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小 ・中 ・高校生における自己概念の発達

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小 ・中 ・高校生における自己概念の発達

一 自尊感情育成におけるジェンダー視点か らの考察 を含めて‑

荻野佳代子

1.は じめに

中央教育審鼓会 (2006)は,学校教育にお け る今後の教育内容の改善の方向性の一つ として, 子 どもの 「社会的 自立の促進」 を挙 げている。

そ してその基礎 となる 「豊かな心」 を育むため に,個性や能力 を伸ば し,主体性 ・自律性 を育 成す ることの重要性 を指摘 してい る。 この背景 には,子 どもの意識調査において,諸外 国 と比 べて 日本の子 どもたちは 自己評価が低いこと, 一方 で規範意識 の低下やいわゆるキ レる子 ども な ど自己統制面 での課題 が指摘 され てきた こと な どが挙げ られ る。 こ うした実情 を踏 まえた う えで

,

「自他 の生命 を尊重 し,学習や生活 な ど に前 向きに取 り組む力を育てることを重視 し, その前提 となる健全な 自尊感情や人間関係 を築 く力な どを高め ることが求 め られ る」 と してい る。

さらに平成20年 に示 された 「中学校学習指導 要領解説道徳編 」 (文部科 学省, 2008)で も自 尊感 情‑の言及 がな され , 「基本 的 な生活習慣 や人間 として してはな らない ことな ど社会生活 を送 る上で人間 として もつべき最低限の規範意 識, 自他の生命 の尊重, 自分‑の信頼感や 自信 な どの 自尊感情や他者 ‑の思いや りな どの道徳 性 を養 う」 としている。 こ うした流れに沿って, 学校教育では子 どもの 自尊感情の育成 に向けて, 一方 では教科 を通底す る一つの視点 として検 討 がな され,他方 では道徳 をは じめ と した各教科 での具体的な取組が行われ てきた (安東, 2007,

佐久間, 2011ほか)0

もともと自尊感情 を含 めた 自己概念お よびそ の発達は心理学 にお いて重要 なテーマの一つ と して多 くの研 究が行 われ てきた。 そ して,子 ど もたちの 自己概念 の特徴 と して,年齢 ・学年が 上が るにつれ て 自己を否定的 に とらえる傾 向が 強 まることと同時に,女子 にその傾 向が強い こ とな どが指摘 され て きた (加藤 ・高木, 1980, 山本 ・松井 ・山成, 1982な ど)。 高橋 (2009) は,子 どもた ちが親や教師か ら,性別 に よって 異なった役割や行動 を期待 され てお り,そ うし た期待が子 どもの 自己概念の発達 に影響す ると してい る。 それ であるな らば,学校教育 にお け る自尊感 情の育成 において, ジェンダーの視点 を加 えることが よ り有効 であ る と考 え られ る。

よって本論ではまず, 自己概念なかで も自尊 感情 を と りあげその発達 について概観 し, さら に 自尊感情育成 に向けた学校 の取 り組み につい て整理す る。 その上 で 自尊感 情育成 にあた り, ジェンダー視点 を加 えることの有用性 について 論 じることを 目的 とす る。

2

. 自己概念 と自尊感情

自己概 念 (sel卜concept)とは , 対象 (客 体) としての 自己,お よび 自己の行動 に関す る 知覚や それ に対す る態度 ・感情 ・評価 な どを意味 している。 そ して, 自己観察 だけでな く周囲の 人々 との相互作用に よ り形成 ・発達 してい くも のである (松 田 ・松 山, 1988)。 自己概念 が包

(2)

神 森 川 大′'rJ:心理 .教 訂研 究論 妓 箭 31 (20123ノ」 31日)

括 的 , 記述 的概 念 で あ るの に対 して 自尊感 情 (self‑esteem)は 自己概 念 の評 価 的側 面 か つ 感情的側面 を表 してお り, 自己概念の一・部 と考

え られ る.

