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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 北 明 大 洲      学 位論文 題名

Amelioration of experimental autoimmune uveoretinitis (EAU)   with an inhibitor of nuclear fctorkappaB ( NF 一 kappaB ),

    pyrrolidinedithiOCarbamate

(NF ―kappaB 阻害剤であるpyrrolidine dithiocarbamate による      実 験 的 自 己 免 疫 性 ぶ ど う 膜 網 膜 炎 の 抑 制 )

学位論文内容の要旨

緒言

   ヒトの網膜ぶどう膜炎は,しばしば重篤な視力低下をきたす疾患である.治療法の探索や病態解析 のための動物モデルとして,実験的自己免疫性網膜ぶどう膜炎(以下EAU) が現在広く用いられてい る.EAU は,網膜抗原をマウスなどに免疫することで誘導される自己免疫疾患で,typel ヘルパーT 細 胞(以下Thl) 優位の免疫応答を特徴とする.すなわち,抗原特異的T 細胞ならびに単球・マクロファ ージ 系の細 胞が,網 膜ぶど う膜に 浸潤し て病態 を形成する.これらの浸潤細胞の転写因子である nuclear factor kappaB (以下NF‑KB) が,炎症性サイトカインなどの刺激により活性化され.炎症反応 や免疫応答が増強すると考えられている.

   本研究では,NF‑ KB 阻害葉として近年注目されているpyrrolidine dithiocarbamate (以下PDTC) によ って,マウスのEAU が軽症化しうるか検討した.

材料および方法

L EAU 誘導マウスに対するPDTC 投与の影響

BlO.BR マウス(雌,6 ―8 週齢)を網膜視細胞間レチノイド結合蛋白由来ペプチドK2 (以下K2) と,完 全 フ ロイン ドアジ ュバン トで免 疫し, EAU を誘導 した. 治療群 は2mg のPDTC を,対 照群は溶 媒の PBS を免疫後連日腹腔内投与し,以下の項目について検討した.

実験1 臨床・組織学的EAU の重症度

  EAU を誘導 したマ ウス( 以下EAU マ ウス) の眼底 検査を 免疫7 日 後より経 時的に行い臨床的重症 度 を,ま た免疫 後14 ,21 日目に摘出した眼球の病理組織学的重症度を各々5 段階にスコア化した.

実験2 網膜ぶどう膜でのNF‑ KB ,およびサイトカインmRNA の発現

  PD'I ℃治療 群およ び対照 群のEAU マウス,またナイーブマウスの網膜での,NF‑ KB サブュニッ卜 p65 の 発 現 を 免疫 組 織 染 色で ,次 に眼球 内の腫 瘍壊死 因子(TNF)‑a とイン ターロイ キンcIL)‑ip mRNA の発現をRT ‐K 柬で解析した.

実験3 抗原特異的T 細胞反応

   免疫10 日 後,PD1 ℃ 処置, および 無処置 EAU マウス の所属 リンパ 節より T 細胞を精製し、K2 およ び抗原提示細胞(以下心℃)と共に48 時間培養し,3H ‐サイミジンをパルスラベルして16 時間後の取

‑ 24ー

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込 を 計 測 し た ( 以 下T細 胞 増 殖 反 応 ) . ま た , こ の 実 験 で はPDTC存 在 下 で 培 養 ,ま た はEAUマ ウ ス のT細 胞, ま た はAPCをPD'I℃ で 前 処 理し て 洗 浄 し た のち ,T細 胞 増殖 反 応 に 対 する 影 響 を 解析し た,

さ ら に , 卵 白 ア ル ブ ミ ン ( 以 下OVA)特 異 的T細 胞 レ セ プ タ ー(TCR)ト ラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス D011.10のT細 胞 をBALB/cに 養 子 移 入 し ,OVAで 免 疫 後 ,7日 間 連 日PDTCま た はPBSを 投 与 し , 脾 臓 で の D011.10由 来 の T細 胞 の 増 殖 を フ ロ ー サ イ ト メ ト リ ー で 解 析 し た . IL   In vitroにお け るPDTCの 効 果

