骨・関節疾患術後高齢者が退院に際して抱く不安の分析
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(2) 老年看護学 第 24 巻第 2 号 2020.1. 尺度) ,同居家族,介護認定のデータ提供の協力が得ら. Ⅱ.研究目的. れるか確認した. 本研究の目的は,整形外科病棟に入院する 65 歳以上. (3)ADL,NRS,同居家族,介護認定について確認を. の高齢患者が,退院に際して抱く不安とその不安に影響. した後に,作成したインタビューガイドに基づいてイン. を与える内容を明らかにすることとした.高齢患者が退. タビューを実施し, IC レコーダーに了解を得て録音した.. 院に際してどのような思いを抱いているのかを明らかに. MMSE については,病棟責任者から情報を受け取った.. することで,退院に際して抱く不安を緩和するための効. (4)インタビューガイドの内容は, 「退院するにあたっ. 果的な看護介入について示唆を得ることが期待される.. て不安に思っていることや困難に感じていること」 「そ の不安の原因は何と思うか」 「家事や作業など日常生活 のこと」 「自分の術後経過の予想や実際」 「協力者の状況」. Ⅲ.用語の定義. 等である. 日本老年医学会では,高齢者を 65 歳以上の人と定義. (5)病棟内の落ち着いた個室にて実施した.. (和田,2007)しており,本研究では,整形外科高齢患. (6)データ収集期間は 2015 年 12 月∼ 2016 年 9 月で. 者を骨・関節疾患に関連する手術目的で入院した 65 歳. あった.. 以上の患者とする.不安については,自己の将来に起こ りそうな危険や苦痛の可能性を感じて生じる不快な情動. 4.データ分析方法. 現象(藤永,1992)をいうことから,本研究における不. 録音したインタビュー内容から逐語録を作成し,十分. 安は,整形外科高齢患者が退院後の生活に起こりそうな. 理解するまで繰り返し読み込んで全体の感覚をつかみ,. 危険や苦痛を想定し,心配・困難と思うことや気がかり. 退院に際して抱く思い・認識・不安について語られた内. となることとする.. 容をコード化した.そのコードをさらに読み込み,適切 な長さに区切り抽象度を上げてラベルとした.対象者別 の分析を行い,それらを意味内容の類似性に基づいて類. Ⅳ.研究方法. 型化し,さらに抽象化を進め,共通した意味を表すよう に表現し,そこに含まれる意味を発見しこれをサブカテ. 1.研究デザイン 骨・関節疾患術後高齢者の退院に際して抱いている不. ゴリーとした.さらに,サブカテゴリーのうち意味内容. 安の詳細を明らかにするために,半構造化面接による質. が共通した意味を表すように表現してカテゴリーとし,. 的記述的研究とした.. その意味の解釈が妥当かどうかをコードやラベルにも どって確認した.分析の真実性を高めるために,分析の 全過程において質的研究者の助言を受けながら行った.. 2.研究対象者 A 大学附属病院の整形外科病棟に入院中で,認知機能 に障害がなく,自分の思いを言葉で伝える能力を有し. 5.倫理的配慮. MMSE(Mini Mental State Examination;ミニメンタル. 研究の実施に際しては,奈良県立医科大学医の倫理審. ステート検査)の正常範囲者,術後標準的な入院期間の. 査委員会の承認(承認番号 1091-2)を得た.また,研究. 後に自宅退院を予定している 65 歳以上の者から選定し. 対象者に研究の趣旨,途中辞退の自由,プライバシーの. た.手術部位については,退院後の生活全般への影響を. 保護, 秘密保持等について口頭および文書で説明を行い,. 把握するために,移動動作に関する脊椎や下肢の関節な. 研究同意の意思を確認後,研究協力の同意を得た.研究. どに限定しないこととした.. 協力に伴う精神的不安をもたらした際は,インタビュー を中止する判断を行うこと,臨床看護師として精神的支 援を実施することを説明した.. 3.データ収集方法・収集期間 (1)病棟責任者に対象者の条件を説明し,選定を依頼 した. (2)選定された対象者に研究協力の意志を確認後, ADL,NRS(numerical rating scale;疼痛の数値的評価. 97.
