖、 分化のみならず成熟頼粒球、 マクロファージの延命効果を持つことが知ら れている九刀)。 近年、 M-CSFがラット単離破骨細胞のアポトーシスを抑制することによ って延命効果を持つことが報告された“)。 さらにこれ らの造血因子は骨芽細胞日)や、 骨 髄間質細胞から産生され側、 破骨細胞の形成過程に深く関与している刻ことからもこれ
らの細胞自身が破骨細胞の延命効果に作用する可能性が考えられる。
そこで我々は マウス骨髄細胞とマウス骨髄間質細胞株Sτ2との共存培養で破骨細胞を 試験管内で形成させる方法を用いて破骨細胞の延命効果におよぼす骨髄間質細胞、 また は骨髄間質細胞から産生される液性因子について検討したと ころST2細胞自身が破 骨 細胞の延命効果を持つこと、 さ らにST2の培養上清にも同様の作用があるこ とを見い だした。 また骨のリモデリ ングを制御す ると考えられる種々 の因子[1α,25(OH)2D3,
bFGF、 IL-1α、 インターロイキン6 (IL・6)、 cr、 GM-αF、 M-CSF]について検討し たところ、 M-CSF およびIL-1αに破骨細胞の 延命効果が認められた。
2・2材料と方法
1 )材料
6 -8週令の雄性αH/HeNマウスは成和実験動物研究所より得た。 1α,25(OH)2D3は
Biomol研究社、 デキ サメサゾン、 インドメタシンは Sigma社より、 サケカノレシ トニン はPennisula社よりヒトリコンビナントTGF-ßはR&D社より得た。 ヒトリコンビナン トM-αF、 ヒトリコンビナントbFGF、 ヒトリコンビナントIL-6、 ヒトリコンビナン IL-1α、 マウスGM-仁志F はそれぞれ九州 大学医学部悌淵孝夫 博士、 九州大学医学部神
宮司誠也博士、 大阪大学医学部平野俊夫博士、 大日本製薬会社、 キリンビール株式会 社より供与された。
2 )マウス骨髄細胞とマウス骨髄間質細胞株ST2との共存培養 第1章と同じ方法を用いた。
3) ST2細胞培養上清の採取
ST2培養上清はST2細胞がコンフルエントになった状態でさらに72時間培養を続け たものから採取し、 1400回転/分の遠心操作の後、 孔径0.45μmフィルターを用い漉過 滅菌を行い、 使用するまで-800Cにて保存した。
4 )生存率の算出
10日間培養した後、 細胞はテ、ィスパーゼ(合同酒精)1000単位/mlにて処理した後、
PBS にて十分 に洗浄した。 ST2、 TRAP陽性細胞の一部を合む細胞画分がディ ッシュ上 から 剥離し、 ディッシュ上に残った細胞を一部 トライパンブ、ルー染色し、 また一部を TRAP染色し、 細胞数を数えた(時間== 0 )。 残りの細胞は被検する試薬を添加し、 さ らに24時間培養した。 24時間後に同様の染色を行ない、 生存率は以下 に示すように 表
した。
生存率 (%)==24時間後 のトライパンブ、ルー陰性細胞で、T孔ぽ陽性細胞数x 100/
(時間== 0 )のトライパンブ、ルー陰性細胞でT孔ぽ陽性細胞数
2-3結果
1 )ディスパーゼ処理による破骨細胞様細胞の純化
上記培養法により形成された細胞をデ、ィスパーゼ(1000単位/ml) にて処理すると ST2お よびT孔ぽ陽性細 胞が剥離し、 ディッシュ上にT孔ザ陽性細胞が残 る(図8 )。
これらの細胞種の内訳は表1に示すとおりである。 これら 純化したTRAP陽性の多核 (3核以上)細胞を破骨細胞様細胞として以下の実験に使用した。
(図8 ) マウス骨髄細胞とマウス骨髄間質細胞株ST2細胞との共存培養で形成さ れた破骨細胞様 細胞をデ、イスパーゼ(1000単位/ml)処理によって
純化した直後(x100)
表1ディスパーゼ(1000単位/ml)処理によって純化されたTRAP陽性細胞 の内訳
Mean proportion of cell number (%)
TRAP + MNCs TRAP + + mononuclear cells TRAP - mononuclear cells
12.7:t1.9 83.6土0.3 <5
2)破骨細胞様細胞の延命効果におよぼすST2細胞の影響
ディスパーゼ処理により純化された破骨細胞様細胞を15 % FBSを合むαふ1EM培地で さらに24時間培養すると約80 %の破骨細胞様細胞 が死滅し剥離する(図9 )。 とこ ろがディスパーゼ処理を行わず、 ST2細胞が存在する場合にはほぼ100%の破骨細胞様 細胞の生存が認められた(表2 )。 そこで破骨細胞様細胞の生存にST2細胞が関与す
