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博 士 ( 農 学 ) 齊 藤 静 夏

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 齊 藤 静 夏

     学 位 論 文 題 名

  Studies on radical scavenglngmeChaniSmof protOCateChuiCaCidanditSrelatedCOmpoundS      ( プ ロ ト カ テ キ ュ 酸 お よ び 関 連 化 合 物 の      フ ジ カ ル 消 去 反 応 機 構 に 関 す る 研 究 )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  ポリフェノールは抗酸化作用があることがよく知られており、中でもカテコール構造を有する化合物は酸 化されると伊キノン体に変換されるためラジカル消去活性が高いことがわかっている。しかしながら、カテ コール化合物のキノン体生成以降の反応についての詳細は明らかになっていない。そこで本研究では天然に 幅広く存在するプロトカテキュ酸(1)とそのエステルのキノン体生成以降のラジカル消去反応機構の解明 を目的とした。

  プ ロ ト カ テ キ ュ 酸 お よ びそ の エ ス テル の ラ ジカ ル 消 去活 性 を 安定 な フ リー ラ ジ カル で あ るDPPH

(2,2‑dipheny‐1‐pic馴hydぬzyl冫ラジカルを用いて吸光度法で測定したところ、アセトンやアセトニトリルな どの非アルコール性溶媒中ではプロトカテキュ酸やそのエステルはいずれも2当量のラジカルを消去した。

アルコール性溶媒中では、プ口トカテキュ酸はやはり約2当量消去したのに対し、プロトカテキュ酸工ステ ルでは急速に5当量のラジカルを消去した。

  プロト カテキ ュ酸(1)やそ のメチ ルエステ ル(2)と、DPPHラジカ ルの反応 液を直接NMRによって分 析したところ、非アルコール性溶媒中では伊キノン体(1a、2a)のみが生成することがわかった。それに対 しアル コール性 溶媒中 では、キ ノン体の他にもキノン様化合物のシグナルが観測された。二次元NMR等に よって詳細に構造解析したところ、プロトカテキュキノンの3位ヘミアセタール体(1b2b)であることが 明らかとなった。

  プロト カテキ ュ酸メチ ル(2)をメ タノール 中、DPPHラ ジカルで酸化させ、反応液をNMRで分析したと ころ、キノン体(2a)やそのアセタール体(2b)のシグナルの他にもニつの未知酸化生成物のシグナルが観 測された。これらを2位に溶媒のメタノール分子が付加した酸化生成物のシグナルと推定し、これを確かめ るため に22位 メタノー ル付加体 (2c)を調製してその酸化生成物の化学シフトと比較した。二次元NMR 等により解析した結果、未知生成物はプ口トカテキュ酸ヌチルの2位メタノール付加体(2c)のキノン体(2d とその3位ヘ ミアセ タール体 (2e)で あることが明らかとなった。また、反応液中より2cを単離同定する ことができたことからも2位メタノール付加体の生成を確認した。

  アルコール中でプ口トカテキュ酸がそのエステルと比較して低いラジカル消去活性しか示さないのは、中 間体キノンにおいてカルボキシ基の解離が促進され、電子求引性が大幅に低下したためであると予想された。

そこでC1置換基の電気的性質がラジカル消去反応に与える影響について検討した。C‐1に電子求引および

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供与性基 をもつ種々のカテコール化合物のDPPHラジカル消去活性を測定したところ、非アルコール性のア セトニトリル中ではすべての化合物で2当量のラジカルを消去した。メタノ.ール中ではアセトニトリル中と 比較していずれの化合物もラジカル消去活性が増大し、C‑1置換基の電子求引性が強いほどラジカル消去当 量が大き くなるこ とを見 出した。 キノン体のLUMOのエネルギーはC‑lの電子求引性が強いほど低いことか ら、強い電子求引性基をもつ化合物ではキノン体へのアルコール分子の求核付加が起こりやすく、カテコー ル構造の再生が促進されて結果的にラジカル消去当量が増大すると考えられた。また、プロトカテキュ酸が そのエステルよりもアルコール中でラジカル消去活性が低い原因は、キノン体においてカルボキシ基の解離 が促進されることにより、電子求引性が低下し、キノン体への溶媒分子の求核付加が起こりにくくなるため であるこ とが明ら かとな った。さ らに、 反応液のNMR分 析によりC‑l置換基の電気的性質の違いによって 溶媒分子 の付加位置が異なることがわかった。半経験的分子軌道法によってキノン体のLUMOの電子密度を 計算したところ、キノン体への付加の位置選択性が確かめられた。加えて、プ口トカテキュ酸エステルのC‑2 アルコール付加体のC‑6へさらにアルコール分子が求核付加することにより、C‑2,6アルコール付加体が生 成することも明らかとなった。

