秋田大学工学資源学部研究報告,第24号,2003年10月
論 文
周期的な凹凸を設 けた流路における流れの 安定性 と熟流動特性
足立 高弘*・長谷川 省悟*
StabilityandHeatandFluidFlowCharacteristicsofFlowinChannelswith PeriodicallyGroovedParts
TakahiroADACHIF,ShougoHASEGAWA*
Abstract
Stability,andheatandauidflOw characteristicsofaow in periodicallygroovedchannelareinvestigated byusingfinitedifferencemethodandflow visuali2;ation.The丘ow andtemperaturefieldsareassumedtobe twO‑dimensionalandfullydevelopedandthewalltemperatureiskepttobeconstant.Steadystatesolution ofthe丘ow isobtainedforrelativelysmallReynoldsnumber,whereasitbecomesuns表andself‑sustained oscillatoryoneatthecriticalReynoldsnumber.Thecritical Reynoldsnumbersarenumericallyobtainedfor threeperiodicityconditions(m ‑ 1,2and3)・Itisfoun dthatthespatialperiodofsteady凸owtakesthesame oneofthechannelperiod,whiletheoneofunsteady血owisvarieddependingontheperiodicityconditions,and thecriticalReynoldsnumberisglVenbym ‑2whichistwicelargerthanchannelperiod.Thesephenomena areconfirmedinexperimentswithnowvisualization.Moreover,pressuredropandheattransfercharacteristics of且owbeforeandafterthebifurcationarenumericallyinvestigated.
1.緒言
石油を中心 とした化石燃料に代わる安全でク リーンか つ安定 した新エネルギーを開発す ることが人類 に とって 急務である.そのよ うな新エネルギー として,海の持っ 熱エネルギーの利用 を 目的 とした海洋温度差発電や地熱 を利用 した地熱発電お よび温泉水発電,有機物のエネル ギーを利用す るバイオマス発電な どの低温度差利用発電 がある.これ らの発電 システムでは利用す る温度差 レベ ルが小さいため,熱交換器の規模は膨大なもの とな り,栄 電コス トに直接関係する.そのため,熱交換器には,省エ ネルギー,省 スペース,低騒音な どといった特別な配慮 や工夫が必要 となる.熱交換器の性能が新エネルギー開 発の成否の鍵 を握 っていると言って も過言ではない.低 温度差利用発電では,小型 ・軽量で伝熱性能の高い熱交 換器 として,プ レー ト式の蒸発器 と凝縮器が多 くの場合 に用い られている.そ こで,本研究ではプ レー ト式熱交 換器に着 目し,伝熱促進法に関す る研究を行 う.
プ レー ト式熱 交換器 の性能 を改善す るために,これ までに多 くの研究が行 われ て きた.代表的な もの とし て,平行平板 間流路伝熱 面の片側 あるいは両側 に周期 的に矩形 (1)〜(8)や,三角形(9)〜(ll),台形(12)の凹凸 を設 け,断面形状 を流れ 方向に周期的に変化 させた り, フィン(13)や 円筒型 の ロッ ド(14)を配置 した り,それ らを複数列(15)にわた り配置 した流路 についての熱流 2003年7月22日受理
*秋 田大学 工学 資源 学部機 械 工学 札 DepartmentofMechani‑ Cal Engineering,FacultyofEngineeringandResourceSci‑ ence,AkitaUniversity.
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動特性 に関す る研究がある. これ らの流路では,熱伝達 は平行平板間流路の場合 に比べて3倍 か ら4倍促進 され る場合があるが,圧力損失 もそれ以上に増加す る場合が 多い.
上に述べたよ うな流路における熱流動特性 を数値的に 求める場合,その多 くは流路要素 を単一 もしくは,2つ 組み合わせて行われている.同一の流路要素を組み合わ せた周期流路 を扱 う場合 には(8),流路要素1つ分の計 算では流れ を表現す るのに不十分であるため,流路要素 2つ分 を計算す る必要性 が示 されてい る.一方, これま で流路要素が3つ以上についての報告はな く,流れのパ ターンと計算に必要 とされ る流路要素数 との関係 は明 ら かでない.
