• 検索結果がありません。

博士(医学)曹 秉振 学位論文題名

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "博士(医学)曹 秉振 学位論文題名"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

     博士(医学)曹   秉振 学位論文題名

有機水銀による実験的末梢神経障害の神経病態学的解析 学位論文内容の要旨

    緒言

  近年.種々の薬剤や工業用材による中毒性あるいは代謝性末梢神経障害が報告されてき ており,その発症機構の解明が治療法の確立の上でも重要な研究課題である.水俣病の原 因である有機水銀中毒症において患者が呈する感覚障害の責任病巣が大脳感覚野の障害な の か 感 覚 性 末 梢 神 経 障 害 に 由 来 す る の か が 大 き な 問 題 と な っ て い る .

  Ratを用いた実験的有機水銀中毒症では末梢神経は感覚神経系が特異的に障害され、運動

神経系は侵されないことが報告されている.叫|あ性の末梢神経障害の場合,primaryの病変 が 軸索を 障害するaxonopathy,神経細胞体に牛ずるneurotoxicity,およびmyelinまたは myelinを形成するSchwann cellの障害によるmyelinopathyが区別されるが,有機水銀中毒に

よるprimaryの障害部位は未だ確立されていない.そこで我々は有機水銀中毒による感覚神

経障害のprimary障害部位を明らかにするため,ほぼ3週間で発症する亜急性の実験系にて 経時的に検索した.検索方法としては従来の形態学的手法のみならず生化学的ならびに免 疫組織学的手段も導入した,その結果,rat有機水銀中毒での感覚神経障害はneurotoxicityと dying backを 示 す axonopathyの 二 通 り の 機 構 で あ る こ と が 判 明 し た .

    材料と方法

  動 物と実 験計画:北海道大学医学研究科付属動物実験施設にて飼育繁殖している生後8 週 から10週 の雄性ラ ットWKAHを 用いた. 平均3週間に て後肢麻 痺症状を発症する条件を 確 立 し , 飲 料 水 と し て 有 機 水 銀methyl mercury chl( )ride (MMC)を 投 与 .   形 態学的 検索:投与後11日目,15日目,1811H,21日目ラット(各3匹)を用いた,4% paraformaldehydeにて灌流固定後,脊髄,脊髄後根神経節(dorsal root ganglion: DRG),坐骨神 経(sciatic nerve: SN)を採取し,組織学的,免疫組織学的に検索した.また各群3匹よりDRG とSNの生材料も採取しWestern blottingを行った.

    結果と考案

  末梢神経病変:投与11日目のEpon包埋toluidinc blue染色では投与群の末梢神経に軸索 の顆粒状変化が認められた,免疫染色ではamyloid precursor protein (APP)に陽性になるaxon が見られた, Neurofilament 200 kDa (NF)抗体を用いた免疫染色でも断裂を示す異常axonが 認められた.これらはPOを用いたmyelin染色や正常対照例では見られず,初期変化は軸索

103 ‑

(2)

変性axonopathyであることが判明した.15日日 以降はaxonの変性が著明となり,同時に myelinの崩壊も観察された,Western blottingではNFおよびPOの減少が顕著であった.

  脊髄後根神経節および脊髄病変:投与後iiE二T目のラット脊髄では異常が見られなかった が,DRGをepon包埋toluidine blue染色標本で見ると少数の大型神経細胞(Type A)の腫大空胞 化とmacrophageマーカーMRF1で陽性となる細胞浸潤を伴う細胞消失(residual nodules of Nageotte)が認められた.TUNEL染色陽性となるapoptosis細胞は認められなかった.この様 な所見は正常対照例では見られなかった.従って,初期変化として見られたaxonopathyは TypeA神経細胞のneurotoxicityによる変性に伴うsecondary degenerationと考えられた.15日 目か らPOとNF染色 にてaxonの変 性とmyelinの崩 壊がSNの末梢側で著明に見られ,18日 目からはDRG近傍のSNでも認められた.Wesfern blottingでもNF POの減少が著明であった.

TypeB神経細胞は21日目でも良く保たれていた.変性軸索の定量的検索では,中枢側に比 べ末梢側での数が多く見られ,TypeB神経細胞はaxonのdying‑back変性であることが判明 した.

