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複数サーボモータの協調制御による精密位置決め法の研究 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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氏 名 内田 豊一 博士の専攻分野の名称 博士(工学) 学 位 記 番 号 医工博甲 第339号 学 位 授 与 年 月 日 平成27年3月18日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当 専 攻 名 情報機能システム工学専攻 学 位 論 文 題 目 複数サーボモータの協調制御による精密位置決め法の研究 論 文 審 査 委 員 主査 教 授 古 屋 信 幸 教 授 大 内 英 俊 教 授 萩 原 親 作 教 授 寺 田 英 嗣 准教授 北 村 敏 也 准教授 清 水 毅

学位論文内容の要旨

本研究は位置決め制御の高精度化を目的としたものである。位置決め制御は数値制御工作機械や ロボット、半導体露光装置などにおいて特に重要な役割を担っている。現在の一般的な位置決め制 御系では動力を発生するアクチュエータとして電動のモータが使用され、位置および速度を検出す るためのセンサと組み合わせて制御する方法が主流となっている。電動モータのみではトルクが不 足するため、機械的な減速機と組み合わせて使用される例が多いが、このような制御システムでは 機構部分に存在するガタと呼ばれる遊びや歯車のバックラッシのために、制御の安定性と位置決め 精度を保証することが特に困難となる。本論文では従来、単一の電動モータで制御されていた問題 に対して、モータを複数使用して協調させることにより、精密な位置決め精度を実現するための技 術を提案している。 最初に従来の位置決め装置としてのサーボ制御系のメカニズムを分析して、概要としてまとめて いる。位置制御技術とそれに使用する高精度位置計測法を整理して、位置決め制御系の機構に介在 するバクラッシに起因する諸問題をバックラッシ補償法との関係から説明している。工作機械や搬 送装置などの高負荷搬送に応用されている複数モータでの協調制御搬送方式を適用してモータ制御 で機械的にギヤのバックラッシを補償する位置決め方法が有効であると結論づけている。また、位 置決め精度の改善のためにフルクローズド制御方式とセミクローズド方式を組み合わせた制御方式

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を新たに提案している。 次にバックラッシの記述方法と測定方法について考察した上で、バックラッシの力学モデルとし て Dead-zone モデルで記述するのが適当であること、また、バックラッシの測定方法では位置決め に必要な分解能を有している外部エンコーダが取り付けられていることを前提として、伝達軸を往 復運動させて外部エンコーダとモータ内臓エンコーダのリサージュ波形を用いる方法を提案してい る。バックラッシを有する歯車の場合は空走区間を過ぎ、歯車の駆動面側が接触するとき振動が起 きる。これは多段歯車駆動系におけるアイドル騒音(ガラ音)の発生として知られている。バック ラッシを持つ駆動系で往復運動させて位置信号の周波数分析を行なうと、アイドル騒音に起因する 明確な周波数のピークが観察され、これによって、バックラッシに起因する振動や回転ムラなどの 影響が明確になる。ギヤバックラッシ量が変化すると、見かけ上、両方のギヤが常時接触しない条 件でもモータ動作が拘束され、モータ制御システムの周波数特性が変化することなどを明らかにし ている。 サーボモータ制御系にバックラッシを有する減速機構を組み込んだ場合の影響を解析する上で、 サーボモータの基礎方程式と電気的モデルを導き、回転駆動系から直動駆動系に変換するラック& ピニオンの動力学方程式を構築して、フルクローズドループ制御系とセミクローズドループ制御系 の制御ブロックを線形近似して、根軌跡解析を行なった。その結果、フルクローズド制御系は位置 ゲインを上げると不安定になるが、セミクローズド制御系は位置ゲインを上げても安定となること を明らかにし、ツインモータ制御に適したモータ制御方法として、フルクローズドループ制御系と セミクローズドループ制御系を組み合わせた新しい制御方法を提案した。 ツインモータ制御時のシステム剛性に関して、 ギヤバックラッシ補正を行い両方のギヤが常時接 触する状態になるとモータのトルクリップルが抑えられ、周波数特性が安定することを明らかにし た。適切なゲイン設定を行なうとツインモータで拮抗制御を行いながら外付けリニアエンコーダ出 力を基に位置決めさせることができ、外付けの高精度のリニアエンコーダの 1 パルス以内の精度で 位置決め制御ができることを明らかにした。 ツインモータ駆動系に更にもう一段減速機を加え、多段歯車系としたときのバックラッシ制御を 検討した。3 慣性モデルでのシミュレーションモデルを提案し、バックラッシに起因する自励振動 を抑えて制御系を安定させることができること、特にモータに直結する減速機内の粘性係数が制振 特性に大きな影響を与えることを示した。また、バックラッシを大きめに設定した駆動系でも、マ スターモータ側は外付けリニアエンコーダに基づく位置決め制御を行い、リニアエンコーダの1パ ルスステップで送り、その後に戻す往復運動をさせ、運動方向を切り替えたときに、スレーブモー タ側がバックラッシを補償しながら1パルス単位で位置送りすることが可能なことを確認している。 最後に本研究から得られた成果を以下のようにまとめている。ギヤバックラッシを補正して位置

