九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
油井管特殊ねじ継手の回転曲げ疲労特性に関する研 究
奥, 洋介
https://doi.org/10.15017/4060164
出版情報:九州大学, 2019, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
(様式2)
氏 名 :奥 洋介
論 文 名 :油井管特殊ねじ継手の回転曲げ疲労特性に関する研究 区 分 :甲
論 文 内 容 の 要 旨
石油,天然ガスの生産に使用される油井管を接続する油井管特殊ねじ継手において,近年,新し い掘削技術(DwC, Drilling with Casing)の発達により,耐疲労性能が重要な性能の一つとして着目 されるようになりつつある.これまで油井管は予め掘削した坑井に敷設され,引張,圧縮,内圧,
外圧に耐えうる静的な強度を基準に設計されていた.近年は油井管の先端にドリルビットを装着し て掘削と油井管の敷設を同時に行う手法,DwCが普及し始めていることにより,油井管は屈曲した 坑路の掘削時に回転曲げ疲労を受けることになり,新たに疲労強度が重要になった.そこで,本研 究では,実体疲労試験と基礎試験によって,油井管特殊ねじ継手の疲労破壊モードおよびそれらに 及ぼす影響因子を解明することを目的と定め,以下の検討を実施した.
第1章では,油井管特殊ねじ継手はどのようなものであるか,またそれに要求される性能などに ついて述べ,さらにこれまでに行われた油井管特殊ねじ継手の疲労強度の研究を紹介した.そして 過去の研究では疲労破壊の原因や機構の解明にまで踏み込まれていないことを述べ,本研究の必要 性を明らかにした.
第 2 章では,2 本のパイプをスリーブでねじ締結した油井管特殊ねじ継手を対象に,4 点曲げ式 回転曲げないし,共振型の実体疲労試験を実施し,疲労破壊モードの解明に取り組んだ.パイプ側 には雄ねじ部材であるピンが,スリーブ側には雌ねじ部材であるボックスが切削加工により形成さ れている.実体疲労試験の結果,比較的高応力振幅の領域では,貫通き裂の起点はピンねじ底の曲 面止端近傍となっており,疲労破壊の原因は曲面の応力集中であることを明らかにした.一方,比 較的低応力振幅の領域では,貫通き裂の起点がピンねじ底中央近傍となっており,疲労破壊の原因 はピンねじ底面とボックスねじ山頂面の接触部に生じるフレッティングであることを明らかにした.
第3章では,接触中央部からのフレッティング疲労き裂発生の素過程を解明するため,油井管材 料を対象としたブリッジパッド式フレッティング疲労試験を実施した.有限要素法解析より,実機 ねじ底の締結時の接触面圧を算出し,この接触面圧が従来から研究が進められている接触端部にお けるフレッティング疲労破壊を生じる接触面圧よりも比較的低いことを見出した.この接触面圧を 適用したフレッティング疲労試験の結果,接触中央部から主き裂が発生し,実機ねじ底で発生する フレッティング疲労き裂の再現に成功した.また,途中止めフレッティング疲労試験を実施し,比 較的低い接触面圧の場合は大きな相対すべりに起因してフレッティング摩耗が顕著に生じ,接触端 部の接線応力の集中が緩和されることでフレッティング疲労き裂の発生位置が接触内面に移動する ことを明らかにした.つまり,全すべり状態での接触面の大きな相対すべり量が,実機ねじ底で生 じるフレッティングの主要因の一つであることを明らかにした.
第4章では,油井管特殊ねじ継手に適用されている表面処理および潤滑剤が,フレッティング疲 労特性に及ぼす影響を評価するため,リン酸マンガンと銅めっきの2種類の表面処理を実機のボッ
クス表面に適用し,実体疲労試験を実施した.その結果,銅めっき処理により,疲労強度が向上し た.また,同様の表面処理と潤滑剤を適用したフレッティング疲労試験も実施し,リン酸マンガン 処理した接触片におけるフレッティング疲労強度が潤滑条件下で格段に向上することが明らかにな った.一方,銅めっきでは実体と異なり,予想したほどフレッティング疲労強度は向上しなかった.
一連の実験から,表面処理によるフレッティング疲労強度の向上は潤滑被膜が維持されている場合 に顕著であり,フレッティングに伴って潤滑剤が接触面から排出され潤滑被膜が途切れると被膜の 効果も失われること,あるいは反対に被膜が疲労強度を向上させる効果を示すには,潤滑が維持さ れる必要があることが明らかになった.
第5章では,油井管特殊ねじ継手が実際に使用されているときの応力状態を考慮して,引張平均 応力を負荷した実体疲労試験を実施し,引張平均応力が疲労強度に及ぼす影響を評価した.疲労強 度は,引張平均応力を負荷した場合,平均応力を負荷しない場合よりも低下した.疲労破壊した供 試体の観察によると,引張平均応力を負荷しなかった場合は,貫通き裂の起点がピンねじ底の中央 近傍となっており,フレッティングが疲労破壊の原因と考えられる.一方で,引張平均応力を負荷 した場合,貫通き裂はピンねじ底曲面から発生しており,曲面の応力集中が疲労破壊の原因である と考えられる.また,修正Goodman 線図より求まる両振り等価応力を用いることで,引張平均応 力を負荷した場合でも,油井管特殊ねじ継手の疲労強度を評価できる可能性があることを見出した.
第6章では,本論文を総括した.