(3) 表 1 対象者の属性 ID(歳:性) 在院日数 手術部位 A(60 代:男) B(80 代:女) C(70 代:女) D(80 代:女) E(70 代:女) F(70 代:男) G(60 代:女) H(60 代:女) I (70 代:女) J (70 代:女). 同居の家族. 足関節 股関節 脊椎 膝関節 手関節 股関節 脊椎 股関節 股関節 脊椎. 20 33 20 35 22 27 18 27 26 22. 介護認定. 配偶者 申請未 配偶者・息子夫婦・孫 申請未 配偶者 申請未 配偶者・娘夫婦・孫 申請未 なし(県内に娘夫婦) 要支援 2 なし(別宅に娘夫婦) 申請未 配偶者・娘 申請未 配偶者・姑 要支援 2 配偶者 申請未 配偶者 申請未. 表 2 対象者の情報. ID. 手術部位. ADL BI:Barthel index. 痛み NRS:numerical rating scale. ①全自立:100 ②部分自立:60 ∼ 99 ③大部分介助:40 ∼ 59 ④全介助:0 ∼ 39. ・判定区分:0 ∼ 10 の 11 段階 ・痛みが全くないを 0,考えられるな かで最悪の痛みを 10 として,回答 者が主観的・相対的に答える方法. 総合点数(/100) 歩行 A B C D E F G H I J. 足関節 股関節 脊椎 膝関節 手関節 股関節 脊椎 股関節 股関節 脊椎. 90 85 85 95 90 85 85 80 85 90. 着替え. ● ● ●. ● ● ●. ● ● ●. 入浴. 階段の昇降. 安静時. 体動時. ● ●. ● ● ● ●. 2 1 1 0 0 0 1 1 2 0. 3 7∼8 2∼3 5 1 0 2 5 3 1. ● ● ● ● ● ●. ● ● ● ● ●. ●は該当の項目に何らかの介助が必要であることを示す. に大別された.以下, 【カテゴリー】 ,<サブカテゴ. Ⅴ.結 果. リー>の構成とその定義を説明する.また,以下, 「 」 は対象者の語りを示す.語りの( )内は,文脈の前後. 1.対象者の概要 インタビューの協力者は 10 人,女性 8 人,男性 2 人. の内容を明らかにするために研究者が補足した.. であった.年齢は 60 歳代が 3 人,70 歳代が 5 人,80. 1 )退院に際して抱く不安の内容. 歳代が 2 人で平均年齢は 75.0 歳であった.また,イン. 退院に際して抱く不安の内容は, 【痛みが残るのか】 【元. タビュー時間は 1 人 25 ∼ 40 分間であった(表 1,2) .. の状態にもどれるのか】 【姿勢・動きに気をつけなけれ. NRS について,安静時の平均は 0.8 で体動時の平均は 3. ばならない】 【自分ではできないことがある】 【先々どう. であった.また,NRS の安静時と体動時の変化値は 0. なるのかわからない】 の 5 つのカテゴリーからなる (表 3) .. が 1 人,1 点が 5 人,2 点以上が 4 人であった.ADL に. (1) 【痛みが残るのか】. ついては,階段の昇降や入浴などにおいて介助度を問わ. 【痛みが残るのか】は,<痛みが残るのか><痛みは. ず何らかの介助を要する者がほとんどであった.. あるが退院するためにがんばっている><痛みはがまん できる範囲><違和感と傷の痛みが気になる><退院後 痛みの変化が予測できない><患側は自分の足と違って. 2.語られた不安の内容 インタビューの内容から,10 個のカテゴリーと 62 個. 痛みがある>という 6 個のサブカテゴリーからなり,現. のサブカテゴリーが抽出された.この 10 個のカテゴリー. 在残っている痛みがいつまで続くのかという思いと定義. は,退院に際して抱く不安と,不安に影響を与える内容. した.また,対象者のほとんどが,安静時に比べて体動. 98.
