論文内容要旨
Gender is a significant factor affecting blood coagulation systems (性別は血液凝固系に影響する重要な因子である)
THE SHOWA UNIVERSITY JOURNAL OF MEDICAL SIENCE 2017 年掲載予定 専攻名 内科系内科学循環器内科学分野 猪口孝一郎
内容要旨
心房細動患者における心原性脳塞栓症の発症リスクは CHA2DS2-VASc スコ アで評価され抗凝固療法が導入されている。しかし性別と凝固線溶能に関 する報告は少ない。今回性別と凝固線溶能の関係を調べるために研究を行 った。
方法
本研究は後ろ向きの横断研究である。2011 年から 2014 年までの間に昭和 大学病院の循環器内科外来を受診した患者 1346 人を対象とした。本研究 では TM、TAT、PTF1+2、PIC、D-dimer を用いて解析を行った。TM は血管 内皮機能の指標、PTF1+2 と TAT、D-dimer は凝固能の指標、PIC は線溶能 の指標として用いた。本研究では抗凝固薬内服者、腎機能障害患者、重症 感染症、心肺蘇生後の血液凝固線溶系に影響を及ぼす患者は除外して検討 を行った。
結果
1025 人に対して解析を行った。全患者背景において年齢と糖尿病、血管 疾患の有病率に有意差を認めた。このため疾患と年齢による影響を排除す るため 75 歳未満の Y 群と 75 歳以上の E 群に分けて血液凝固マーカーの男 女比較を行った。(女性、F 群;男性、M 群)TM に関しては Y 群では女性が 有意に低値だったが(F 2.36μg/ml vs M 2.72μg/ml, P<0.0001)E 群にお いて有意差を認めなかった。PTF1+2 に関しては Y 群(F 178.45pmol/L vs M 165.56pmol/L, P=0.0214) 、 E 群 (F 323.43pmol/L vs M 264.95pmol/L, P=0.0426)ともに女性が有意に高値だった。PIC は Y 群では F 群が有意に 高値であった(F 0.68μg/ml vs M 0.64μg/ml, P=0.0015).が E 群では有 意差を認めなかった。
さらに CHA2DS2-VASc スコアの年齢区分に従って Y 群を 65 歳未満(SY 群)、
65-74 歳(LY 群)に分けて SY 群、LY 群、E 群で男女を比較した。TM では SY
群、LY 群では女性が有意に低値であり E 群で有意差が消失した。PTF1+2 では SY 群、LY 群において男女で有意差を認めなかったが E 群で女性が有 意に高値だった。また PIC ではそれぞれの年齢群で有意差は認めなかった。
Y 群、E 群において、TM、PTF1+2 に関して男女の回帰直線を作成し検討し たところそれぞれ正の相関を認めた。TM、PTF1+2 の回帰直線ともに E 群 での直線の傾きが F 群で大きい結果となった。
上記より 75 歳未満では男性に比べて女性は血管内皮障害が軽度であった ものが 75 歳以上で男性と同等になることが示唆された。また、加齢によ って女性は男性より凝固系が亢進しているにも関わらず、線溶能は男性と 同等であると示された。
加齢により女性は線溶能よりも凝固能の亢進が起こっている可能性が示 唆された。これが心原性塞栓の危険因子となっていると思われた。
これより、性別は血液凝固系に影響する重要な因子であると結論した。