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博士学位論文審査報告書 Summary of Doctoral Thesis and Report of Examination 研究科長 殿

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Academic year: 2022

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Form J (F→O) 提出日Submission Date: 2011 /12 /26

博士学位論文審査報告書

Summary of Doctoral Thesis and Report of Examination

研究科長 殿

下記のとおり、審査結果を報告します。

To the Dean:

We report the result of Examination for the Doctoral Thesis below.

学籍番号 Student I.D. No.: 4005S031-2

学生氏名 Name: 矢澤利弘

和文題名Title in Japanese: 映画祭のマネジメントの研究 英文題名Title in English: Study of Film Festival Management

1. 口述試験参加教員 Faculty Members Involved in Oral Examination

①審査委員会主査 Chief Referee of the Screening Committee

氏名 Name: 花堂靖仁 印 所属 Affiliated Institution: 早稲田大学商学研究科

資格 Status: 教授

博士学位名・取得大学名: Ph.D. Title Earned・Name of Institution

②副査(審査委員1)Deputy Advisor (Member of Screening Committee 1)

氏名 Name: 松田修一 印 所属 Affiliated Institution: 早稲田大学商学研究科

資格 Status: 教授

博士学位名・取得大学名: Ph.D. Title Earned・Name of Institution

商学博士 早稲田大学

③審査委員2 Member of Screening Committee 2

氏名 Name: 西山茂 印 所属 Affiliated Institution: 早稲田大学商学研究科 資格 Status: 教授

博士学位名・取得大学名: Ph.D. Title Earned・Name of Institution

博士(学術) 早稲田大学

④審査委員3 Member of Screening Committee 3

氏名 Name: 飯田裕康 印 所属 Affiliated Institution: 映画専門大学院大学映画プロデュース研究科

資格 Status: 教授・慶応義塾大学名誉教授 博士学位名・取得大学名: Ph.D. Title Earned・Name of Institution

経済学博士 慶応義塾大学

⑤審査委員4[該当者のみ]Member of Screening Committee 4 [if any]

氏名 Name: 印

所属 Affiliated Institution:

資格 Status:

博士学位名・取得大学名: Ph.D. Title Earned・Name of Institution

2. 開催日時 Date / Time: (Y)2011 /(M) 11 /(D) 07 (Time) 14:00 ~ 16:00

[時限 / Period] 1st: 9:00-10:30, 2nd: 10:40-12:10, 3rd: 13:00-14:30, 4th: 14:45-16:15, 5th: 16:30-18:00, 6th: 18:15-19:45, 7th: 20:00-21:30

3. 会場 Venue: 11号館1251室

4. 合否判定 Result: 合/Passed・否/Failed(該当する方に○ Circle as appropriate)

5. 添付資料 Attached document(s)

枚pages(和文4,000字程度、もしくは英文1,500語程度。ただし、論文題目のみは、和文・英文を併記すること)

(Approximately 4,000 characters in Japanese, or 1,500 words in English. The Doctoral Thesis title, however, must be written in both Japanese and English.)

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1

Ⅰ 本論文の問題意識と構成

博士学位申請者が本論文を提出するまでには、多様な経歴を歩んでいる。大学卒業と同時に1989年 4月に日本経済新聞社に入社したが、1993年に退社し、公認会計士への道を歩む。1996年から監査法 人に入り会計監査に従事した後に、ブルームバーグ・エル・ピーにおけるインベスター・リレーションズ支 援業務に携わり、その専門的知識とスキルを修得するため2003年4月に本学GSAPS国際経営専攻に 入学する。これと並行して自ら代表を務める公認会計士・税理士事務所を開設し、本学のインキュベーシ ョン・センターでの起業支援に携わってきている。さらに、予てから調査取材にあたっていたイタリア映画 研究の成果を踏まえ、2009年から映画専門大学院大学の准教授に就任し今日に至っている。

