学位申請論文
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(2) 原著 原稿総紙数. 19 枚(本文,文献,付図説明). 図. 5 枚(図 1 ~ 図 3,図 8,図 9). 写真. 4 枚(図 4 ~ 図 7). 表. 2 枚(表 1,表 2). 別刷数. 50 部. 連絡先. 清水. 裕久. (勤)サンメディカル株式会社 電話番号 077-582-9983 (住)〒564-0023 大阪府吹田市日の出町 10-28 電話 090-9614-4008 表題. 各種象牙質知覚過敏抑制材の象牙細管封鎖性について ‐象牙質及び外来刺激が及ぼす影響の検討‐. 所属氏名. 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 生体機能再生・再建学講座 歯科保存修復学分野 清水. 裕久. 2.
(3) 各種象牙質知覚過敏抑制材の象牙細管封鎖性について ‐象牙質及び外来刺激が及ぼす影響の検討‐ 清水. 裕久. (平成 27 年 1 月 29 日受付). 緒言. 世界保健機構や国際連合の定義によると,日本は 2007 年から超高齢社会に突入しており, 現在に至るまで高齢化率は上昇傾向にある 1,2).そういった現状の中,健康日本 21 や 8020 運動などの国及び民間による施策や普及活動及び近年の歯科治療技術向上などに伴って, 高齢者の残存歯数が増加しているが,4mm 以上の歯肉ポケットを有する者の割合は 65 歳 を境に増加傾向にある 3).つまり,加齢や歯周疾患による歯肉退縮で歯根面の露出がおこる ことで,露出セメント質が磨耗し象牙質が露出する頻度が高くなっている. また,高齢者に限らず,酸蝕,咬耗,磨耗の Tooth Wear により,エナメル質に覆われて いる象牙質が露出するような症例が頻出している 4).以上のことが原因となって,現在,象. 3.
(4) 牙質知覚過敏症を罹患する患者が増加してきている. 象牙質知覚過敏症とは,窩洞形成,咬耗,磨耗,破折,歯周疾患による歯根露出などで 生活歯のエナメル質やセメント質が失われて象牙質が露出し象牙細管が口腔内に解放され ると,機械的刺激,化学的刺激,温度刺激,乾燥などで一過性の鋭い痛みを生じる状態の ことである 5).象牙質知覚過敏症の発症メカニズムとしては,象牙細管内に神経終末が分布 しており,これが直接刺激に対して反応し,痛みが生じる象牙細管内神経分布説 6,7),象牙 芽細胞突起が痛覚受容体として働き,刺激を歯髄に伝えて痛みが生じる象牙芽細胞痛覚受 容器説 8,9),象牙質面に加えられた外来刺激が象牙細管内液の移動を引き起こし,歯髄の神 経終末を刺激することで痛みを誘発する動水力学説 10‐12),象牙細管内液だけの移動ではな く,象牙芽細胞突起の形態変化によって神経終末が興奮するとされる知覚受容複合体説. 13,. 14)などの説があるが,現在は動水力学説が有力とされている 15,16).. そのような現状の中,実際の象牙質知覚過敏症の治療法は様々で,歯質切削を必要とし ない保存療法,窩洞形成を必要とする充填法,さらに歯髄除去法などの治療方法があり, その程度に応じて適時選択されている.保存療法としては,薬剤塗布,接着性材料被覆, イオン導入,レーザー治療などがある.保存療法のなかでも,象牙細管を封鎖し象牙細管 内液の動きを抑制する象牙質知覚過敏抑制材は,治療操作が簡便で歯質を削ることなく象 牙質の改質が可能であるため,象牙質知覚過敏症の治療で使用されることが多い.しかし, 象牙質知覚過敏抑制材の処置を含んだ保存療法の治癒率は 60~70%程度と報告されており. 4.