近藤

( 2 01 0)

に よれ ば, 自尊感 情 の研 究 は William Jamesが 「自尊感 情

‑「成 功経験」÷

「願 望 (自分 に とって価値 を置 く領域 での要求 水準 )」 と表現 し,個人 の願 望 との関係 で 自尊 感情 が形成 され るものであることを示 した こと に端 を発 している。

その後Rosenberg

( ユ 9 6 5)

は 自尊感情尺度 を 開発 し, 自尊感情が実証研究で用 い られ る概念 となる基礎 を作った。なお 日本では山本 ・松井 ・ 山成

( 1 9 8 2 )

が開発 した邦訳版 が よく知 られ て い る。 Rosenberg

( 1 965)

は 自尊感情 を 「自己 イメージの中枢的な概念で,一つの特別な対象, すなわ ち 自己に対す る肯定的 または否定的な態 度 である」 と した。 さらに 自分 自身に対す る評 価 の感 情 と して 「非 常 に良い (very good)」

と 「この ままで よい (good enough)」 の二つ があるが, 自尊感情 には 「good enough」 と感 じる こ とが大 切 だ と して い る。 この 「very good」の感 覚 を もつ に は他 者 との比較 が重要 であるが,一方 「good enough」 とい う感 覚 は 自分で 自分 を受け入れ る感情であるOすなわち, 自尊感情 にはよ り直接的に他者 との比較 による 部分 と, 内在化 された 自己評価の部分双方 が含 まれているのである。

なお, 自己概念 に関連す る用語 には 自尊感情 のほか 自尊心, 自己肯定感 な ど類似 の概念が多 くある。 と りわけ 自己肯定感 は人権教育をは じ め教育分野で も多 く使用 されている。 これ らの 概 念 はself‑esteemの略語 と して 同列 に使 用 され る場合が多いが,主に臨床心理学の立場か らは, 自尊感情が認知 レベルの認識 であるのに 対 し, 自己肯定感 は 自己を存在 レベルで肯定す る, よ り実存的な概念 との主張 もある。すなわ ち 自尊感情が実証研 究で用 い られ肯定 ・否定双 方の意味 を含む概念 なのに対 し, 自己肯定感 は 自己受容 に伴 う肯定的感覚であ り,実証にはそ

ぐわない とい うのである (諸 富

, 2 01 1

)0 一方Rosenbergが示 した とお り自尊感 情 を 自己 と他者 の二側面か らとらえる見方 は学習指 導要領が示す ところで もあ り,ここには 「育成」

す るもの と しての視点が含 まれた もの といえよ う。 ただ し, 自尊感情 を育成 し自尊感情が高 く な るほ ど望 ま しい こととは単純 にはいえない。

近藤

( 2 01 0 )

は, と りわけ教 育分野にお いて 自 尊感情 に対す る関心が高まってきた昨今 の状況 に対 し,′′self‑esteem運動〝ともい うべ き少 し 前のアメ リカの状況 と類似 していることを指摘

してい る。 すなわ ち, 自尊感 情 を高めることに よ り学業成績 を向上 させ ることが強調 され てき たが,現在 はその効果 に懐疑 的な動 きが出てい るとい うのであるQまた高すぎる自尊感情は リー ダー シ ップを とる うえでな ど負 の側面 も指摘 さ れ ている。 こ うした点 を考慮 しつつ も自尊感情 の高い子 どもとは,情緒 が安定 し,責任感 があ る,成績 が良い,他 の子 どもたちや先生 との ト ラブルが少 ない,社会規範 を よく守 る,授業態 度が よくクラスのま とめ役の行動 を とる,そ し て逆境 に強い とい うよ うな特徴があるといわれ ている (古荘

, 2 0 0 9 )

0

以下では 自尊感情研究の現状について概観 し, 自尊感情の発達 とその育成 について考 えてみた い。

3

. 自尊感情の発達

先述 の とお り自尊感情 は, 自己概念や その他 類似 の概念 との関係 があいまいに使 われ てきた ことに よ り,近接概念 で行われ ている研 究 も含 めて発達的側面 を考察す ることとす る。

友利 ら

( 2 0 0 4)

は 自尊感情 の発達について, 以下の よ うに説明 している。 まず,乳幼児期 は 親 か らの無条件 の愛情や受容 を基礎 とす るこ と か ら,条件付 きの愛情や受容お よび能力 を基本 とした 自尊感情 に変化 してい く時期 である。 そ して 「両親 か らの愛情 上 「身体 的 な能 力 」

,「

『良い』行為」 の3つ がその要因 とな るのであ

‑ 5 0‑

(3)

