Title
鋼の被研削性に及ぼす熱処理の影響
Author(s)
福本, 功; 糸村, 昌祐; 平敷, 兼貴; 長谷川, 嘉雄
Citation
琉球大学工学部紀要(27): 11-19
Issue Date
1984-03
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12000/1994
Rights
珠球大学工学部紀要第27号l1984年 11
鋼の被研削性に及ぼす熱処理の影響
福本功蒙糸村昌祐.平敷兼貴。長谷川嘉雄.*
lnfluenceofHeatTreatingCondition8
ontheGrindabilityofSteel
IsaoFuKuMoTQShosukeIToMuRAKenkiHhsHIKIandYOShioHAsEGAwA
Summary Variousinvestigationwerecarriedouttoclearthegrindabilityofvariousstruc・ turesformedbytransforrTntionoftheaustenitephaseinsteelandthefollowingre‐ sultswereobtained: (1)Thegrindingforcesandroughnessofthegroundsurfacewereindependentof thehardnessofworkpiecesbutdependentonthestructure. (2)Thegrindingforcesandroughnessofthegroundsurfaceshowthemaximum valueintheglobularpearlitestructureandtheminimumvalueinthelowerbainite structure. (3)Thedepthofthegroundsurfacelayerreachesthemaximumvaluemthe martensitestructureandtheminimumvalUeinthelowerbainitestructure. KeyWords:GTindability・HeatTYeatment,LowerBainite・GlobularPearlite,AIC 比較した結果接線方向においては,焼入れ鋼が軟鋼 より低いことを指摘し,これを切りくずの形状変化よ り説明している。 ところで、一般に硬さは,複合組織の硬さの平均値 としてとらえられるのごむしろ熱処理による目的組 織例えlユパーライト,ベイナイト,マルテンサイ ト,ソルパイト,トルースタイトなどと直按結びつけ て,被研胤雌をilWi価する方がよ')熱JMp理のM`轍lを適確 に把握できるものと考えられる。 そこで、本研究においては,金属組織学的立場より JISS50Cを用いて,被削材の金属組織を変化させたと きに,鋼の被研削性がどのように変化するか検討を行 った。 1.緒言 鋼の被研削性は,熱処理組織によって大きく左右さ れる。 従>|亀被研削性に対する熱処理の影響を評価すると きに,被削材の硬さをパラメータとして整理する例が 多く見られる。例えば}M、C、Shawら(''はけ組織や 、、i[の異なる鋼材の研削実験において,硬度や組織は 研削1113抗には全く繍辮しなかったと報告している。ま た,佐久間ら(2)の単一切れ刃による研削実験におい ては‘研削tlE杭は,研削速庭被削材の炭紫量及び熱 伝導率により定まるとしている。 さらに,中山ら(3〕は,焼入れ鋼と軟鋼の研削抵抗を 受付:1983年10月31日 ロメ .、大阪大学工学部機械工学科鋼の被研削性に及ぼす熱処理の影騨:稿本・糸村・平敷・長行川 12 TablelChemicalcompositionofmateria] 2.実験装置及び方法 供鋳イ料は,JISS50Cを用い,その化学成分を Tab]elに示す。熱処理条件をTable2に示す。 記号のMは焼入れ処理,Tは低MajilA戻し,Sは高温焼 戻し,UBは高溢腫iH3変態典lU圏,LBは低i赴恒IAB変態 処趣‘Pな焼なまし処理,GPは完全球状化焼なま処 理を行った.次に研削条件をTable3に示す。 S50C
o700pO9
Tab]e2Heattreatingconditions Tab】e3Grindingconditions MateriaIChemicalcomposition(ツb)
C Si Mn P S S50C 0.5 0260.701
00090013
Structure
HeattrSatingcondition
Hv
Martensite
Troostite
Sorbiie
U、Bainite
LBainite
PearIite
