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思惟と信号過程

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Academic year: 2021

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(1)Title. 思惟と信号過程. Author(s). 山本, 嘉太郎. Citation. 北海道学芸大学紀要. 第一部. A, 人文科学編, 16(2): 102-105. Issue Date. 1965-12. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/3797. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 第 16 巻. 昭和40年12月. 北海道学芸大学紀要 (第一部A). 第2号. 思. 惟. 山. と. 本. 信. 嘉. 号. 太. 過. 程. 郎. 北海道学芸大学旭川分校哲学研究室. 1 Katar6 YAMAD inki TOTO ; Th ng and Process of si gna. 現在の多くの論理学書や認識論書は 思惟にとっ て 言語が必要のものであるということについて は大抵述べているようである. しかしそれらは思惟にとって言語 が どのような仕方で必須で不可 欠 的 な も の に な る か と い う こ と に つ い て は 余 り 述 べ て な い よ う で あ る.. こ こ でわれわれは思惟に. とって言語過程ないし信号過程 が どのよう な仕方で 必須で不可欠的なものになるかということに ついて少しく考えて見ようと思う, 1 863年にセチョ ーノフは 「大脳反射」 という著書を書き, その中で大脳両半球に於ける活動を 7年に 「条件反射 学」 と 反射活動として説明し, かつ決定しようと試みた. 周知のパ ブロフは192 いう著書に於いてこの学説を引用 しかつ肯定して次のように述 べている. 「かくの如き学説を採 用すれば思惟ということは その応答が制止されて外に あらわれてこな い 反射となすべきであり, 情緒というのは 興奮の広く拡延することに依っ て強め られた反射であるという 風 に解するのであ る」 (条件反射 学第一講) すなわちパ ブロ フにした がえば思惟はその応答が制止されて外にあら われてこない反射である, いわばそれは条件反射の一形態であると考えられる, またパ ブロフとその学派にした がえば第一信 号体系とは言語に依らぬ信号の体 系 の こ と で あ り, ク ト界に関するわれわれの感覚や表象のことである. 言葉と言語の機官から皮質へゆく運動興 奮, 筋感覚は第二信号, 信 号の信号をなす, すなわち第二信号体系とは言語による信号の体系の こ と と 考 え て い る,. しかしパブロフとその学派の考えた第二信 号体系の概念は 主として音声言語による信号の体系 を意味し不十分のように思われる. われわれはこの第二信号体系を二つに分けて, 音声言語によ る信 号の体系を第二信号体系と定め, 文字言語による信号の体系を第 三信 号体系と定めた方が一 層正当のことと考える, なぜなら音声言語は生成するすくその後から消滅し去る音声に依っ て構 成されるところの瞬間的な存在である. これに対して文字言語はこのような音声を信号しかつそ の視覚形象が恒久的に保存される文字に依っ て構成されるところの永久的存在で ある. すなわち 音声言語と文字言語とは全く質の相異なるものだからである, つまり前者に比して後者の方 が一 段と複雑な高 い段階のものだからである. ただしここで第三信号体系という時, それは単に文字 言語に依る信号の体系ばかりではなく, 記号式や図式に依る信号の体系をも意味する広い概念の も の と 定 め る.. ところでパブロフとその学派の思想を展開して考えると 人間に於いては思惟はこの第二信号体 系ないし第三信号体系を通して始めておこなわれる. 特に高い段階の思惟としての科学的 思惟は -102-.