そこで,本研究ではプ レー ト式熱交換器 の簡単なモデ ル と.して,流れ方向に直角に周期的な凹凸を設 けた平板 間流れ を取 り扱 う.上下対称の流路要素を3つ組み合 わ せた場合の流路について取 り扱い,流路要素を単一で用 いた場合お よび2つ組み合わせた場合 と比較 し,流れの モー ドと振動流が発生す る臨界 レイ ノル ズ数 との関係 を 明 らかにす る.それぞれのモー ドにお ける流れ場 と温度 場の状態を同時に扱い,それ らを数値計算によ り2次元的 に求める.また,振動流が発生す る前後での圧力損失 と 熱伝達が どのよ うに変化す るか調べ る. さらに,実験 に よって流れの可視化を行い,流れの状態が2次元定常流か ら2次元振動流‑ と遷移す ることを確認 し,数値計算 と の比較を行 う.
2.支配方程式 と数値計算法 2.1支配方程式
図1に,幅2h'の平行平板の壁面に周期的な凹凸を設 けた流路を示す.図1(b)は図1(a)のA部を取 り出 したも ので,流路を構成す る流路要素である・座標軸は図1(b)
28 足立高弘 ・長谷川省悟
に示す よ うに流れ方向にx*軸 を とり,それ に直角 にy*
軸 を とる.流路要素の凹凸形状 を決 める無次元パ ラメー タとして,流路要素の周期 L,凹面の幅lお よび平行平 板の中心線か ら上下凹面 までの高 さ aを,代表長 さをh*
として次式で定義す る.
L‑L*/h*,i‑l*/h*,a‑a*/h*.
U,Tl' ㌔ 「
∋ 二 二 一 ・一‑
(a)平行平板 に周期的に凹凸を設 けた流路
・ V *
LW
S
*完
工L L
P *
#
X℃ 「 「
L i**
'Jl
(b)流路要素 (Aの拡大部) 図 1 流路形状 と座標軸
ここで,アスタ リスク *の付いた物理量は次元 を有す る ことを意味す る. この とき,α‑ 1な らば平行平板 間流 路である.本研 究ではα=2とし,凹面を有す る平行平 板間流路 について数値計算 を行 う.
流れは 2次元非圧縮粘性 流 とす る.代表量 として,辛 行平板の中心線 か ら平板 までの幅h*,速度U*‑ 喜UL
(USとは流路幅2h*の位置 における流路の平均流速), さ らに壁面温度T;お よび流路流入部での流体の温度T:を 用いて次式の よ うに物理量の無次元化 を行 う.
x* t*U*
: iiN=‑1=i̲一 二三h' '二
LLJ*h* I 4 )* m T* ‑ Tl
軌 iiiil 4)‑云:÷二,T‑
い 、 I tT'/I、‥ r:‑T,;. (2)
氏 (2)を用いると,基礎方程式 となる渦度輸送方程式,ポ ア ソン方程式お よびエネル ギー方程式は,渦度LJ(I,y,i)
と流れ関数*(x,y,i)お よび温度T(x,y,i)を用いて無次 元形で次の よ うになる.
覧 + 窒 冨 諸 芸 去 V2W, (3) LJ‑ ‑∇2少, (4) 芸 + 芸 冨 一 芸 芸 孟 ∇2T・ (5)
ここで,浮力の影響は無視 した・式(3),(5)に現れ る無 次元数は, レイ ノルズ数Reお よびプ ラン トル数Prであ
り次式で定義 され る.
Re=
筈 ,prニー
レ*
rt+ (6) ここで,i/*,K*はそれぞれ,動粘性係数お よび熱拡散係 数である・また,2次元場 にお ける流速 (u,V‖ま,流れ 関数 を用いて
u ‑蛋 ,V‑一芸 (7)
と表 され る・流路内における圧力分布 は,速度u‑(u,t,) を用いて,次のナ ビエ 。ス トー クス方程式 を解 くことに よ り求 め られ る.
・p‑ 一芸 1 u・∇)u・ 孟 V2u・ (8) 壁面においては,速度はゼ ロで温度 は‑定 とす る. さ らに,流路内流量は一定である とす る. この場合,流路 内の流量は4/3となる. これ らの仮定を用いると,境界 条件 は下方壁面においては
恒 O, u‑冨 ‑0, V ‑慧 ‑0,T‑0, (9) 上方壁面においては
恒 芸 , u‑壁 ‑0∂y , i,‑ ‑壁 ‑0∂ご ,T‑0 (10) となる.
