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自己実現へ導く教育のあり方

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Academic year: 2021

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自己実現へ導く教育のあり方

一小学校総合的な学習の時間を中心にー

学校教育専攻 総合学習開発コース 岩 田 弘 志

1 .問題の所在

次期学習指導要領改訂では,ゆとり教育の見産 しにともなって総合的な学習の時間も時数が削減 される口ゆとり教育と総合的な学習の時間が学力 低下を招いたとする論議が後をたたないが,本来,

総合的な学習の時間で培う学力と教科学習で育成 する学力は相乗的・相互補完的なものである。

学習者の主体性重視を主眼とする総合的な学習 の時間は,学習者の自尊感情を向上させ,むしろ 学カ向上に効果的な影響を与えている。

筆者は,そうした総合的な学習の時間と学力の 関係,総合的な学習の時間と自尊感情の関係,ま た総合的な学習の時間と自己実現の関係,自尊感 情と自己実現の関係から総合的な学習の時間を核 としたカリキュラムによる自己実現の教育が求め られていると考えた。

2. 研究の目的と方法

研究の目的を学習者を自己実現へと導く教育の あり方の追究とした。

研究の方法としては,マズローの理論について の先行研究を分析することにより,学習者を自己 実現へと導く手立てを明らかにし

r

自己実現到 達学習モデルjの開発を試みたD

そして実際に児童を自己実現へ導いている教師 の優れた実践事例を,開発したモデルに当てはめ て分析すること,筆者自身の不十分な実践事例を モデ、ルで、分析すること,さらに「自己実現到達学

指 導 教 員 村 )

! I

雅 弘

習モデルJを基盤としたカリキュラムを開発し共 同研究校において実践すること,この3つの方法 によりモデ、ルの有効性を検証したD

3. 

r

自己実現到達学習モデルjの開発

自尊感情に関する先行研究の分析,マズロー自 身の著作の分析,マズロー以外の研究者の自己実 現理論の分析,マズ、ローの自己実現理論を基盤に した教育実践的先行研究の分析,その他,認知心 理学や教育工学分野の文献研究から,次のことを 明らカ=にした白

自己実現理論が自尊感情のもっとも向上した状 態をより詳細に説明しているものであることD

人が自己実現へと到達するには,まず欠乏欲求 を充足させ,自己実現欲求に動機づけられること が必要であり,次に主体的価値創造の発揮が,自 己実現的価値創造へとその主体性を深化すること が必要で、あり,自己実現的価値創造の継続が,自 己実現の一時的到達としての至高経験へと人を到 達させること。

至高経験を繰り返し経験することによって,そ の残効により,人は自己実現的人格へと変容する こと。

さらに学習者の自己実現に必要な教育的手立て を検討しf自己実現到達学習モデルjを開発した。

4. 

r

自己実現到達学習モデルjの検証

児童を自己実現またはその一時的到達としての 至高経験へと到達させている 2人の教師(兵庫県

‑214‑

(2)

篠山市立大山小学校教諭酒井達哉,東京都町田市 立小山田南小学校主幹野口徹)の実践を理想的な 実践として取り上げて,その手立てを分析し「自 己実現到達学習モデル」による説明を試みたとこ ろ 2人が児童を自己実現へと導くうえで重要視 している手立てのすべてを「自己実現到達学習モ デ、ノレjで説明することができた。また筆者の過去 の実践事例をモデルに当てはめて分析したとこ ろ,児童を自己実現へ到達させるためには,どの ような手立てが不足していたのかを明らかするこ とができた。これらのことから「自己実現到達学 習モデルjが事例分析にも応用できることが確認 できたc

5. 共同研究

「自己実現到達学習モデルjの有効性の検証を さらに確かなものにするために,徳島県鳴門市林 崎小学校に共同研究を委託し「自己実現到達学習 モデ、ノレj を基盤に開発したカリキュラムを実施し た。

共同研究の効果測定は,福岡県教育センターの 5領域自尊感情調査法を用い, 2007年度当初と20 07年12月の自尊感情を調査し比較することによっ ておこなった。その結果,数値的にも学級の自尊 感情の平均が上昇しただけでなく,該当学年の拐 当教諭jの証言や児童の感想、から抽出児の自尊感情 にも変容が見られた。

6.成果のまとめ

本論では自尊感情をマズローの自己実現という 観点から掘り下げ,学習者を自己実現へ導く教育 のあり方を探ることによって,学習者の自尊感情 の向上に貢献しようと試みた。先行研究の分析か ら自尊感情がマズローの欲求階層説のうちの尊敬 の欲求に当たるものであるばかりか,自尊感情の 向上した状態は自己実現的人格の特性を表してい ることがわかった。

次にマズローの自己実現理論に関する先行研究 の分析によって「自己実現到達学習モデ、ノレj とし て整理することができた。

また,酒井と野口や自身の実践事例の分析や林 崎小学校との共同研究から「自己実現到達学習モ デル」の有効性を確認、することができた。

7. 今後の課題

教育実践は教師のもつ指導の理論と指導の感性 の両面から産出されるものであるが,本論におい ては指導の感性については特に触れていない。今 後 f自己実現到達学習モデノレJを基盤としたカリ

キュラムの開発と授業実践を積み重ねることによ って,本モデ、ルの一般性を高めるとともに,指導 の感性のはたらきを考慮、した上で,本モデルを活 用していく必要があるだろう司

共同研究の効果を検証する方法として, 自尊感 情5領域調査を用いたが,今後さらに改良が進む であろう自己実現測定尺度を用いた自己実現到達 度の測定を,実践の検証法として,今後,導入す

ることも研究の視野に入れていきたい。

最後に自己実現理論の教育的意義について,そ の展望を述べておきたい。

自己実現は人生の目的ともなる概念であるた め,今回はモデ、ルの検証および共同研究において 小学校のある学年の1年間の教育実践をその対象 としたが,今後は小学校全学年,幼稚園,中学校,

高校としづ学年,校種を超えた範閣で実践を通し てモデ ルを検証していく必要があるだろう。また,

自己実現への到達を目指す教育は,学校経営の基 盤となるものであるから,学校教育課程の編成や 教員研修を含めた学校経営全体を視野に入れた研 究が求められるだろう。

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