    結語

  有 機水 銀に よる 末梢 神経 障害 の特 異性 を明 らかにする目的でラッ卜に亜急性中毒症 を 誘 発 し , 経 時 的 に 病 理 学 的 , 生 化 学 的 に 検 索 し , 下 記 の 結 果 を 得 た .     1. 発 症 前 の 早 期 に DRG TypeAneuronの 細 胞 死 が 生 じ , 感 覚 神 経 系 に     secondary degenerationが生じていた.

    2. Residual nodules of Nageotteを 構 成 す る 細 胞 はMRF1陽 性 で あ り     macrophage由来であることが判明した.

    3.TUNEL法 に よ る 検 索 で も 陽 性 細 胞 は 見 ら れ ず .DRG neuronの 細 胞 死 は     apoptosisと は 異 な る 機 序 で 生 じ て い る こ と が 示 唆 さ れ た .     4. 発 症 前 の 後 期 に は 全 て の 感 覚 神 経 線 維 の 軸 索 の 断 裂 と 髄 鞘 の 崩 壊 と が 明     瞭 と な り , そ れ ぞ れ の 構 成 蛋 白 の 減 少 がWestern blottingで 明 瞭 に 示 さ れ     た.

    5. 末 梢 帥 経 変 性 は 中 枢 側 よ り も 米 梢 側 に 著 明 で あ っ た , ま たDRG TypeB     neuronは 保 た れ て お り , こ の 変 化 はdyingーback axonal degenerationによ る     ものと考えられた,

  以上の結果から有機水銀の神経細胞障害機序が神 経細胞の種類と機能の差を反映し,

各々異なっていることが明らかとなった.

104

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

有機水銀による実験的末梢神経障害の神経病態学的解析

  Ratを用 い た 実 験的 有 機 水 銀中 毒 症 で は末 梢 神 経 は感 覚神 経系が 特異的 に障害さ れる, 中 毒 性 の末 梢神経 障害の 場合,primaryの病変 が軸索 を障害 するaxonopathy,神経 細胞体 に生ず るneurotoxicity, お よ びmyelinま た はmyelinを 形 成 す るSchwann cellの 障 害 に よ る myelinopathyが区 別 さ れ るが , 有 機 水銀 中 毒 に よるprimaryの障 害部位 は未だ確 立され てい な い . そこ で 我 々 は有 機 水 銀 中毒 に よ る 感覚 神 経 障 害のprimary障害 部位を 明らか にする た め . ほ ぼ 3週 間 で 発 症 す る 亜 急 性 の 実 験 系 に て 経 時 的 に 検 索 し た .

  動 物 と 実 験 計 画 : 生 後8週 か ら10週 の 雄 性 ラ ッ トWKAHを 用 い た . 有 機 水 銀(MMC, CH3HgCl), を 約200gの ラ ッ ト が 一 日20 ml飲 水 す る と し て4mg瓜 ガday量 相 当 を 投与 . 本 実 験 は 北 海 道 大 学 医 学 研 究 科 で 定 め るGuidefortheCareandUseofhboratoryAnimalsの 審 査を受け承認の元に行った.

  形 態 学的 検 索 : 投与 後11,15,18,21日目 に そ れ ぞれ3匹ず っ4%paraformaldehydeに て 灌 流固定を行った.Dorsalrootganglion(DRG),sciaticnerve(SN)は左右のどちらかを灌流固 定した組織から電子顕微鏡用標本を作成しだ.

  免 疫 組織化 学:免 疫染色 にはmacrophage/microgIiaの マーカ ーとし てMRF・1の 抗体の 他に parValbumin,CalCitoningene‐relatedpeptide,neurofilamentS(NF−200kDa),amyloidpreCurSOr protein(APP),S‐100,P0の抗体を使用した,Ap(ユpt()isの染色にはTUNEL染色を行った,軸索 変性の局在と程度を定量的に神経線維当りの陽´|´ト軸索数で表現し,平均値を±SDで現した.

  WもsternblottingにはBeaulieuetal.(2002)の方法を採用した.