(4) 老年看護学 第 24 巻第 2 号 2020.1. 表 3 骨・関節疾患術後高齢者が抱く不安 カテゴリー 痛みが残るのか. サブカテゴリー. 代表的なコード. 痛みが残るのか. 痛みが残るか気になる 痛みはいつまで続くのかいつなくなるのか気になる 痛みがあると心配になる. 痛みはあるが退院するためにがんばっている. 痛みはあるが退院するためにがんばっている. 痛みはがまんできる範囲. 痛みはがまんできる範囲. 違和感と傷の痛みが気になる. 人工股関節の違和感と傷の痛みがあることが気になる. 退院後痛みの変化が予測できない. 退院後痛みの変化が予測できない. 患側は自分の足と違って痛みがある. 患側は自分の足と違って鈍痛や違和感がある. 元の状態にもど いつごろ歩けるようになるのか れるのか. どのくらいの目途できちんと歩けるのか心配 早く歩けるようになりたい いつごろさっさと歩けるかという悩みがある. 患側は自分の足と違って動きにくい. 患側は自分の足と違って半分も動きにくい. 自宅でもリハビリをしようと思っている. 自宅でもリハビリをしようと思っている. しびれが残っている. 足のしびれが残っている 両手指の完治しないしびれ しびれは経過をみるしかないといわれている. 自分のことができたらありがたい. 自分の周りのことができたらありがたい 自分のことは自分でできたらいいなと思う 家で動くことができれば自分も楽になる. 装具とつき合っていかなければいけない. 装具とつき合っていかないといけない. 退院後は家事をすることが不安. 退院後は家事をすることが不安. 体力の衰え. 体力の衰え. 治癒には日にちがかかる. 時間のかかる治療計画 退院時にもっと歩けるようになるとは,はじめから思っていなかった しっかり治るまで時間がかかる. 杖を使う必要がある. 補助具の使用経験があるので心配は強くない まだ杖をつくよういわれている. 畑仕事ができるか気になる. 畑仕事ができるか気になる. 姿勢・動きに気 転倒しないように気をつける をつけなければ 姿勢の制約があるので不安 ならない. 転倒には気をつける 姿勢の制約があるので不安 普段していた姿勢をとらないか心配. 術後の禁忌動作をいわれている. 脱臼を防ぐために姿勢が制限される 姿勢の制限を忘れてしまわないか心配. 動作に気をつけて生活しようと思っている. 術後の禁忌動作を理解し,気をつけて生活しようと思っている. 段差に気をつける. 居間への段差に気をつける. きちんと動くことができるか不安. きちんと動くことができるか不安. 自分ではできな 買い物には介助が必要 いことがある. 買い物ができない 外出時に荷物を持つことが気になる. できない動作や作業がある. 入浴には介助が必要 掃除は自分でできるという確信がもてない. しばらくは外出しない. 3 か月は超えないと不安なのでそれまで家にこもると思う しばらくは外出しないと思う. 浴槽に入るのが怖い. 湯船に入るのは怖い. だんだんにまたやっていくことができると思う. だんだんにまたやっていくことができると思う. 万が一のときが不安に思う. 不安はないわけではないが,万が一のときが不安 夜しんどくなったとき万が一のときが不安に思う. 先々どうなるの 退院後の予想がしにくい かわからない 先々どういうふうになるのかという不安がある. 退院後の予想がしにくい 今後どうなるのかわからなかった 先々どういうふうになるのかという不安がある. さきへの不安とさきへの希望がある. さきへの不安とさきへの希望がある. 実際にやってみないとわからない. 退院後その都度どうなるかわからなくて少し不安 実際は退院してみないとわからないことがある. 家屋の構造的な問題がある. 昔ながらの家屋で段差が多い. 99.