(5) 17),痛みが再発する可能性が高い.この理由には様々な原因が考えられるが、動水力学説と. 象牙質知覚過敏抑制材を基に考えた場合,象牙質知覚過敏抑制材の効果が象牙質知覚過敏 症患歯で十分に発揮されていないため,象牙細管内液の移動が起こり,痛みが発症すると 仮説をたてた. そこで,本研究では,象牙質,特に象牙細管内液が象牙質知覚過敏抑制材に及ぼす影響 について検討した.さらに,象牙細管内液の影響だけでなく,象牙質知覚過敏抑制材の象 牙細管封鎖機構の違いによって外来からの刺激が象牙細管内液の動きに影響を及ぼす可能 性が考えられることから,象牙細管封鎖機構の異なる象牙質知覚過敏抑制材を用いて,象 牙質知覚過敏抑制材処置面に外来刺激として乾燥刺激を加えた時の象牙細管内液への影響 を検討した.. 材料及び方法. 実験に使用した象牙質知覚過敏抑制材は,作用機序の異なる 2 種の象牙質知覚過敏抑制 材を用いた.すなわち,レジン被膜と歯質との接着により象牙細管を封鎖するレジン系材 料としてハイブリッドコートⅡ(サンメディカル株式会社,以下,HC2),シールドフォース プラス(株式会社トクヤマデンタル,以下,SFP),歯質などのカルシウム成分とシュウ酸か ら形成された結晶物により象牙細管を封鎖するシュウ酸系材料として MS コート ONE(サ. 5.
(6) ンメディカル株式会社,以下,MSO),スーパーシール 5 秒(Phoenix Dental, Inc.,以下, SS5)を用いた.各材料の組成を表 1 に示す.. 1. 歯髄内圧と象牙細管内液が象牙質知覚過敏抑制材の効果に及ぼす影響の検討 1) 試料及び装置の作製 ヒト健全大臼歯の咬合面部と歯頸部を歯軸に対して垂直に切断し,象牙質の厚みが 1mm になるように歯髄側から窩洞形成した.象牙質面を 600 番の耐水研磨紙で研磨後, 歯髄側窩洞内に生じたスミヤー層を除去するため表面処理材レッド(サンメディカル株式 会社)により 5 秒間エッチングした.その後,象牙質面に存在するスミヤー層を機械的に 除去するため超音波洗浄を 30 分間行い,象牙細管を開口させたものをヒト歯象牙質知覚 過敏モデルとした.次に,ヒト歯象牙質知覚過敏モデルを 20×20×5mm のアクリル板 の中央に直径 1.2mm の SUS 製チューブが貫通しているアクリルステージに SUS 製チュ ーブとヒト歯象牙質知覚過敏モデルの窩洞の中心が一致するように接着し,ヒト歯測定 用サンプルとした.このヒト歯測定用サンプルを Sauro らの報告を参考に作製した装置 18)(図. 1)に接続し,歯髄腔内及び装置の系内を象牙細管内液で満たした後,象牙質面とシ. リンジ内の液面との高さが 20cm となるように調整し,ヒトの歯髄内圧と同等の 20cmH2O18,19)を再現した.図 1 の測定装置を使用し,以下の検討を行った. なお,本研究ではヒト抜去歯の使用に際しては,「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原. 6.
(7) 則を遵守するとともに,岡山大学医歯薬学総合研究科の倫理委員会の許可(承認番号 189 号)を得て実施した.. 2) 歯髄内圧の影響の検討 (1) 抑制率の測定 ① 歯髄内圧を負荷させずに象牙質知覚過敏抑制材を処置した検討(以下,DW(-)) 図 1 において,象牙細管内液には蒸留水を使用し,先ず,歯髄内圧が負荷された 象牙質面でのエアーバブルの単位時間あたりの移動距離を測定した.次に,同じヒ ト歯測定用サンプルを用いて図 1 の A 点のチューブを止血鉗子で挟み歯髄内圧が負 荷していない象牙質面に,各象牙質知覚過敏抑制材をメーカー指示通りに処置した. その後,A 点の止血鉗子を取り除くことで,歯髄内圧を象牙質面に負荷させた状態で エアーバブルの単位時間あたりの移動距離を測定した.象牙質知覚過敏抑制材の処 置前と処置後の象牙細管内液の移動量から抑制率を算出した. ここで抑制率とは,象牙細管が開口していると歯髄内圧により移動する象牙細管内 液が,象牙質知覚過敏抑制材の処置によって抑制される時の象牙細管内液移動抑制 効果を表し,抑制率 100%であれば,象牙質知覚過敏抑制材の処置により象牙細管内 液は全く移動しないこととした.この抑制率は,エアーバブルの単位時間あたりの 移動距離とエアーバブルが通過したガラス管内径 0.6mm から,象牙質知覚過敏抑制. 7.
