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博士論文審査報告書

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Academic year: 2022

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(1)早稲田大学大学院理工学研究科. 博士論文審査報告書. 論. 文. 題. 目. 促進酸化法による排水中の 微量有害有機物質分解プロセスの開発 (Development of Decomposition Process for Trace Quantities of Toxic Organic Compounds in Wastewater Using Advanced Oxidation Processes). 申 氏. 名. 請. 者. 中川. 創太. Sota. Nakagawa. 専攻・研究指導 (課程内のみ). 2006 年. 1. 2月.

(2) 産業活動または日常生活に起因して発生する排水の一部には、濃度は低いもの の、発ガン性、遺伝子損傷性、または内分泌攪乱性を示す有害有機物質が含まれ ていることが明らかとなっている。このような排水は、主に下水道を経て、河川 または海洋などの公共用水域に放流されるが、現状の処理施設は、微量有害有機 物質の処理は殆ど考慮されていない。今後は、汚泥発生を伴う凝集沈殿などの分 離処理よりも、酸化分解などの分解処理が望ましいと考えられる。本研究で着目 し て い る 促 進 酸 化 法 は 、 オ ゾ ン ( O 3 )、 紫 外 線 ( U V ) お よ び 過 酸 化 水 素 ( H 2 O 2 ) な ど の 組 み 合 わ せ に よ り 、活 性 酸 素 の 一 種 で あ る ヒ ド ロ キ シ ラ ジ カ ル ( ・ O H )を 発 生 さ せ て 、 排 水 中 有 機 物 を 酸 化 分 解 す る 方 法 で あ り 、 従 来 使 用 さ れ て き た O3、 HClO な ど よ り も 酸 化 還 元 電 位 が 高 い こ と か ら 、 難 分 解 性 物 質 を 完 全 分 解 で き る 可能性がある。促進酸化法に関する研究はこれまでにも行われているものの、実 排水中に含まれる微量有害有機物質を対象とする場合については、次に示すよう な課題が残されている。第一に、有機物分解性能を評価する手段として、ラジカ ル素反応をもとに仮想空間上でラジカル連鎖反応を構築する反応モデル的検討は あるものの、適用範囲は、組成が比較的単純なモデル排水に限られており、実排 水にも適用可能な評価方法がない。第二に、これまでの研究は、有機物の分解性 能が従来法より高いことを示しているものの、実用性が重視されていない。すな わち、ランニングコストの問題や、排水基準の指標における優位性は十分に示さ れ て い な い 。 第 三 に 、 O3 ま た は H2O2 と い う 酸 素 系 酸 化 剤 を 用 い た 場 合 の 促 進 酸 化 処 理 に 伴 う 有 機 塩 素 化 合 物 な ど の 有 害 物 質 の 副 生 成 に つ い て は 、知 見 が 少 な い 。 第 四 に 、 排 水 中 に pg/L〜 μ g/L オ ー ダ ー と 極 め て 低 い 濃 度 で 存 在 す る 微 量 有 害 有 機物質については、これを含む実排水を対象とした場合の適用性が明らかになっ ていない。以上の背景より、本研究では、実排水中の微量有害有機物質の分解処 理 方 法 と し て 、促 進 酸 化 法 を 実 用 化 さ せ る た め に 必 要 と 考 え ら れ る 検 討 項 目 、( a ) 評 価 方 法 、 (b)処 理 の 効 率 化 、 (c)処 理 に 伴 う 有 害 物 質 副 生 成 お よ び そ の 抑 制 方 法 、 お よ び (d)極 微 量 な 濃 度 で 存 在 す る 有 害 有 機 物 質 を 含 む 実 排 水 へ の 適 用 性 評 価 に ついて研究を行っている。本研究の意義は、微量有害有機物質を対象とした場合 の実用レベルにおける適用性を明らかにすること、および新たな適用方法・プロ セスを提案することを通じて、水環境における微量有害有機物質問題の改善に寄 与する知見を提供することにある。本論文は、全7章から構成される。各章の成 果を審査し評価を加える。 第 1 章 は 緒 論 と し て 本 研 究 の 背 景 を 述 べ る と 共 に 既 往 研 究 を 総 括 し 、本 研 究 の 目的および意義を明らかにしている。 第 2 章「 促 進 酸 化 法 に よ り 発 生 す る ヒ ド ロ キ シ ラ ジ カ ル の 実 験 的 定 量 方 法 の 検 討 」 で は 、・ O H 発 生 量 を 指 標 と し た 処 理 性 能 の 定 量 的 評 価 を 目 的 と し 、 E S R( 電 子 ス ピ ン 共 鳴 装 置 ) と ス ピ ン ト ラ ッ ピ ン グ 剤 で あ る DMPO( 5,5- dimethyl - 1 pyrroline ‐ N-oxide) を 併 用 す る 方 法 を 検 討 し て い る 。 こ の 結 果 、 O3 を 併 用 す 1.

