博 士 ( 医 学 ) 石 川 慶 大
学 位 論 文 題 名
Up‑regulation of CD40 with juxtacrine activity in human non‑small lung cancer cells correlates with poor prognosis
(非小細胞肺癌細胞においてジャクスタクライン活性を伴う CD40 の 発 現 増 大 は 不 良 な 予 後 に 相 関 す る )
学位論 文内容の要旨
【背景と目的】CD40は分子量42‑50kDaのTumor necrosis factor receptor superfamilyの ーっ に属する 膜糖タンパクであり、そのLigandとなるCD154(CD40 ligand)は分子量39kDa の 膜 糖 タ ンパ ク で ある 。CD40は 主にBリ ン パ球 、CD154は主 にTリン パ 球 に発 現 す る こ と が知 ら れ 、CD40‑CD154相 互作 用はBリンパ球 の分化 ・増殖に 関与す ることが 知ら れて いる。最 近では 肺癌を含 む悪性 腫瘍細胞 におけ るCD40、CD154の発現が報告されて いるが、癌細胞における発現の意味や、肺癌細胞での発現と症例の生命予後などについて の関 係は明ら かでは ない。以 上より 、本研究 は非小 細胞肺癌 組織におけるCD40、CD154 の発現をしらべ、他の因子との相関を統計学的に検討することでその分子生物学的意義を 推測、さらに細胞株を用いた実験系によりそれを明らかにすることを目的とし、外科切除 非小 細胞肺癌 検体におけるCD40、CD154の免疫組織学的検討と、in vitroにおける肺癌細 胞 間 の CD40‑CD154相 互 作 用 に 関 す る 細 胞 生 物 学 的 機 能 解 析 を 行 っ た 。
【材 料と方法 】 ヒト非小細胞肺癌細胞株(腺癌細胞株A549,ABC‑1,PC3,RERF‑LCMS, RERF‑LCOK.VMRC‑LCD,扁平 上皮癌 細胞株H226,LC‑1,LK2,PC10) 10株と 正常肺 組織 を 材 料にWestem blotを施行し 、CD40、CD154のタ ンパク発 現をスク リーニ ングした 。 同様 に上記10株の細胞 株をCB17/SCIDマウス に皮下 移植して 得られ た腫瘍(xenografts) から タンパク 抽出を施行し、タンパク発魂を比較検討した。非小細胞肺癌切除症例129症 例 ( 平均 年 齢62.8歳) の 薄 切切 片 に 対して抗CD40抗体、 抗CD154抗 体を用 いて免疫 組 織学 的染色を 施行し た。CD40の 陽性対照 は正常リ ンパ節 切片を用 いた。CD154免疫染色 の陽 性対照、 陰性対照については後述する。免疫染色の結果は1)リンパ球においてCD40 陽性群/陰性群、2)非小細胞肺癌細胞においてCD40陽性群/陰性群、3)非小細胞肺癌細胞 にお いてCD154陽性群/陰性群に分類し、臨床病理学的因子との相関、および予後との関 係 に つい て 統 計学 的 検 討を 行 っ た。CD40陽 性 リ ンパ 球 の 数とCD40陽性 癌細胞 または CD154陽性癌 細胞の関 係をMann‑Whitney sU‑testで評価した。臨床病理学的因子との相 関は カイ二乗 検定で評価した。生存曲線をKaplan‑Meier法で作成し、上記1)〜3)の2群 間をlog‑rank法で検 討した。 単変量 解析・多 変量解 析はCoxの比例 ハザードモデルを用 いて 検討した 。pく0.05を有意差ありと判定した。細胞増殖アッセイ:ヒト非小細胞肺癌 細 胞 株を96ウェル プレー トに各5xl03個播 種し、可 溶型リ コンビナ ント(rhs) CD154、