(8) 材の処置前の象牙細管内液の移動量(Wa)と処置後の象牙細管内液の移動量(Wb)を算 出し,a 式を用いて算出した. 抑制率(%)={(Wa-Wb)/Wa}×100・・・a ② 歯髄内圧を負荷させて象牙質知覚過敏抑制材を処置した検討(以下,DW(+)) 図 1 において,象牙細管内液には蒸留水を使用し,先ず,歯髄内圧が負荷された 象牙質面でのエアーバブルの単位時間あたりの移動距離を測定した.次に,同じヒ ト歯測定用サンプルを用いて歯髄内圧が象牙質に負荷された象牙質面に各象牙質知 覚過敏抑制材をメーカー指示通りに処置し,エアーバブルの単位時間あたりの移動 距離を測定した.抑制率の算出方法は,①と同様とした.. (2) 統計処理 DW(-)及び DW(+)で測定した抑制率は,各象牙質知覚過敏抑制材の DW(-)及び DW(+)間で Student’s t-test により有意水準 5%で統計処理を行った.測定試料数は各 象牙質知覚過敏抑制材で 10 とした.. (3) 象牙質知覚過敏抑制材処置面の微細構造観察 象牙質知覚過敏抑制材処置面に対して白金蒸着を行い,走査型電子顕微鏡 (JSM-5610LV,日本電子,以下,SEM)にて微細構造観察を行った.. 8.
(9) 3) 象牙細管内液の違いによる影響の検討 象牙細管内液の違いによる影響については,象牙細管内液として蒸留水又は組成を表 2 に示すような擬似体液(Simulated body fluid,以下,SBF)を取り上げ,検討を行った.. (1) 抑制率の測定 抑制率の測定方法及び算出方法は DW(+)と同様とした.象牙細管内液に SBF を使 用したときの検討を SBF(+)とした.. (2) 統計処理 DW(+)及び SBF(+)で測定した抑制率は,各象牙質知覚過敏抑制材の DW(+)及び SBF(+)間で Student’s t-test により有意水準 5%で統計処理を行った.測定試料数は各 象牙質知覚過敏抑制材で 10 とした.. (3) 象牙質知覚過敏抑制材処置面の微細構造観察 象牙質知覚過敏抑制材処置面に対して白金蒸着を行い,SEM にて微細構造観察を行 った.. 9.
(10) 2. 象牙質知覚過敏抑制材処置面に乾燥刺激を加えた時の影響について 1) 試料及び装置作製 ウシ健全前歯について,歯頸部付近で歯根を切断し歯髄除去を行った後,唇側面を 600 番の耐水研磨紙で研磨し,象牙質面を露出させた.このウシ歯象牙質面を 5×5mm に面 積規定し,規定した象牙質面以外の部分をスーパーボンド C&B(サンメディカル株式会 社)でマスキングした.スミヤー層を除去するため,規定した象牙質面を表面処理材レッ ド(サンメディカル株式会社)で 5 秒間処理した後水洗し,象牙細管を開口させた.歯根切 断面に歯髄腔方向に 2 本の SUS 製チューブ(直径 1.2mm)を挿入し, スーパーボンド C&B で SUS 製チューブを固定した試料をウシ歯測定用サンプルとした.このウシ歯測定用サ ンプルを善入らの報告を参考に作製した装置 20)(図 2)に接続し,シリンジを用いて歯髄腔 内及び装置の系内を象牙細管内液で満たした後,ガラス管内に液面が位置するように調 整した.象牙細管内液には SBF を使用した.. 2) 抑制率の測定 図 2 において,先ず B 点のチューブを止血鉗子で挟むことで歯髄腔とガラス管だけが チューブで繋がっている状態にした後,規定した象牙質面から 5mm 離し,エアー圧 0.2MPa のエアーブローを面に対して垂直に 10 秒間加えることで移動する液面の単位時 間あたりの移動距離を測定した.次に,同じウシ歯測定用サンプルを用いて,規定した. 10.