ト 中 ・高校 'j:.にお ける自己概念 の 発達 一白ヰ感情 育成 にお けるシェンダ‑視点 か らの 考察をTW )て‑

り,大 人か ら 「褒 め られ る」 といった肯定的な フィー ドバ ックを得 ることが重要である。 ただ し幼児期 の 自尊感情は とて も高 くかつ非現実的 であ り,また容易に変化す るものである。

小学生 弓ELl.童期 になると自尊感情 は現実 と結 びつ き. とりわけ知的能力 (コン ピテ ンス) を 基礎 とす る。 さらに同 じクラスの友達な ど他 の 子 どもたちとの相対的な評価が大 き く影響す る のである。 そ して対人関係 ,学問,身体 ,性格 な どの各側面にお ける感情‑ と分化す る。 小学 校 3年か ら4年生の ころは 自尊感情 に一つの節 目があるとされ る.古荘 (2009)も1年生 ごろ か ら自尊感情 は顕著に下が るが,それは この頃 の シ ョックな出来事が うつ病のきっかけになる ことが多い こと,幼少時か らの トラ ウマがある 場合 には この頃 までに介入す ることが重要 とす るそれ までの精神科臨床 の領域 にお ける指摘 と 一致す ると している。

中学生 ・思春期 になると,よ り一層 自尊感情 は低下す るが,男子 よ り女子の方が早 く大 き く 低 下す るD学業成績 ,身体的能力に加 えて社会 的な感受性 が第二次性徴 とあいまってよ り一層 敏感 になるのであ り,それ までの両親 との関係 か ら仲間 との関係 によ り自尊感情が大 き く影響 され るよ うにな るのである。

4

. 日本 の 小 ・中 ・高 校 生 の 自尊 感 情 実証研 究にお いて, まず東京都 (2009)では 小学校1年生か ら高校3年生まで学年が上が る につれ て 自尊感情が低 下す ること,ただ し中学 3年時のみいったん上が るが高校生 でまた低下 す る とい う結果 が示 され ている。古荘 (2009) も同様 で,小学校 2年生か ら中学校 3年生 まで 学年 が上が るご とに 自尊感情が低 下 してお り, と りわけ小学校

4

年生か ら大 きな低 下がみ られ るが高校1年生では若干の上昇がみ られ ること, また男女 では女子が低 い ことを示 している。 さ らにQO L (クオ リテ ィ ・オブ ・ライ フ :生活 の質)尺度 として身体的健康,家族 ,友達,学

校の満足度 につ いて も調査 しているが 自尊感情 と同様 の傾 向を示 しているのは 「学校」‑の満 足感 の領域であった。

加 えて ドイツ,オ ランダ との国際比較の結果, 日本人児童 ・生徒は大幅に 自尊感情が低いこと, ただ しオランダ 日本 人学校 の小 ・中学生は 日本 の学生 よ り高い得点にあることを示 してお り, 家庭 だけでな く学校 ・社会的要因の影響 を考慮 す る必要がある といえる。

こうした 日本 の子 どもたちの 自尊感情の低 さ は1970,80年代頃 よ り指摘 されてお り,それ は 本心 を抑圧す る 日本 人の特性 と関係す るのでは ないか とい う議 論がある。 自分の ことを 「価値 がある」 と表 出す ることを他 人の反応 を気 に し て抑制 している とい うのであ るC これ につい 東京都 (2009)では,他者 との関係 で 自己を客 観的に とらえ 自己概念 を形成 してい く思春期以 降に, 日本の子 どもの 自尊感 情が低下す ること と符合す ると指摘 している。 一方古荘 (2009) は一時期,本心では 日本 人の 自尊感情 は他 国 と 差がない と した論調があった ことに対 し,本心 を抑圧す る特性 その もの を自尊感情の低 さにつ なが る葛藤 と して とらえるべ きである し,なに よ り子 どもたちの 自尊感情得 点の絶対値 の低 さ が教育現場の感 覚 と一致 していることを問題視

してい る。

また,高橋 (2009)は子 どもの 自己肯定感 と して小学4年生, 6年生,中学2年生 を対象 に 調査 を している。 この結果や は り学年が上が る につれて 自己肯定感 を持 てな くなっていること, さらに中学2年生で性差が現れ女子 の方が低 い ことが示 されているO とくに 「だめな人間だ と 思 うこ とがあ る (逆転項 目)」 に 「はい」 と回 答 した割 合 が小 学4年生 で は女子31.6%, 男 子30.6%とほぼ同 じだが, 中学2年生 では女 子55.9%, 男子45.1%に上 り差 も開 いてい る (図1)。一方 「将来の夢や 目標 がある」の項 目 は 「は