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決め精度を改善する方法に関して、マスター・スレーブ方式での制御を基本としたツインモータの 制御系を構成して最終位置決めを行い、スレーブモータ側でバックラッシを詰める制御が有効であ る。 ツインモータでギヤバックラッシ補正を行うとモータのトルクリップルが抑えられ周波数特性 が安定する。ツインモータで拮抗制御を行うと外付けリニアエンコーダ出力 1 パルス以内で制御が 可能なことなどである。 また、ツインモータでバックラッシ補正をしているとき、マスターモータ 側の位置ゲインと積分ゲインを上げるとともに、スレーブモータ側の位置制御系内の積分ゲインを 0とすることにより、モータを過負荷状態にすることなく、バックラッシ制御が可能になるとして いる。

論文審査結果の要旨

数値制御工作機械やロボット、半導体露光装置などの産業の応用分野において位置決め制御の高 精度化の要求は高い。本研究は、このような要求に対する解決策として、一つの制御法を開発した ものである。位置決め制御系は制御用のサーボモータと動力を増幅するための減速機構を組み合わ せて構成するのが一般的であるが、歯車等の機械部品にはバックラッシや遊びなどの位置決めに悪 影響を及ぼす要因が介在する。従来の方法は、バックラッシや遊びを減らす機構を開発することに 主眼がおかれていたが、このような特殊な機構は必然的に製品のコスト高をもたらす。本研究は、 これまで単一のモータで制御されていた位置決め問題に対して、モータを複数使用して協調させる ことにより、精密な位置決めを実現するための技術を提案している。 研究の手法としては、サーボモータ制御系にバックラッシを有する減速機構を組み込んだときの 影響を予測する上で、モータの基礎方程式とその電気的モデルを導き、また、減速機構に関しても 動力学モデルを導いて系全体の動力学方程式を構築し、シミュレーションにより特性を分析する方 法を採用している。このような方法を採用した結果の一つとしてフルクローズドループ制御系とセ ミクローズドループ制御系の根軌跡解析を行ない、フルクローズド制御系は位置ゲインを上げると 不安定になるが、セミクローズド制御系は位置ゲインを上げても安定となることを明らかにし、ツ インモータ制御に適したモータ制御方法として、フルクローズドループ制御系とセミクローズドル ープ制御系を組み合わせた新しい制御方法を提案している。また、ツインモータ制御のシステム剛 性に関しては モータのトルクリップルが抑えられて周波数特性が安定することを明らかにした。適 切なゲイン設定を行なうとツインモータで拮抗制御を行いながら外付けリニアエンコーダ出力を基 に位置決めさせることができ、外付けの高精度のリニアエンコーダの 1 パルス以内の精度で制御が できることを明らかにした。 ツインモータ駆動系にさらに減速機を増設して多段歯車系としたときのバックラッシ制御の効果 を定量的に検討できることを実証している。3 慣性モデルでのシミュレーションモデルを提案し、

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それを使って解析した結果、ツインモータ制御によりバックラッシに起因する自励振動を抑えて、 制御系を安定させることができること、また、特にモータに直結する減速機内の粘性係数が制振特 性に大きな影響を与えることを示した。また、バックラッシを大きめに設定した駆動系で、マスタ ーモータ側は外付けリニアエンコーダに基づく位置決め制御を行い、リニアエンコーダの1パルス のステップで送って、その後に戻す往復運動をさせると、運動方向を切り替えたときにも、スレー ブモータ側がバックラッシを補償しながら1パルス単位で位置送りすることができることを実験的 にも確認している。 本論文を通しての成果は、ギヤバックラッシを補正して位置決め精度を改善する方法に関して、 マスター・スレーブ方式での制御を基本としたツインモータの制御系の構成が有効であること、 ツ インモータの制御系ではモータのトルクリップルが抑えられ周波数特性が安定すること、ツインモ ータで拮抗制御を行うと外付けリニアエンコーダ出力 1 パルス以内で制御が可能なことなどを明ら かにしたことである。 また、ツインモータでバックラッシ補正をしているとき、マスターモータ側 の位置ゲインと積分ゲインを上げるとともに、スレーブモータ側の位置制御系内の積分ゲインを0 にすることにより、モータの過負荷状態を防止して、常にバックラッシ制御が可能になることも明 らかにしている。 新しい位置決め制御系の提案としては工業的に高い評価を与えることができる。したがって、博 士(工学)論文としてふさわしい内容と判定した。

参照

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