• 検索結果がありません。

新刊紹介 水野紀男著 『ホスピタリティ・マネジメント 改訂増補版 ホスピタリティによる苦情・不祥事防止から顧客満足経営まで』

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "新刊紹介 水野紀男著 『ホスピタリティ・マネジメント 改訂増補版 ホスピタリティによる苦情・不祥事防止から顧客満足経営まで』"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

「どんなにすぐれたリーダーによって企業のビ ジョンが示され、戦略がつくられても、毎日、多 くの最前線の従業員によって顧客に質の良いサー ビスが確実に提供されなければ、企業の成功はな い。 真実の瞬間 の積み重ねである。 第 一線の 従業員の質のコントロールと、 「 顧客を満足させ たい 」 という意欲なくしては、 グローバル戦略も 偉 大 な ビ ジョンも 張 り 子 の トラでしかない 」 (ヤ ン  カ ー ル ソン著、 堤猶二訳 『 真実の瞬間』 一九九〇年 204頁) 。 世に、 「ホスピタリティ」 を テーマとする文献 はあまたある。その中で、評者が本書を紹介する 理由は、まず、著者の経歴にある。旅行会社の消 費者窓口責任者としての長年の経験、神奈川県消 費生活コンサルタント、日本消費生活専門相談員 協議会での活動などで膨大な実務の蓄積を重ねた。 並行して、研究者の世界で自身の経験に理論を付 加していくという道に入って、二十年近くが経過 した。その間、多くの研究論文を発表してきたが、 消費者問題を課題とするとき、研究者自身が消費 者と直接接した経験を持つということほどの強み はほかにない。ヤン カールソンの 最前線 を 肌で感じた経験の重要さ 貴重さである。著者は、 現在、 観 光学の分野で活躍中だが、 観光学 と 観光業学 という構図でとかく対立的に論じら れがちである状況下で、その橋渡し役を実績を通 して実現しているといってもいいだろう。 「ホスピタリティを研究するうえで一番難しい 点は、研究対象の分野が学際的にあるということ である。いうまでもなく、実践の場である分野も 膨大にあるということになる。それだけ社会貢献 度の高い実学的な学問分野なのである」 (服部勝人 著『ホスピタリティ学のすすめ』二〇〇八年 9 頁) 。 本書は、二〇〇九年刊行の『ホスピタリティ  マネジメント ホスピタリティによる苦情 不祥事 防止から顧客満足経営まで 』 の改訂増補版として、 「顧客コミュニケーション」 を 追加したものであ る。ホスピタリティと企業文 化 との 関わ り、さら に企業不祥事並 び に苦情の防止という観点で、ホ スピタリティを 機軸 とした経営が 競争優位 を確立 するうえで不 可欠 という 考 え 方 のもとに構成され ている。 まず第 1 部では、 「企業文 化 」に 光 を 当 てる。 従 来 型 の 契約 関 係 に お ける 財 サービスの 交換 の みでは顧客満足度を高めるには十分ではなく、ホ スピタリティの介在が顧客満足に 影響 を 及ぼ す 具 体 的事 例 を、旅行業、ホテル業、 航空運輸 業、テ ーマ パ ー ク 業、 飲食 業の 五 業 種 で 検証 する。これ らがどのような 条件 ( 環境 ) によって 醸 成され、 機 能 しているかについて、 組織 文 化 組織風土 お よ び 企業文 化 との 関わ りから確 認 し、企業文 化 を 背景 としたホスピタリティと顧客満足との相 関 性 を 明 らかにしている。 「顧客 志向 」「顧客中 心 」「 お 客さま第一 主義 」 等々 、あら ゆ る企業の経営 信 条 、経営 方 針 に 登 場 する 言 葉 である。しかし、かけ 声 だけに 終 わ り、 ― 72―

太田

ホスピタリティ



マネジメント

改訂増補版

ホスピタリティによる



不祥事防止

ら顧客満足経営

紀男

2011年 3月 1日発行 ILNコンサルティング A5判 210頁 定価 1800円(本体)

(2)