」 と回答す る割合が 中学2年生で女子 が66.3%に対 し男子 は58.2%とな ってお り, 男子の方が肯定的な回答が少 ない項 目も一部 あ

(4)

神奈川大乍心理 ・教育研 究官爵妹 第 31号 (2012年 3j131日)

図1 児童 ・生徒の 自己肯定感 「だめな人間 と思 うことが あ る」 (高橋.2009)

る。 よって単に女子のみ を注 目す るのでな く, 男女 それ ぞれ の特徴 を考慮 す る必要 があ る とい

える。

以上 の よ うに, 自尊感 情お よび関連す る実証 研 究 にお いてはや は り子 どもた ちの 自尊感 情の 低 さお よび年齢 とともに低 下す るこ と, さ らに 女子 に よ り低 い とい う点は一貫 した傾 向 といえ そ うであ る。 以 下では この実態 を踏 まえて現在 教育現場 で行 われてい る取組 についてみ ていき た い 。

5

. 自尊感情 を 「育む」学校教 育での取 組み

学校 にお ける 自尊感 情 を 「育む」取組み に向 けて東京都(2009)は,子 どもの発達段階 に応 じ た 「自尊感情 を高め るための観 点」 と して以下 の5点 を挙 げて い る。

① 自分 への気 づ き

自分 がで きた ことやがんば った こと,得意 な こと, よ さ等 に気 づ くとともに, 自分 の行 動や考 え方 を受 け止 め, 自信 をもつ

② 自分 の役割

集 団や様 々な人 間関係 にお け る 自分 の役割 に気づ くとともに,周 りの人のために役 にたっ てい る ことを理解 す る。

(∋自分 の個性 と多様 な価値観

自分 の考 え方や行動 その ものの良 さを理解 す る とともに,周 りの人 の多様 な考 え方 を知

り,受 け止 め る。

(む他者 とのかかわ りと感謝

多様 な集 団の 中で活動 し,人 とのかかわ り を広 げ る とともに,周 りの人 の支 えがあって 自分 の活動 が充実 してい る ことを理解 し,感 謝の気持 ちを もつ。

⑤ 自分 の可能性

自分 の行動 の達成感 を感 じる とともに,失 敗や 困難 は 自分 ひ と りだけではない とい う安 心感 をもち,努 力すれ ばで きる とい う自分‑

の可能性 をもつ。

以上は,教科 ・領域等や集 団 ・個人 に対す る 指導 ・援助 の区別 にかかわ らず ,あ らゆる場 面 で留意す ることが重要 と して示 され た ものであ

‑ 52‑

(5)

小 ・中 ・高校生 にお ける 自己概念 の発達 ‑自噂感惜 育成 にお けるジェンダー視点か らの考察を含 めて‑

る。

次に学校 における教科 ごとの取 り組み を見 ると, 自尊感情が強調 され たのはまず人権教育や道徳 の領域 にお いてである。人権教育において 自尊 感情 は,人権問題 を解決す るために行動できる 人材 を育成す る要素 と して重視 され てお り,そ れは 自他の理解 とその尊重が基礎 となるためで ある。子 どもの 自尊感情 を育む うえで学校教育 は,彼 らが もっ とも多 くの時間を過 ご しそ こで 他者 との関わ りか ら自分が評価 され,さらに様々 な活動 をとお して多様 な感情 を持つ 自分 に気づ く場 とい う意 味 で重 要 な役割 を持 つ ので あ る (大西,2005)0

一方道徳 活動 において佐久間 (2011)は, 自 分 と向き合 う時間 としての道徳授業が 自尊感情 形成 に大 きな役割 をもつ と主張 し, とくに学習 指導要領 に示 された内容項 目の うち以下 との関 連が深 い と指摘 し各テーマに沿 った道徳授業プ ログラムを示 している。