  アルコー ル中でのプロ卜カテキュ酸エステルとDPPHラジカルの反応液から新規二量体(3、4)を単離同 定するこ とに成功した。化合物3、4はカテコール構造をもつことから、アルコール分子付加後の二量化反 応もラジカル消去活性の増大に寄与していると考えられた。

  これらの結果より、プロトカテキュ酸とそのェステルのメタノール中でのラジカル消去反応は次のように 進行して いること が示唆 された(Scheme1)。まず、プ口トカテキュ酸およびそのエステルはラジカル2当 量と反応 してDIキ ノン体と その3位ヘミ アセター ル体へ 変換される。プロトカテキュ酸メチル(2)の場合 には、キ ノン体(2a)の2位 へ溶媒の メタノ ール分子 が直ち に求核付 加し、 環のカテ コール構造(2c)が再 生さ れ る 。2cは さら に2当量 の ラ ジカ ル 消 去に よ り 、 キノ ン 体(2d)とその3位ヘ ミアセタ ール体(2e) へ変換さ れる。生 成したC‑2付加 体のキ ノン体(2d)のC‑2へ さらにメタノール分子が付加するとジメチル アセター ル体(2dりが生成する。そして、立ち上がったC‑4キノンカルポニルがケト型へ戻る際に、二分子 目のキノ ン体(2a)へのマイケル付加が起こり、引き続く分子内アルドール縮合と芳香族化によって酸化二 量体(3)が生成す る。3はさら に2当 量のラ ジカルと 反応す るとキノ ン体(3a)に なる。ま た、2dは一部、

C‑6へも メタノール分子の求核攻撃を受け、C‑2,6付加体(2i)になり、さらに2当量のラジカルを消去して キノ ン 体(2j)とそ の3位ヘ ミ ア セタ ー ル 体(2k)へ 変換され る。一 方、プ口 トカテ キュキノ ン(1a)の場 合はゆっ くりとC‑6ヘメ タノール 分子の求核付加が起こり、カテコール構造(1f)が再生され、さらに2当 量 の ラ ジ カ ル と 反 応 す る と キ ノ ン 体(1g)と そ の 3位 ヘ ミ ア セ タ ー ル 体(1h)が 生 成 す る 。   以上の結果から、アルコール性溶媒中ではアルコール分子のキノン体への付加とそれに続く二量化反応が プ口卜カテキュ酸エステルのラジカル消去活性の増大において鍵反応となっており、プロトカテキュ酸がそ のエステルと比較して低いラジカル消去活性しか示さないのは、キノン体においてカルボキシ基の解離が促 進され 電子求引性が低下したためであることが明らかとなった。

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学 位論文審 査の要旨

     学位論文題名

  Studies on radical scavenging mechanism of protocatechuic acid and its related compounds

( プ ロ トカ テキュ酸 およぴ関 連化合物 の ラ ジ カ ル 消 去 反 応 機 構 に 関 す る 研 究)

  

ポリフェノールは抗酸化作用があることがよく知られており、中でもカテコール構造 を有する化合物は酸化されると

o

‐キノン体に変換されるためラジカル消去活性が高い ことがわかっている。しかしながら、カテコール化合物のキノン体生成以降の反応につ いての詳細は明らかになっていない。本研究は天然に幅広く存在するプロトカテキュ酸 とそのエステルのキノン体生成以降のラジカル消去反応機構の全容解明を目的とした ものである。

  

プロトカテキュ酸およびそのエステルのラジカル消去活性をDPPHラジカルを用い て吸光度法で測定したところ、非アルコール性溶媒中ではプロトカテキュ酸やそのエス テルはいずれも2当量のラジカルを消去した。アルコール性溶媒中では、プロトカテキ ユ酸はやはり約2当量消去したのに対し、プロトカテキュ゛酸エステルでは急速に5当量 のラジカルを消去した。

  