流路は十分長 く,その間に凹凸が多数 ある とす る. こ のよ うな条件 の場合 には,流れ場お よび温度場の助走区 間は短 く,凹凸を3個か4個通過す ると,凹凸の間隔 と 同 じ周期 を持 った十分発達 した状態 に達す ることが実験
(10),(ll)によ り報告 されている.本研 究では,図1(b)に 示 され る流路要素数個の流入部お よび流出部 において周 期境界条件が成 り立っ もの とし,
4,(I+mL,y,i)‑*(I,y,i), (ll) LJ(I+mL,y,i)‑LJ(x,y,i) (12) とする.ここで,m は任意の整数である.本研究では m‑
1,2お よび3とし数値計算 を行 う.
温度場について も十分発達 した場合 を考 える.その場 合 には,0‑(T‑Tw)/(Tb‑Tw)で定義 され る温度場 が,凹凸の間隔 と同 じ周期で流れ方向に繰 り返 され るこ とが示 されている, したがって,流路要素数個の流入部 と流出部で次式が成 り立つ.
T(x+mL,y,i)‑Tw T(x,y,i)‑Tw
Tb(x+mL)‑Tw Tb(I)‑Tw (13) ここで,Tb‑77b(I)は混合 平均温度 で,次式 で定義 さ れ る.
Tb f回Tdy
I困dy (14) 圧力の境界条件 は,計算対象 とす る流路入 口の中心点 でp‑0とす る.
周期的な凸凹を設けた流路 における流れの安定性 と熟流動特性
2.2数値計算法
数値計算は,有限差分法を用いて行 う.渦度輸送方程式 を時間微分項に 2次のアダムス ・バ ッシュフォース法,移 流項 に2次精度,粘性項に 4次精度の中心差分 を用いて 差分化す る.また,角部における渦度は隣 り合 う壁面上の 渦度の値か ら3次のラグランジュ補間を用いて内挿す る.
ポア ソン方程式に対 しては4次精度の中心差分 を用いて 差分化す る.ポア ソン方程式の解法には,逐次過緩和法 (SOR法)を用い,加速係数 亡には亡‑1・5を採用する・ま た,SOR法における収束判定条件は各格子における流れ 関数の最大残差が10‑5以下の ときに収束 したもの とみな す.エネルギー方程式に対 しては,時間微分項に 2次のア ダムス ・バ ッシュフォース法,移流項に3次の風上差分払 および粘性項には 4次の中心差分を用いて離散化す る.初 期条件は,i‑0においてゆ‑W‑0,T‑0.5とする.ま た,時間刻みは △t‑0.0005空間刻みは△x‑△y‑0.05 として計算 を行 う.
数値計算 で得 られ る流れ場お よび温度場 を特徴づ ける 代表量 として, ここでは図1(b)に示 され る点P(I,y)‑
(L/2,0)にお ける y方向の速度 Vお よび 0 を用いる・V お よび 0 が連続す る時間ステ ップに対 して,その相対残 差が107以下 となった とき,流れ場は定常であると判断 し計算 を終 了す る. Vお よび 0 が時間的に周期変動 して いる場合には,隣 り合 う最大振幅の相対残差が104以下 となった とき十分周期的であると判断 し計算を終了す る.
3.実験方法
医 書 ≡頭
(1)凹凸 部 上板 (2)凹凸 部 下板 (3)底 上げ部 (4)テストセクション本体 (5)導入 部
(6)排 也部
図2 実験装置概略
本研究では流れの可視化実験 を行い,数値解析で得 ら れた流れ場 との比較 を行 う.実験で用い る流路は,2次 元流路の仮定が成 り立つのに十分な深 さとして 120㍍ の 深 さをもつ流路 とす る.作動流体 として水 を用いる.疏 れは,図 2の (5)導入部か ら流入す る.そ して,(1)凹 凸部上板お よび (2)凹凸部下板で構成 され るテス トセ クシ ョンを通過 し,(6)排 出部 を経て水槽 に戻 り循環す る.テス トセ クシ ョンは,代表長 さを h*‑3【mm]とし, 流路要素の周期L' ‑ 24【mm],凹面の幅l*‑ 12【mm], 平行平板 の中心線 か ら上下凹面までの高 さα*‑ 6【mm】
とした流路要素が15個組み合 された流路である.流れ の可視化 には,透明アク リル流路にアル ミ粉 を注入 して 行 う.可視化用ス リッ ト光源 をテス トセ クシ ョンを横切
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る方向‑,(1)凹凸部上板 における 60㍍ の深 さに相 当す る位置で照射す る.撮影 は十分発達 した流れ を撮 るため,
(4)テス トセ クシ ョン本体側方 よ り,・テス トセ クシ ョン 出 口付近の任意の 2流路要素にて行 う.