ることを確かめるためにデ、ィスパーゼ、処理併麦、 新たにST2細胞を添加した。 その結果、
破骨細胞様細胞の生存率は添加 したST2細胞の密度に依存して上昇した(表2) のことからST2細胞が破骨細胞様細胞の延命効果に関与していると思われた。
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(図9 ) ディスパー ゼ、処理後、 15 %のFBS を合むQ-MEM培地中でさらに24時間 培養した 破骨細胞様細胞(x100) 矢印は死滅した破骨細胞様細胞を示す
表2 破骨細胞様細胞の延命効果におよぼす ST2 細胞の影響
TRAP-positive MNCs (number/well)
仁ulturc condi【ion Oh 24h Survival (%)
([XI1. 1)
Trc3【l1lcnt wi【h dispasc 606斗:t36.6 136.S:t20.5 20.4
Treatment without dispasc S98.0:t4S.3 . 98.5
([xp. �)
Treatmcn【W1【h dispasc 57斗.3土27.1 77.S:t16.3 13.5
+ST2 cclls (x10�/\Vell) 110.2:t21.7 19.2
..
+ST2 cclb (x1 0) /いピ11) 187.2:t斗2.1 32.6
(実験1 )デ、ィスパーゼ、処理の有無による破骨細胞様細胞の生存率
(実験2)デ、イスパーゼ処理後、 新たに添加したST2細胞の 破骨細胞様細胞の生存 率におよぼす影響
3 )破骨細胞様細胞の延命効果 におよぼすST2細胞培養上清の影響
破骨細胞様細胞の形成過程において、 破骨細胞の前駆細胞と骨髄間質細胞または骨芽 細胞との細胞間接触が重要であることが報告されている刻。 そこで破骨細胞様細胞の生 存にST2細 胞との細胞間接触が重要で、あるか否かを検討するためにディスパーゼ処理 後ST2細胞の代りにST2細胞の培養上清を種々の濃度で 添加した。 図10に示すように 50 %のST2の 培養上 清を添加することによって約80%の生存率が認められた。 しか し培養上清を1000C、 30分の熱処理をするとその効果は全く失われた。 このことから 破骨細胞様細胞の生存にST2細胞自体の細胞間接触ではなく培養上清中に合まれる蛋
白性の液性因子が関与していることが示唆された。
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ST2 conditioned medium (%)
(図10)ST2細胞の培養上清の破骨細胞様細胞の生存率におよぼす影響 pく0.025 (*), pく0.01(**)
4 )破骨細胞様細胞の延命効果におよぼす骨のリモデリングに関与する諸因子の影響 ST2を合む骨髄間質細胞や骨芽細胞が産生したり、 骨のリモデリングに関与する様々 な因子について破骨細胞様細胞の生存におよぼす影響について検討した。 図11に示す ようにM-CSFおよびIL-1αに破骨細胞様細胞の延命効果が認められたが、 調べた他の 因子には認められなかった。
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(図11) A骨のリモデリングに関与する様々な因子の破骨細胞様細胞の生存率に
およぼす影響: 1α,25(OH)2D3 (10・8M),bFGF (10 ng/ml), cr (10・7M),
GM-CSF (10 ng/ml), TGF- ß (10 ng/ml), IL-6 (10 ng/ml), PGE2 (10・7M),
M-CSF (2000単位Iml),IL-1α(10 ng/ml) pく0.01(*)
B
M-CSF (2000単位/ml) IL-1α(10 ngJml)
B M-CSF, IL-1 aの 破骨細胞様細胞の延命効果(x100) 矢印は死滅した破骨細胞様細胞を示す
5 ) 破骨細胞様細胞の延命効果 におよぼすM-CSF の影響
