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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 能 登 谷    京

     学位 論 文 題 名

Subclinical alterationslncoagulation and fibrinolysis     in patients underg01ngaut010gouSperipheral     blOOdStemCe11tranSplantation .

1. 緒 言

( 自 己末 梢血 幹細 胞移 植に おけ る凝 固 線溶 系の 動態 )

学位論文内容の要旨

  自 己末 梢血 幹細 胞移 植(APBSCT)は、 根治 を目 指し た癌 治療 法と して 普及 しつ っ あ る。APBSCTは 、造 血回 復 が迅 速で安全性が高いという利点はあるが、 超大量化学療法 が引 き起 こす 高度 の骨 髄 抑制 をはじめその臓器毒性のためにおこる合 併症が認められ る。BIKTにお いて は、 こ れら の合併症の発症に凝固線溶系因子の関与 が指摘されてい る 。 一 方 、APBSCTに お け る 凝 固 線 溶 動 態 は 、 今 の と こ ろ明 確に はさ れて いな い 。 APBSCTに おい ては 合併 症 は少 ないとされているものの、将来APBSCTが 頻用されること を考 慮す れば 、APBSCTに おけ る凝固線溶系の動態を把握することは、 その合併症の発 症機 序の 解明 及び その 予 防、 予後の検討の上で、重要なことと思われ る。本研究は、

APBSCTにおいて経時的に凝固線溶系因子を 測定し、APBSC輸注と超大量 化学療法の影響 につ いて 検討 した 。

2 .対象と方法 く症例冫

1994 年 6 月から 1995 年5 月にかけて北大第2 内科で施行された APBSCT10 例

(急性自血病4 例、悪性リンパ腫5 例、多発性骨髄腫1 例)を対象とした。

く 採 血 冫

移 植 前 処 置(conditioning)前 、 終 了 後 、APBSC輸 注 後(DAYl) 、 輸 注 後7日 後 (DAY7) 、 14日 目 (DAY14) 、 28日 目 (DAY28) に 静 脈 血 を 採 取 し た 。

く各 因子 の測 定>

von TVillebrand factor (vIYF)はりストセ チン凝集法(ヘキスト)、ProteinC(PC) は蛇毒を用いた合成基質法(第一化

plasmlnogenaCtiVatorくt‐PA冫はE S01ublethrombomodulin(S−TM冫たょ factor (TF)は 中村、神窪らが開発 法で 測定 した 。

学 ) 、 free ProteinS( f‐ PS)、 tissue RISAによ る測 定キ ット (各 々、 帝人 )を用いた。

三 菱 瓦 斯 化 学 のERISAキ ッ ト で 、 血 中tissue したERISA法により測定し た。その他は、既知の方

(2)

く統計処理>

す べての結 果はmean+SEで示 され、有 意差はXrilcoxoriの符号付き順位検定にて conditioning前の値とのみ比較して検討を行った。conditionlngregimenの差異によ る評価は、regimenを主要なregimenであるMCCVCとその他に分けてrepeatedmeasures analysisで検定し有意差が認められた場合のみ、さらにMann−WhitneyUtestを用い各 ポイントでの検討を行った。

3. 結 果

@今回の症例ではVOD、DIC等の重篤な合併症及び臓器障害はなく、9例に感染症によ ると思われる発熱、1例に膵炎を認めたが、全例輸注された幹細胞の生着は良好だっ た。

◎我々が検討した30種の凝固線溶系因子のうち7因子のみ経過中に変動を示した。

PT、aPTTおよび各凝固線溶系因子の23種は、経過中に有意な変動を認めなかった。

◎経過中に有意な変動を認めたのは、t−PA、TF、PC、Fbg、PIC、f‐PS、s−TMの7因子 で、その変動はPBSCT前における増加とPBSCT後における増加の2通りの変動を示し た。一っはt−PA、TF、PCに認められるconditioning直後(early phase)における増 加であった。PCは全経過正常範囲内の変動であったがconditioning直後に有意な増加 が認められた。TFもまたconditioning後増加を認め、t‐PAはconditioning前を除き全 体的に高値で、特にconditioning直後にかけて有意な増加を認めた。これらの変動は conditioningの超大量化学療法による血管内皮細胞や血液細胞の崩壊に伴う結果であ る と考えら れた。他方はPBSCT後7日目から28日目までに認められた変動である。

FbgはDAY7、14で有意 に上昇、DAY28には前値に回復した。PICはDAY7以降に有意 な増加を認めたが軽度であった。TATは有意差はなかったがPBSCT後に若干の増加を認 めた。PICの上昇とも考え合わせると、この結果はplasminおよびthrombinのわずかな 生成が認められたことを示している。f−PSは全経過高値でDAY14、28に有意な増加 がみられ、s−TMはDAY14、28で有意に増加した。これらの変動は白血球減少に伴う 感染症や、薬物の直接的な障害の遷延によって引き起こされた炎症による影響と考え られた。

@APBSCT直後(DAYl)には、凝固線溶系因子の有意な変動は認めなかった。

◎二つの主要なregimenによる凝固線溶系因子の変動に有意差は認めなかった。

4.結語

  APBSCTにおける凝固線溶系因子の動態は、大部分においては有意差のない正常範囲 内での変動であったが、7因子ではAPBSCT前後において2通りの変動を認めた。ひと っはconditioning直後(early phase)の変動(t―PA、TF、PC)で、他方はAPBSCT後 7日目から28日目まで(late phase)の変動(Fbg、PIC、f―PS、s‐Thl)であった。