4.計算結果
本研究では流路要素の周期L‑8,凹面の幅l‑ 4,平 行平板の中心線か ら上下凹面までの高 さa‑ 2,Pr‑ 7
(水) として計算を行 う.流れの周期条件式(ll),(12)と 温度の周期条件式 (13)のmを 1,2お よび 3として流れ 場の状態,温度場の状態,臨界 レイ ノル ズ数,圧力損失 お よび熱伝達 を求める.
4.1流れの遷移 4.1.1定常流
レイ ノル ズ数が相対的に小 さい場合 には,流れ は定常 流 となる.図3にRe‑ 50の場合 の定常状態 の流線 (4,
‑ const.)を左側 に,等温線 (T‑const.)を右側 に,m ‑ 1,2お よび3の場合 についてそれぞれ示す.流れ は十分 発達 してお り,流れの周期条件 m の値 によらず,流路 と 同 じ周期Lをもつ.流れ は流路の中心線 に関 して上下対 称であ り,上下の溝部には循環渦が存在す る.凹面上流 側 に循環渦が見 られ,主流が凹面下流側 で凹面に進入す る.図 3右側 に示 され る等温線 では,壁面に沿って発達 した温度境界層が,凹面で一度打ち切 られ ,その後 また 新たに形成 され る過程が見 られ る.溝 部では,等温線 が 凹面内部 にまで広が りを見せ る.そのため,温度分布 の 変化は拡散効果が支配的 となる.
(a)m‑ 1
V・r‑、 、....▲盛1 、 II,・AJ ・‑ 十二r:、
(b) m ‑ 2
(C)m ‑3
図 3 流れ場 (左)お よび温度場 (右),Re=50 次に,Re=200の定常状態の流線お よび等温線 を図4 の左側お よび右側 に,m‑ 1,2お よび3の場合 について それぞれ示す. ここで も,月e‑ 50の場合 と同様 に,疏 れは m の値によらず周期Lをもち,中心線 に関 して上下 対称 とな り,凹面には循環渦が存在す る.Re=200の場 合 には,Re‑ 50の場合 と異な り,主流が凹面に進入す ることな く通過 し,単純 な平板間流れ の速度分布 と同 じ よ うに流線 は平行流に近づ く.溝部では,凹面の循環渦 が大きく成長 し,凹面のすべてを占め るよ うになる.そ れ に伴い,循環の中心が凹面下流側 に移動す る.図4右 側の等温線の分布では,溝部 にお ける等温線 は,凹面内 部にわずかに広が るだけである. したがって,凹面内部 には循環渦が存在す るに もかかわ らず,主流の温度が凹
30 足立高弘 ・長谷川省悟
面に十分移流 され ないた め,Re‑ 200の場合 には,拡散 効果 よ りも対流効果 が支配的 であ るこ とがわか る.
図3お よび図4よ り,定常流では流れ の周期条件mの 値 に よらず,各 々の流路 要素 にお け る流線 と等温線 は同 山で ある. したが って,流れ の周期 は流路周期 と同 じL
とな る.
(il)TIL・ 一一i
({・)・.lHトニ:・'3
図4 流れ場 (左 )お よび温度場 (右),Re‑ 200 4.1.2振動流
0.0004
0 . 0 0 0 3 0 . 0 0 0 2 0 . 0 0 0 1 0
>
‑ ‑ 0 0 . . 0 0 0 0 0 0 2 1
‑0
. 0 0 0 3
‑0.
0 0 0 4
‑0.0005
‑0.0006
2024
0 50100150200250300
3
50400450500t (a)Re‑ 200
050100150200250300350400450500
才
(b)Re‑ 400
図5 速度 γの時 間変化 ,m‑ 1
一般 に, レイ ノル ズ数が さらに大 き くな る と,定常流 は不安 定 とな り分岐が生 じて振動流 にな る. この定常流 か ら振動流‑遷移す る ときの レイ ノル ズ数 を臨界 レイ ノ ル ズ数Recと呼ぶ .