(3) る 促 進 酸 化 処 理 に つ い て は 、 D M P O が O 3 と 極 め て 容 易 に 反 応 し て 、・ O H 捕 捉 能 力 を 喪 失 す る 問 題 が あ る も の の 、 UV/H2O2 法 で は 、 波 長 280nm 以 下 の UV を 遮 断することで定量可能であることを明らかとしている。さらに、この方法では共 存 無 機 イ オ ン が・OH の 挙 動 に 与 え る 影 響 も 評 価 可 能 な こ と を 明 ら か に し て い る 。 第 3 章「実排水中微量有害有機物質の分解処理への適用」では、促進酸化法を 実 排 水 中 の 微 量 有 害 有 機 物 質 の 分 解 処 理 に 応 用 す る こ と を 目 的 と し て 、( 1 )「 最 終 処 分 場 埋 立 地 浸 出 水 中 の 微 量 有 害 有 機 物 質 を 対 象 と し た 基 礎 研 究 」、お よ び ( 2 「 ) 下 水 二 次 処 理 水 中 の C O D・ 色 度 お よ び 臭 気 を 対 象 と し た 応 用 研 究 」. の 2 つの研究. を 行 っ て い る 。前 記 (1)で は 、対 象 有 機 物 の 分 子 量 に 依 存 す る こ と な く 、無 機 化 ま で酸化分解が可能であることを明らかにしている。さらに、酸化剤消費量あたり の分解性能は、従来と同様であるものの、単位時間あたりの活性酸素発生量が格 段に高く、これが酸化分解速度の高速化に寄与していることを実証している。前 記 ( 2 ) で は 、本 法 の 適 用 性 を パ イ ロ ッ ト 規 模 で 評 価 し 、有 機 物 の 無 機 化 の み な ら ず 、 水 質 汚 濁 防 止 法 で の 評 価 指 標 の う ち CODMn、色 度 、 臭 気 、大 腸 菌 、 及 び 一 般 細 菌 の 指 標 に お い て も 高 い 処 理 性 能 が 得 ら れ 、実 用 性 が 高 い こ と も 明 ら か に し て い る 。 本章の成果は、実排水を対象とした処理効率を評価する上で、新規な知見である と言える。 第 4 章「実排水中微量有害有機物質の凝集分離性の改善への適用」では、有害 有機物質の濃度が比較的高い場合におけるランニングコスト軽減策として、促進 酸化法を凝集分離処理の前処理として適用し、有機物の凝集分離性を改善させる 検討を行っている。この結果、軽度の促進酸化処理を行うことにより凝集分離処 理 に お け る 有 機 物 分 離 性 能 を 、 TOC( 全 有 機 炭 素 ) 除 去 率 と し て 15%か ら 29〜 37%に 向 上 さ せ る こ と が で き 、 特 に 分 子 量 が 高 い 有 機 物 の 凝 集 分 離 性 を 高 め ら れ ることを明らかにした。これらの知見より、凝集沈殿単独の場合より汚泥発生量 を削減でき、促進酸化処理そのものによる酸化分解効果も得られることから、従 来 法 よ り 実 用 的 で あ る と い う 新 規 な 事 実 を 明 ら か に し た こ と は 、高 く 評 価 で き る 。 第 5 章 「 高 塩 類 濃 度 排 水 の 促 進 酸 化 処 理 に お け る 有 機 塩 素 化 合 物 ( TOX) 副 生 成 お よ び そ の 抑 制 方 法 の 検 討 」で は 、塩 化 物 イ オ ン 濃 度 が 高 い 排 水 を 対 象 と し て 、 O3 を 利 用 す る 促 進 酸 化 処 理 な ど を 行 う 場 合 は 、 有 機 塩 素 化 合 物 (TOX)が 副 生 成 す る 可 能 性 を 指 摘 し 、こ れ を 実 験 的 に 証 明 し て い る 。ま た 、TOX 副 生 成 を 抑 制 す る た め の 方 法 と し て H2O2 添 加 の 併 用 が 効 果 的 で あ る こ と を 、 反 応 メ カ ニ ズ ム と 共 に明らかにしており、促進酸化法の課題となる点を解決している。 第 6 章「排水中内分泌攪乱化学物質の分解処理への適用」では、実排水中に極 微 量 な 濃 度 ( p g / L 〜 n g / L レ ベ ル )で 存 在 す る 内 分 泌 攪 乱 化 学 物 質 ( 環 境 ホ ル モ ン 類 ) の 分 解 処 理 を 対 象 と し て 、 (1) 「 ダ イ オ キ シ ン 類 ( DXNs) 代 替 物 質 を 対 象 と し た 基 礎 検 討 お よ び 浸 出 水 中 D X N s を 対 象 と し た 適 用 性 の 評 価 」、 お よ び ( 2 ) 2.

