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消石灰モルタルに載せて pH 値の変化を確認した.ま

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Academic year: 2022

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(1)V-015. 土木学会中部支部研究発表会 (2011.3). フレスコ画技法に見る中性化を利用した表面保護機能の材料科学的考察 金沢大学工学部 学生員 石田 聡史 金沢大学フレスコ壁画研究センター 正会員 五十嵐 心一. 1.序論. 生(気温 20±2℃,湿度 60±5%)とし,材齢 48 時間ま. 中性化はコンクリートの鉄筋腐食を生じる誘因であ. での初期における中性化の程度を把握した.水を含ま. り, 劣化現象のひとつとして挙げられる. その一方で,. せた pH 試験紙(アリザリンイエロー)を 1 時間間隔で. 世界中に現存するフレスコ画に代表される壁画や歴史. 消石灰モルタルに載せて pH 値の変化を確認した.ま. 的な建造物では,表面の中性化を利用することにより. た,ガラス板に焼煉瓦の場合と同様に消石灰モルタル. 有害物質の内部への侵入を抑制している.すなわち,. を塗布,その質量変化を測定した.. 漆喰壁に絵を描くフレスコ画技法は,消石灰モルタル. (3) 電子顕微鏡試料の作製. 中の水酸化カルシウムが二酸化炭素と反応し炭酸カル. 材齢 30 日にて焼煉瓦からモルタル部を切り出し, 傾. シウムに変化することで,表面に置かれた顔料がモル. 斜溶媒置換により内部水分を除去し,さらにt‐ブチ. タル内に閉じ込められ,数百年を経ても元の鮮やかな. ルアルコールによる置換を行った.その試料に対し凍. 色を保持し続けている.この表面保護機能の発現を工. 結真空乾燥装置を用いて水分の除去を行った後,真空. 学的に明らかにできれば,コンクリートの耐久性に関. 樹脂含浸装置を用いてエポキシ樹脂を含浸させた.常. して有用な知見が得られると期待される.. 温で樹脂を硬化させた後,耐水研磨紙およびダイヤモ. 本研究においては,消石灰モルタルに反射電子像観. ンドスラリーを用い試料観察面を注意深く研磨し,金-. 察による画像解析法を適用し,フレスコ画の表面保護. パラジウム蒸着を行い反射電子像観察試料とした.. を微視的構造の特徴から考察することを目的とする.. (4) 反射電子像の取得および画像解析. 2.実験概要. 観察倍率200倍および1000倍にて研磨面の反射電子. (1) モルタルの使用材料とその配合. 像を取得した.1 画像は 1148×1000 画素からなる.取. 消石灰は JIS R 9001 を満たす工業用消石灰特号(密 3. 度:2.23g/cm )を使用した.細骨材は手取川産の川砂 3. (密度 2.61g/cm ,吸水率 1.48%)を使用し,1.2mm 以. り込んだ反射電子像に対してグレースケールに基づく 2 値化処理を施し,毛細管空隙を抽出した.. 3.結果および考察. 下にふるい分けした後,洗浄処理を施した.モルタル. 図-1は, 消石灰モルタル表面の時間経過におけるpH. の配合は中世フレスコ画の下地モルタルの代表的な配. 試験紙の変色を示したものである.塗布直後から材齢. 合を参考にして,水消石灰比 1.0,消石灰ペーストと細. 16 時間までは pH 試験紙の全体が赤く変色しているこ. 骨材の体積比を 1:1 とした.また,このときのフロー. と(pH12.0 以上)がわかる.しかし,材齢 16 時間以. 値は 150±5 であった.. 降は呈色しない部分(pH10.0 以下)が確認されるよう. (2) 初期における中性化の進行. になり,材齢 27 時間以降では pH 試験紙はほとんど呈. JIS R 5201 に準じて消石灰モルタルを作製し,焼煉. 色を示さない.このことから,約 1 日程度で供試体表. 瓦に 5mm 程度の厚さで塗布した.養生条件は気中養. 面では,二酸化炭素との反応により炭酸カルシウムが. (b)材齢 16 時間. (c)材齢 27 時間. 100 80. 水分量(%). (a)塗布直後. 60 40 20 0 0. 10. 20. 30. 40. 材齢(時間). 図-1 pH 試験紙の経時変化. 図-2 水分量の経時変化 -481-. 50.