(∋生命尊重‑生 まれ てきてよか った とい う感情 をは じめ 自他 の生命 の尊 さを理解す る。

②個性 の伸長 ‑・特に 自己理解が深 まる中学生の 時期に, 自己の欠点のみでな く良 さも理解 し,

自己を肯定的 に とらえ (自己受容), 目標や 希望 をもっ ことの大切 さを知 る。

③人間の良 さ ・生 きる喜び‑・自己満足ではな く, 人か ら認 め られ る喜びな どを とお して同 じ人 間 と して ともに生 きてい くこと‑の喜び を感

じる。

④ よ りよい社会 の実現 ・集団生活の向上‑・学校 の集 団生活のなかで役割 と責任 を担 い,その なかで ともに支えあって生 きる気持 ちをもつ。

さらに安東 (2007)は,各教科 において 自尊 感情 を育む視点 を生かす授業の例 を紹介 してい る。

① 国語 では, グループ学習にお いて物語の題材 を複数化 しそれぞれ別 の題材 を読む。 こ うし た工夫に よ り他者 との比較 を少 な く した うえ で生徒 を交流 させ,それぞれが成長 を実感 で きるよ う配慮 している。

②社 会科 では, a.困難 な課 題 に個 人 または共 同で取 り組 む ことによ り充実感や達成感 を味 う。 b.教 師や 他 の生 徒 か らの肯 定 的 な評価 を通 じて互 い を認 め合 う。 C.学 習前後 の振 り返 りによ り自己の成長 を実感す る。 こ うし た過程 を学習活動 のなかで取 り入れ ている。

③数学や理科 では,なぜ そ うな るのか,素朴 な 疑問や驚 き,知的好奇心 を大切 に し,そ こか ら困難 な課題 に挑戦す る経験 をす る。 そ して 分か った とい う達成感 を味 わい, 自己の成長 への実感 につなげることを主眼 と している。

④音楽や美術 では, 自分 の表現 したい ことを相 手に伝 え,その ことによ り自信 を得 ることな

どを 目指 してい る。

ただ し,教科 の学習では教科 の本質的 な指導 目標 を達成す ることが第一義 で, 自尊感 情はそ の結果 として高 まるもの と位置づけ られている。

また教師に求め られ る姿勢 と しては

〜 を しな さい」

,「

〜はだめです」 とい った否定的強制的 指導ではな く

〜は良い表現 ですね」な ど肯定 的な指導 を加 えること,また グループ学習な ど を行 う際には,互 いを肯定的 に評価 で きるよ う なメンバーの配置や グルー プの雰囲気づ くりな どの配慮が求 め られ てい る。

6

. ジ ェ ンダー の視 点か らみ た 自尊 感情 の育成

これ まで学校教育 にお ける 自尊感 情の育成 に ついて概観 してきた。 しか し実証研 究では多 く 指摘 されている自尊感 情 の男女差 について, こ れ をふ まえた育成方法に触れ た ものはあま り見 当た らない。 しか し例 えば八木 (1991)は女性 が女性性 を獲得す ることが 自尊心の基盤 となる と指摘 してお り,これには批判 もあるが (園 田, 2000), 自尊感 情 とジェンダーの関連 の強 さを 示唆す るものである。

また先述の とお り道徳教育 において 自尊感 情 育成 に果 たす役割 は大 きいが, これ まで道徳性 の発達 についてジェンダーの視 点で多 くの議論 がな され てきた。道徳性 の発達段階 を提唱 した

(6)

神 奈川大7:心理 ・教育研 究論処 31号 (2012年 3)j31円)

のはKonlberg,Levjne

,&

Hewer (1983片瀬 ・ 高橋訳 1992)だが,彼 は 「公正 と正義」に よっ て善悪 を判断す る と した道徳性 の発達 にお いて 女性 は男性 よ りも劣 った もの とみ な していた。

それ に対LGilligan (1986岩 男 監訳 1982) は,女性 の道徳性 は 自己 と他者 に対す る 「配慮 と責任 」 に よって判断す る とい う男性 とは別 の 発達 をた どる,す なわ ち男性 は独 立志 向,女性 は関係志 向 とな る と主張 したので あるC その後 の研 究 では道徳性 の判断 に男女差 はない,あ る いはGilliganが女性 特 有 の価値 が あ る こ とを 主張す ることによ り逆 に男女の特性 を固定化 さ せ て しま うとい う指摘や批判 もあ る。 しか し道 徳性 をジェンダー視 点 で とらえるこ との重要性