  APCに 対 す るPD11Cの 影 響 を 解 析 す る た め っ 樹 状 細 胞 のceulineで あ るBCl細 胞 をPD1℃ で60分 問 前 処 理 し た . そ の 後 , 抗CD40抗 体 とn′1Dで90分 刺 激 後 , 細胞 よ り 核 蛋 白を 抽 出 し ,NF‐ 佃 の サ ブ ユ ニ ッ トの 発 現 をwestemblo価ngで 解 析 し た ,

結果

LEAU誘導マウスに対するPDTC投与の影響

実 験1眼 底 観 察 に よ る臨 床 的 最 重 症度 は , 治 療 群で0.90+0.43と, 対 照 群 の2.04t0.55と 比較 し て 有 意 に 軽 症で あ っ た (pく0.01) .また ,免 疫14およ び21日 後の眼 球の病 理組織 学的 重症度 は、治 療群で は各々0.31土O.13および1.29士o.65と,対照群の2.13士0.43,および2.25士1.00と比較して有意に軽症で あった(pくo.05).

実 験2ナ イ ー ブ マ ウ ス の 網 膜 で は ,p65はMnuer細 胞 の 細 胞 質 に発 現 し て い たが ,EAUマウ ス で は , p65の発 現 は 核 に 移行 してい た. しかし ,PD′rC治療群 の網膜 では,p65の核内 移行が 抑制さ れてい た.

ま た , 免 疫18日 後 のEAUマ ウ ス 眼 球 で は , 対 照 群 と く ら べ ,PDTC治 療 群 でnn廴qと 凡 ―1DのmRNA の発現が低下していた.

実 験3治 療 , 対 照 群 と も 抗 原 特 異 的T細 胞 の 増 殖 反 応 に 差 が な か っ た . し か し ,PDTC存 在 下 で 培 養 す る と,T細 胞 増 殖反 応 は み ら れ なか っ た , さ らに ,T細 胞 もし く は 心 ℃ をPDTCで前 処 理して も,T 細 胞 増 殖反 応 は 抑 制 さ れた .B甜m/cマ ウ ス に移 入 し たD011.10T細 胞 の 増 殖は ,PD1℃治 療群, 対照 群で差がなかった.

IL  InmmにおけるPDTCの効果

  IL11Dと 抗CD40抗 体 で 刺 激 後 に ,BC1細 胞 の 核 蛋 白 のNF‐Kの発 現 は 増 加 した が ,PD1℃ 前 処 理 に よって.核内NF‐1出の発現は低下した,

考 察

  実 験1で は 、PDTC投 与 に よ りEAUが 有 意 に 抑制 さ れ る こ とが 示 さ れ た ,ま た , 実 験2で は ,PD'I℃ の 全 身 投 与 に よ っ て , 網 膜Muner細 胞 で のNF‑KB p65の 核 内 移 行 , お よ び 眼 球 内 で のTNF‑a, IL‑

ip mRNAの 発 現 が 低 下 す る こ と が 示 さ れ た .EAUは1111優 位 の 免 疫 応 答 と さ れ て い る , そ こ で 実 験3で ,PDTC全 身 投 与 のT細 胞 お よ びAPCに 及 ぼ す 影 響 を 検 討 し た . そ の 結 果 ,PDTC投 与 は 抗 原 特 異 的T細 胞 の 誘 導 に は 影 響 し な い こ と が 示 され た . こ の 結果 は ,D011.10T細 胞 の 反 応 によ っ て 支 持 さ れ た . し か し 実 験3の 抗 原 特 異 的T細 胞 増 殖 反 応 をPDTC存 在下 で 行 う と ,完 全 に 反 応 は抑 制 さ れ た , さ ら にT細 胞 , ま た はAPCをPDI℃ で 前 処 理 す る こ と に によ っ て ,T細胞 増 殖 反 応 が抑 制 さ れ た . ま た 実 験4で は ,PDTCが 樹 状 細 胞 にお け るNF‑KBの 核 内移 行 を 抑 制 した , こ れ ら の 結果 か ら ,m vivoに お い て もPDTCは 一 度 誘 導 さ れ た ェ フ ウ ク タ ーT細 胞や ,APCの活 性 を 抑 制 する 可 能 性 が 示さ れ た . 以 上 , 今 回 の 研 究 か ら ,PDTCのEAU抑 制 機 序 と し て ,EAUの 病 態 形 成 に 関 わ る 細胞 のNF‑KB 活 性 化を 抑 制 し , 炎症 部位で ある眼 局所で の炎症 性サ イトカ イン産 生を低 下さ せるこ とが考 えられ た.