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抗CD40抗 体 、 抗CD154抗 体 を 加 え 、 細 胞 の 増 殖 をCell Counting Kitー8(WST‑8)を 用 い て 検討 した 。ジ ャ クス タク ライ ン (直 接接 触) 細胞 増 殖アッセイ:96ウェ ルプレートに各5xl03 個 の ド ナ ー 細 胞 を 播 種 し 、 ホ ル マ リ ン 固 定 し た の ち 、 各5xlぴ 個の アク セ プタ ー細 胞を 細 胞 ― 細 胞 間 の 直 接 接 触 下 で48時 間 共 培 養 し 、 細 胞 増 殖 実 験 を 試 行 し た 。 同 時 に ド ナ ー 細 胞 と ア ク セ プ タ ー 細 胞 の 間 に ト ラ ン ス ウ ェ ル を 用 い た パ ラ ク ラ イ ン 環 境 下 で48時 間 共 培 養し 比較 検討 し た。 細胞 増殖 の 評価 はWST‑8を用 いて 評価 し た。
【 結 果 】 1. Western Blot:CD40の 発 現 は 肺 癌 細 胞 株10株 中5株 に 認 め ら れ た 。CD154 タ ン パ ク は 同8株 に 認 め ら れ た 。xenograftに お い てCD40はLIく2以 外 で 発 現 低 下 を 認 め た。CD154の発現状況はxenograftと培養細胞株に差は見られなかった。
2. xenograftのCD40、CD154免 疫 組 織 学 的 染 色 :xenograftを 材料 とし たWestern blotの 結 果 はCD40、CD154の 免 疫 組 織 学 的 染 色 の 結 果 を 反 映 し た 。xenograft LK2:CD40(+)、 xenograft ABC‑1:CD40(‑)、xenograft PC10:CD154(‑)、xenograftLK2:CD154(‐)を示したため、
こ れ ら の xenograft切 片 を 免 疫 染 色 の 陽 性 対 照 、 陰 性 対 照 と し て 使 用 し た 。 3. 肺 癌 患 者 検 体129例 に よ るCD40,CD154の 免 疫 組 織 学 的 染 色 : 臨 床 検 体129例 中 、 癌 細 胞 にお いてCD40陽性 群 は67例(51.9ワ 。) 、CD154陽性例は76例(58.9%) と判定した。
4. 疫 染 色 の 統 計 的 解 析 : 癌 細 胞CD40陽 性 群 に お け るCD40陽 性 リ ン パ 球 の 数 は 癌 細 胞 CD4陰 性 群 と 比 較 し て 有 意 に 多 か っ た 。 癌 細 胞CD40陽 性 群 (n〓67) の 予 後 は 陰 性 群 に 比 べ 有 意 に 不 良 で あ っ た 。 さ ら に 、 癌 細 胞 でCD40陽 性/陰 性 群 、CD154陽 性 / 陰 性 群 を 組 み 合 わ せ た4群を 比較 する と 、CD40/15鍬 十/十) 群の 予 後は 他の3群 に比 べ有 意に 不 良で あ っ た 。こ れに 対し てCD40/15ボ‐/―)群の予後は他 群に比べ有意に良好であっ た。臨床病理 学 的 因 子 と の 相 関 を 評 価 し た 結 果 、 癌 細 胞 で のCD40発 現 は 、 組 織 型 、T因 子 、N因 子 、 病 期 に 相 関 し た 。 癌 細 胞 で のCD154発 現 は 、 年 齢 、 組 織 型 に 相 関 し た 。 単 変 量 解 析 、 多 変 量 解 析 に お い てT因 子 、N因 子 、 癌 細 胞 に お け るCD40発 現 の 有 無 が 独 立 予 後 規 定 因 子 であった。
5.細胞増殖アッセイ:3種類の肺癌細胞株PC10(CD40/154(・/十))、LC‐1(CD40/154(リ十))、
LK2(CD40/154( 十/‐mこ対 して細胞増殖実験を施行 した。rhsCD154の曝露はい ずれの細胞株 の 増 殖に も影 響を 与え な かっ た。LC‐1(CD40/154( リ十 )) の増 殖は 抗CD40抗 体、CD154抗 体 の 存 在 で 有 意 に 低 下 し た 。 一 方 で 、 抗CD40抗 体 、 抗CD154抗 体 はPC10、uく2の 増 殖に影響を与えなかった。
