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新規抗炎症化合物の作用機序解明に関する研究

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

新規抗炎症化合物の作用機序解明に関する研究

鶴田, 朗人

http://hdl.handle.net/2324/2236170

出版情報:九州大学, 2018, 博士(臨床薬学), 課程博士 バージョン:

権利関係:やむを得ない事由により本文ファイル非公開 (3)

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(様式9-3)

氏名 鶴田 朗人

論文名 新規抗炎症化合物の作用機序解明に関する研究 論文調査委員 主 査 九州大学大学院 薬学府 教授 大戸 茂弘

副 査 九州大学大学院 薬学府 教授 小柳 悟 副 査 九州大学大学院 薬学府 准教授 島添 隆雄 副 査 九州大学大学院 薬学府 准教授 松永 直哉

論文審査の結果の要旨

炎症はがんや生活習慣病など様々な疾患と密接に関連しており、外因性・内因性侵襲物によって 生じる組織細胞の損傷に対する免疫応答が、多岐のシグナルを介して転写因子を活性化することで 引き起こされる。炎症を抑制または防止するには、炎症反応を引き起こすリスク因子を阻害または 除去することが重要であるが、その病態が非常に複雑であるため、対処的に用いられる既存の抗炎 症薬では奏功しない例も少なくない。そのため炎症の根幹を成す新たな機構の解明と、これに基づ く抗炎症薬の開発が望まれる。これまでに当研究室では、数千からなる化合物ライブラリーを対象 にHigh throughput screening (HTS)を実施し、新規の抗炎症化合物を発見したが、本化合物の標的分 子や抗炎症作用機序は不明である。従って本研究では、新規抗炎症化合物を基軸に新たな炎症機構 の解明と、臨床応用に向けた検討として慢性肝炎モデルマウスを対象に薬効を解析した。

まず、新規抗炎症化合物の標的タンパク質を同定するために、過去の検討で本化合物が抗炎症作用を 示した臓器の1つである肝臓を対象に検討した。ビオチン化標識した新規抗炎症化合物と肝臓タンパク 質抽出液を反応させてプルダウンアッセイを行った結果、新規抗炎症化合物と結合するタンパク質とし てNovel inflammatory factor (NIF, 仮称)を同定した。そこで、NIFと炎症反応との関連性を明らかに するために、NIF ノックアウト (KO)細胞を作製して検討した。Lipopolysaccharide (LPS)を曝露した未 処置(Naive)細胞と NIF KO 細胞に発現する遺伝子についてマイクロアレイ解析を行った結果、NIF KO 細胞では炎症関連遺伝子の発現の低下が認められた。LPS 曝露により活性が上昇する転写因子 に及ぼす NIF KO 影響を、転写活性予測プログラムである weighted Parametric Gene Set Analysis

(wPGSA) を用いて解析した結果、NIFはp65の転写活性を制御することで炎症に寄与することが明

らかになった。p65 タンパクの転写活性制御における NIFの機能を解析した結果、NIF タンパク質 は核内アセチルCoA含量を増加させることでp65タンパクのアセチル化を促進し、炎症に関連する 遺伝子発現量を制御することが示唆された。

次に、p65の転写活性には明期をピークとする概日リズムが認められたことから、p65の転写活 性概日リズムとNIFの発現に相関があるか否か検討した。NIFが高発現するマウス肝臓を対象に、細 胞質画分と核画分に分離抽出して、それぞれの画分におけるNIF発現量を測定した。その結果、核

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画分のNIFタンパクの発現量には明期をピークとする有意な概日リズムが認められた。核移行シグ ナル(NLS)を有さない NIF タンパク質の核内発現量に概日リズムが認められた現象について、その 制御機構について解析した。その結果、時計タンパクのひとつであるBMAL1がNIFタンパク質と 相互作用して核内NIFタンパク質発現の概日リズムを制御していることを明らかにした。Bmal1 KO マウスから調製した胎児線維芽細胞(MEFs)では核内のNIFタンパク質量および核内アセチルCoA含量、

アセチル化p65タンパク発現量がいずれも低値を示し、NIF KO細胞と類似した結果が認められた。こ れらの結果から、BMAL1がNIF タンパクを核内へ輸送し、核内NIFタンパクの発現量を制御する ことで、核内アセチルCoA含量およびアセチル化p65タンパクの発現量の調節をすることで炎症反 応に寄与することを明らかにした。

さらに、慢性肝炎から肝硬変、肝細胞がんへの進行が観察できるモデルとして、ジエチルニトロソ アミン(DEN)飲水肝炎モデルマウスを用い、NS-3-011 の構造を基に細胞膜透過性を改善した誘導体

NS-3-086 を投与して解析した。DEN 飲水投与により上昇した肝炎マーカーである血清 ALT 活性が

NS-3-086の投与により持続的に抑制された。DEN 飲水投与による肝臓線維化に及ぼすNS-3-086の薬 効を解 析し た結果 、線 維化マ ーカ ーであ る Collagen1a2 (Col1a2 )や Alpha smooth muscle actin (α-Sma)のmRNA発現量やマッソン・トリクローム(MT)染色による線維化領域の染色部位はNS-3-086 の投与により低下した。また、DEN飲水による肝細胞がんの発症に及ぼすNS-3-086の薬効を解析した ところ、腫瘍塊数および肝細胞がんマーカーであるα-fetoprotein (Afp) mRNA発現量の増加はNS-3-086 の投与により抑制された。以上の結果から、NS-3-086はDEN飲水肝炎モデルマウスの慢性炎症、肝臓 線維化および肝細胞がん発症を抑制することを明らかにした。

炎症はがんや糖尿病など様々な疾患と関連しており、炎症を抑制することは病態の進行を抑制 する上で重要であると考えられる。今回発見したNIFは炎症時のエピジェネティックな遺伝子発現制 御に影響を及ぼしていたことから、NIFと他の炎症性病態との関連を解析することで、本分子の炎症に おける意義がさらに深まり、新たな治療標的分子として可能性が広がると考えられる。今後、NIFに着 目した病態解析を行うことで新規の疾患発症機構の解明に繋がる可能性もある。これらのことから、

申請者は博士(臨床薬学)の学位に値すると認める。

参照

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