(11) 象牙質面に各象牙質知覚過敏抑制材をメーカー指示通りに処置し,その処置面に対して エアーブローを加えることで移動する液面の単位時間あたりの移動距離を測定した.象 牙質知覚過敏抑制材の処置前と処置後の象牙細管内液の移動量から a 式を用いて抑制率 を算出した.. 3) 統計処理 測定した各象牙質知覚過敏抑制材の抑制率は,一元配置分散分析及び Tukey Test によ り有意水準 5%で統計処理を行った. 測定試料数は各象牙質知覚過敏抑制材で 10 とした.. 結果. 1. 歯髄内圧と象牙細管内液が象牙質知覚過敏抑制材の効果に及ぼす影響の検討 1) 歯髄内圧の影響の検討 歯髄内圧の影響についての抑制率を図 3 に示す.DW(-)における抑制率は HC2 で 92.6 ±4.9%, SFP で 91.4±9.7%, MSO で 74.9±13.3%, SS5 で 75.8±10.7%であった. DW(+) における抑制率は HC2 で 68.8±11.3%,SFP で 60.8±5.6%,MSO で 61.8±24.6%,SS5 で 39.3±18.3%であった.DW(+)における HC2,SFP,SS5 は,DW(-)のそれらと比 較して,抑制率が有意に低い値を示した.. 11.
(12) DW(-)での象牙質知覚過敏抑制材処置面の SEM 観察において,レジン系材料である HC2,SFP では象牙質及び象牙細管開口部付近に均一なレジン被膜が認められ(図 4-a, 5-a),シュウ酸系材料である MSO,SS5 では象牙質及び象牙細管開口部付近に均一な結 晶物が認められた(図 6-a,7-a).DW(+) での象牙質知覚過敏抑制材処置面の SEM 観察 において,レジン系材料である HC2,SFP では象牙質及び象牙細管開口部付近に均一な レジン被膜が認められ(図 4-b,5-b),シュウ酸系材料である MSO,SS5 では象牙質及び 象牙細管開口部付近に均一な結晶物が認められた(図 6-b,7-b).しかし,DW(+)におけ る HC2,SFP で図 4-c,図 5-c のような粗造なレジン被膜が認められ,MSO,SS5 で象 牙細管開口部付近での一部空隙が認められた.. 2) 象牙細管内液の違いによる影響 象牙細管内液の違いによる影響についての抑制率を図 8 に示す.SBF(+)における抑制 率は HC2 で 63.3±16.5%,SFP で 51.6±13.6%,MSO で 65.7±19.1%,SS5 で 54.8± 24.3%であった.各象牙質知覚過敏抑制材における DW(+)と SBF(+)の抑制率の間に有 意な差は確認できなかった. SBF(+)での象牙質知覚過敏抑制材処置面の SEM 観察において,レジン系材料である HC2,SFP では DW(+)同様象牙質及び象牙細管開口部付近に均一なレジン被膜が認め られたが(図 4-d,5-d),図 4-e,図 5-e のような粗造なレジン被膜が認められた.シュウ. 12.