APBSCTでは、前処置として行われる超大量化学療法による細胞障害及びそれに伴う骨 髄抑制が引き起こす感染症により、軽度の凝血学的な異常をきたし、若干のplasminお よびthrombin形成を起こすが、合併症に至るような影響は与えなかった。APBSCTの輸 注は凝固線溶系因子に直接は影響しなかった。今回の我々の検討から、APBSCTは凝固 線溶系因子の変動の面からも安全な方法であると思われた。

(3)

学位論文審査の要旨

     学位論文題名

Subclinical alterationslnCOaguladonand 丘bnnolySiS     inpadentSunderg01ngautologouSperipheral     blOOdStemCe11tranSplantadon ・

(自己末梢血幹細胞移植における凝固線溶系の動態)

  本 研 究 は 、 自 己 末 梢 血 幹 細 胞 移 植(APBSCT) 症例 に おい て 、 経時 的 に凝 固 線 溶系 因 子 を 測 定 し 、APBSCT経 過 中の そ の動 態 を 明ら か にす る こ とに よ り 、超 大 量化 学 療 法と 幹 細胞輸注 の影響に ついて検 討したも のである 。

    I研 究対象及 び方法

1) 対 象 症 例 は 、 1994年 6月 か ら1995年5月 に か け て 、 北 大 第 二 内 科 で 施 行 さ れ た APBSCT10例 で 内 訳 は 急 性 白 血 病4例 、 悪 性 リ ン パ 腫5例 、 多 発 性 骨 髄 腫1例 で あ っ た。

2)各 凝 固 線溶 系 因子30項目 を 測 定し た 。個 々 の 症例 に おい て 、 超大 量 化学療法 前後、

お よ び 幹 細 胞 輸 注 後 、1、7、14、28日 目 に1/9容 の3.8% ク エ ン 酸 ナ 卜 リ ウ ム を 用 い て 採 血 し 、 即 時 に 血 漿 に 分 離 し た 後 、‑80°Cに 保 存 し 、 測 定 用 の 試 料 と し た 。 3)各 測 定 結果 は 、超 大 量 化学 療 法 前の 値 との み 比 較し て 、Wilcoxonの 符号付 き順位検 定 にて有意 差の検討 を行った 。

    1| 結果

1)APBSCTに お け る 凝 固 線 溶 の 動 態 は 、30項 目 中7項 目 が 幹 細 胞 輸 注 前 後 に お い て 2通り の 有 意差 の ある 変 動 を認 め た 。ひ とっ は超大量 化学療法 直後(early phase)の変 動 で 、 ブ 口 テ イ ンC、tissue factor、t‑PAの 三 つ の 因 子 で あ っ た 。 他 方 はAPBSCT後7 日 目 か ら28日 目ま で の変 動 (late phase)で 、 フア ブ リ ノ― ゲ ン、PIC、プ口 テインS、 可 溶性トロ ンボモジ ュリンの 四つの因 子であっ た。

2)APBSCTは 、 移 植 早期 の 重 篤な 合 併症 で あ る肝 中 心静 脈 閉 塞症 やDICほ か 出 血、 血 栓 な どの発症 に至るよ うな影響 を与えな かった。

3) 幹細胞の 輸注自体 は凝固線 溶系因子 に臨床上問題となる直接的な影響を与えなかった。

(4)

    川考案

  early phaseの変動は、超大量化学療法による血管内皮細胞を中心に、血液細胞、肝細 胞を含めた細胞の障害、崩壊に伴う結果であり、|ate phaseの変動は、骨髄抑制により 惹起された炎症や、薬物の直接的な細胞障害の遷延によって弓tき起こされたものと考えら れ た。また、 今回の検討からAPBSCTは凝固線溶系因子の変動の面からも安全な方法で はあるが、超大量化学療法を誘因としてsubclinicalではあるもののニ相性の変動を示す 因子があるという点は、何らかの誘因によって病態が大きく変化する可能性があり、臨床 上、留意されるべきであると思われた。

    IV審査の概要

  口頭発表に際し、柿沼教授から移植細胞と超大量化学療法が凝固線溶動態に与える影響、

同種と自家(自己)という移植細胞の違いによる影響、合併症の発症を予知するための因 子について、小池教授から通常の化学療法での動態、可溶性ト□ンボモジュリンが早期に 上昇していない理由、超大量化学療法の違いによる変動の差異について、浅香教授から骨 髄 移植で認め られたプ□ テインCとの変動の 差異、APBSCT経過中の肝機能、炎症性反 応物質と凝固線溶系因子の変動の関係についての質疑及び指摘があった。これらに対して、

学 位申請者は 、概ね適切な回答をした。本研究はAPBSCTの際の凝固線溶系のニ相性の 変 動とその動 態に関する詳細な解析結果を初めて示しており、APBSCT時の合併症の発 症機序および臨床上留意すべき点を示唆したものであり、博士(医学)の学位を受けるの に充分な資格を有するものと判定した。

参照

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