図5(a)にm‑ 1,月e‑ 200の場合 について,図1の点 P(I,y)‑(L/2,0)にお ける y方 向の速度 Vの時間変化 を 示す.Re‑ 200では,時間の経過 とともに速度 は一定値 に収束 し,流れは定常 となる・一方,図5(b)のEE‑ 400 では,速度 7日ま十分時 間が経過す る と,速度変動 の最大 値 と最小値 の間 を一定の振幅 を保 ちつつ周期的 に変動 し, 流れ が振動流 にな るこ とが分 か る. したが って,m =1 の場合 には,定常流 が振 動流 に分 岐す る臨界点 Recは, 200<Re。<400の範 囲に存在す る こ とがわか る.
950 960 970 980 990 1000 t
(a)m‑ 2,Re‑ 230 0.2
0.15 0.1
> 0.005
‑0.05
‑0.1
950 960 970 980 990 1000 t
(b)m‑ 3,Re‑ 240 図 6 速度 γの時 間変化
次 に,m ‑2,m ‑3の場合 の γの時 間変化 につ い て示す・点P(I,y)‑ (L/2,0)と1流路周期 お よび2流 路周 期 はなれ た点 をそれ ぞれ 点P'(I,y)‑ (L/2+L,0) ,点P"(I,y)‑(L/2+2L,0)とす る・図6(a)にm‑2, Re=230の場合の点Pと点P'にお ける Vの時間変化 を 示す. また,図6(b)にm‑ 3,Re‑ 240の場合 の点P
と点P'お よび点P"にお け る Vの時 間変化 を示す . 図6(a)に示す よ うにm ‑ 2の場合 は,点Pと点P'で は Vの位相 が半周期ずれ てい るた め,流れ の周期 が2L
となってい ることがわか る.す なわ ち,流路要素2個毎 に流れ の状態が周期的 に繰 り返 され る・また,図6(b)に 示す よ うにm ‑3の場合 には,点Pと点P'お よび点P"
周期 的 な凸 凹 を設 けた流路 にお け る流 れの安 定性 と熟流動特性
では γの位相が1/3周期ずつずれているので,流れの周 期は3L となる. したがって,流路要素3個毎に流れの状 態が周期的に繰 り返 され る.
このことか ら振動流では,mの値 に応 じて流れの周期 が異なるため,それぞれの周期に応 じた流れのパ ター ン や熱流動特性 が得 られ ることが考 えられ る.
速度変動の振幅 とレイ ノル ズ数 との関係か ら臨界 レイ ノルズ数Recを求めることができる.図7にそれぞれの 流れの周期 に対す る速度変動の 自乗A‑匝一司2maxを レ イ ノルズ数 に対 して示す. ここで, 否は速度の時間平均 値である.流れが定常流の場合にはA‑0となるが,流れ が振動を始めるとA≠0となるので,A‑0か らA≠0
となる点が臨界点である.臨界点近傍 で
A〜(Re‑Rec) (15) なる関係が成 り立つ とき,定常流か ら振動流‑の分岐は ホ ップ分岐であることが知 られ ている(16).図7に,臨 界点近傍のAを最小二乗法で近似 した ものを一点鎖線で 示す.臨界点近傍 では式(15)の関係 が成 り立ってお り, 定常流か ら振動流‑の分岐 はホ ップ分岐であることがわ かる.
それぞれ の流れ の周期 m に対す る臨界 レイ ノル ズ数
Recと振動数 0 を表1に示す.表 1よ りm‑2における 臨界 レイ ノルズ数が最 も低 くなっている.このことは,罪 定常流にお ける m‑ 1,2お よび3の3つの不安定モー ドの うち,定常流において安定モー ドであるm‑1か ら, 非定常流にお ける安定モー ド‑の遷移 は臨界 レイ ノル ズ 数が最 も低いm‑2の場合 であることを示 している.
表 1 臨界 レイ ノルズ数 Recと振動数 0お よび流れ の周期 m
1 284 0.1123 2 225 0.0749 3 233 0.0633
220240260280300320340360380
Re
図7 速度変動の 自乗
振動流における流れのパターンを次に示す.図8にm = 1にお ける臨界 レイ ノル ズ よ りわずかに大きな値月e‑
290の場合 にお ける流線 の瞬間場 を左側 に,瞬間場か ら 平均場 を差 し引いた撹乱場 の流線 を右側 に,任意の時刻
(a)i‑t・o+0/GT
(b)i‑to+1/6T
31
(C)i‑to+2/6T
図8 流れのパ ター ンm‑ 1,Re‑290.瞬間場 (左 ), 撹乱場 (右)
「●.,・葦:‑,;TT :、雲こ軍票
(a)i‑to+0/6T
(b)i‑io+1/6T
(C)i‑to+2/6T
図9 流れのパ ター ンm‑2,月e‑230.瞬間場 (左), 撹乱場 (右)
i‑toか ら6分の1周期ずつ半周期 にわた り描 いた もの を示す.凹面内部では主流 に生 じた波 の影響で,凹面の 循環渦が溝内部で上流か ら下流に移動 し壁面 と衝突す る.