6. ジ ャ ク ス タ ク ラ イ ン の 系 に よ る 細 胞 増 殖 ア ッ セ イ :CD40陽 性 細 胞 で あ るLK2.I℃ ‐1 の 細 胞 増 殖 に つ い てCD154陽 性 細 胞 、CD154陰 性 細 胞 と 接 触 さ せ る ジ ャ ク ス タ ク ラ イ ン の 系 にお いて 検討 した 。 アク セプターIJく2(CD40/15鍬リ‐))細胞は、ホルマ リン固定した CD154陽 性 ド ナ ー 細 胞 で あ るPC10、LC‐1の 存 在 下 で 有 意 に 細 胞 増 殖 を 認 め た 。 そ れ に 対し て、LC.1(CD40/15鍬(リ 十))細胞増殖はいずれのドナー細胞の存在下でも差は認められ な か っ た 。 ま た 、 パ ラ ク ラ イ ン の 系 にお いて は 、ど のド ナー 細 胞の 存在 にお いて も アク セ プターLK2、アクセプターLC‐1の増殖に影響を与えなかった。
【 考 察 】 本 研 究 はBリ ン パ 球 の 増 殖 に か か わ るCD40と そ の り ガ ン ド で あ るCD154の 非 小 細胞 肺癌 にお いて の 発現 状況 と、 その 分 子生 物学 的意 義 につ いて 検討した報告で ある。
と く に 、 本 研 究 は 非 小 細 胞 肺 癌 細 胞 に お け るCD40‑CD154の ジ ャ ク ス タ ク ラ イ ン 反 応 が 肺 癌 細 胞 の 増 殖 に 関 与 す る こ と を 示 し た 最 初 の 報 告 で あ る 。CD40の 発 現 状 況 が 培養 細胞 株 とxenograftで 変 化 す る こ と よ り 、CD40の 発 現 は そ の 細胞 周囲 を取 り 巻く 環境 に影 響を 受 け る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 ま た 免 疫 染 色 の 結 果 よ り 、 癌 細 胞 でCD40陽 性 例 は 予後 不良 で あ り 、 細 胞 増 殖 に か か わ る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 癌 細 胞 に お け るCD40‑CD154相 互 反 応 を 細 胞 増 殖 実 験 で 確 認 し た 結 果 、CD40/154(+/‑)のLK2細 胞 がCD154陽 性 細 胞 と ジ ャ ク ス タ ク ラ イ ン の 系 を 介 し て 細 胞 増 殖 に か か わ る こ と が 示 され た が、CD40/154(+/+)のLC‑1
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細 胞は 自ら がCD154を 有す るた め、 ここにさらにCD154陽性細胞を共培養して も細胞増 殖に差はみられ なかった。以上より、癌細胞においてのジャクスタクラインの系における CD40‑CD154相互 反応は癌の増殖に関与し、非小細胞肺癌において予後を 規定することが 示唆された。
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学位論 文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
Up‑regulation of CD40 with juxtacrine activity in human non‑smalllung cancer cells correlates with poor prognosis
( 非 小 細 胞 肺 癌 細 胞 に お い て ジ ャ ク ス タ ク ラ イ ン 活 性 を 伴 う CD40の 発 現 増 大 は 不 良 な 予 後 に 相 関 す る )
CD40は分子量42‑50kDaのtumor necrosis fCtorreccptorsup宀iりのーっに属する膜糖タ ンパ ク で あり 、 そのligandとなるCD154は分 子量39kDaの膜糖 タンパ クである 。CD40は 主にBリ ンパ 球 、CD154は主 にTリ ンパ球 に発現す ること が知られ 、CD40.CD154相互作 用はBリンパ 球の分化 ・増殖に関与することが知られている。免疫細胞のマーカーである これらの分子が最近では悪性腫瘍においても発現していることが報告されているが、癌細 胞における発現の意味や、肺癌細胞での発現と患者の生命予後などにっいての関係は明ら かでは ない。本 研究では 非小細胞肺癌組織におけるCD40、CD154の発現と他の因子との相 関を統計学的に検討することでその分子生物学的意義を推測し、さらに細胞株を用いた実 験系によりそれを明らかにすることを目的とした。