(5) 時に痛みをより強く感じる(NRS の値が高い)という. 「買い物のときに荷物持てるかな」 「夜しんどなったと. 結果となった.. きとか,こう万が一のときがやっぱり不安やなって思い. 「痛みがいつまで続くのかっていうんと,いつなくな. ます」 .. るんやろうっていうこと気になるな」 「この痛みはいつ. (5) 【先々どうなるのかわからない】. まで続くんやろうって気になります」 .. 【先々どうなるのかわからない】は,<退院後の予想. (2) 【元の状態にもどれるのか】. がしにくい><先々どういうふうになるのかという不安. 【元の状態にもどれるのか】は,<いつごろ歩けるよ. がある><さきへの不安とさきへの希望がある><実際. うになるのか><患側は自分の足と違って動きにくい>. にやってみないとわからない><家屋の構造的な問題が. <自宅でもリハビリをしようと思っている><しびれが. ある>という 5 個のサブカテゴリーからなり,実際に退. 残っている><自分のことができたらありがたい><装. 院して日常生活を経験しないとわからないという思いと. 具とつき合っていかなければいけない><退院後は家事. 定義した.. をすることが不安><体力の衰え><治癒には日にちが. 「今後どうなんのかなぁってわからんかったもんね」. かかる><杖を使う必要がある><畑仕事ができるか気. 「まぁ,実際は退院してみないとわからんこともあるわ. になる>という 11 個のサブカテゴリーからなり,症状. な」 .. が強くなる以前の生活にもどることができるのかという. 2 )不安に影響を与える内容. 思いと定義した.. 不安に影響を与える内容は, 【回復へのそこそこの満. 「いつごろになったら,さっさと歩けるようになるん. 足感】 【退院後の生活への備え】 【支えてくれる人がいる. かなって思います」 「こっち(患側)の足は自分の足(健. か】 【自立の程度】 【現実的な目標がある】の 5 つのカテ. 側)と違って半分も動きにくさ違うわ」 「 (手術前は痛み. ゴリーからなる(表 4) .. がありながらもある程度できていた)畑仕事は家帰って. (1) 【回復へのそこそこの満足感】. からもしたいさかいに,それがいままでのようにできん. 【回復へのそこそこの満足感】は,<手術でよくして. のかいな」 .. もらってありがたい><歩けるようになってよかった>. (3) 【姿勢・動きに気をつけなければならない】. <痛みが軽く自立が早かった><自分の回復度には満足. 【姿勢・動きに気をつけなければならない】は,<転. している><回復には時間がかかると理解している>. 倒しないように気をつける><姿勢の制約があるので不. <医師を信頼している>という 6 個のサブカテゴリーか. 安><術後の禁忌動作をいわれている><動作に気をつ. らなり,回復状態について十分ではないが満足している. けて生活しようと思っている><段差に気をつける>. という状態と定義した.. <きちんと動くことができるか不安>という 6 個のサブ. 「こんなに歩けるようになってありがたいです」 「もう. カテゴリーからなり,術後に指示された姿勢・動きがで. 3 か月も経てばしっかり歩けるようになってると思う. きないことや日常生活上での活動に気をつけるという認. で」 「こっち側(反対側)の手術もしたさかいに,だい. 識と定義した.. たいのことはわかってたけど,思ってたより(回復する. 「 (股関節の)脱臼せんように姿勢に気をつけなあか. ことが)早かったと思うわ」 .. ん」 「いままでしてた姿勢とかふいにしてしまいそうで」. (2) 【退院後の生活への備え】. 「 (禁忌肢位があるなかで)家帰ってもちゃんと動けるん. 【退院後の生活への備え】は,<生活をしやすい工夫. かなって」 .. をしている><移動しやすい工夫をしている><安楽に. (4) 【自分ではできないことがある】. 過ごせる工夫をしている><住宅改修をすでに行ってい. 【自分ではできないことがある】は,<買い物には介. る>< (独居高齢者として)緊急時の備えをしている>. 助が必要><できない動作や作業がある><しばらくは. <しばらくはシャワーだけでもいい>という 6 個のサブ. 外出しない><浴槽に入るのが怖い><だんだんにまた. カテゴリーからなり,退院後の生活を想像し,道具の工. やっていくことができると思う><万が一のときが不安. 夫や使用法の工夫によって生活をしていくことができる. に思う>という 6 個のサブカテゴリーからなり,他人の. と見定めることと定義した.. 介助がないと自分の力ではできないことがあるという認. 「もう家はお父さんのときにバリアフリーにしてもう. 識と定義した.. てるんで大丈夫です」 「万が一のときのために,家のそ. 100.