(13) 酸系材料である MSO,SS5 では DW(+)では認められなかった結晶様構造物が象牙質及 び象牙細管開口部付近で認められた(図 6-c,7-c).. 2. 象牙質知覚過敏抑制材処置面に乾燥刺激を加えた時の影響について 象牙質知覚過敏抑制材処置面に乾燥刺激を加えた時の影響についての抑制率を図 9 に示 す.HC2 で 90.1±4.8%,SFP で 96.0±2.7%,MSO で 69.8±6.3%,SS5 で 76.6±7.6% であり,レジン系材料(HC2,SFP)はシュウ酸系材料(MSO,SS5)と比較して抑制率が有意 に高い値を示した.. 考察. 露出象牙質面に外来刺激が加わることで発症する象牙質知覚過敏症の治療として,歯質 切削を必要としない保存療法が選択された場合,臨床的な治療効果に関しては必ずしも完 全であるとは言えない. 17).その原因を本研究では,象牙質知覚過敏症の発症メカニズムで. 有力とされている動水力学説と,象牙質知覚過敏症の治療に多用されている象牙質知覚過 敏抑制材を基に考え,象牙質知覚過敏抑制材の効果を,象牙質,特に象牙細管内液が象牙 質知覚過敏抑制材に及ぼす影響と,外来刺激として乾燥刺激による影響について,一過性 の疼痛を引き起こす発端となる象牙細管内液の移動に着目して検討を行った.. 13.
(14) 象牙質知覚過敏抑制材には臨床現場で使用実績が多数ある 2 種の材料 21,22)を採用し,象 牙質,特に象牙細管内液が象牙質知覚過敏抑制材に及ぼす影響については,歯髄腔から外 側に向けて負荷される 20cmH2O の歯髄内圧と,歯髄内圧により象牙質面に滲出する象牙細 管内液の違いによる影響を検討した. 歯髄内圧の影響については,図 3 のグラフより,抑制率は歯髄内圧の影響を受けること が分かり,特に HC2,SFP,SS5 では歯髄内圧が負荷しない場合と比較して抑制率に有意 な低下を認めた.歯科用象牙質接着材の接着界面と歯質接着性の研究において,歯髄内圧 を負荷させた象牙質表面を歯科用象牙質接着材で処置すると,歯髄内圧により象牙質面に 滲出した象牙細管内液の影響により,接着界面に空隙が確認されることが報告されている 23).今回採用した象牙質知覚過敏抑制材のレジン系材料は,歯科用象牙質接着材と材料組成. が近似することから,同様の現象が象牙質知覚過敏抑制材処置面に起こったと考えられる. また,DW(-)及び DW(+)の SEM 像の結果からも,DW(+)で確認されたレジン系材料の 粗造なレジン被膜(図 4-c,図 5-c)と抑制率の有意な低下が,この考察を裏付けていると思わ れる. 一方,シュウ酸系材料を処置した場合では,SEM 観察で象牙質表面及び象牙細管開口部 に結晶物が形成されていることが確認できた(図 5-a,図 6-a).シュウ酸を含んだ象牙質知 覚過敏抑制材には,シュウ酸成分と歯質のカルシウム成分との反応でシュウ酸カルシウム の結晶物が形成されると報告されている 24-26)ことから,本研究で観察された結晶物はシュ. 14.
