樋門樋管におけるコンクリート劣化の特徴について
東北技術事務所 法人会員 ○髙田 浩穂 高橋 義孝 安倍 徹 東北学院大学 正会員 石川 雅美
1.はじめに
樋門樋管は堤防内を通水するために設置するもの で、東北地方整備局が管理する樋門樋管は約1,200 施設あり、図-1に示すとおり平成26年度現在、設 置から50年以上経過した老朽施設は全体の約1/3で あり、10年後には約1/2を占めるなど、老朽化が課 題となっている。そのため、全ての樋門樋管の鉄筋 コンクリートの劣化状況を把握するため、統一的視 点により外観を調査し(一次点検)、劣化の著しい箇 所はコンクリートの内部状況も調査した(二次点検)。
図-1 樋門樋管の設置年別の分布状況 2.一次点検(外観点検)による現状把握
一次点検は図-
2に示すとおり、目 視での確認、クラ ックゲージや巻尺 などを使用してコ ンクリート表面の 劣化を調査した。
一次点検の結果、樋門樋管で発生する劣化状況は 図-3に示すとおり、クラック及びクラックから派生 する錆汁、漏水、エフロレッセンス(図-4)などが 80%を占め、クラック系の劣化が多いことがわかった。
クラックの発生部位は図-5(左)に示すとおり、
76%が側壁、23%が頂版である。そして、クラック の幅は図-5(右)に示すとおり、0.40mm未満が79%
と最も多いが、0.4㎜以上は21%あった。
3.二次点検によるクラック内部状況の調査 クラック箇所のコンクリート内部の状態を把握す るため、図-6のようにクラックを中心にコアを採取 し、クラック割裂面及びコア外周面の中性化を調べ た。なお、中性化深さはJIS A 1152「コンクリ キーワード 樋門樋管,維持管理,コンクリート劣化,中性化,鉄筋腐食
連絡先 〒985-0842 宮城県多賀城市桜木三丁目6-1 国土交通省 東北地方整備局 東北技術事務所 品質調査課 TEL022-365-7988
図-2 クラックゲージに よるクラック幅の測定
図-5 樋門樋管の函体内に発生したクラック発生 部位とクラック幅の割合
(左:発生部位 右:クラック幅別本数)
図-4 クラック及びクラックから派生する劣化の 代表事例(函体内)
現在、設置後50年を経過した施設数 約1/3
図-3 樋門樋管に発生した劣化種類の割合
クラック→
クラック→
←クラック
0.4㎜未満 79%
0.4㎜以上 21%
20年後、設置後50年を経過した施設数 約3/5
10年後、設置後50年を経過した施設数 約1/2
V-27
土木学会東北支部技術研究発表会(平成26年度)ートの中性化深さの測定方法」に準じた。
図-6 樋門樋管の劣化状況の写真
中性化深さを計測した結果、クラック幅0.2 ㎜以 上はクラック沿いの中性化の進行が大きいことが判 明した。これは、クラックはコンクリート表面と同 様に空気に触れる頻度が多いため、中性化が進行し たものと推察される。(図-7)
図-7 クラック幅とクラック面中性化深度の関係 また、クラック幅と採取したコアクラック深さを 図-9に示したが、コアクラックの深さはほとんどで コア全長に渡りクラックが貫通し
ていること及びコア採取後の奥の 壁面にもクラックが確認されてい ること(図-8)から、クラックは背 面まで貫通しているものと推定 される。なお、樋門樋管の壁厚 は40~50cm程度である。
図-9 クラック幅とコアクラック深さの関係
一方、クラックが発生していない箇所では中性化 深さの進行は図-10に示すとおり、中性化が特に進 んでいるグループⅢ、比較的早いグループⅡ、70~ 80年経過してもほとんど進んでいないグループⅠに 分類できることがわかった。グループⅠの施設数割 合は76%を占め、多くの樋門樋管は経年的にも中性 化が進んでいないことがわかった。なお、グループ
Ⅲは豆板など表面の劣化を有する施設が多かった。
図‐10 経過年数と中性化深さの関係(はつり面)
4.まとめ
一次点検により東北管内直轄管理の樋門樋管に生 じている主な劣化はクラック系であることを明らか にした。さらに、二次点検によって側壁に生じたク ラックのほとんどの背面まで貫通しており、中性化 の進行及び鉄筋腐食に大きく影響することがわかっ た。一方、クラックの発生していない箇所のコンク リートの中性化の進行は緩やかであり、80年経過し た施設でもほとんど中性化が進行していない場合も 確認された。
以上の結果より、高い湿度環境にある樋門樋管の 鉄筋コンクリートでは、0.2mm以上のクラック箇所で 中性化が進行し、鉄筋腐食の可能性が高い。これに 対して健全部のコンクリートでは中性化の進行は緩 やかであることがわかった。
5.おわりに
樋門樋管の劣化状況は、今まで詳しい調査が行わ れてこなかったが、予防保全型維持管理や長寿命化 を検討するにあたり、今回、劣化種類や内部状況を 大よそではあるが把握することができた。今後、こ れらの知見をもとに維持管理そして適切な補修方法 について検討を進める予定である。
参考文献
「コンクリートのひび割れ調査、補修・補強指針 -2013-(日本コンクリート工学会)」
0 50 100 150 200 250 300 350 400
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2
クラック深さorコア長(mm)
クラック最大幅(mm)
クラック深さ(クラックがコア長 に達していない)
コア長(クラックがコア長に達 している)
クラック深さ(山福)
施設数=38 箇所数n=48
■コア長(クラックがコア長に 達しており、かつ、漏水、錆 汁、エフロレッセンスを伴うこ とから、クラックが貫通してい ると考えられる)
図-8 コアの奥 まで到達してい るクラック
0 20 40 60 80 100 120 140
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
平均中性化深さ(mm)
経過年数
鉄筋腐食度Ⅰ 鉄筋腐食度Ⅱ 鉄筋腐食度Ⅲ 鉄筋腐食度Ⅳ 鉄筋なし箇所
H17 H7 S60 S50 S40 S30 S20 S10
建設年
施設数=75 データ数=120箇所 注:( )内は施設数の割合 (グループ施設数/75施設)
グループⅢ:中性化が特に進 行している5施設(7%) 鉄筋腐食有り8箇所・無し0箇所
グループⅡ:中性化の進行が比較 的多い施設(17%)
鉄筋腐食有り7箇所・無し1箇所 グループⅠ:中性化の進行が比較 的少ない施設(76%) 鉄筋腐食有り40箇所・無し50箇所
0.00 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50 0.60 0.70 0.80 0.90 1.00
0 0.5 1 1.5 2
平均中性化長さ/コア長
最大クラック幅(mm)
鉄筋腐食度Ⅰ 鉄筋腐食度Ⅱ 鉄筋腐食度Ⅲ 鉄筋腐食度Ⅳ クラック幅0.2mm
N=26
クラック幅が0.2mm以上にな るとクラック面に沿った中性化 が進行
クラック幅 鉄筋腐食有り 鉄筋腐食無し 0.2mm未満 0箇所 3箇所 0.2mm以上 13箇所 10箇所
土木学会東北支部技術研究発表会(平成26年度)