(6) 老年看護学 第 24 巻第 2 号 2020.1. 表 4 不安に影響を与える内容 カテゴリー. サブカテゴリー. 代表的なコード. 回復へのそこそこの 手術でよくしてもらってありがたい 満足感. ぼつぼつゆっくり歩けたらいい ここまでできたらありがたいと満足 自分が思っていたところまで回復している 術後は思っていた以上の結果でうれしい. 歩けるようになってよかった. こんなに歩けるようになってありがたい 思っていたよりこんなに歩けるようになってありがたい. 痛みが軽く自立が早かった. 痛みが軽く自立が早かった. 自分の回復度には満足している. 自分の回復度には満足している 反対側の手術経験があるので経過はわかっていたが,経過 がよく予想を超えていた やっと退院までこられた. 回復には時間がかかると理解している. 3 か月後には十分回復していると思う 左手も回復には時間がかかると自分が理解している 回復には時間がかかると理解している. 医師を信頼している. 医師からいわれていることは守る 現実的な目標があると不安なく医師に任すことができる. 退院後の生活への 生活をしやすい工夫をしている 備え. バリアフリーにしているので問題ない 家事をしやすい工夫を凝らしている 緊急時の呼び出しについては複数考えている. 移動しやすい工夫をしている. 玄関の上に押し車を置いている 押し車を内と外と使い分けていた. 安楽に過ごせる工夫をしている. 痛みを感じてくると横になれば軽減する. 住宅改修をすでに行っている. 老夫婦のため自宅改修でバリアフリー化済みで安心. (独居高齢者として)緊急時の備えをしている しばらくはシャワーだけでもいい. 万が一のとき助けを求められる方法がいくつかある しばらくはシャワーだけでもいい. 支えてくれる人がい 協力してくれる人がいる るか. 手伝ってもらうこともある 周囲に支えてくれる人がいる. ひとりでは限界がある. ひとりでは限界がある. いちばんの不安は夫の協力が得られるか. いちばんの不安は夫の協力が得られるか. (独居高齢者のため)いざというとき助けをよ (独居のため)いざというとき助けをよべる関係者がいる べるシステムをもっている 緊急コールの設置や近隣へのサポートのよびかけ 自立の程度. 階段や段差を上がることができる. 階段や段差は杖を使って問題なく上がれる 上がりかまちは上がることができる. 家事は無理をしない範囲でやる. 家のことはできる 家事は無理をしない範囲でやる. リハビリと思って階段を使う. リハビリと思って階段を使う. 薬の管理は自分でできる. 薬の管理は自分でできる. 脱臼したときの対処法がある. 脱臼したときの対処法がある. 杖があれば歩くことはできる. 杖があれば歩くことはできる. 現実的な目標がある いつまでも元気で生きたい. 介護が必要になるのはいや. できることは自分でしたい. 手伝ってもらうこともあるが,できることは自分でしたい. やりたいことがある. 習慣を続けたい やりたいことがたくさんある. 退院後楽しみにしていることがある. さきの楽しみがある 外出をしたい思いがある. 退院後は家に帰って普通に暮らしたい. 退院後は家に帰って普通に暮らしたい. 前向きな気持ちでいたい. 前向きな気持ちでいたい ゆっくりぼちぼち様子をみるつもり. 101.
(7) こらじゅうに笛おいててね,それでピーって吹いたら助. 一方で,リハビリ時や排泄時などの体動時の NRS は安. けに来てよって近所へいうてるし,隣も裏も近いさかい. 静時を上回る回答となった.安田ら(2009)は,人工股. にみんな協力し合ってんのよ」 .. 関節術後の患者満足度について,満足度の理由として除. (3) 【支えてくれる人がいるか】. 痛と述べている.痛みの有無,術後の痛みの軽減は術後. 【支えてくれる人がいるか】は,<協力してくれる人. の回復への満足感と関連し,痛みが遷延した場合には不. がいる><ひとりでは限界がある><いちばんの不安は. 安につながると考えられる.. 夫の協力が得られるか><(独居高齢者のため)いざと. また,越智(2008)は,入院による環境の変化,手. いうとき助けをよべるシステムをもっている>という 4. 術に関する不安や焦燥などは痛みを増強させると論じ,. 個のサブカテゴリーからなり,サポートしてくれる人が. 水口ら(1998)は,不安・恐怖などの情動が術後の痛み. 身近にいるという認識と定義した.. を増悪・持続・再燃すると述べた.