図12 に示すように M-CSFは濃度依存的に破骨細胞様細胞の生存率を上昇させた。 さ らにディスパーゼ処理後に新たに破骨細胞様細胞の前駆細胞が増殖し、 分化することに よって見かけ上、 生存率 が上昇する可能性を否定するためにハイドロキシウレア (lmM)をM-仁志Fと同時に添加して細胞増殖を抑えてもM-仁志Fの効果は同様に認めら れた。 また経時的変化を検討したところM-αFを添加していない培地では12-18時聞 にかけて破骨細胞様細胞の生存率は急激に減少した。 すなわち36時間後には約1.5 % の生存率が見られたのに対してM-CSFを添加した培地では生存率 の減少傾向は緩やか で36時間後で も破骨細胞様細胞の生存率は30 %以上であった(図13)。
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Hydroxyurea (lmM)
(図12) M-CSFの破骨細胞様細胞の生存率におよぼす影響pく0.05 (*), Pく0.025 (**), Pく0.01 (***)
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(図13) M-CSF (2000単位Iml)、 IL-1 a (10 ng!ml)添加による破骨細胞様細胞 の生存率の経時的変化(0)は15 % FBSを合むa-MEM培地(口)
M-CSF (2000単位Iml) を添加したもの、 (企) IL-lα(10 ng!ml)を 添加したもの pく0.01 (つ
6 )破骨細胞様細胞の延命効果におよぼす IL-1αの影響
IL-1α は炎症性サイトカインの1つであり、 骨芽細胞に作用することによって間接 的に破骨細胞を活性化し骨吸収を促進することが報告されている九 IL-1αについて破 骨細胞様細胞の生存率におよぼす影響を検 討したところ、 図14に示すように濃度依存 的な上昇効果が認められた。 さらにIL-1の骨吸収促進作用にPGE2が 関与している可 能性が多数報告され ているω川ことから、 IL-1αの延命効果に多数残存しているT孔ザ 陽性単核細胞を介したPGE2の産生が関与している可能性を検討するためにIL-1α添加
と同時にインドメタシン(10・7M) を添加した。 その結果インドメタシンはIL-1αの延 命効果を抑制しなかった。 またIL-1αの延命効果の経時的変化について検討したところ、
M-CSFの場合とほぼ同様の結果が得られた(図13)。
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(図14)IL-1aの 破骨細胞様細胞の生存率におよぼす影響pく0.05 (つ,pく0.025 (**), pく0.01 (***)
2-4考察
破骨細胞の形成過程において破骨細胞の前駆細胞の分化には骨芽細胞や骨髄間質細胞 との細胞間接触が必要である沼)。 われわれは今回デ、イスパーゼ、処理することによって 、
ST2細胞などの他の細胞を除き、 T孔t\P陽性細胞を純化することができた。 ところが ST2細胞を除きTRAP陽性細胞を純化すると24時間後にはTRAP陽性細胞のほとん どが死滅し、 剥離してしまうことから破骨細胞様細胞の生存にも骨芽細胞や骨髄間質細 胞との細胞間接触が必要ではないかと考えた。 事実、 ST2細胞を新たに 添加すると破骨 細胞様細胞の生存率は上昇し たが、 ST2細胞の代りにsτ2細胞の培養上清を添加しで も破骨細胞様細胞の生存率の上昇が認めら れた。 さらに培養上清を熱処理すると破骨細 胞様細胞の延命効果がまったく認められなくなった。 このことから破骨細胞様細胞の生 存にST2細胞が 産生する蛋白性の液性因子が関与すると考えられた。
M-仁志Fは破骨細胞の形成に必須の因子 であることが知られている別九さらに破骨細 胞の前駆細胞のみならず成熟破骨細胞上にもM-仁志Fの受容体が存在することが明らか になっている62,63)。 しかし成熟破骨細胞におよぼすM-CSFの影響についてはまだ不明 な 点が多い。 小玉らはop/opマウスにM-仁志Fを投与することによって破骨細胞が出現し、
骨吸収がおこることを報告しており、 M-CSFの受容体は破骨細胞の形成過程に必要で あり、 成熟破骨細胞上では何ら役割を持た ない と推測している61)。 Hattersieyらは、