  結 果 、 組 織 学 ・ 免 疫 組 織 学 的 所 見 と し て ,MMC投 与 後11日 目 の ラッ ト の 末 梢神 経 系 を epon包 埋toluidine blue染 色でみ ると投 与群の 末梢神 経に軸索 の顆粒 状変化 が認め られた . 免 疫 染 色 で は 小数 のAPPに 陽 性に な るaxonが 見ら れ た .NF‑200 kDa抗 体 を 用 いた 免 疫 染 色 に て 断 裂 を 示 す 異 常axonが 認 め ら れた .Axonの 異 常 はSNのdistal部 で 見 ら れ、 傍 脊 椎 部 のSN proximalに は認 め ら れ なか っ た 。Myelin染色で は対照 と比べ て差が 見られ なかっ た.

MMC投 与 後15日 目 の ラ ッ ト で は 神 経 変 性 が 著 明 と な り ,axonもmyelinも 崩 壊 が明 瞭 と な     ‑ 105―

和  

  雅

嶋 木

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

っ た, さらに 投与18日目 のラッ トでは通 常のKB染 色やBodian染 色でもSNに おける 異常 線維が識別可能となり.多数の変性線維が認められた.

  DRGおよ び脊髄病 変とし て、投与 後11日日 のラット 脊髄で は異常が見られなかったが DRGをepon包埋toluidine blue染色標本で見ると少数の大型神経細胞(Type A)の腫大空胞化 と細胞浸潤を伴う細胞消失(residual nodules)が認められた,浸潤細胞はMRF‑1免疫染色で陽 性と、なり,macrophage系であるこことが示された.投与後15日目,18日目とresidual nodules の 数 が 増 加 し た が , 大 部 分 の 中 型 神 経 細 胞(Type B)は よ く 保 た れ て い た .   変性軸索の定量的変化として,11日目では末梢側にわずかに変性線維が観察されだけで あった, 15日目と18日目では変性線維が増加するが,やはり末梢側での数が多く見られた.

  Western blottingの結果 として, 末梢神 経およびDRGで15日目,18日目ではPOおよび NF‑200 kDaの著明な減少が見られた,

  以 上 の結 果 よ り ,rat有機 水銀中 毒での 感覚神経 障害はDRGにお けるTypeAneuronの neurotoxlCltyとTypeBneuronのdyingbaCkを示すaxonopathyの二通りの機構であることが 判明し た.

口 頭 発表 に 当 た り, 副 査 の渡 邉 教 授よ りsensory特 異 的障 害 の根拠,TypeAneuronの terminal areaの所見,residual nodulesの構成細胞について,同じく副査の古木教授よルヒ ト疾 患との 共通性,慢性例との比較,TypeAとTypeBneuronの病変差異の解釈,apoptosis の所見,rat strain等に関する質問があった.また主査の長嶋教授よりcell deathのメカニ ズム,axonal degenerationの検出法に関する質問があった.これらの質問に対して申請者 はおおむね適切な回答を行った.

  この論文は有機水銀による末梢神経障害の発症機序を明らかにした点で優れていると判 断され,今後の中毒性神経障害発症機構の解釈に貴重な示唆を与えたものと考えられた.

  審査員一同はこれらの成果を高く評価し,申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な 資格を有するものと判定した.

106

参照

関連したドキュメント

氏名 学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位授与の題目

beam(1.5MV,25kA,30ns)wasinjectedintoanunmagnetizedplasma、Thedrift

リポ多糖(LPS)投与により炎症を惹起させると、Slco2a1 -/- マウス肺、大腸、胃では、アラキ ドン酸(AA)およびエイコサペンタエン酸(EPA)で補正した PGE 2

学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位授与の題目

Cioffi, “Pilot tone selection for channel estimation in a mobile OFDM systems,” IEEE Trans.. Sunaga, “Rayleigh fading compensation for QAM in land mobile ra- dio communications,”

ている。本論文では、彼らの実践内容と方法を検討することで、これまでの生活指導を重視し

1)研究の背景、研究目的

雑誌名 博士論文要旨Abstractおよび要約Outline 学位授与番号 13301甲第4306号.