を主張 した点 は意義 があ るもの といえるo これ と同様 自尊感情 は 自分 自身 の評価 と他者 か らの評価双方か らの影響 を受 け る とされ てい るが,ステ レオタイプ と しての女性 は よ り他者 か らの評価 に影響 を受 けることが考 え られ る。

前 出の高橋 (2009)の調査 では,性 別期待 に つ いて

,

「男 (女 ) だか ら〜 しな さい」 と言 わ れ る程 度 は, 中学2年生 で女子 が65.5%, 男 子 が49.4% (「い つ も言 われ る」

,

「時 々言 われ る」 と回答 した割合 の合計) と女子 に多い こと, また男女 ともにそれ を頻繁 に言われ ることは 自 己肯定感 に負 の関連 してい るこ と, しか し適度 な頻度 で言われ る ことは男子 のみ 自己肯定感 に 正の関連 を してい ることを示 してい る。

さらに,学校 にお いて 「友達 に 自分 の気持 ち をはっき り言 える」 とい う項 目に 「あてはま る

と回答 した割合 は男女差の大 きい 中学2年生 で 女 子47.7%に対 し男子 は35.5%と少 な い。 一 方 「友達が 自分の こ とを ど う思 ってい るか気 に な る」 と回答 した割合 は中学2年 生で女子66.0

%に対 し男子 は44.9%であ る。

こ うした結果か ら,女子 については,性別期 待が 自尊感 情 に負 の影響 を与 えてい る こと,悼 別期待 に沿 って関係性 を重視す る こ とは他者 と の コ ミュニケー シ ョンや 良い関係 づ く りに役 立 つ一方 で,他 人の反応や評価 が気 にな り抑圧 さ

れ てい る可能性 が考 え られ るO また男子 につ い ては,適度 な性別期待 が 自尊感 情 に正 に影響す るが,それ が 自己表現 を抑圧 し他者 との関係 づ く りに負 に影響す ることが推 測 され る。 よって ジェンダーの視点 で教育 を考 える とき,一般 に 女子‑の配慮 に傾 きが ちであ るが,両性 に とっ ての配慮 が必要 といえる。

ジェンダーの視 点で教育 を とらえるその論 点 は種 々 あ るが , 例 えばAskeⅥ・& Ross (1988 堀 内訳 1997)は,男 女 は社 会 化 の過程 が異 な り,性差別解 消に向けたプ ログラム も大 きく異 な る と指摘 してい る。す なわ ち女子 に対 しては 社会 にお ける女子 への差別のパ ター ンを明確 に し,それ をな くす方 法 を考 え るこ とが有効 であ るが,一方男子 に対 しては, ステ レオタイ プ的 な差別 を理解 した上 で男子 が受 けてい るプ レッ シャー につ いて考 え,男 らしさの 「規範 」 を変 えることに支援 的な雰囲気 をつ くるこ とが有効 と してい る。 そ して現在 のイ ギ リスでは男子 の 方 に よ り支援 が必要 であ り, と りわ け男子校 の 中にあ る性 役割 強化 の メカニ ズム (学校 自体が 攻撃的 ・競争 的な行動 を奨励 し,社会的相互 関 係 を築 くことを抑制す る)か らの解放 が必要 だ と しそのためのプ ログラムを開発 し実践 してい る。

また土 田 (2008)は同 じ男 子校 で も進 学校 と 進路多様校 の普通科 ,専 門科 コースの3コー ス で 自尊感 情の比較 を行 ってい る。 その結果進学 校 の男子 は幸福感 も高 く,親 の期待 を感 じ勉強 に も自信 を持 ってい る。 また普通科 コー スの男 子 はスポー ツや友 人関係 に 自信 を持 ってい る

一方 専 門科 コー スの男子 は幸福感 が低 く

,

「私 は とて も幸せ だ」 と回答 す る割 合 は進 学校 の生 徒 の82.8%に比 べ62.0%に と どま って い る。

また友 人関係 や親 か らの期待 も他 の2コー スに 比べて否定的であ り,孤独 で 自信 のない 自己表 現 の苦手 な男子 の姿が表れ て いる。 そんな彼 ら に対 し教員側 は,彼 らをあ るべ き男子 ら しさか ら解放 させ よ うとす る一方 で,成績 も中位 以下 の彼 らには将来の選択肢 は女 子 よ りも少 な く,