M-CSFがラット単離破骨細胞の骨吸収を抑制することを報告している冗)が、 同グ、ループ のFullerらはM-CSFが破骨細胞のアポトーシスを抑制することによって、 延命効果を 持つことを報告している師)。 さらにOwenらは金粒子で被覆したカバーグラス上で単離 破骨細胞を培養し、 これにM-CSFを添加すると破骨細胞は金粒子を食食しながらカバ ーグラス上を活発に移動していくことを報告しているベこれらの結果から骨吸収 抑制 効果と延命効果は一見相反するように思えるが、 M-仁志Fは骨吸収過程に直接作用す る のではなく破骨細胞を延命させながら骨基質上を活発に移動させることによって間接的 に骨吸収を抑制する可能性が示唆された“'ベまた破骨細胞にM-岱Fを添加すること に よって極性を有し細胞が拡がっていくことや“)、 数核の破骨細胞が十数核の核を持つ巨 大な破骨細胞へと 融合する融合促進因子であること刀)も報告されている。 さらに、 破骨 細胞の形成を支持する骨髄間質細胞砧)がM-仁志Fを産生することから、 M-CSFが破骨細 胞を分化形成させるだけでなく、 吸収を終えた破骨細胞を別の部位へと移動させること
によって破骨細胞の活性化を調節していると思われる。 造血幹細胞は間質細胞 存在下で 破骨細胞へと分化するが、 M-仁志F単独ではマクロファージへと分化していく38,74)。 さら にM-CSFが骨吸収を抑制すること71)から、 ディスパーゼ処理後、 M-仁志F を添加するこ とによって破骨細胞から マクロファージへと分化する可能性も考えられる。 しかし、
M-CSF添加24時間後、 残存している多核細胞は すべてTRAP陽性細胞で、 マクロフア ージのマーカーの一つである非特異性エステラーゼ(NSE)染色で陽性の細胞は認め
られなかった。 また、 われわれの実験系ではデ、イスパーゼ処理後に純化されたTRAP陽 性細胞には単核のものが占める割合が多く、 M-CSF を添加することによって、 単核の T孔t\P陽性細胞が融合し、 見かけ上の生存率が上昇している可能性も否定できない。 し かし、 ディスパーゼ処理直後のTRAP陽性単核細胞の数と 24時間後のTRAP陽性単核 細胞の数にはそれほど変化がないことや、 ハイドロキシウレアで細胞増殖を抑えても延 命効果が認められることからもM-αFが見かけ上生存率を上げているのではなく破骨 細胞様細胞の延命効果 をもつことが強く示唆された。
IL-lは主として単球、 マクロファージが産生するサイトカインでα、 。のサブクラ スが 存在するがその受容体は同一であり、 ほぼ同じ生物活性 を有している75)。 IL1は骨 髄細胞など を用いた培養系で破骨細胞の形成 を促進する初)とともに骨器官培養において 強力に骨吸収を促進するω〉だけでなく、 骨形成促進作用押)もあわせ持つ。 赤津らはマウ ス骨髄培養系においてIL-lによる破骨細胞形成がインドメタシンによって完全に抑制 されること、 またその抑制 作用がPGE2添加で解除されることから破骨細胞の分化過程 がPGE2に依存している可能性 を報告した70)。 さらにIL-lは骨芽細胞のPGE2の産生を 促進し、 PGE2自体も骨芽細胞のコラゲナーゼ産生を誘導することが知られている刻。
このようにIし1による骨吸収の多くの 過程にPGE2が関与していると思われる。 また 骨吸収促進作用はIL-lが骨芽細胞に 作用し、 産生される因子を介した 作用であるとい われている九ところが、 骨芽細胞刃)や線維芽細胞釦)などの間葉系細胞はLPSやIL-lな どの炎症性因子の刺激によってIL-lを産生することが知られており、 栗原らは培養破骨 細胞様細胞上にIL-lの受容体が 存在すること を免疫組織学的に81)、 また1可で標識した
IL-lのオートラジオグラフイーを用いて示している但)。 さらにHeshengら巴)はIL-lが 直接破骨細胞の細胞内カノレシウム濃度を変化させることを報告している。 実際にわれわ れの実験結果でもIL-lに破骨細胞様細胞の生存率を上昇させる効果が認められ、 さら にインドメタシンを添加しでもその効果は抑制されず、PGE2に は破骨細胞様細胞の 延 命効果は認められなかったことをあわせ考えると破骨細胞上にIL-lの受容体が存在し、
IL-lが破骨細胞様細胞の延命にPGE2を介することなく直接的に作用 する可能性が強く 示唆された。