NF‑KBは 種 々 の 生 体 反 応 に 関 わ る こ と から , 今 後 さ らに 多 く の 研 究が 必 要 で は あ るカtNF‑KBの 抑 制 を 網 膜ぶ ど う 膜 炎 の治 療 戦 略 の ーっ と し て 考 慮す べ き と 考 え てい る .

25 ‑

(3)

学位論文審査の要旨 主 査    教授    上出利光 副査   教授   小野江和則 副 査    教授    大野重昭

     学位 論文 題名

Amelioration of experimental autoimmune uveoretinitis (EAU)   with an inhibitor of nuclear factor kappaB(NF ― kappaB ),

    pyrrolidine dithiocarbamate

(NF −kappaB 阻害剤であるpyrrolidine dithiocarbamate による      実 験 的 自 己 免 疫 性 ぶ ど う 膜 網 膜 炎 の 抑 制 )

動 物モ デル によ る眼 科領 域の 炎症 性疾 患に対する pyrrolidine dithiocarbamate

(PDTC) を用いた治療の試みは、これまでも報告されている。これらは、エンドトキシン

誘導ぶどう膜炎(EIU) や実験的自己免疫性前部ぶどう膜炎(EAAU) であり、急性の、し

かも炎症反応の場が前部ぶどう膜にある疾患である。申請者は、より慢性の経過をた

どり、かつ炎症の主体が後眼部にある自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU) をモデルとし

て PDTC の作 用機 序と 治療 効果 を検 討し た。 EAU は網膜自己抗原をマウスに免疫す

ることにより発症するが、PDTC 投与により臨床症状の著明な改善および組織学的網

膜 変化 の抑 制が みら れた 。EAU 発症 に際 し、ぶどう膜網膜への炎症細胞浸潤およ

ぴサイトカインの産生がみられるが、サイトカインの産生は、NF −kappaB により制御さ

れ てい る。 EAU の発症に先立って網膜ミューラー細胞では、NF ―kappaB のp65 サブ

ユニットが細胞質から核へと移動しており、 PDTC 投与によりこの移動は著明に抑制さ

れていることを明らかにした。さらにPDTC は網膜の腫瘍壊死因子やインターロイキ

ンー1 の産生をも抑制した。従って、PDTC は網膜に対する影響のみならず、抗原提

示 細胞 の抗 原提示能や網膜抗原特異的 T 細胞の活性化を抑制することにより、EAU

の発症を抑制している可能性のあることを明らかにした。発表にあたり、主査の上出

教授より、PDTC の長期間投与による影響の有無、抗原特異的T 細胞の誘導が起こっ

た 後で の投 与実験の有無、 PDTC を投与したマウスの抗原提示細胞による抗原特異

的T 細胞増殖反応の実験の有無についての質問があった。さらに、PDTC 投与下では

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リンパ節での抗原特異的T 細胞の誘導がおきても眼球局所に侵入できない可能性が あるため、養子移入の実験で眼球に浸潤した細胞の割合を直接みる実験ができると作 用機序がさらに解明できる可能性があること、また眼球に直接薬剤を投与するような実 験系の開発が望まれるという提言があった。っいで、副査の小野江教授から、網膜ミュ ー ラー 細胞 の EAU での 果た す役 割に ついて、またmRNA 発現のデータは、免疫後10 日目ではミューラー細胞でNF ―kappaB の活性化がおこり、免疫後18 日目では炎症性 細胞からのサイトカイン産生を反映しているのかという質問があった。最後に副査の 大野教授より、 EAU のような眼炎症モデルは他にあるか、あるとすればEAU との相違点 があるか、眼底検査において検者間でのばらっきがあるか、PDTC 以外にもEAU を抑 制するような研究を他に船こなっているか、という質問があった。いずれの質問に対し ても、申請者は自己のデータや、これまでの文献を引用し、適切な回答を行った。この 論文は、NF ―kappaB 阻害剤である pyrrolidine dithiocarbamate が自己免疫性ぶどう 膜網膜炎を抑制する機序を明らかにした点で高く評価され、今後自己免疫性ぶどう膜 網 膜炎 の新規治療法の開発への応用が期待される。審査員一同は、これらの成果 を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども併せ申請者が博士(医学)

の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した。

参照

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