伝統文化 創刊号 2020 -105-
遠隔で伝統文化茶道実技に挑戦
小室 順子平安女学院大学の高槻キャンパスには、子ども教育学部と短期大学部保育科が設置され ています。京都キャンパスの国際観光学部と同様に、ここ高槻キャンパスも伝統文化論(茶 道)は教育の柱の一つとして全学生が履修することになっています。両学部ともに、一年生 は必修、二年生以降は選択科目、短期大学部は二年生で選択となっています。四年間連続し て履修する学生は、約四割強に達しています。 裏千家では、茶道を学ぶにあたり、「道」(心・精神)、「学」(知識の習得・研究)、「実」 (実技・実践)の三つが掲げられています。この三つの中でも、茶道は体得するものであり、 実技と実践の修習が中心に据えられています。点前に必要な帛紗・扇子・懐紙・楊枝・茶巾 と茶巾入は自分のものとして学生が用意を致します。 履修学生の殆どが茶道は初心者です。そのようなこともあり指導していると、驚くような ことも起こります。子ども教育学部では二年生より濃茶点前を致しますが、茶巾の扱いで大 変驚いたことがあります。ある学生が茶巾入から、折りたたまれ黒くなった茶巾を取り出し て、「このようになった」と見せてくれました。本人もそのようになるとは思っていなかっ たのでしょう、驚いていました。 最初に茶巾の扱いについて、「茶巾を使ったら洗ってください。点てて飲む時点では緑で すが、茶と云いますので後で茶色になります」と。初めての事であり、洗い忘れたのです。 再度、「使用した茶巾は洗ってください」と念を押しました。すると「茶巾一枚を洗濯機で 洗うのですか」と。非常に驚いてしまいました。説明の折に、茶巾は手洗いをするようにと 説明が必要であったと反省しました。同時に伝統文化が現代社会の中で遠い存在になりつ つあるのかなぁと思い、この大学での茶道の全学の取り組みの大切さを実感したことでした。 二〇二〇年度の春学期は四月九日に、課題型授業で始まりました。新型コロナウィルス感 染対策のためです。感染を避けるために三週間目までは課題型授業でしたが、コロナの感染 拡大が続く中、実技指導も遠隔授業に切り替わりました。 茶道の稽古で初めての画面を通じての指導となりました。対面授業では点前と客の所作 を主に教えています。遠隔授業でも画面越しに対面授業に準じるようにするための工夫を 致しました。まず、点前の画像を流します。その後、学生四人から六人が同一画面で点前を します。その点前を見ながら個々に指導を致しました。対面授業であれば手直しを直々にす ることができますが、遠隔授業の場合は言葉を駆使して手直しをしなければなりません。熱 心に聞き取ってはくれましたが、十分に伝わらずに歯がゆい思いも致しました。 遠隔授業だからこそできる事とは一体何なのか……。自問自答の日々でした。それでも、 遠隔授業であっても、ご挨拶、床の軸・花・花入をカメラに映して説明をし、その後、NHK で放映されたビデオを鑑賞しました。この鑑賞では、点前で用いる茶道具(楽茶碗・竹花 入)・お菓子(主菓子・干菓子)・炭(櫟の伐採から)等がどのようにして作られ(造られ)、
小室 順子 -106- それらを用いた茶事、また、日常生活の中で工夫された一服の茶の意味等を学ぶことができ ました。また、作陶など現地で見学できたらよいのですが、それも叶わないため、この機会 に、今まで触れることができなかった物作り(造り)の工程や作品に込められた作者の想い を映像から学ぶことができました。このように遠隔授業だからこそできることもありまし た。その後、復活した対面授業も僅か一週間で遠隔授業に戻ってしまい、春学期は終了しま した。 一番の問題は四年生の実技内容が口伝であったことですが、大学の配慮で、八・九月は夏 休み期間であるものの、集中授業として対面授業ですることができました。夏休みであるに も拘わらず、受講四年生全員が出席してくれました。対面、遠隔と一貫性のない春学期であ りましたが、学生と教員が共に茶道実技修習に挑戦した春学期でした。 秋学期は十月一日に始まりました。コロナ感染対策をしながら対面授業と遠隔授業で、今 学期も学生と教員が共に茶道実技修習に取り組んでいきます。 (平安女学院大学伝統文化研究センター 客員准教授 茶名:宗成) <遠隔授業中>