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学位論文 審査の要旨 主査

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 工 学 ) 荒 関    卓

学 位 論 文 題 名

地上デジタル放送における放送波中継用適応等化の研究 学位論文内容の要旨

  本論 文 では ,地 上デ ジタ ル放 送の 放送 波中 継シ ステ ムに おい て 問題となる,

伝 送路 に おけ る干 渉を キャ ンセ ルす る適 応等 化法 を提 案し ,実 際 の放送システ ム に使 用 する のに 充分 なキ ャン セル 性能 を持 つ中 継装 置を 実現 す ることを目的 とす る.

  国 内 の 地 上 デ ジ タ ル 放 送 で は ,OFDMを 基 本 と する 変 調方 式が 採用 され ,同 一 周波 数 で多 数回 の中 継を 繰り 返すSFN(Single Frequency Network)が可能と な って い る. その ため ,中 継伝 送路 では ,マ ルチ パス の他 に, 中 継装置の出カ ア ンテ ナ から 受信 アン テナ への 回り 込み とい った 干渉 も発 生す る ,日本のよう な 山岳 部 の多 い地 形で 全国 隈な く配 信す るた めに は, 放送 波中 継 が多数段にな る こと が 多く ,こ のよ うな 多段 中継 にお いて は, 各中 継に おけ る 回り込みやマ ル チパ ス 等の 干渉 によ る劣 化を でき るだ け軽 減す るこ とが 重要 な 課題である.

  中 継 装 置 と し て は , 従 来 ,OFDM信 号 に 埋 め 込 ま れ た パ イ 口 ッ ト 信 号 か ら 伝 送路 の 周波 数特 性を 推定 し, 等化 のた めの フア ルタ の特 性を 求 める手法が検 討 され て いた が, 処理 が複 雑で あり 小型 化低 価格 化が 難し い: 一 定以上の長さ を 越え る 遅延 の反 射が ある とキ ャン セル 特性 が低 下す る, フア ル タの係数がス テ ップ 的 に変 化す るた め伝 送路 の時 間的 な変 動へ の追 従性 が低 い ,という問題 点が あった.

  こ のような問題点を解決する手法として,通信の分野では,DF(Decisionfeed‐ bacりやMLSE(Maximumlikelihoodsequenceestimation)等 を用 い た適応等化が 検 討 さ れ て き た . し か し な が ら ,OFDMを 採 用 し た地 上 デジ タル 放送 では ,数 千 本の キ ャリ アを 一括 して 復号 する 必要 があ り, 符号 の判 定に は 多大な演算,

メモ りが必要となるため事実上採用ができない.

  本 論 文 で は , 符 号 判 定 等 の 非 線 形 処 理 を 含 ま ず,MMSE基 準に よる 線形 な適 応 等 化 の 導 入 を 試 み る , 但 し ,0FDM信 号 は 帯 域 内で ほ ぼ平 坦な スペ クト ルを 持 って は いる もの の, 帯域 が制 限さ れて おり ,適 応処 理に おい て ,係数にバイ ア スが か かり .伝 送路 特性 とは 異な る値 とな る. その ため ,充 分 なキャンセル 特 性を 得 るに はこ のバ イア スの 影響 を低 減す るこ とが 最大 の課 題 となる.本論 文 で は , 係 数 を 求 め る 際 に ,0FDM信 号 の 帯 域 外 に ラ ン ダ ム な 信 号 を 加 え る     ―1083―

(2)

ことによルバイアスを提言する方式を提案する.この方式は,装置規模が小さ く,また中継装置として充分なキャンセル性能の得られることが期待できる.

  本論文では,先ず第1部(第1章,第2章)で,地上デジタル放送システム,

および,適応信号処理にっいて現状を概観し,本研究を進めるにあたり前提と なる技術,背景にっいて整理する.第2部(第3章から第7章)では,適応等 化を中継装置に組み込む際の問題点を整理し,その解決法をいくっか提案し比 較 検討 する .そ の結 果,係数を求める際にOFDMの帯域外にランダムな信号 を加えることによルバイアスを低減する方法が,装置規模はあまり複雑化せ ず,特性的にも優れていることを確認する,また,適応型の場合には,反射の 遅延時間に応じた回路規模となるため,中継装置の設置条件に応じ低コスト化 が 可能 とな るこ とを 示す,第3部(第8章から第10章)では,適応等化を実 際の地上デジタル放送システムヘ導入する際に発生する問題にっいて検証を行 う.先ず,様々な伝送路,例えば,マルチパスや回り込みの反射の遅延時間の 大小にかかわらず対応できることを示す.また,フェーディング等電カの落ち 込みが大きいとき.への対処として,適応型アンテナダイバーシチを提案し,そ の特性を検証し,併せて,装置規模の削減方法を述べる.最後に,第11章結 論 にお いて ,本 研究 の成果にっいて要約し,論文全体のまとめを述べる,

  以上要約すると,本論文では,適応処理によるマルチパスや回り込みによる 干渉をキャンセルするための手法を提案し,また,実用化へ向けた性能の検証 を行った.その結果,提案方式は,実際の中継システムの置かれる環境に適用 可能な性能であることが確認できた,2006年には地上デジタル放送が全国に 展開されることになっており,本研究の成果は,番組の全国配信にあたり必須 要件となる中継システム構築に有効に利用できる.