プロトカテキュ酸やそのメチルエステルと、DPPHラジカルの反応液を直接NMRに よって分析したところ、非アルコール性溶媒中ではD_キノン体のみが生成することがわ かった。それに対しアルコール性溶媒中では、キノン体の他にもキノン様化合物のシグ ナルが観測された。二次元NMR等によって詳細に構造解析したところ、プロトカテキ ユ キ ノ ン の

3

位 ヘ ミ ア セ タ ー ル 体 で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。

  

プロトカテキュ酸メチルをメタノール中、DPPHラジカルで酸化させ、反応液をNMR で分析したところ、キノン体やそのアセタール体のシグナルの他にもニつの未知酸化生 成物のシグナルが観測された。これらを2位に溶媒のメタノール分子が付加した酸化生 成物のシグナルと推定し、合成品との比較および反応液中よりの直接単離によって確認 した。

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潤 士

信 幸

   

   

哲  

  英

川 田

生 松

授 授

授 授

   

   

教 教

教 助

査 査

査 査

主 副

副 副

(5)

  

次に置換基の電気的性質がカテコールのラジカル消去反応に与える影響について検 討した。C‑lに電子求引および供与性基をもつ種々の3,4‐カテコール類は、非アルコー ル性溶媒中ではすべて約

2

当量のラジカルを消去した。メタノール中ではいずれの化合 物もラジカル消去活性が増大し、C‑l置換基の電子求引性が強いほど消去当量が大きく なること を見出し た。キノン体のLUMOのエネルギーは

C‑l

の電子求引性が強いほど 低いことから、強い電子求引性基をもつ化合物ではキノン体へのアルコール分子の求核 付加が起こりやすく、カテコール構造の再生が促進されて結果的にラジカル消去当量が 増大するものと考えられた。プロトカテキュ酸がエステルよりもアルコール中でラジカ ル消去活性が低いのは、キノン体においてカルボキシ基の解離が促進されることにより 電子求引性が低下し、キノン体への溶媒分子の求核付加が起こりにくくなるためである ことが明らかとなった。

  

  

また、プロトカテキュ酸エステルの

C‑2

アルコール付加体のC‑6へさらにアルコール 分子が求核付加することにより、C‑2,

6

アルコール付加体が生成することも明らかとな った。

  

さらに、アルコール中でのプロトカテキュ酸エステルとDPPHラジカルの反応液から 新規二量体を単離同定した。これらはカテコール構造をもっことから、アルコール分子 付加 後 の ニ量 化 反応 も ラ ジカル消 去活性の増 大に寄与 している と考えら れた。

  

これらの結果より、プロトカテキュ酸とそのエステルのメタノール中でのラジカル消 去反応は次のように進行していることが示唆された。プロトカテキュ酸およびそのエス テルはラジカル2当量と反応してD‐キノン体とその3位ヘミアセタール体ヘ変換される。

プロトカテキュ酸メチルの場合には、キノン体の2位ー溶媒のメタノール分子が直ちに 求核付加し.、環のカテコール構造が再生される。C―2付加体はさらに

2

当量のラジカル 消去により、キノン体ヘ変換される。生成したC―2付加体キノンのC‑2へさらにメタノ ール分子が付加するとジメチルアセタール体が生成する。立ち上がったC・4キノンカル ボニルがケト型へ戻る際に、二分子目のキノン体へのマイケル付加が起こり、引き続く 分子内アルドール縮合と芳香族化によって新規酸化二量体が生成する。また、C‑2付加 体キノンは一部、C‑6へもメタノール分子の求核攻撃を受け、C‑2,6付加体になり、さ らに2当量のラジカルを消去してキノン体ヘ変換される。一方、プロトカテキュキノン の場合はゆっくりとC‑6ヘメタノール分子の求核付加が起こり、カテコール構造が再生 さ れ 、 さ ら に2当量 の ラ ジカ ル と反 応 す ると

C‑6

付加 体 キ ノン 体 が生 成 す る。

  

以上の知見は、代表的なフェノールカルボン酸であるプロトカテキュ酸のラジカル酸 化機構の詳細を初めて明らかにしたものであり、ポリフェノール分子の抗酸化活性発現 機構解明の基礎をなす重要なものであると認められた。

  

よって審査員一同は、齊藤静夏が博士(農学)の学位を受けるに十分な資格を有する ものと認めた。

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参照

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