(15) ウ酸カルシウムではないかと思われる.しかし,DW(+)の SEM 観察では,象牙細管開口 部に空隙が確認できた(図 6-b,図 7-b)ことから,レジン系材料と同様に歯髄内圧により象 牙質面に滲出した象牙細管内液の影響を受けたと考えられる. 象牙細管内液の違いによる影響については,象牙細管内液として蒸留水又は生体の象牙 細管内液を再現するため SBF を使用した.その結果,図 8 のグラフより,抑制率に有意な 差は認められなかった.レジン系材料での SBF(+)の SEM 観察では,DW(+)と同様に粗 造なレジン被膜が象牙質及び象牙細管開口部付近に形成されていた(図 4-e,図 5-e)が,シュ ウ酸系材料での SBF(+)の SEM 観察では,DW(+)より象牙細管開口部の封鎖が良好とな っており,また DW(+)では確認できなかったような結晶様構造物が象牙質及び象牙細管開 口部付近で確認できた(図 6-c,7-c).この結晶様構造物の組成分析は行っていないが,表 2 に示すように,SBF にはカルシウム成分が含まれていることから,シュウ酸系材料は,歯 質からのカルシウム成分との結晶物だけでなく,SBF からのカルシウム成分と結晶物を形 成することで,SBF(+)の SEM 観察のように,DW(+)では確認できなかった結晶様構造物 が象牙質及び象牙細管開口部付近で確認できたと考えられる.しかし,シュウ酸系材料に おいて,このような結晶様構造物が象牙質及び象牙細管開口部付近に形成されたとしても, 抑制率への影響は殆どなかったことから,今回取り上げた 2 種の象牙質知覚過敏抑制材に 対する象牙細管内液の違いによる影響は殆どなかったと考えられる. 象牙質知覚過敏抑制材処置面に外来刺激を加えた時の影響については,外来刺激として. 15.
(16) 象牙質知覚過敏抑制材を処置した後に効果の確認として行われるエアーブローによる乾燥 刺激を取り上げ,検討を行った.象牙質知覚過敏抑制材のように直接象牙質面に処置する 材料としては,象牙質の構造や象牙細管の太さなどを考慮すると,ヒト歯を用いた検討を 行うべきであったが,規定された象牙質面に対して的確にエアーブローを加えることは, ヒト大臼歯の咬合面を用いたとしても困難であったため,この検討では,ウシ歯を用いる こととした. HC2,SFP のレジン系材料は,MSO,SS5 のシュウ酸系材料と比較して抑制率が有意に 高い値を示した.これは,象牙質及び象牙細管開口部付近を被覆する象牙質知覚過敏抑制 材の形態の違いが原因であると考えられる.つまり,レジン系材料ではレジン被膜が歯質 と接着し,緻密に象牙質及び象牙細管開口部付近を被覆するため,乾燥刺激が象牙細管内 液に伝わらないと考えられる.一方,シュウ酸系材料ではシュウ酸と歯質などのカルシウ ム成分から形成される結晶物により象牙質及び象牙細管開口部付近を被覆するが,形成さ れた結晶物の間を乾燥刺激が通過して象牙細管内液に伝わり,象牙細管内液が移動したと 考えられる.. 結論. 本研究では,レジン被膜と歯質との接着により象牙細管を封鎖するとされるレジン系材. 16.
(17) 料と,歯質などのカルシウム成分とシュウ酸から形成された結晶物により象牙細管を封鎖 するシュウ酸系材料の 2 種の象牙質知覚過敏抑制材を取り上げ,象牙質,特に象牙細管内 液が象牙質知覚過敏抑制材に及ぼす影響と,象牙質知覚過敏抑制材処置面に乾燥刺激を加 えた時の影響について検討を行い,象牙質知覚過敏抑制材は歯髄内圧の影響を受け易く, 象牙質知覚過敏抑制材の象牙細管封鎖機構の違いによっては,乾燥刺激が象牙細管内液の 移動に影響を及ぼすことが示唆された.. 謝辞. 稿を終えるにあたり,ご懇切なるご指導とご高閲を賜りました岡山大学大学院医歯薬学 総合研究科 生体機能再生・再建学講座 歯科保存修復学分野吉山昌宏教授,西谷佳浩准教授 及び医局員諸先生に深く感謝致します.. 17.