(4) 「 洗 煙 排 水 中 DXNs お よ び 下 水 二 次 処 理 水 中 環 境 ホ ル モ ン 類 の 分 解 処 理 へ の 適 用 性 の 評 価 」 の 2 つ の 研 究 を 行 っ て い る 。こ の 結 果 、前 記 (1)で は 、ク ロ ロ ベ ン ゼ ン 類 を 用 い た 検 討 に よ り 、 促 進 酸 化 法 の 中 で は UV/O3/H2O2 処 理 が 最 も 効 果 的 で あ る こ と を 示 し 、極 微 量 な 濃 度 で 存 在 す る DXNs を も 分 解 可 能 な こ と を 明 ら か に し て い る 。 さ ら に 、 浸 出 水 中 に 含 ま れ る DXNs を 対 象 と し た 連 続 処 理 実 験 に よ り 、 実 排 水 に お い て も D X N s 分 解 率 約 7 1 % が 得 ら れ る こ と を 示 し て い る 。前 記 ( 2 ) で は 、 内分泌攪乱化学物質の存在形態または分子構造が分解性能に与える影響について 検 討 し 、 DXNs が 付 着 す る 浮 遊 性 懸 濁 物 質 ( SS) の 粒 径 が 分 解 性 能 に 影 響 を 与 え る と い う 新 規 な 知 見 を 明 ら か に し て い る 。 ま た 、 反 応 速 度 が 低 い 粒 径 1.0μ m 以 上 の SS と 共 に 存 在 す る DXNs に つ い て は 、 濃 縮 操 作 を 併 用 す る 処 理 方 法 が 有 効 であることを提案したことは価値がある。さらに、代表的内分泌攪乱物質である ノ ニ ル フ ェ ノ ー ル 、ビ ス フ ェ ノ ー ル - A 、エ ス ト ラ ジ オ ー ル 、エ ス ト ロ ン に つ い て 、 酸化分解における速度定数と分子構造の関連について解析し、求電子フロンティ ア軌道の電子密度が極在化しているものの方が酸化分解を受けやすく易分解性で あることを明らかにしている。これらの成果により、極微量な濃度で存在する有 害有機物質を含む実排水への適用性を明らかにできたことは、高く評価できる。 第7章では、以上の研究結果を総括し、今後の方向性を示している。 以上、本論文では、実排水中の微量有害有機物質の分解処理に促進酸化法を適 用することを目的として、評価方法、処理の効率化、処理に伴う有害物質副生成 お よ び そ の 抑 制 方 法 、お よ び 極 微 量 な 濃 度 で 存 在 す る 有 害 有 機 物 質 を 含 む 実 排 水 への適用性に焦点をあて、 ・OH の 実 験 的 定 量 方 法 お よ び 実 排 水 中 の 微 量 有 害 有 機 物質の分解性能について知見を提供すると共に、促進酸化法を凝集分離処理の前 処理方法として適用する新規処理プロセスを提案している。また、排水性状によ り有害物質が副生成する可能性があることを示すと共に、その抑制方法も提案し ている。最後に、実排水中に極微量に含まれる有害物質の分解にも適用可能であ ることも示している。 以上の知見および成果は、促進酸化法の実用レベルにおける適用性を明らかに すると共に、水環境における微量有害有機物質の汚染問題を解決する新規な適用 方法・プロセスを提案するものであり、将来の環境化学工学の発展に大きく貢献 するものとして高く評価できる。よって、本論文は博士(工学)の学位論文とし て価値あるものと認める。 2006 年 1 月 審査員(主査). 早稲田大学教授. 工学博士(早稲田大学). 平沢. 早稲田大学教授. 工学博士(早稲田大学). 酒井清孝. 早稲田大学助教授. 工学博士(東京大学). 常田. 3. 泉 聡.

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