‑ 54‑

(7)

小 ・中 ・応佼牛にお ける自己概念の発達 一白噂感情 育成 にお けるジェンダー視点 か らの考察 を含 めて‑

自ら進路 を決定す る力 も弱 いため, 自立 したあ るべ き男子 ら しさ‑支援 しよ うとす る矛盾 した 支援 が存在 してい る とい うのであ る。

しか し彼 らは,女子 か ら隔離 し強 い男子か ら も分離 して初 めて 自分 の居場所 が で きる とい う 層 であ り,彼 らに とって こそ重要 な男子校 の新 たな存在 意義 といえる。 土 田 (2008)は こ うし た状況か ら, これ まで ジェンダーの視点で もあ ま り注 目され て こなか った男子の多様性 に注 目 すべ きである と してい る。

一方今田 (2008)は,女子 につ いて,その進 路選択 は男子 と異 な り 「エ リー トか否か」 とい う軸 だけでな く 「良妻 賢母 か否 か」 とい う2つ の軸 に よって と らえるため複雑 であ る と してい る。 そ して進 学校 であ り,かつ 良妻 賢母 ではな くエ リー トを志 向す る者 が多い高校 の生徒 の 自 尊感情 が比較的高 い。 またそれ ほ ど進学校 では な く,かつ 良妻 賢母型 を志 向す る者 が多 い高校 の女子生徒 の 自尊感情 は低 い. 一方 で進 学校 で はないが 「ェ リー

」 かつ 「良妻 賢 母」 両方 を 志 向す るタイプが多 い女子校 の生徒 の 自尊感情 が最 も高 い ことを示 してい る。 この タイプは語 学 とい ういわゆ る女性 的 な特性 を伸 ばす ことに 力 を入れ ,それ に よって家庭 で も仕事 で も成功 しよ うとす るいわば 「女性性利 用型成功志 向

とい うべ き タイ プなのだ とい う。 これ は女子校 が生 き残 りをか けて打 ち出 した新 た なタイ プで あ るが,ただ し卒業後 の進 路 で本 当にそれ が実 現 で きるのかは未知数 であ る。 しか し,分化 し た女子の生 き方 に一つの方 向性 を打 ち出 した と い う点 では注 目すべ き とい える。

この よ うに,男子校 女子校 ともに ジェンダー を踏 まえて教育 お よび進路選択 の方針 に新 たな 方 向性 を示 している ことが明 らかになった。 生 徒 の ジェンダー化 にお ける男子校 ・女子校 の役 割 を論 じるのは本論 の趣 旨ではな く別の機 会 に 譲 るが, ここで注 目したいのは, 自尊感情 の育 成 を考 えた とき, ジェンダーの視 点 か らみ た学 校 の教育お よび進路指 導の方針 が生徒 たちの 自 尊感情 に大 き く関わ ってい るとい う点であ る。

またそれ は学校 が ジェンダー化 され た社会 の現 状 を どの よ うに とらえ,生徒 た ちに どの よ うな 力 をつ けて送 り出す か,す なわ ち社会 ‑の橋 渡 しの役割 を どの よ うに認識す るか とい うことと 深 く関連す るであろ う。 同時 に学校教育 にお け るジェンダーの前提 その ものが これ までの伝統 的/非伝統的では とらえきれ ない,多様 かつ新 たな生 き方 を提示す る必要 に迫 られ てお り,そ れ が と りわ け一部 の男子校 ・女子校 の取 り組み にすでに表れ て きてい る ともい える。 こ うした 点 にお いて今後 , 自尊感 情 の育成 を進 路指導お よびキャ リア教育 のなかで取 り上げ ることもよ り重要 にな る とい えよ う。

以上,本論 では 自己概念 とくに 自尊感 情 の発 達 につ いて整理 し,児童 ・生徒 の現状 と学校 で の育成 につ いて概観 した。 そ の上 で児童 ・生徒 の 自尊感 情育成 に向け, ジェ ンダー視 点 を含 め た育成 ,指導方 法 を検討す る こ との有用性 を論 じた。 本論 では未だプ ログラムな ど具体的 な方 策 の提案 には至 らなか ったが ,それ に向けまず 自尊感情育成 につ なが るジェ ンダー視 点 での理 論的検討 をよ り精微 な もの と してい くことが今 後 の課題 であ る。

文献

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