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振動を活用したトンネル覆工の変状進展性評価に関する研究 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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氏 名 瀬下 雄一 博士の専攻分野の名称 博士(工学) 学 位 記 番 号 医工博甲第272号 学 位 授 与 年 月 日 平成25年9月26日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当 専 攻 名 環境社会創生工学専攻 学 位 論 文 題 目 振動を活用したトンネル覆工の変状進展性評価に関する研究 論 文 審 査 委 員 主査 教 授 杉 山 俊 幸 教 授 鈴 木 猛 康 教 授 平 山 公 明 准教授 吉 田 純 司 准教授 齋 藤 成 彦 准教授 後 藤 聡 准教授 高 橋 良 輔

学位論文内容の要旨

トンネル覆工のコンクリート片がはく落する事象は,コンクリート表面で顕在化しているひびわ れが,土圧の作用による継続的な変形や,材料そのものの寿命などによって,部材の深部で潜在的 に進行して突然生じる場合が多い。トンネル覆工コンクリートの一部がはく落する事象は,たとえ 小規模なものであっても社会的な影響が大きいことから,日常の目視検査や打音検査は,トンネル 構造物の維持管理では重要事項となっている。しかしながら,鉄道トンネルでは夜間の列車が走行 しない合間でしか日常の検査ができないという時間的な制約があり,変状箇所の進行性の有無の監 視が十分ではないという課題がある。そのため,日常の検査で変状が顕在化している箇所を対象に, 精度良く変状の進行を監視する方法を構築することの重要性が強く認識されてきている. 本論文では,トンネル覆工コンクリート内で生じている変状に何らかの進展があった場合は覆工 内を伝播する振動の特性に変化が生じるものと想定されることから,変状進展と覆工の振動特性変 化との関係を定量的に評価し,潜在的な変状進行であっても検知できるシステムを構築することを 目的としている。なお,検知システムの構築に際しては,①走行によって生じる振動のエネルギー が大きいことから,特定箇所の変状だけでなく,計測範囲内での変状の潜在的な進展や新たに発生 した変状等についても監視することができる,②振動の伝播の観点から,数千Hz 程度までの高い 周波数までを評価することによって,ひびわれや浮きの長さが数十センチ程度進展したときの変化

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もとらえることができる,③変状箇所を列車が通過する毎にデータ取得ができることから,列車の 走行振動を利用することを前提としている。 具体的には以下のことを考究している。 最初に,実際の鉄道トンネルで列車走行時にトンネル覆工壁面で生じている振動測定結果に基づ いて,列車の車両や速度に依存しない指標について検討している。実トンネルにおいて,列車が測 定箇所を通過するときにトンネル覆工表面で生じている振動加速度は,列車種別によって車両の重 量や走行速度が異なることから,振動のエネルギーの大きさが異なり,周波数分析によるフーリエ スペクトルの大きさも異なっている。しかし,覆工の測定点間の振動伝達特性に着目して,測定点 間の加速度フーリエスペクトル比を求めることで,列車種別や走行速度によらず,8,000Hz 程度ま での高い周波数の範囲までも一定の関係を示すことを明らかにしている。フーリエスペクトル比, つまり振動の伝達関数は,ひびわれや内部欠陥等が変化しなければ,列車種別が異なってもフーリ エスペクトル比の形状は概ね一致することから,測定点間のフーリエスペクトル比を指標として, 変状進展性を評価できる可能性があることを示している。 次に,ひびわれの潜在的な進展を検知するための指標を定量化する方法について検討することを 目的として,変状を模擬したコンクリートの梁試験体を用いた振動実験を行い,変状が進展したと きのフーリエスペクトル比の変化を分析した。その結果,ひびわれ長さが潜在的にかなり進展した 場合でも,8,000Hz までの広い周波数帯において,測定点間のフーリエスペクトル比に変化がみら れることが明らかとなった。この変化は,コンクリートに浮きが生じた場合でも認められた。フー リエスペクトル比の変化は,進展したひびわれや浮きによって新たな振動の境界面が形成され,こ の境界面と試験体表面の間でも反射波が生じることに起因しているものと考えられることから,フ ーリエスペクトル比の形状の違いを定量的に評価することができる「進行性指標」を定義し,検知 システムに組み込むのが適切であることを提案している。 そして,「進行性指標」のさまざまな変状の進展に対する適用性を確認するために,トンネル覆工 模型に段階的に載荷し新たなひびわれの発生やひびわれ幅・長さの進展に伴う振動特性の変化を把 握する実験を実施した。その結果,センサを設置していない部材背面側であっても,基準とした状 態からわずかでも変状が変化した場合には,「進行性指標」の値が敏感に変化することが確認できた。 また,センサを配置している測定点間以外の箇所にひびわれが生じた場合にも,「進行性指標」が変 化することも確認できた。変状が生じていない実トンネルの振動計測結果から求めた「進行性指標」 は,列車の種類や速度が異なっても 0 に近い値で安定していることから,「進行性指標」がトンネ ル覆工の変状の進展を検知するのに適した指標であることを検証している。 最後に、これまでの検討結果に基づいて,列車が走行する際の振動を活用し,覆工壁面の測定点 間の加速度フーリエスペクトル比の変化に着目した「進行性指標」に基づいて変状進展の可能性を 検知するという変状監視方法を提案している。具体的には、変状箇所を列車が通過するたびに収録