それ と同時に上流側 に新 しい渦が形成 され るとい う過程 を繰 り返す.ここで,循環渦は上下の溝 で中心線 に対称で はな く上方の凹面 と下方の凹面では,主流の波 の位相 が 逆であるために半周期 ご とに,上下の凹面で同 じ現象 が 起 こる.また,図8右側 の撹乱場の流線 図には1流路周 期 当た り1対の撹乱波が2個存在 し, これ らの撹乱波 は 時間の経過 とともに下流 に進行す る進行波の挙動 を示す
32 足立高弘 ・長谷川省悟
ことがわか る.なお ,撹 乱の流れ方 向‑の増幅お よび減 衰 に関す る挙動 は周期的 で,瞬間の流線場 と同 じ周期 を 持っ.
図9にm =2,Re=230にお ける流線 のパ ター ンを 示す.ここでは,流れの周期が流路の周期の 2倍で2Lと なってい るこ とがわか る.撹乱場 の流線 図には 2流路周 期 あた り1対の撹乱場 が3個存在す る.
また,図10にm=3,Re‑ 240にお ける流線 のパ ター ンを示す. ここでの流れ の周期 は3L となってお り,
3流路周期 あた り1対 の撹 乱場が4個存在す る.
(a)ま‑io+0/6T
(b)舌‑玩+i/6T
・t:I‑Ti.tII̲)/'li7‑
聞 及0 流れ のパ タ‑ ンriも‑3,Re‑240.瞬間場 (左 ), 撹乱場 (着き
(a)若二転+0/6T
(ら)若‑玩+i/6T
(C)ま‑io+2/6T
掬 ま1 瞬 間場 の流線(左),等温線 (右),m‑ 1, If(‑.=A̲)90
以上のことか ら,異なる周期 を持った非定常流の発生は, 撹乱場 のモー ドの違いに よるもので あることがわか る.
(a)舌‑io+0/6T
(b)i‑to+1/6T
(a)ま‑io+2/6T
図 12 瞬 間場 の流線 (左),等温線 (着 ), TTL‑2, ReI230
・
:,I),/ (I:1L()./Ei'J
(ち)ま‑io+1/6T
(C)i‑io+2/6T
図 13 瞬間場 の流線 (左 ),等 温線 (右),JTn‑3, Rc.=2LlO
次に,振動流にお ける温度場 について示す.ここで も, 臨界 レイ ノルズ数 よ りわずかに大 きな レイ ノル ズ数 に対
して,m‑ 1,2お よび3の場合 について瞬間場の流線 と 等温線 の分布 を任意の時刻t‑toか ら6分の1周期ずつ 図11,12,13に示す.左側 に流線 図 を,右側 に対応す る 等温線 を示す.図11,12,13の右側 の等温線図では,等
周期的な凸凹を設けた流路 における流れの安定性 と熟流動特性
温線が凹凸面内部 にまで広が りを見せ,2次渦の下流‑
の移動によって凹面下流端では等温線が密 になっている.
特に,凹凸面下流端 の角部 においては,定常流の場合 よ りも激 しく温度境界層の再形成が行われている様子が よ くわかる. したがって,2次渦の非定常運動が主流 と凹 凸面の熱交換 に著 しく寄与 していることがわか る.
4.2圧力損失 と熱伝達
流れの周期 m の違いによ り臨界 レイ ノルズ数が異なる ことがわか った.そのため,圧力損失お よび熱伝達特性 においても周期 m に応 じて,その値が変化す ることが予 想 され る.そ こで,それ らの変化 を調べ るため,圧力損 失△p,局所 ヌセル ト数Nuを次式で定義す る.
