Title
UVC irradiation suppresses platelet-derived growth factor-BB-
induced migration in human pancreatic cancer cells( 内容の要旨
(Summary) )
Author(s)
河口, 順二
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学) 甲第886号
Issue Date
2012-03-25
Type
博士論文
Version
none
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/43053
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏名(本籍) 学 位 の 種 類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与要件 学位論文題目 審 査 委 員 河 口 順 二(岐阜県) 博 士(医学) 甲第 886 号 平成 24 月 3 月 25 日 学位規則第4条第1項該当
UVC irradiation suppresses platelet-derived growth factor-BB-induced migration in human pancreatic cancer cells
(主査)教授 吉 田 和 弘 (副査)教授 石 塚 達 夫 教授 中 島 茂 論 文 内 容 の 要 旨 【背景・目的】 膵癌はわが国の癌死亡原因の第 5 位を占め,さらに年々増加し続けている。膵臓の周辺には様々 な臓器や血管があり,また膵癌には特徴的な症状や検査方法もないために早期発見が難しく,発見 時にはすでに周囲組織へ浸潤していることが多い。また手術不能な進行膵癌に対する化学療法の治 療成績は満足できるものではなく,膵癌の早期発見・治療には抜本的な変革が求められているとい える。
血小板由来成長因子(Platelet-derived growth factor-BB; PDGF-BB)は固形癌の細胞遊走能や遠 隔転移に寄与することが分かっている。その受容体である PDGFR は膵癌を含む多くの悪性腫瘍で発 現異常が報告されており,またこれらを分子標的とした治療薬(imatinib, sorafenib など)が開発 されており,癌領域における key molecule となっている。他方,紫外線(UV)は,異なる波長によ り 3 つに分類される(長波長 UV-A; 320-400 nm, 中波長 UV-B; 280-320 nm, 短波長 UV-C; 200-280 nm)。 UV-A と UV-B は主要な発癌要因とされているが,UV-C に関しては通常地上に到達しないものの,現 在では水やクリーンベンチの殺菌に応用されている。今までにわれわれは,UV-C が大腸癌細胞,膵 癌細胞において,癌の強力な増殖因子である EGF の受容体である EGFR のセリン残基 1046/1047 のリ ン酸化を惹起し,EGFR を脱感作させることや,膵癌細胞のアポトーシスを誘導すること,膵癌の標 準的な化学療法薬であるゲムシタビンとの併用により,相乗的に膵癌細胞増殖抑制効果を有するこ となどを報告してきた。本研究では,さらに膵癌の生命予後を決定的に悪化させる要因である,高 い浸潤・遊走能に対して UV-C がどのように影響するかを検討した。 【対象と方法】 膵癌細胞(AsPC1, BxPC3)において,PDGF-BB の細胞遊走能に与える影響および UV-C 照射の効果を Boyden chamber (8 mmol/L pores, Transwell®; Corning 社)を用いた cell migration assay にて検
討した。Chamber 上面に膵癌細胞(AsPC1, BxPC3)をまき,16 時間培養した後に PDGF-BB による刺激 を行った。その後,50%エタノールにて細胞を固定し,0.25%ジメチルメチレンブルーにて癌細胞 を染色,チャンバー上面のみ拭き取り,下面に移動した膵癌細胞数のカウントを行った。また PDGF-BB による細胞遊走能誘導に関与するシグナル伝達系については,p44/p42 MAPK, SAPK/JNK, p38 MAPK, Akt, GSK-3β のリン酸化について Western Blot 法にて解析した。
【結果】
基礎実験として,EGF, VEGF, PDGF-BB, IGF-1, HGF, Wnt3a, Wnt5a, basic FGF, TGFαなどの各 種増殖因子を用いたが,PDFG-BB に対する反応が非常に良好で,かつ再現性を有していたため,以 後の実験では PDGF-BB を細胞遊走能刺激因子とした。AsPC1 細胞および BxPC3 細胞において,至適 な PDGF-BB 濃度および刺激時間は 70 ng/ml および 36 時間であったため,この条件を以後の実験に 用いた。また,Western Blot 法を用い PDGF-BB 刺激による p44/42 MAPK, SAPK/JNK, p38 MAPK, Akt, GSK-3β への影響を検討したところ,p38 MAPK 以外のすべてのリン酸化が PDGF-BB で誘導された。 さらにこれらの膵癌細胞に UV-C を照射し,16 時間培養した後に PDGF-BB による刺激を行い cell migration assay を行った結果,UV-C 照射(10 J~)された細胞では PDGF-BB による細胞遊走能促進が 著明に抑制された。さらに PDGF-BB による Akt, GSK-3β のリン酸化は UV-C (10 J)照射により抑制 がされたが,p44/42 MAPK, SAPK/JNK のリン酸化は影響を受けなかった。
【考察】
膵癌細胞(AsPC1, BxPC3)において,PDGF-BB による細胞遊走能促進は UV-C 照射にて著明に抑制さ れた。また PDGF-BB により p44/42 MAPK, SAPK/JNK, Akt, GSK-3β のリン酸化の誘導を認めたが, UV-C の照射により Akt, GSK-3β のみリン酸化の抑制がみられた。すなわち PDGF-BB による細胞遊 走能促進には Akt 経路が強く作用しており,UV-C は Akt 活性を抑制することで細胞遊走能を抑制し ていることが強く示唆された。今後の臨床応用を考えるうえでは,胆管癌や膵癌に対して例えば内 視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)を用いて効率よく癌組織に UV-C が照射されるデバイスの開発が 必要と思われた。
【結論】
UV-C は Akt 経路を抑制することで PDGF-BB による膵癌細胞遊走能促進を抑制し,UV-C が膵癌治療 に応用できる可能性が示唆された。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
申請者 河口順二は,膵臓癌細胞株において platelet-derived growth factor-BB により誘導され る細胞遊走能を紫外線(UVC)照射が抑制することを見い出した。さらに,この抑制作用は細胞内 Akt-GSK3βシグナル系を介するものであり, p44/p42 MAPK 系,SAPK/JNK 系は関与しないことを in vitro で明らかにした。これらの知見は膵臓癌の病態解明と将来の治療展開につながり,消化器病 学,臨床腫瘍学の発展に少なからず寄与するものと認める。
[主論文公表誌]
JUNJI KAWAGUCHI, SEIJI ADACHI, ICHIRO YASUDA, TAKAHIRO YAMAUCHI, TAKASHI YOSHIOKA, MASAHIKO ITANI, OSAMU KOZAWA and HISATAKA MORIWAKI: UVC irradiation suppresses platelet-derived growth factor-BB-induced migration in human pancreatic cancer cells.