術前にある程度の痛. 「息子ら孫らいてるし,ばぁちゃんいうていろいろし. みがあるなかでも,更衣や排泄などが自立できていた場. てくれるんよ」 「家におったらひとりやからね,○○さ. 合 【元の状態にもどれるのか】 という不安につながり, 【痛. ん(ケアマネジャー)につながるように,押すボタンみ. みが残るのか】 という不安に関連すると考える. また, 【姿. たいなやつ家に置いてるんよ」 .. 勢・動きに気をつけなければならない】という内容は,. (4) 【自立の程度】. 整形外科術後の特性を表していると考える.姿勢や動き. 【自立の程度】は,<階段や段差を上がることができ. 方には注意が必要であり,そのことは活動の制限や自立. る><家事は無理をしない範囲でやる><リハビリと. の程度につながっており, 術後の生活を大きく左右する.. 思って階段を使う><薬の管理は自分でできる><脱臼. 本研究対象者は,股関節・脊椎の術後であっても 18 ∼. したときの対処法がある><杖があれば歩くことはでき. 33 日の在院日数であった.筋力や関節可動域の回復が. る>という 6 個のサブカテゴリーからなり,他人の介助. 十分とはいえず,再骨折や脱臼の危険性もあり,退院後,. なく自分の力でできることの度合いと定義した.. 気をつけなければならないと意識づけられていることが. 「杖があればどこでも歩けるし」 「玄関もスッと上がれ. わかる.活動する際に姿勢や動きに気をつけながらの生. ます」 「家のことは自分でできると思うし」 .. 活は,みえない制限を受けながら過ごすことであり,気. (5) 【現実的な目標がある】. 持ちの余裕のなさにつながる.. 【現実的な目標がある】は,<いつまでも元気で生き. また, 【自分ではできないことがある】 【先々どうなる. たい><できることは自分でしたい><やりたいことが. のかわからない】という生活の仕方に関する内容では,. ある><退院後楽しみにしていることがある><退院後. <実際にやってみないとわからない><退院後の予想が. は家に帰って普通に暮らしたい><前向きな気持ちでい. しにくい>のように退院後の過ごし方が具体的に想像で. たい>という 6 個のサブカテゴリーからなり,身近で達. きていない状況である.退院後の日常生活において変更. 成可能な具体的な目標があるという状況と定義した.. を迫られるであろう移動動作や排泄,入浴方法などが具. 「自転車好きでね,それも退院したら続けたいと思て. 体的に想像できないことは,将来起こり得る危険や苦痛. んのよ」 「 (退院後)やっぱり行きたい所いっぱいあるし. の可能性を感じる不快な情動となり,不安につながって. ね」 「前向きな気持ちでいないとあかんで」 .. いると考えられる. 2 )不安に影響を与える内容 高齢者は, 【回復へのそこそこの満足感】も語った.. Ⅵ.考 察. 術後経過に伴い,歩行能力や ADL が改善し,日常生活 1.語られた不安の内容について. における行動範囲が拡大し,回復を実感していることが. 1 )退院に際して抱く不安. 満足感につながったと考える.高齢者は術後の回復につ. 痛みは残るのか,元の状態にもどることができるのか. いて,自分なりの目安を抱いていると推察でき,その目. という不安の内容については,<痛みはあるが退院する. 安と大きな差が生じておらず,満足につながる回復状況. ためにがんばっている>としながら,<違和感と傷の痛. であるか否かが不安に影響すると考えられる.. みが気になる>なかで,いつまで【痛みが残るのか】と. また,高齢者は,自宅の段差の有無や手すりの設置な. いう不安であった.安静時の痛みはほぼ感じないという. ど退院後の生活を具体的に想像し,生活・移動しやすい. 102.
(8) 老年看護学 第 24 巻第 2 号 2020.1. 工夫,住宅改修のように【退院後の生活への備え】と退. 成人後期(老年期)では,あるがままの自分らしさを. 院後の生活の見当をつけていた.表 2 に示すように,階. 大切にして生き,その人格的活力に「知恵」が役割を担. 段昇降や入浴において何らかの介助を必要とする者が多. うとされる(服部,2011) .つまり,成人後期には,こ. かった.赤木ら(2010)は,人工股関節全置換術を受け. れまでの人生で獲得してきた“知恵” “経験” “理解”が. た患者の在宅における生活状況として,在宅環境の工夫. 