組織風土に定着している例は数少ない。本書の指 摘する、企業文化創造のプロセスにおけるホスピ タリティ醸成という視点は一つの示唆を与えるも のであろう。 第 2 部では、 「企業不祥事とホスピタリティ  マネジメント」として、企業不祥事の発生の背景 を探る。 二〇〇〇年代に入り、 次々と 「食品偽装」 が問題になった。本書では、五つの食品関連企業 の事例を取り上げる。構造的な要因として、組織 の目的や価値判断の歪み、ビジョン 理念の欠如 等が経済的利益並びに効率優先の組織風土を形成 してきたが、 その背景には他者 (消費者) への思 いやり (ホスピタリティ) の欠如があることを指摘 している。願わくば、著者の定義する「ホスピタ リティ産業」の事例も参考としたいところだ。 第 3 部は、 「苦情の処理 防止と消費者教育」 として、不祥事に至る原因となる日常的な苦情の 防止について、ホスピタリティ マネジメントの 観点からアプローチする。具体的事例として旅行 に関する苦情を取り上げ、消費者の苦情行動を解 析しているが、著者の面目躍如といったところだ。 さらには、 「消費者教育と消費者保護」では、 「自 立した消費者」 「賢い消費者」 「消費者の判断力」 を育むために、生涯教育の必要性を説く。企業不 祥事の多発は、経営者、社員とも消費者感覚が欠 如していたことによるものとし、事業者能力と消 費者能力とのバランスが保たれているのが安定し た国民生活を支える条件とする。消費者保護とと もに、消費者責任 自覚がますます求められる。 第 4 部は、新しく加わった「顧客コミュニケー ション」である。ドラッカーは企業における事業 目的は「顧客を創造することである」と述べてい る。 マーケットに存在する 「消費者」 をいかに 「顧客」にするか。 「顧客」と「消費者」の違いは、 「顧客」 とは一人ひとりが特定化されている点で ある。顧客心理や消費者行動を認知し、顧客満足 の創出と顧客創造の重要性を理解すると、顧客と のコミュニケーション能力が求められることがわ かる。 従来のコミュニケーション論は、ビジネスの道 具としての側面が強く、合理性 効率性が強調さ れる傾向が強かった。しかし、技術が進 歩 すれば する ほど 人 間 関 係 の 希薄 化が進みコミュニケーシ ョン不足が 現 れるという 逆 説的な 状 況 となってい る。技術を 手段 とした情 報 の 単 なるやり取りから、 心 気持ち の入ったコミュニケーションへ。そこ には 当然 、 リア ル と バーチ ャル というビ ジネス上の 場 面でのホスピタリティという問題が 浮 上する。 今後ぜ ひともこのテーマにも 切 り 込ん で ほ しい。利益 追 求の経済活動とホスピタリティ。 企業が求める人 材像 にも 「コミュニケーション力」 という 言葉 が 登 場 するようになった。そのための 学校 教育、消費者教育の体 系 化の必要性。著者の 問題 意識 はそこにあるのであろう。本テーマに関 するさらなる 研究 の進 展 を 期待 したい。 第 1  2 部を 通 して、具体的事例を 提 示したの ち 、ホスピタリティと企業文化の視点からの考 察 がなされており、 実務 経 験 者ならではの視 線 が 随 所 に感 じ られる。第 3 部 以降 も、企業 現 場 で 起 き ている 様 々な生きた事例を 通 して、すべてが「ホ スピタリティを 機軸 としたマネジメント」に 帰結 するという思いが れている。 わが国の産業 界 で「ホスピタリティ」が 注 目さ れだしたのは、一 九九 〇年代に入ってからである。 それと 時 を 同 じ くして教育 界 でも取り組みが 始 ま り、 学 会 活動も活発になっている。しかし、 実 践 的な 学 問であるが ゆ えに技術論 ハウツ ーもので 終 ってしまう 可 能性があるのも事 実 である。 本書は、ことばの定義や具体事例の 分 析 結 果 、 相 関 図 な ど が、 図 表 や解説チ ャ ートを 駆使 してコ ン パク トにまとめられており、 筆 者 長 年にわたる 大 学 での 講 義 結 果 から生まれたものである。ホス ピタリティに関する入 門 書として、 初 学 者には 好 適 の書といえよう。 (おおた たかし 東海大 学 観 光 学 部教 授 ) ― 73―

参照

関連したドキュメント

終わりに・・・ 浦安市は東西南北とも 4km という小さな街だが、 昭和 53 年から毎年 1 万人ずつ人口が増え、約

Kwansei Gakuin University..

 弘前駅から中央弘前駅までの移動は、やや困難な距離である。積雪の時期は移動がおっくうとな

図 57 イタリア シエナ大聖堂 図 58 イタリア ミラノ大聖堂 図 59 フランス サンテティエンヌ 図 60 ドイツ 図 61 フランス アルビ大聖堂

う 外発的な報酬が満たされることにより、取り組 む 仕事に対してやりがいが芽生え、内発的な報酬

し、砂糖、しょうゆ、洗剤なども相次いで姿を消す。 昭和

<望ましくない人間関係を持つ食卓> 「アイス・ストーム」 (1997 アメリカ アン・リー 監督/ギャガコミュニケーションズ)

第二章では,問題意識を提起する際,言及した「E