はじめ にヒト非 小細胞 肺癌細胞株10株(腺癌細胞株A549、ABC−1、PC3、RHば・LCMS、 REIば .LCOK、VMRC‐LCD、扁 平上皮癌 細胞株H226、LC‐1、LK2、PC10)と正常肺組織を 材料にWbstenlb10tを 施行し、CD40、CD154のタンパク発現を検討した。同様に上記10株 の細胞株をCB17/SCIDマウスに皮下移植して得られた腫瘍(xenogrぬ)からタンパク抽出 を施行 し、タン パク発現 を比較 検討した 。CD40の発 現は肺癌 細胞株10株中5株に認めら れ、CD154タ ン パク は 同8株 に 認 めら れ た 。Xcnogr紐におい てCD40はLIQ以外で 発現低 下 を 認 め た 。CD154の 発 現 はxenogrmと 培 養 細胞 株 に おい て 差 は見 ら れ なか っ た 。 次 に 非小 細 胞 肺癌129切除症 例の薄 切切片に 対して 抗CD40抗体、 抗CD154抗体を用 い て免疫組織学的染色を施行した。対象群を1)腫瘍浸潤リンパ球におけるCD40陽性群/陰性 群、2)癌細胞におけるCD40陽陸群/陰性群、3)癌細胞におけるCD154陽陸群/陰性群に分類 し、統計学的に検討した結果、癌細胞CD40陽性群の転帰は陰性群に比べ有意に不良であっ た。単変量および多変量解析において癌細胞のCD40発現の有無が独立予後規定因子であっ た。臨 床病理学 的因子と の検討 で癌細胞CD40の発現はT因子、N因子に相関し、CI)40は
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寛 諭
俊 哲
雅
弘
村 田
田 藤
今 福
秋 近
授 授
授 授
教 教
教 教
査 査
査 査
主 副
副 副
癌の増殖に関連すると考えられ、細胞増殖実験を施行した。CD40/154(+/+)であるLC‑1の増 殖 は 抗CD40抗 体、CD154抗体の 存在で著 明に低 下した。 また、 異なる2種類の 細胞を 直 接接触させるjuxtacrineの系においてはCD40/154(+/‑)であるアクセプターLK2細胞は、ホル マリ ン固定し たCD154陽陸ドナ ー細胞 であるPC10、LC‑1の存在 下で有 意に細胞増殖を認 め、CD154陽性 ドナー 細胞に抗CD154抗 体を加え るとア クセプタ ーLK2細胞の増殖抑制を 認め た。以上 より肺 癌細胞に おけるCD40発現は不良な予後に相関し、CD40‑CD154相互作 用は腫瘍細胞の増殖に関与すると考えられた。
口頭発表に続き、副査福田諭教授より非小細胞肺癌においての報告で組織型によるCD40 発現状況の違いの有無、染色性の分類の決定法、癌におけるCD40の臨床応用についての質 問が あった。 次に副 査秋田弘俊教授よりin vitroにおいて可溶性CD154を加えてもCD40陽 性細 胞株の増 殖が認 められなかった理由、正常気管支上皮におけるCD40、CD154の発現状 況、 癌化とCD40、CD154の発現機序、これらの発現に関わる転写因子の存在と扁平上皮癌 において発現が多く見られる理由にっいての質問があった。次に副査近藤哲教授より臨床 検体 において はCD40陽陛 の癌でCD154発現 の有無と 予後に 関連が見 られなかった理由に つい ての質問 があっ た。最後に主査今村雅寛教授よりCD40、CD154の癌細胞における発現 は非小細胞肺癌に限った現象であるのか否か、juxtacrineの実験系で抗CD40抗体を用いた か 否 か 、 ホ ル マ リ ン 固 定 の 抗 原 性 変 化 へ の 影 響 に っ い て の 質 問 が あ っ た 。 いずれの質問に対しても申請者はその主旨をよく理解し、自らの研究内容と文献的考察を 混じえて適切に回答した。
審査員一同はこれらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども併せ 申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る と 判 定 し た 。
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