また破骨細胞に は多数のカルシトニン(CT)受容体が存在し14)、 破骨細胞に直接作用 して細胞を収縮させることによって骨吸収を抑制することが知られている13,21)が、 われ われの実験結果ではCTは破骨細胞様細胞の生存率に何の影響もおよぼさなかった。 し かし、 ディスパーゼ処理によってcr受容体が消失し、crに対する応答性も消失した可 能性も考えられるので12)で標識したCTのオートラジオグラフイーで検討したところ cr受容体の数は減少しているがCT反応性のサイクリックAMPの上昇が認められた (未発表データ)ことからもCTに対する応答性が消失したとは考えられない。 このこ とからも、crは破骨細胞の生存率には影響がないと思われる。
M-仁志F、IL-lαは至適濃度以下でも同時に添加させると相加効果的に破骨細胞様細胞 の生存率の上昇が認められる。 しかし、 M-CSF、IL-lα単独、 さらに共存下でもFBS の非存在下では破骨細胞様細胞の延命効果は認められない。 このこ とからM-αF、
IL-lαは破骨細胞様細胞の延命効果に十分ではなく、FBS中に合まれるある種の因子が 重要であることが示唆される。 破骨細胞はビトロネクチン受容体(αv ß3)、 αv ßl、 α2 ßlなどのインテグリンを発現しており以問、 これらのインテグリンが破骨細胞と骨基質
との接着に 関与していると言われている白川。 また、 好酸球はフィブロネクチンに接着 することによって生存率が上昇するという報告あ)もあり、 今後、 M-仁志F、IL-lαの破 骨 細胞内情報伝達機構の解明とインテグリンの関係、 さらには破骨細胞様細胞の延命効果
との関係について検討する必要がある。
総括
(第1章)
1、 マウス骨髄細胞とマウス骨髄間質細胞株ST2細胞との共存培養系にbFGFを添加 すると破骨細胞様細胞の形成は濃度依存的に抑制され、 さらに形成された破骨細胞様細 胞は非存在下のものと比較すると小型のものが多かった。
2、 bFGFはST2細胞に直接的に作用するが、 破骨細胞の前駆細胞の増殖には抑制効 果を示さなかった。 またbFGFは破骨細胞様細胞の形成過程の中間期に添加すること に
よってその形成を著明に抑制した。
3、 bFGFはマウス骨髄細胞とマウス骨芽細胞との共存培養でも濃度依存的に破骨細 胞様細胞の形成を抑制した。 さらに1α,25(OH)2D3だけでなくPGE2やIL-llによっ て誘導される破骨細胞様細胞の形成も抑制した。
4、 bFGFは破骨細胞様細胞による骨吸収を抑制した。
以上のことからbFGFは破骨細胞の分化過程および骨吸収過程を抑制する骨吸収調節 因子である可能性が示唆された。
(第2章)
1、 マウス骨髄細胞とマウス骨髄間質細胞株ST2細胞との共存培養系で形成された破 骨細胞様細胞をディスパーゼ処理によってT孔ぜ陽性細胞を純化することができた。
2、 ディスパーゼ処理によってST2細胞を除くと24時間後には約80%の破骨細胞様 細胞が死滅するが、 sτ2細胞を新たに添加すると細胞密度に依存して破骨細胞様細胞の 延命効果が認められた。
3 、 ST2細胞 の 培養上清でも同 様に破骨細胞様細 胞の延命 効果が認 められた 。 4、 骨のリモデリングを制御していると考えられる諸因子について同様に検討したと ころM-CSFおよびIL-lαに破骨細胞様細胞の延命効果が認められた。
以上のことから破骨細胞様細胞の延命 には蛋白性の液性因子が関与することが考えら れた。 また従来報告され ているM-CSFの延命効果のほかにIL-lαが破骨細胞様細胞の 延命 に直接的に作用している可能性が示唆された。
謝辞
稿を終えるにあたり、 御懇篤なる御指導、 御校閲をいただきました九州大学歯学部生 化学講座古賀敏生教授ならびに、 このような研究の機会を与えて頂きました九州大学歯 学部口腔外科学第一講座田代英雄名誉教授、 大石正道教授に深甚なる謝意を表します。
また破骨細胞様細胞の誘導法についての御指導を頂きました九州大学医学部整形外科学 講座首藤敏秀博士、 懇切なる御指導を頂きました九州大学歯学部生化学講座平田雅人 助教授、 口腔解剖学第二講座久木田敏夫助教授、 口腔外科学第二講座池辺哲郎博士な らびに昭和大学歯学部生化学講座須田立雄教授、 高橋直之助教授、 字国川信之博士に 深甚なる謝意を表します。 貴重な試料および御意見を頂きました九州大学医学部整形外 科学講座悌淵孝夫博士、 神宮司誠也博士、 科研製薬株式会社薬理研 究部田村誠博士に 深甚なる謝意を表します。 さらに、 研究の協力ならびに励ましを頂きました歯学部生化 学講座、 口腔外科学第一講座の教室員の皆様に深く感謝いたします。