(3)

学位論文 審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

北島 青木 荒木 長谷山

学 位 論 文 題 名

秀夫 由直 健治 美紀

地上デ ジタル 放送にお ける放送 波中継 用適応等化の研究

放送衛星を用いずに,地上送信施設からテレビジョンのデジタル放送を行う際には,

地上に設置される放送波中継システムが用いられる.地上中継伝送路においては,電 波の伝播経路が多重に存在すること,また,中継装置の送信アンテナから同一施設の 入カである,受信アンテナへの回り込みも無視できないことことから,干渉による伝 送誤りを抑制する伝送方式を確立し,採用することが重要である.本論文は,著者が 行った伝送路における干渉を抑制する適応等化法及び放送システムにおいて十分機能 する,その装置化に関する研究成果をまとめたものである,

  国内の地上デジ タル放送では,OFDMを基本とする変調方式が採用され,同一周波 数で多数回の中継 を繰り返すSFN(Single Frequency Network)が可能となっている,

そのため,中継伝送路では,マルチパスの他に,中継装置の出カア.ンテナから受信ア ンテナへの回り込みとぃった干渉も発生する.日本のような山岳部の多い地形で全国 隈なく配信するためには,放送波中継が多数段になることが多く,このような多段中 継においては,各中継における回り込みやマルチパス等の干渉による劣化をできるだ け軽減することが重要な課題である.

  著者は,まず,研究開始時点における当該分野の技術的状況を分析し,中継装置と し ては ,従 来,OFDM信号に埋め込まれた パイロット信号から伝送路の周波数特性 を推定し,等化のためのフイルタの特性を求める手法が検討されていたが,処理が複 雑であり小型化低価格化が難しいこと,一定以上の長さを越える遅延の反射があると 干渉抑制特性が低下すること,フイルタの係数がステップ的に変化するため伝送路の 時 間 的 な 変 動 へ の 追 従 性 が 低 い こ と な ど の 問 題 点 を 指 摘 し た .   このような問題点を解決する手法として,通信の分野では,DF(Decision feedback) やMLSE(Maximum likelihood sequence estimation)等を用いた適応等化が検討され て きた が,OFDMを採用した地上デジタル 放送では,数千本の搬送波を一括して復 号する必要があり,符号の判定には多大な演算,メモりが必要となるため事実J|採用 ができないことを正しく指摘した.

  問題解決策として著者の研究においては,符号判定等の非線形処理を含まず,MMSE

1085

(4)

基 準による 線形な 適応等化 の導入 を試みた .OFDM信号は帯域内でほぽ平坦なスベ クトルをもってはぃるものの,帯域が制限されており,適応処理において,係数にバ イアスがかかり,伝送路特性とは異なる値となる.そのため,充分な干渉抑制特性を 得るにはこのバイアスの影響を低減することが重要である.論文中では,係数を求め る 際に,OFDM信号の帯 域外に ランダム な信号を 加えることによルバイアスを低減 する方式を提案された.この方式は,装置規模が小さく,また中継装置として充分な キャンセル性能の得られることが期待できる,

  論 文構成 は妥当で ある,先ず第1部(第1章,第2章)で,地上デジタル放送シス テム,および,適応信号処理について現状を概観し,本研究を進めるにあたり前提と なる技術,背景についての整理がなされた.,

  第2部( 第3章から第7章)では,適応等化を中継装置に組み込む際の問題点が整 理 され,そ の解決 法が複数 提案・ 検討され た.そ の結果,係数を求める際にOFDM の帯域外にランダムな信号を加えることによルバイアスを低減する方法が,装置規模 はあまり複雑化せず,特性的にも優れていることを報告した.また,適応型の場合に は,反射の遅延時間に応じた回路規模となるため,中継装置の設置条件に応じ低コス ト化が可能となることも示した,

  第3部( 第8章から第10章)で は,適応 等化を 実際の地上デジタル放送システム ヘ導入する際に発生する問題について検証を行い,様々な伝送路の態様に対して,す なわち,多重経路や回り込みの反射の遅延時間の大小にかかわらず対応できることを 示した.また,フェーデイング等電カの落ち込みが大きいときへの対処として,適応 型アンテナダイバーシチを提案し,その特性を検証し,併せて,装置規模の削減方法 を述べた.

  第11章における結論において,著者の研究成果が論文全体のまとめという形で整 理された.

  各章における上記内容は,技術的に正確なもので新規性,有効性に富んだものと評 価される.

  以上要約すると,本論文において著者は適応処理による多重経路や回り込みによる 干渉を抑圧するための手法を提案し,それが実際の中継システムの置かれる環境に適 用可能な性能を有することを示した.2006年に我が国において予定される地上デジ タル放送の全国展開における必須要件である中継システム構築における重要課題の解 決を通じての情報メデイア工学・通信工学への貢献は極めて顕著であり,著者は博士

(工学)の学位を授与される資格があるもの認める.

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