(18) 文献 1) 内閣府 高齢社会白書(平成 19 年度版). p2-7 2) 内閣府 高齢社会白書(平成 26 年度版).. p2. 3) 厚生労働省 平成 23 年歯科疾患実態調査 「資料 1 結果の概要 3. 歯肉の状況」 厚生労働省 平成 23 年歯科疾患実態調査 「資料 2 結果の概要 図表」 4) 吉山 昌宏, 西谷 佳浩: Tooth Wear とは何か?‐知覚過敏症を中心に. 日本歯科評論, 68(7), 59-64, 2008. 5) 田上 順次, 千田 彰, 奈良 陽一郎: 第四版 保存修復学 21. p66 6) Fearnhead RW: Histological evidence for the innervation of human dentine. J Anat, 91(2), 267-277, 1957. 7) Fearnhead RW: The neurohistology of human dentine. Proc R Soc Med, 54(10), 877-884, 1961. 8) Yamada M, Suzuta K, Higuchi H: Sensitivity of the tooth to thermal stimulation. Jpn J Physiol, 18(3), 310-325, 1968. 9) Gunji T, Kobayashi S: Distribution and organization of odontoblast processes in human dentin. Arch Histol Jpn, 46(2), 213-219, 1983. 10) Brännström. M:. A. hydrodynamic. mechanism. in. the. transmission. of. pain-producing stimuli through the dentin, in Anderson DJ: Sensory mechanisms. 18.
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(21) 付図説明 表 1.各種象牙質知覚過敏抑制材の組成 表 2.SBF の組成 図 1.測定装置の模式図(歯髄内圧,象牙細管内液) 図 2.測定装置の模式図(乾燥刺激) 図 3.DW(-),DW(+)の抑制率 図 4.HC2 処置象牙質面の SEM 像 a:DW(-),b:DW(+),c:DW(+)(粗造面),d:SBF(+),e:SBF(+)(粗造面) 図 5.SFP 処置象牙質面の SEM 像 a:DW(-),b:DW(+),c:DW(+)(粗造面),d:SBF(+),e:SBF(+)(粗造面) 図 6.MSO 処置象牙質面の SEM 像 a:DW(-),b:DW(+),c:SBF(+) 図 7.SS5 処置象牙質面の SEM 像 a:DW(-),b:DW(+),c:SBF(+) 図 8.DW(+),SBF(+)の抑制率 図 9.乾燥刺激を加えた時の抑制率. 21.
(22) 表1. Materials. Component. HC2. 液材:アセトン, メタクリル酸エステル類(4-META, MMA, その他), 水, その他 スポンジ(ブラシ):芳香族アミン, 芳香族スルフィン酸塩. SFP. リン酸モノマー, Bis-GMA, TEGDMA, HEMA, アルコール, 精製水, カンファーキノン, その他. MSO. メタクリル酸メチル/スチレンスルホン酸共重合体, シュウ酸, 水. SS5. シュウ酸, その他. 22.
(23) 表2. NaCl NaHCO3 KCl K2HPO4・3H2O MgCl2・6H2O 1kmol/m3 HCl CaCl2 Na2SO4 (CH2OH)3CNH2. 7.996g 0.350g 0.224g 0.224g 0.305g 40cm3 0.278g 0.071g 6.057g. 23.
(24) 図1. ヒト歯測定用サンプル 20cm. 象牙細管内液. A点. ガラス管 エアーバブル. 24. マイクロシリンジ.
(25) 図2. ウシ歯測定用サンプル SUS製チューブ. 5mm ガラス管. B点 5mm 象牙細管内液(SBF). 液面. シリンジ. 25.
(26) 図3. *. *. *. 100. 抑制率(%). 80 60. DW(-) DW(+). 40 20 0 HC2. SFP. MSO. 26. SS5. *:p<0.05.
(27) 図4. a DW (-). b. c. d. e. DW (+). SBF (+). 27.
(28) 図5. a DW (-). b. c. d. e. DW (+). SBF (+). 28.
(29) 図6. a DW (-). b DW (+). c SBF (+). 29.
(30) 図7. a DW (-). b DW (+). c SBF (+). 30.
(31) 図8. 100. 抑制率(%). 80 60. DW(+) SBF(+). 40 20 0 HC2. SFP. MSO. 31. SS5.
(32) 図9. 100. a. a b. 抑制率(%). 80. b. 60 40 20 0 HC2. SFP. MSO. SS5 同文字間は有意差なし(p>0.05). 32.
(33)
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