(3) . 山. 本. 嘉 太 郎. この第三信号体系を通して始めておこなわ れるのである 次にこの科 学的思惟がどのような仕方 . で第三信号体系を通して形成され, 伝達され, 記憶きれ そうして発展することができるかとい , う こ と に つ い て 考 え て見 る,. まず第一に, 科学的思惟はこの第三信 号体系を 通して始めて確実に形成さ れることができると うこ い とについて考え て見る, 科学的知識は経験的認識と 思惟的認識と の統一的な実践を通して 形成されてゆくものであるが,この過程に於いて第三信 号体系は不可欠的な役割を果たす つまり . この過程に於いては経験的知識に基づき, 文字や記 号や図形のような視覚形象を必須の信号刺戟 とし, 文字言語や 記号式や図式への表記を通して科学的思惟がおこなわれなければならない た , とえばダーウィ ンは1 859年に 「種の起源」 という書物を書き, これを通してかれの生物進化論を 思惟し形成した. またたとえばニ ュートンは1 687年に 「自然哲 学の数学的原理」 という書物を書 き’ これを通して万有引力諭その他を思惟し形成 した 特にニ ートンはそこでF γ× 乎 - ュ . 学 とい う記号式を立てた. かれはこの記号式を通して両 質点の間に働 らく万有引力Fはその両質点 mと m’との相乗積に正比例しその両質 点の間の距離γ の二乗に反 比例するという万有引力の法則 を思 惟し発見した, またたとえば古来数学にとっ ては 解析学にと ても幾何 学にと てもその 他の , っ っ 諸部門にとっ ても, 文字言語や記号式や図式は必須のものとな ており 数学はこれ らのものな っ , しにはどう しても形成さ れなくなっ ている そう してまた古来の科 学の歴史を見 ても文字言 語を , 有する諸民族だけが科 学的思惟的知識を形 成してきた 音声言語をしか持たなか た諸民族は 科 . っ 学的思惟的知識を形成することができなかったのである , 次に第二に科学的思惟はこ の第三信号体系を通して 始め て広汎にかつ正確に伝達されるこ とが できるというこ とについて考えて見る, 科 学的思惟的知識は音声言語に依 ては広汎にか つ正確 っ には伝達されえないものである, 科 学的思惟的知識はそれを表記 した文字言語や記号式や図式の 伝播と読解とを通して始めて広 汎にかつ確実に伝達されていくものである たとえば1930年に ・ , イ ゼソベルクは 「量子論の物理学的原理」 という論文を書き これを通してかれのいわゆるマト , リクス力 学を思惟し形成した, またたとえばシュ レーデソガーは1927年に 「波動力 学研究」 とい う論文を書き, こ れを通してかれ のいわゆる波動力 学を思惟し形成 した そののちデ ラ クは ィ ッ . 1 930年に 「量子力 学原理」 という論文を書き これを通して上のマトリクス力 学と波動力 , 学とに ついて思惟し, かつこれ らを統一して一層一般的 で高い段階の量子力 学的思ぞ惟的知識へ高揚さ せ た. これらの論文はまず筆者たちの故国に伝播し読解されてその量子力 学的思惟的知識 は正確に 伝達されたばかりでなく, 国外へも伝播し読解されてその量子力 学的思惟的知識は多く の人たち の間へ広汎にかつ正確に伝達されたのである. このように科 学的思惟的知識はそれ を表記した文 字言語や記号式や図式の伝播と読解とを通して もっ とも広汎にかつ確実 に伝達されていくも ので ある. 次に第三に科 学的思惟は この第三信 号体系を通して 始めて永久にかつ確実に記憶されることが できるということについて考えて見 る. 科学的思惟的知識はそれがひとたび形成さ れたのちもそ のままの段階にとどまっ ていることはできず その多くの 人たちへ の伝達と記憶とそうして新しい 研究を通して次第に高い段階のものへ発展してゆくべきものであるが この科 学的思惟的知識の , 記憶の過程に於いても第三信 号体系は不可欠的な役割を演ずるものである すなわちこの過程に , 於いては科学的思惟的知識は それを表記した文字 言語や記 号式や図式の保存を通して保存され , その読解を通していつでも想起されるものである たとえば カントは1781年に周知の 「純粋理性 . 批判」 という書物を書きこれを通して かれのいわゆる先験的観念論の立場に立つ認識論的哲学を 一103-.