根底にあり,それらを生かして“さきを見通す”という. や生活上の工夫が必要であると述べており,高橋ら. 力につながっていると考える.退院後の自分の姿や生活. (2009)は,人工膝関節置換術後患者における生活上の. の“さきを見通す”ことができているからこそ,工夫や. 困難の把握において,日常生活面での工夫をし,うまく. 周囲の協力で対処しようとしているのだと考える. また,. 障害と付き合っていると論じており,退院後の生活に見. Newman ら(1975/1988)は,成人後期(老年期)にな. 当をつけ,工夫できるかどうかが不安に影響していると. ると自分の人生を受容し素直に受け入れ,自分の人生に. 考えられる.. 価値を見いだすと述べている.高齢者はそれまでに積み. そして, 【支えてくれる人がいるか】という支援者の. 上げてきた知識や体験を工夫・駆使し,おかれた状況・. 存在も影響していることが明らかになった.原田ら. 環境に適応していれば発達・成長し続ける(奥野ら,. (2010)は,支援者の確保が退院間近の患者が描く日常. 2018)と述べられていることからも,高齢者の“さきを. 生活でのニーズと述べており,支援者の存在は退院後の. 見通す”力は自分の現状を受け入れ,価値を見いだすこ. 不安のない生活に大きく影響する.加えて, 高齢者は 【現. とにつながっていくのではないかと考える.このように. 実的な目標がある】と具体的な目標をもっていることも. “さきを見通す”ことと価値を見いだすことで,自分の. わかった.<退院後楽しみにしていることがある>とい. なかで今後の生活の構想を描くことが可能になれば,不. うことは, 社会に目を向け始めている様子がうかがえる.. 安につながらないと考えられるが,具体的に構想を描く. <前向きな気持ちでいたい>という語りの内容からも,. ことができなければ<実際にやってみないとわからな. 【現実的な目標がある】ことで,不安を打ち消すことに. い>という語りのように,それが不安につながっていく. つながっていると考える.. のだと考えられる. 以上のことから,骨・関節疾患術後高齢者の不安は, 痛みや姿勢・動きに気をつけるという特性を考慮した不. 2.骨・関節疾患術後高齢者の不安の特性と看護への示. 安であり,その回復状況が生活の仕方に影響しているか. 唆 65 歳以上の老年期では,統合性を獲得するという固. らである.また,その生活の仕方に関する不安は,工夫. 有の課題をもっている(舟島,2012) .整形外科の手術. や支援してくれる人がいるか否かが影響していると考え. を受けた高齢者は,痛みや機能低下により,自分が元の. る.現実的な目標の有無や,退院後の生活を見通すこと. 状態にもどっていないという事実を受け入れながら,そ. ができるか否かも不安に影響していることが明らかに. の後の生活の再構築を迫られる状況にあり,そのことが. なった.. 不安につながると考えられる.しかし,その不安は回復. 大友ら(1992)は,老年看護とは,老化とともに複. への満足感や工夫しながらの生活,支援してくれる人の. 合化した病気像や不足する自立した生活などという老化. 存在に影響を受けると考えられた.. のリスクを抱えた人を対象とし,その個々に合わせた援. そして【自分ではできないことがある】と語る一方で,. 助をすることであり,生命と日常生活活動にとって必要. 【現実的な目標がある】と語る高齢者がいたことから,. なことをサポートすることで,生命と生活を維持し目指. 老年期にある者が家庭や社会で役割を担うことは,ひと. しうる望ましい様態を獲得していく看護活動が必要と述. つのアイデンティティの維持につながり,再構築を迫ら. べている.骨・関節疾患術後高齢者特有の不安や生活の. れる生活を維持していくための原動力となっているので. 仕方に関する不安等を,影響する内容を考慮しながら具. はないかと考える.また,高齢者は<回復には時間がか. 体的に確認することが必要であり,退院後の自分の姿や. かると理解している>ことや<生活をしやすい工夫をし. 生活を想像したり検討できているかの査定を行いながら. ている>といった,いままでの病気経験や生活経験から. 介入することも重要であると考える.それに合わせて具. 得られた知恵を活用し,退院後の生活を想像することで. 体的な方法や対策を共に考え支援をしていく必要があ. 生活を“見通す”ことができていると考える.. る.. 103.