産業のソフト化が指摘され、芸術、文化、遊びが社会の牽引役となることが期待され、メタレベルのカル チャーの重要性がますます増加していくと考えられはじめている。また、日本経済の発展と国際競争力の 強化のためにはコンテンツ産業の担い手を育成することが必要であるが、映画産業はその一翼を担うも のと考えられている。それにも拘らず、日本の映画業界は衰退の道を辿り存立さえ危ぶまれている状況 におかれている。この状況を打開し、映画というメディアを持続させる方策として、カンヌ映画祭等に認め られる海外の映画祭の成功例に着目するところとなった。わが国おいても東京国際映画祭をはじめ多く の映画祭が催されているが、必ずしも所期の成果を収められない状態が続いている。映画祭の成否を観 察し、その原因を分析することを通して、映画祭の成功の鍵は、非営利活動として行われるイベントを成 功に導くためのプロジェクトマネジメントを確立できるか否かが握っていると考えるに至っている。

映画祭には、映像産業の振興と発展のほか、映像産業に関連する人材の発掘と育成、開催地の観光 振興や街づくり、地域活性化、そして文化振興などのさまざまな効果が期待されている。その期待に応え るためには、一方で映画祭の運営組織やリーダーシップのあり方、構成員の動機付けや効率的な作業方 法などを対象とする対内的マネジメントを確立するとともに、他方では映画祭の利害関係者に対してどの ような価値をいかにして提供するのかという対外的マネジメントを有効に機能させることが必要になる。つ まりは、映画祭がそのミッションを達成するには、進捗管理やプロジェクトマネジメントの側面のみならず、

戦略論的な領域のマネジメントを統合的に考えなければならなくなり、その手法を見出すことが不可欠と いえる。

このような問題意識にもとづき、本論文の目的を次の3点においている。第 1 は、日本における 映画祭の状況を明らかにすることである。映画祭に関する先行研究は少なく、その状況が知られていな いことから、まず歴史的な経緯を踏まえて、映画祭の現状を確認することが第 1 の目的である。第 2 は、

限られた資源のなかで非営利活動として行われている日本の映画祭の特徴と問題点を事例分析によっ て明らかにすることである。Kaplan and Norton が発案したバランスト・スコアカード( BSC)の枠組みを用い て、それぞれの映画祭のマネジメントを対比することで、持続可能性のある映画祭に特有な状況を把握し、

問題の所在を明確にする。第 3 は、問題点の解決策を提示することにより、映画祭のマネジメントのあり方 を明らかにすることである。

これらの研究課題に応えることによって、単に事実の発見だけではなく、事実を説明できる仮説を導き だし、一般的な理論構築を行うことが本研究の最終的な目的となる。そのためには、本研究においては、

映画祭に関する先行研究が極めて少なく、先行研究を精緻化するタイプの研究手法には馴染まないとこ 博士学位申請者氏名 矢 澤

利 弘

博士学位申請論文

題名

『映画祭のマネジメントの研究』

(訳)

Study of Film Festival Management

(3)

2 ろから、データ収集と分析を同時進行させることによって理論の構築を行う仮説生成型研究を採用するこ とにするとしている。

本論文は以下に図示するように、4部構成の全14章で構成されている。

Ⅱ 本論文の要旨 第1章【研究の背景】

本章は、第1節 問題意識、 第2節 本研究の目的、 第3節 研究方法、 第4節 映画祭の分析視 角、第5節 本論文の構成の5節で構成されており、本論文の背景にある問題意識と本研究の目的およ び研究方法、先行研究の概要と学術研究全体における映画祭研究の位置付け、先行研究との関係から 見た本研究の位置付け、本論文の構成について記述している。

第2章【映画祭の定義と歴史】

本章は、 第1節 映画祭の定義、 第2節 映画祭の分類、 第3節 映画祭の歴史、 第4節 映画祭 が活発に行われている背景および第5節 本章のまとめ、の 5 節で構成されている。本章では、映画祭を 事例としたプロジェクトマネジメントに関する基本的前提を明らかにするための予備作業を行い、映画祭 の定義と分類および海外と日本における映画祭の歴史を整理し、映画祭が近年になって活発に行われ ている背景が明らかにされている。

第3章【映画祭の性質】

本章は、第1節 映画祭の非営利性、 第2節 映画上映の現状と性質、 第3節 祭りとイベントの性質 および第4節 本章のまとめ、の4節で構成されている。本章は、事例研究を進めていくに当たって、研究 対象である映画祭の性質を確認するための作業と位置付けられ、映画祭の非営利性、映画上映の現状 と性質、祭りとイベントの性質について明らかにしている。