(4) . 思 惟 と 信. 号 過 程. 思惟し形成した. そののちこの書物は多くの哲学者たちの間に伝播して保存され, 必要に応 じて 読解を通して正確に想起さ れ記憶さ れてきた. またたとえ ば1936年にハ ッ ブルは 「星雲の宇宙」 という書物を書 き, これを通して かれのいわゆる膨脹宇宙論を 思惟し形成した. そののちこの書 物は多くの天女学者たちの間に伝播して保存され, 必要に応 じて 読解を通して想起され, 記憶さ れてきた, このように科学的 思惟的知識はそれ が文字言語や記号式や図 式へ表記されて保存され る時にはその視覚形象 が消滅しない限り いつまでも記憶されるところの永久不滅の存在とななる こ と が で き る,. 次に第四に科学的思惟はこの第三信号体 系を通して 始めて確実に発展することができるという .学的 思惟的知識は経験 的認識と思惟的認識との累 進的つまり発展的 ことについて 考えて見る. 科 な反復を通 して次第に高 い段階のものへ高 揚してゆくもので あるが, この科学的思惟的 知識の発 展の過程に 於いても第三信号体系は不可欠的な役割を果すものである, すなわちこの科学的 思惟 的知識の発展の過程に於いては まず既成の科 学的 思惟的知識の上に新しい経験的知識が集積され なければならない. それからこの新しい経験的 知識に基づ き, 文 字や記号や図形などを必須の信 号刺戟と し新しい文 字言語や記号式や図 式への表記を通して 新しい科学的思惟的知識が思惟され 形成されなければならない. すなわちこの過程に於いては 既成の科学的思惟的知識を表記した文 字言語や記号式や図式は新しい科学的知識を表記する文 字 言語や記号式や図式へ書き変えられな 71年に 「人間の由来」 という論文を書き, これを通し ければならない. たとえ ばダーウィ ンは18 880年 てかれの 生物進化論に基づく 人間の進化の理論を 思惟し形成した, そののちエンゲルスは1 代に新しく 「猿の人間化に於ける労働の役割」 という論文を書 きこれを通して新しい人間の進化 の理論を 思惟し形成 した. 人間の進化の理論はこのエンゲルスの新しい論文を通して一層正確な 高い段階のものへ高 揚した. またたとえばアイ ンシュタイ ンは1917年以来 「一般相対性理論への 宇宙論的考 察」 という論文を始めいくつかの論文を書き, これらの論文を通して Gガン=スqガン と いう記 号式を導き出した. ここに Gガジ は 宇 宙 空 間 の 或 る 量 を 示 す リ ー マ ン・ ク リ ス ト ッ フ エ ル の テ ン ソ ル で あ り, ス は アイ ン シ ュ タイ ンの 考 え た 宇 宙 定 数 で あ る,. こ の 記 号 式 の 確 立 を 通 して. Jへ 高 揚 さ ニ ュ ー トンの F=γx 亭 」で表記さ れる万有弓1ヵの法則は -段と-般的な重ヵの法則 せ ら れた.. そ う し て こ の アイ ン シ ュ タ イ ンの 新 し い 諸 論 文 に 依 り, ニ ュ ー ト ンの 古 典 力 学 の 段 階. の万有引 力論は 一層高い段階の相対性理論に基づく重力論へ高 揚させられた, そうしてまた,たと え ば さ き に も述 べ た よ う に ハ ッ ブ ル は1936年 に 「星 雲 の 宇 宙」 と い う 論 文 を 書 い た,. ハ ッ ブル は. この論文の中で観測的データーに 基づ き, 諸星雲の後退の速度距離の関係を示す グラフを書き, 6 光年という関係式を導き出 した. ここに V は諸星雲の後退速 1 /秒/ 10 m ~ これに基づ いて V/D=170 度であり, D はその距離 である. この関係式は任意の観測地点 から見て100万光年遠ざかるごと kmの加速度で不断に 相互に後退し合っているという 速度距離関 にそこに位置する諸星雲は 毎秒170 係の法則を示すものである, そののち バーデーは1952年に新しく 論文を書き, その中で新 しい観 づ 測的 データーに基づ き, 諸星雲の後 退の速度距離の関係を示すグラフを新 しく書き, これに基 6光年という関係式を新しく導き出 した. この関係式は任意の観測地点か /秒/ 10 5 l n い て V/D=5 ,2k kmの加速度で不断に相互に ら見て距離 百万光年遠ざかるごとにそこに位置 する諸星雲は毎秒55,2 後退し合っ ているという速度距離関係の法則を示すものである, ハ ッ ブルの速度 距離関係の法則 はバ ー デーのこの新しい関 係式の確立を通 して一段と普遍 的な高い段階のものへ 高 揚 さ せ ら れ た. そうしてハ ッ ブルの膨脹 宇宙論も一段と普遍的に妥当するものへ高揚させられたので ある. このような諸例に於いて見 られるように科学的周”佳的知識は それを表記する文字言語や記号式や 一104一.

(5) . 山. 本. 嘉 太. 郎. 図式の書き変えを通して次第に高い段階へ高揚してゆくものである. しかし文字言語や記号式や 図式の書き変えといっても, それが無秩序に漆意におこなわれてはならない‘ それは新しい経験 的知識に基づき, 厳密に文法的にそうして論理的に おこなわれなくてはならない , すでに述べたように科学的思惟的知識は経験的認 識と 思v畦的認識との統一的な実践を通して形 成せられそれらの累進的ないし発展的な反復を通して 高い段階へ次第に高揚してゆくものである が, この過程に於いて第三信号体系が必須で不可 欠的なものであることは以上の通りである こ , のように周v惟にとっ て信号過程は必須で不可欠的なものではあるが, 信号過程がすなわち思惟過 程ではない. つまり思惟過程がすなわちそのまま信号過程ではなく, 信号過程がすなわちそ のま ま思惟過程である ということはできない. なぜなら思惟過程をともなわない信号過程もあるから である, 思惟にとっ ては信号過程は必須の方法であり, その不可欠的な過程である 人間に於い , ては思惟は条件反射の一形態ではあるが, それはつねに文字言語や記号式や図式への表記を通 し て始め て可能となるものである.. 一105一.

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