Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College,
Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
高齢者の喉頭関節に関する組織学的研究
Author(s)
是澤, 智久; 廣内, 英智; 是澤, 和人; 松永, 智; 阿部,
伸一
Journal
歯科学報, 116(5): 399-399
URL
http://hdl.handle.net/10130/4121
Right
Description
399
歯科学報 Vol.116,No.5(2016)
示
説
№32:軟口蓋器官形成における免疫組織学的解析
奈良倫之,北村 啓,山本将仁,永倉遼太郎,阿部伸一(東歯大・解剖)
目的:軟口蓋の緊張は,口蓋帆張筋が口蓋腱膜を引
張することにより起こる。その際,翼状突起を軸に
滑車運動が起こる。この滑車のコンポーネントの発
生は個々に研究されており,蝶形骨翼状突起,口蓋
腱膜は頭蓋神経堤細胞(CNC cell)に,口蓋帆張筋
は頭蓋沿軸中胚葉(CPM)に由来するといわれて
いる。しかしながら,それぞれの組織が滑車を形成
するプロセスは不明な点が多く残されており,軟口
蓋の筋-腱-骨を同時に観察した報告はない。そこ
で今回我々は,蝶形骨翼状突起,口蓋腱膜,口蓋帆
張筋がどのように近づき,滑車構造を形成していく
のかを明らかにすることを目的に検索を行った。
方法:試料として,胎生14~17日のマウスを用い,
連続切片を作製した。形態学的観察のためにアザン
染色を行った。また抗 desmin 抗体を用い筋腱接合
部の形成過程を,抗 collagen typeⅡ(colⅡ)抗体,
Tartrate-resistant acid phosphatase(TRAP)染
色・Alkaline phosphatase(ALP)染色を用い翼状
突起の骨形成過程を観察した。骨形成を客観的に評
価するために,翼状突起の長径,幅径を計測,翼状
突起内における破骨細胞数をカウントした。
結果:胎生14日の翼状突起内側板には,ALP が集
積していた。胎生14.5日では colⅡ陽性軟骨細胞が
初めて観察された。その後胎生16.5日まで colⅡの
発現は拡大したが,胎生17日において大幅に減少し
た。TRAP 陽性破骨細胞は胎生15.5日で初めて観
察され,それ以降胎生17日まで有意な増加を認め
た。口蓋腱膜は胎生16.5日に初めて口蓋帆張筋と接
合し,筋-腱接合部においては desmin が強く集積
していた。さらに胎生17日では腱が筋内部にまで存
在しており,その腱を取り囲むように desmin が集
積していた。また翼状突起の幅径は胎生16.5,E17
の間で有意な増加を認めた。長径は胎生15.5,16.5
日の間で有意な増加を認めた。
考察:以上の結果から,筋腱接合部の形成時,翼状
突起は初期の滑車構造を作るため先に長径を増加さ
せたと考えられた。さらに筋腱接合部の形成後,翼
状突起は筋収縮に耐えうる構造を形成するため幅径
を増加させ,骨内部を急速に石灰化させたと考えら
れた。したがって,筋,腱,骨という組織単体の成
長に加え,器官形成による相互作用が急速な成長を
促すことが示唆された。
№33:高齢者の喉頭関節に関する組織学的研究
是澤智久,廣内英智,是澤和人,松永 智,阿部伸一(東歯大・解剖)
目的:喉頭の関節は,膝関節や股関節に比べ体重の
負荷が少ないため,加齢による変化が少ないといわ
れている。また,喉頭炎や喉頭ガンによる疼痛が発
生することはあるが,変形性関節症により喉頭に痛
みを生じるという臨床的な報告はない。しかしなが
ら近年,高齢者の輪状披裂関節を構成する軟骨の表
面が粗造化していることがわかり,喉頭の関節にも
変形性関節症様の加齢変化が起きることが少しずつ
明らかになってきた。そこで今回我々は,高齢者の
輪状甲状関節と輪状披裂関節の関節包靭帯と滑膜組
織をミクロレベルで検索することで,喉頭関節の加
齢変化について考察を試みた。
方法:試料として,東京歯科大学に献体された15体
の解剖体を用いた。それぞれの解剖体から喉頭を摘
出後,輪状甲状関節と輪状披裂関節を含めた組織
切片を作製した。形態学的な観察のために,HE 染
色,Elastica-Masson 染色,免疫組織化学的染色を
行った。
結果:輪状甲状関節においては,軟骨表面の粗造化
がほぼすべての解剖体で認められた。この関節腔の
前方には細く長い靭帯が,後方には網目状の靭帯が
あり,これらは豊富な弾性線維を含んでいた。また
しばしば,関節腔内に厚く長い滑膜ヒダが存在して
いた。このヒダの中には,CD68陽性マクロファー
ジが一部に限局して認められた。一方,輪状披裂関
節の軟骨表面は,一部の個体で粗造化していた。こ
の関節には明確な靭帯はなく,関節を保護するため
の後輪状披裂筋と弾性線維が豊富な筋膜があった。
滑膜ヒダはほぼすべての個体にあり,前方は長いベ
ルト状を呈し,後方は三角形に類似した形態をして
いた。また,滑膜ヒダには少数の CD68陽性マクロ
ファージが存在していた。
考察:今回の観察結果から,高齢者の輪状披裂関節
には輪状甲状関節と比べ明らかな靭帯がなかった。
したがって,輪状披裂関節は靭帯により保護されて
いないことから,その代償として大きな滑膜ヒダを
有すると考えられた。また,関節軟骨表面の粗造化
は,輪状披裂関節と比べ,輪状甲状関節に高確率で
出現することがわかった。これは,輪状甲状関節の
可動域が,輪状披裂関節よりも広いことが影響し
て,関節の粗造化を促進していることを示唆してい
た。さらには,両関節の滑膜ヒダにはマクロファー
ジが存在していたが,その数が非常に少ないことか
ら,これらの関節に明らかな炎症所見はないと考え
れられた。
― 55 ―