(2) V-015. 土木学会中部支部研究発表会 (2011.3). (a). (b). 200µm. (a). (b). 40µm. 40µm. 図-3 消石灰モルタル反射電子像. 図-4 毛細管空隙 2 値画像. ((a)消石灰モルタル表面(b)表面層拡大図). ((a)消石灰モルタル表面層(b)消石灰モルタル内部). 生成され,表面が覆われたと考えられる.また,この. 表-1 消石灰モルタルにおける空隙率の比較. ような炭酸カルシウム層の形成により,モルタル内部 の細孔中の水酸化カルシウム水溶液が表面に滲出する 割合も減少したものと考えられる.. 空隙率(%). 消石灰モルタル. 消石灰モルタル. 表面層. 内部. 5.77. 30.44. 図-2 は,消石灰モルタルの水分量の経時変化を示し たものである.消石灰モルタルの水分量は材齢初期に. 領域の毛細管空隙を抽出した 2 値画像を示したもので. 大きく減少し,25 時間以降ではほとんど変化していな. ある.視覚的な印象では消石灰モルタル内部の方が表. い.このことから,中性化によって発生する水量より. 面層に比べて空隙の径が大きく,両者の空隙量は明ら. も乾燥の影響が大きいことは明らかである.既往の研. かに異なる.表-1 に空隙を抽出した 2 値画像から算出. 1). 究 より,水分の影響によって生成される炭酸カルシ. された毛細管空隙率を示す.表中の値は表面層におけ. ウム結晶の形態が異なり,さらにはモルタル中に存在. る炭酸カルシウム相,内部における消石灰ペースト相. する水分量が中性化の進行速度を大きく左右するとさ. の単位面積当たりの空隙率を示している.両者を比較. れている.この際,消石灰の中性化には最適水分量が. すると,消石灰モルタル表面層の空隙率は内部のそれ. 存在し,相対湿度 100%の雰囲気中で中性化を行った. よりも極めて低い値を示し,これに対して,消石灰モ. 場合には,水分量 25%程度で最も中性化が進むと報告. ルタル内部は非常に粗な組織である.これよりフレス. されている.また,フレスコ画の描画においても,中. コ画表面における保護機能は十分発揮できても,背面. 性化速度が最大になり顔料が最も定着しやすくなるモ. からは浸食されやすい組織であることは明らかである.. メント・ドーロと呼ばれる時間帯がある.図-2 の結. 炭酸カルシウム層の生成にともない,中性化反応のさ. 果から, 材齢 20 時間程度で水分量は 25%となるため,. らなる進行が妨げられる一方で,表面からの有害物質. この前後で中性化速度が最大になりモメント・ドーロ. の侵入の防止効果も得ることが出来ると推察される.. が起こったと考えれば図-1 の結果とも矛盾しない.. しかし,背面の組織は継続して多孔質な状態であるこ とになり,このことがフレスコ画の劣化に強くかかわ. 図-3 は,材齢 30 日における消石灰モルタルの反射 電子像を示したものである.表面に沿って白色の縁取. ると考えられる.. りが認められ,消石灰モルタル表面が炭酸カルシウム. 4.結論. 層により被覆されている様子が明瞭に観察される.ま. フレスコ画に使用されている消石灰モルタルに反射. た, 図-3(a)中の表層の赤枠部分を拡大して観察すると. 電子像観察を適用し,モルタル表面の炭酸カルシウム. (図-3(b)),表層の炭酸カルシウム層の厚さは 5~. による保護膜形成を確認することができた.また,フ. 15µm 程度であると確認される.この層は表面に連続. レスコ画における顔料保護機構はほんの表層に限られ,. して形成され,表層部は緻密化し,二酸化炭素の供試. 背面は粗な状態であることが明らかとなった.. 体内部へのさらなる拡散が抑制される.このため,そ. 参考文献. の後の中性化の進行は緩慢になっていくと考えられる.. 1) 松田応作,山田英夫:消石灰の炭酸化について,. 図-4 は,図-3(b)の消石灰モルタルの表面層と内部. Gypsum & Lime,No.97,pp245-252,1968. -482-.

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