第4章【日本における映画祭の実施状況の現状と課題】

本章は、第1節 日本の映画祭実施状況についての先行調査および 第2節 日本における映画祭の 課題の2節で構成されている。本章では、複数の先行調査の結果を分析集計することによって、日本の 映画祭における最大の課題は資金不足であり、そのほか、ボランティアを含めた映画祭実行組織のスタ

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3 ッフの人材不足や能力不足といった人材面や入場者不足、上映作品の確保、映画祭の知名度不足、ゲ スト交渉やプログラム作成などを含んだ広義の意味での映画祭開催のノウハウ不足といった問題があるこ とを明らかにしている。

第5章【映画祭の分析枠組】

本章は、第1節 非営利活動の評価モデルおよび第2節 映画祭の課題と BSC との関係性および予 備的仮説の設定の2節で構成されている。本章では、映画祭のマネジメントのあり方を解明するための分 析枠組として用いる BSC について、それがどのようなものであり、また分析枠組としてなぜ有効であるの かを明らかにし、事例研究を進めていくに当たっての予備的な仮説を設定している。

第6章【映画祭の目的】

本章は、 第1節 目的の類型、 第2節 地域活性化、 第3節 映像産業振興、 第4節 人材発掘と育 成および 第5節 目的に対する理解向上の5節で構成されている。本章では、映画祭の目的を類型で 分類し、主要な映画祭の目的について、詳細な検討を行い、その内容を明らかにしている。

第7章【事例研究の対象】

本章は、第1節 調査対象の選択基準、 第2節 調査対象の概要および 第3節 本章のまとめ、の3 節で構成されている。本章では、第8章以下で BSC の分析枠組で事例研究を行うに当たっての前提とし て、事例研究の対象として採用した5つの国内映画祭と2つのアメリカの映画祭の選択基準と映画祭の概 要が映画祭創設の経緯と関係付けながら明らかにされている。

第8章【映画祭のミッション】

本章は、第1節 事例研究および 第2節 本章のまとめ、の2節で構成されている。本章は、BSC の枠 組における「ミッションの視点」の考察に当てられ、事例研究で取り上げた映画祭が具体的にどのようなミ ッションを有しているのかについて明らかにしており、事例研究の結果として持続可能性のある映画祭の ミッションの特徴を抽出している。

第9章【映画祭の顧客】

本章は、 第1節 映画祭のステークホルダー、 第2節 サービスマーケティングの 3 つのタイプ、第3節 映画祭のマーケティング、 第4節 事例研究および 第5節 本章のまとめ、の5節で構成されている。本 章は、BSC の枠組における「顧客の視点」の考察に位置付けられ、映画祭を取り巻くステークホルダーと ステークホルダー間の関係を整理し、主催者、観客、出品者相互における3つのマーケティングのあり方 について明らかにしている。

第 10 章【映画祭の内部ビジネス】

本章は、第1節 映画祭の仕組み、 第2節 事例研究および 第3節 本章のまとめ、の3節で構成さ れている。本章は、BSC の枠組における「内部ビジネスの視点」の考察に位置付けられ、具体的な映画祭 の仕組みと運営方法について事例分析を行い、映画祭の内部ビジネスのあり方について明らかにしてい る。

第 11 章【映画祭の革新と学習】

本章は、第1節 映画祭の革新、 第2節 ボランティア、 第3節 事例研究および 第4節 本章のま とめ、の4節で構成されている。本章は BSC の枠組における「革新と学習の視点」の考察に位置付けられ、

映画祭の企画やプログラミングにおける映画祭の革新とボランティアを中心とする人材面のマネジメント について明らかにしている。

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4 第 12 章【映画祭の財務】

本章は、第1節 企業の社会貢献活動と助成金、 第2節 スポンサーシップ、 第3節 映画祭の収支 予算、 第4節 映画祭の成果、 第5節 事例研究および 第6節 本章のまとめ、の6節で構成されてい る。本章は BSC の枠組における「財務の視点」の考察に位置付けられ、資金調達の面とパフォーマンス 評価の面の両方の視点から映画祭の財務のあり方について明らかにしている。

第 13 章【映画祭の経営モデル】

本章は、第1節 本研究の整理、 第2節 予備的仮説の検証、 第3節 映画祭の経営モデルの3節 で構成されている。本章では第7章から第 12 章に渡る事例研究の結果をもとに、第5章で設定した予備 的仮説を検証し、そのうえで映画祭を持続可能ならしめるための次のような経営モデルを構築し提示して いる。