GPearlite
900℃xO5h`WQ
900℃xO5h`WQ4PO℃xlh`AC
900℃xO5h,WQj55CrCX1hJAC
90CrCxO5h,45CfCxO、5hsB』AC
900℃x05h,30CFCx0.5hSBJWQ
90(FCxO5h,FC
900FCXO、5MVQ70CfCx3h`AC
873
444
348
282
429
219
196
M
T
S
UB
LB
P
GP
CIassificanions
Condition
Sizeofwork
pieceWheeIspeed
Workspeed
Depthofcut
Dressing
GrindingfIuid
Grindingmethod
GrainofWheel
GradeofWhee[
GrainsizeofWheeI
StructureofWheel
BondofWheel
SizeofWheel
GrindingMachine
10xlOx50mmj5xlOxlOmm
1933mノmin
6mノmin10-50
ノum10/umx2
no 006m/min
PIungeGrinding
WA L60
、 Vd180mmxd31.75mmxl2mm
OkamotoPFG-450C
琉球大学工学部紀要第2得,198坪 13 研削抵抗のiⅢl定は,八角形弾性リングにひずみゲー ジを貼り付け,接線及び法線方向の研削抵抗の変化を ゲージの弾性ひずみの変化として動力計でソ検出し,電 磁オシログラフに記録し算出した。 仕上面あらさは,小坂触金徴あらき計を用い,研削 方向に対し直角方向に求めた。同時に,加工変質厨の 硬度分?イ1Jも研削表耐塾ら深さ方向にマイクロビッカー ス、【度計によ')求め比較検討した。 3.実験結果と考察 本実験で得られた金属組織.マルテンサイト(M), トルースタイト(Tハソルパイト(S),上部ベイナイ ト(UB),下部ベイナイト(LB),層状パーライト(P), 球状'←ライト<GP)をPhoto、1に示す。 次に,研削抵抗と被削材の硬度の関係をFig.1に 示す.接縦法線方向の研削抵抗は、いずれも同様の 1 1
(ヱ)こ《十匹・のどoLmE℃仁一』①
:Iiliill1Iiiiiiilll
DnhO【 DU0ZYDmCMicroVickersHardnessOHv
Filg_lRelationbetweengrindingfoにeandmicrovicke帽hardnessofworkpieces
lWilイリを示し,法線方向においては,接線方向と比較しると,硬度差がiIiウ700Hvあるにもかかわらず,研削
て50%穐高い値を示す。研削抵抗と被削材の硬度との抵抗においては,接線,法線方向ともほとんど差異が
関係をみると,′←ライト組織においては,層状,球ない。以上のことより,被削材の硬度とmH3l抵抗との
状のいずれもピッカース硬度約200Hvであるに6か問には,一義的な対・応関係は見出せない。
かわらず,研削抵抗は球状力靴0%程高く著しい差異をそこで;被削材の金属組織の立場より研削抵抗を蟹
示す。また層状'←ライトとマルテンサイトを比較す理した結果をFig.2に示す。接線方向において,球
10
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80
70
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マ ーfii球大学工Aih識己要第27号,1984年 15
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状パーライトが踊駄:己下部ベイナイトが]iIMI、となっており,法線方向においても同様な傾向となっている。
次に,仕上耐あらさについて検討を行った。その膿
Jilpm〕lilX粒切れ刃はランダムな分布状態を呈している ため,同一表面状態の砥石による切削条件を設定する 目的でFig.3に示すように7個の工作物を同時に研 削する方法を用いた。Fig.4に触針式あらさ計によ るiMII定例を示す力、あらさ曲線は非常に良く類似した プロフィールを示していることがわかる. (Z)シ」Q二」①2。」⑦直一℃仁一』①小。|GPlUB|『|&
T Fig2Comparisonofgrindingforcewith respecttothernicrostructuresof Fig.3Grindingmethodofgroundsalface workpieces roughness幽l
GIobula「Pearlite-w~……-V~、~ww~wV…僧
P圏rIiIe~-1hWr'1-トー……~'診、A卿v1w、~Y…