(9) 105.. Ⅶ.研究の限界と今後の課題. 服部祥子 (2011) :生涯人間発達論;人間への深い理解と愛情を 育むために (第 2 版) ,178-193,医学書院,東京.. 入院患者の男女比や年代などにかたよりを生じたこ. 国立社会保障・人口問題研究所 (2016) :人口問題研究資料,. とが,データ収集上の限界であった.また,骨・関節疾. (334) ,27,東京.. 患のなかでも,手術部位によって経過や ADL の回復は. 水口公信 (1998) :痛みとは,臨床看護,24 (4) ,445-449.. さまざまである.BI(Barthel index;バーセル指数)の. Newman BM, Newman PR (1975)/福富 護訳 (1988) :Devel-. 点数や BI の項目に違いがみられたという特性を明らか. opment Through Life:Third Edition 新版生涯発達心理学;. にしておくことで今後の発展性がある.また,今後は特. エリクソンによる人間の一生とその可能性,451-486,川島. に独居者への研究にも焦点をあてて継続していくことが. 書店,東京. 越智隆弘 (2008) :第 9 巻 7 章 高齢者の周術期管理,最新整形. 必要である.. 外科学大系,234-235,中山書店,東京. 小川節郎 (2013) :痛みの概念,THE BONE,27 (1) ,21-25.. 【謝辞】. 奥野茂代,大西和子編 (2019) :老年看護学;概論と看護の実践. 本研究は,奈良県立医科大学大学院看護学研究科に提出した. (第 6 版) ,42-46,ヌーヴェルヒロカワ,東京.. 修士論文に加筆・修正したものである.. 大友英一,中島紀恵子 (1992) :老年看護学;老人看護の基本と. 利益相反:本研究における利益相反は存在しない.. 日常生活活動への援助,121-130,真興交易医書出版部,東京. 大山祐介,浦田秀子,楠葉洋子 (2010) :周手術期を通してとら. 【文献】. えた人工股関節全置換術 (THA) を受ける患者の病気及び手術 と生活体験の分析,日本整形外科看護研究会誌,5,40-47.. 赤木京子,藤田君支,佐藤和子 (2010) :人工股関節全置換術を. 高橋すなお,関谷理実,林 真紀,他 (2009) :人工膝関節置換. 受けた患者の在宅における生活状況と活動量に関する研究,. 術後 (TKA) 患者における生活上の困難の把握;退院後の再診. 日本看護研究学会雑誌,33 (1) ,121-131.. 時聞き取り調査より,整形外科看護,14 (11) ,89-95.. 赤木京子,藤田君支,吉富敬子 (2011) :人工股関節全置換術. 宇都宮宏子,三輪恭子 (2014) :これからの退院支援・退院調整;. (THA) を受ける患者の手術前の期待と術後の生活体験,整形. ジェネラリストナースがつなぐ外来・病棟・地域,10-14,. 外科看護,16 (4) ,102-108.. 日本看護協会出版会,東京.. 藤永 保監修 (1992) :最新心理学事典 (第 2 版) ,740,平凡社,. 和田恵子 (2007) :高齢者の定義と社会医学的特徴,綜合臨牀,. 東京.. 56 (2) ,255-257.. 舟島なをみ (2012) :看護のための人間発達学,30-34,医学書院,. 安田加代子,藤丸温子,安部美紀,他 (2009) :人工股関節全置. 東京.. 換術を受けた患者の満足度とその関連要因,整形外科看護,. 原田ちひろ,高橋理沙,渥美真利,他 (2010) :退院間近の患者. 14 (4) ,96-102.. が描く日常生活でのニーズ,整形外科看護,15 (8) ,101-. 104.
(10) 老年看護学 第 24 巻第 2 号 2020.1. Qualitative Analysis of Elderly Orthopedic Patients’ Anxiety on the Occasion of Discharge after Bone and Joint Disease Surgery. Yoshinari Okamoto Former Nara Medical University, Graduate School of Nursing. Aims: The aim of this study is to explore the anxiety of an elderly orthopedic patients after bone and joint disease surgery about the time of discharge. Methods: The participants were ten orthopedic hospitalized patients aged 65 years or above. A semistructured interview was conducted, and the qualitative data were content analyzed. Results: The results showed that anxiety about the time of discharge consists of five categories: [whether any pain remains], [whether full recovery is possible], [being careful about posture and movement], [there are several things I cannot do] and [I cannot imagine what may happen in the future]. We also found five categories that affect the level of anxiety: [feeling of moderate satisfaction on recovery], [preparation for life after discharge], [whether a cooperating person exists], [the degree of self support], and [having a realistic purpose]. Conclusions: One of the orthopedics postoperative characteristics is the need to be careful in daily life about posture and movement, and continuous pain. In addition, it was revealed that this need greatly controlled the quality of life after discharge and affected the level of uneasiness.It is necessary to make interventions after assessing whether patients can imagine or consider the state and life after discharge, and to support and consider concrete methods and measures with them.. Key words : after bone and joint disease surgery, orthopedic, elderly orthopedic patient, discharge, anxiety. 105.
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