第 14 章【成果・限界と今後の課題】

本章は、第1節 本研究の成果および第2節 本研究の限界と今後の課題の2節で構成されてお り、本論文の成果および今後の課題が明らかにされている。

Ⅲ 本論文の評価

<本論文の長所>

本論文における研究成果の長所と独自性については、次のことが挙げられる。

1. 本論文は、海外の代表的映画祭に参照しながら、経営学研究の視点を中軸におきつつも、映画学、

地域活性学、イベント学の各研究成果を取り込んで行われた日本の映画祭に関する最初の総合研究 と位置づけられる。わが国における映画祭のマネジメントの状況を定性的かつ包括的、具体的にまとめ た資料は、知りうる限り本研究が初めてのものである。これは映画祭の実務を学術的に分析した点にお いて、学術面における新規性があると同時に、実務面での貢献があると評価される。

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5 2. 本論文は、 BSC のフレームワークを用いて、映画祭の主催者への面接調査を繰り返すことにより、

映画祭運営者からの視点による映画祭のマネジメントの実態、を BSC と関連付けながら明らかにした。

こうした一連の作業を通じて、 BSC の映画祭のマネジメントへの適用可能性を示し、 BSC のフレーム ワークを用いた映画祭の持続可能性が高まる集客一体型の映画祭のマネジメントモデルを構築したこ とである。これは非営利組織の経営に対する実務面での貢献があると同時に、今まで経営学的な視点 ではほとんど論じられてこなかった映画祭というテーマに対して、経営学的な視点で論理的な分析を 行ったという側面での学術的な貢献があると考える。

3. 先行研究がほとんどない映画祭を本論文のテーマとすることに伴い、先行研究分析にもとづく仮説 検証を行うアプローチを採り得ないため、仮説生成型研究として研究を行う道を選んだ。オープン・エ ンド式のインタビューを採用した所謂インテンシブインタビュー行い、そこで収集されたデータを分析 することによって新たな概念を発見し、最終的には理論へと導こうとするグラウンデッド・セオリー・アプ ローチを試みるという独自の研究手法を工夫し、一定の成果を収めていることは評価できる。

<本論文の短所>

1. 本論文が採ったインテンシブインタビューにより得たデータをグラウンデッド・セオリー・アプローチ により分析するという研究アプローチに改善の余地があり、そのためにデータとそこから導かれた結論 との間に飛躍が生じがちであおることは否めない。例えば、総括シートを作って、分析内容をまとめたう えで結論を導くような工夫を加えるなどして、分析作業の精緻化をはかることが必要である。

2. BSCを用いた映画祭の持続可能な経営モデルの仮説が設定されたのであるから、これを海外の 代表的な映画祭の成功事例に適用して検証を試みることが、本論文の残された課題である定量的実 証への布石として、例えば補論のような形で行われなかったことが惜しまれる。

3. 本論文では、映画祭について非営利なものと断定しているが、映画祭には営利性を強く持ったもの も散見されるところから、研究対象とする映画祭の概念を明確にすることが必要である。このような概念 の取扱いに関しいま少し慎重を期して欲しいこと、あるいは論文の構成について章・節のバランスを工 夫して欲しいこと含め、論文作成技術についてさらに洗練化することを期待したい。

IV博士学位申請論文に関する審査結果

本論文は、上記Ⅲにおける<本論文の長所>に示されたように、わが国における映画祭を新たな独自 のアプローチにより分析し、BSCを非営利事業に用いて映画祭の持続的展開を支える経営モデル仮説 を提起したことにより、この分野における今後の研究に大きく貢献するものと評価することができる。他方 で、<本論文の短所>に指摘したように、博士学位申請者の今後のこの分野における研究者としての研 鑽に待たなければならないところも少なくないが、それは本論文の優秀性を損なうものではない。

以上の審査結果に基づき、本論文提出者、矢澤 利弘は「博士(学術)早稲田大学」の学位を受けるに 十分な資格があると認められる。

2011年12月26日 早稲田大学大学院アジア人平洋研究科

博士学位申請論文審査委員会

主査 早稲田大学大学院商学研究科 教授 花堂 靖仁 副査 早稲田大学大学院商学研究科 教授 松田 修一 委員 早稲田大学大学院商学研究科 教授 西山 茂 委員 映画専門大学院大学 教授 飯田 裕康

参照

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