UpperBainile…(ハノーヘーヅ、~……~vRw--~湾ww,.…ヘY、、ノー
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‘・トムI Mar1enSiIew--w~ハw…Ⅵ…~M ̄
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Fig.4ProfuesofgroundsurfaceFig.5に被削材のliiIi度と研削抵抗および仕上iriあらさの関係を示す。仕上面あらさは,研削衰面の凹凸
鋼の被研肖雌に及ぼす熱ju鰹の影響:福本・糸村・平蝋・長谷川 16 となっている。 次に,加工変質屑麺鍍分布をFig.7(a)(b)(c)に示 すb図中のプロットはilll定(直の平均|iiiであI),これをも とにAIC法(AkaikeInformationa]Criterion)い’ を用し、近似式を決定した。 すなわち,多項式近似で y=αO+α】工【+a2r2+………+ZJnrn 工:研削表面からの深さ 〃:マイクロピッカース硬度 と仮定し,次数を1~10次の範囲で各AIC値を求め, ji麺近似式を決定した。例えば,パーライトの場合 Fig.8に示す次数とAICの関係が得られ,2次の (乙匠.8Bu22b (一とユ)司信区 MicroVickers由rdnessqHv Fig`5Grindingfo“eandRmaxversus microvickershardnessofworkpieces で決定されるため,法線方向の研削抵抗のみに左右ざ 札研削抵抗が大きいものは,塑性変形も大きく,仕 上面あらさもiii犬している。Fig.6は,仕上面あらさ へ E ユ ■■
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、【Ⅱ刀、 9。凸【mHX DqpIhIr創祠GrmndSurf“●(PYm Fjg7(a)Hardnessdistributionintheground surfacelayer韮
AIC値が蛾'j、であることから,2次の近似式が決定 さ札Fig.7(b)に示す2次の多項式近似曲線が得らオし た。他の組織i;イも同様な方法で近似曲線を決定した。 Fig.7(a)(b)(c)の結果より加工硬化している組織は '←ライト,球状'←ライト,_上部ベイナイトであI), 球状パーライトにおいては雄地の硬さより約55%も硬 化している。それに対し,マルテンサイトは雑地より 50%も軟化し,かつ加工変質liiの深さも30叩、と肢 も大きい。トルースタイトとソルバイトもわずかにjlll エ軟化しており,下部ベイナイトにおいては,jll工変 質層の深さは極めて小さい。PGPUB-LBMST
Fig.6CompaTisonofroughnessofground
surfacewithrespecttothemicrostruc‐ turesofworkpiecesを各組織別に勘9浬したものでb法線方向の研削抵抗の
段も高い球状バーライトが6.3坪mと錘も粗く,研削
抵抗の最も低い下部ベイナイトが4.0浜、と最も良好
90 80 70 60 50 40 30 0 7 6 5 4 200300AOO500600700800900'
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17 シエ.射の写で』砲工m」ロー筥シロ』u一三 DeplhfrumGmund劃「I…<}」、) 3 2 2 シエ.開四こつ』困工い』ローU-ン。』C一三 DppthfromGroundSurfac●(岬) 400 Sorbite シエ.由凹①臣で』■エ⑪』のエ。』ン◎3一三 ◎ C 。 350 。 。 0 。 。 0 。 ◎0 0 300 0 0 100200300400 DcpthfromGroImd5urfaCO(P、) 500 Fig.7(b)HaTdnessdistributioninthegroundsurfacelayeT綱の被研削性に及ぼす黙処理の影響:福本・糸村・平敷・長谷川 18 シエ.、圃恒つ』⑩エ⑰」受。』シ◎』⑨』二 DGplhf面ThGrindmgSlrfaCe(l」、) コエ.剛ロロロ』、エ喝』ロエu声ロ』Ulz DeplhfromGroundSurIace<pm) 凸 4 3 3 シエ。②8■ご』⑤エ2S可声。B』堂 玖幻 DPDlhIrDmGrDwnf
Fig.7(c)Hardhessdistributionintheg「oundsarfacelayer
500 45C 40C 0 u〔xJZpU3DO400500 。 0 。 00 。 。 CO。 。 。。 。 ◎ ◎ L・Bainite琉球大学工学部紀要