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される振動データを基に算出される「進行性指標」の値があらかじめ設定された閾値を超過する状 態が続けば変状が進展している可能性が極めて高いと判定する方法である。なお、閾値については、 変状を模擬したコンクリートの梁試験体を用いた振動実験、および、トンネル覆工模型に段階的に 載荷し新たなひびわれの発生やひびわれ幅・長さの進展に伴う振動特性の変化を把握する実験結果 から0.2 の値を設定できることも明らかにしている。 本論文で得られている研究成果は,今後のトンネル覆工コンクリートはく落のリスク低減に関す る監視システムの構築に大きく貢献するものと考えられる。

論文審査結果の要旨

トンネル構造物の今後のさらなる高経年化によって,覆工コンクリートには変状箇所が増大する ことが予想されており,補修対策等の措置を実施するまでには至らないものの,トンネル覆工コン クリートのはく落の可能性を否定できない変状箇所が増加すると考えられている。覆工のコンクリ ート片のはく落事故を防止するためには,特定された変状箇所に対して,トンネル覆工背面や部材 内部でのひびわれ等の変状の進行を常に監視する必要がある。しかし現時点では,1)営業使用中の トンネルでは夜間の列車が走行しない間でしか調査できないという時間的な制約があり,状態を常 時監視することは容易ではないこと,2)人手による調査では作業量が限られること,3)熟練した技 術者の判断が必要となるが,熟練者でも変状の進展を見落とす可能性があること,4)費用の面から も頻繁な調査は困難であること等の問題点があり,トンネル覆工コンクリートのはく落事故が防止 できていないのが実情である。このはく落のリスクを低減させる技術開発の必要性は高く認識され ている。 本論文では,トンネル覆工コンクリート内で生じている変状に何らかの進展があった場合は覆工 内を伝播する振動の特性に変化が生じるものと想定されることから,変状進展と覆工の振動特性変 化との関係を定量的に評価し,潜在的な変状進行を検知できるシステムを構築することを目的とし ている。そして,実トンネルでの振動計測や,変状の進展を模擬した試験体の振動実験を実施し, 以下の研究成果を得ている。 ① これまでの鉄道分野の振動計測では着目されていなかった高周波数帯までを考慮した計測を実 鉄道トンネルで行い,測定点間のフーリエスペクトル比が,高周波数帯までの領域で加振源の 振動の大きさや周波数特性に依存しないことを確認している。 ② 変状を模擬した梁試験体を用いた振動実験結果より,変状が生じたり,進展したりすることで, フーリエスペクトル比が広い周波数帯の範囲で変化することを示し,この変化を定量的に評価

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するための指標として「進行性指標」を提案している。 ③ 「進行性指標」がさまざまな変状進展に対して適用可能か否かを評価するために,トンネル覆 工模型に段階的に載荷し新たなひびわれの発生やひびわれ幅・長さの進展に伴う振動特性の変 化を把握する実験を行い,微細なひびわれやコンクリートのはく離のような様々な変状の進展 にも「進行性指標」が適用できることを検証している。 ④ 変状が生じていない実トンネルの振動計測結果から求めた「進行性指標」は,列車の車両や速 度が異なってもある一定の値を示し安定していることを明らかにしている。 ⑤ 変状箇所を列車が通過するたびに収録される振動データを基に算出される「進行性指標」の値 があらかじめ設定された閾値を超過する状態が続けば変状が進展している可能性が極めて高い と判定するトンネル覆工のはく落監視のための変状監視方法を提案している。 最終審査においては,審査委員ならびに聴講者から様々な質問が出されたが,これらに対して的 確な回答がなされ,申請者が背景を含めて研究内容を十分に理解していることが示された。 以上の通り,本論文は新規性・信頼度・工学的有用性の観点から博士(工学)の学位論文として十 分に値することから、審査委員全員一致で合格と判断した。

参照

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