AP‑P# ‑pi‑Po・ (16) Nu 4h*
TL‑Tb'(芸 )‑ ,S‑一芸 (蛋 )‑,S・ (17) ここで,piお よびpoは周期流路入 口お よび出 口にお け る平均圧力である.また,一般座標系 として,βを周期流 路の入 口か ら凹凸 を有す る壁面に沿って とり,nをSに おいて壁面に垂直で流体側 が正になる向きに とる.した がって,(∂T/∂n)W ,S は,壁面に沿った位置 Sにお ける壁 面に垂直な方向の温度勾配である.流れが時間的に振動す る場合 には,上記 の物理量の時間平均値 を用い ることに す る.
周期的な凹凸を有す る流路の圧力損失△pと平行平板 間流路の圧力損失△ppとの比△p/△ppとレイ ノル ズ数 との関係 をm ‑1,2お よび3の場合について図14に示 す. ここで,平行平板間流路の圧力損失 は層流の場合 に は,平面ポアズイ耳流れ の速度分布 u‑ 1‑y2,V‑ 0 か ら△pp‑2L/Reとな る・ 図14に見 られ るよ うに,
Re<Recでは m‑1,2お よび3のいずれの場合におい て も圧力損失比は 1よ り小 さい.これは凹面の循環渦が ロー ラーの よ うな役割 を して,壁面 との摩擦損失が減少 す るため と考 え られ る.
1.25 1.2 1.15 1.1 1.05 1 0.95 0.9 0.85 0.8 0.75
50 100 150 200 250 300 350 400
Re
図14 圧力損失比
一方,Re>Recになると,圧力損失比の勾配は増加 し, それぞれの流れの周期mに応 じて異なる値 を示す.m=1 の場合には,Re竺400程度 までは,圧力損失比が1を越 えることはない.m‑ 2お よび 3においては, レイ ノル ズ数が臨界点 を越 えて300付近までは圧力損失比が1を
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越 えていないが, レイ ノル ズ数が300を越 えた辺 りでは 1を越 えるよ うになる.
次に,式(17)の局所ヌセル ト数を,流路1周期,2周期 お よび3周期 にわた り平均 した平均ヌセル ト数Num と, 十分発達 した平行平板 間流れ の平均 ヌセル ト数Nup‑ 7.54との比Num/Nupとレイ ノル ズ数 との関係 を m ‑ 1,2,お よび3の場合 について,上方面お よび下方面を平 均 した値 を図15に示す.図15に見 られ るよ うに,m ‑ 1,2お よび3のいずれの場合 において もRe<Recで,平 均ヌセル ト数の比は 1以下 とな り,熱伝 達が平行平板 間 流路の場合 よ りも減少す る.
しか し,Re>Recにおいて,流れ が振動流になる と 平均ヌセル ト数の比は急激 に増大 し始 め, レイ ノル ズ数 が増加す るに ともない 1を越 えるよ うになる.また,疏 れが定常流である100<Re<Recでは, レイ ノル ズ数 の増加 に ともない平均ヌセル ト数の比が減少す るとい う 現象が見 られ る.特 に,定常流か ら振動流‑ と分岐す る 直前で この傾 向が7線 く見 られ る. これ は,前節 で示 した よ うに, レイ ノルズ数が増加す るに したがって凹凸面内 部‑の温度 の拡散効果が小 さくなるた め凹凸面内部の壁 面に沿ったヌセル ト数が減少す るため と考 え られ る.
42つん00∠U4つ︼221111dnjUnN
50 100 150 200 250 300 350 400
Re
図15 平均ヌセル ト数の比Num/Nup 流れ が振動流の場合 に,平均 ヌセル ト数 が増加す る原 因を調べ るため,それぞれの流れの周期m について,臨 界 レイ ノルズ数 の前後 にお ける局所ヌセル ト数の分布 を 図16に示す.一点鎖線 と破線 を定常流 ,実線 を振動流 の場合 にお ける局所 ヌセル ト数 とす る.m=1につい て,Re‑50,200,380のそれぞれ の局所 ヌセル ト数 の分 布 を図16(a)に示す.Re‑ 50,200は,流れが定常流 の 場合で,凹面でヌセル ト数が減少 した後,平行平板間流 路のヌセル ト数Nup‑ 7・54の値 に漸近す る・そのため, 平均す ると平行平板間流路の場合 よ りも熱伝達が悪 くな
り,Nu,,JNupは1以下 となる.一方,Re‑ 380では, 流れ は振動流 となってお り,凹面内部 の 2次渦が凹面下 流端 に押 しつ け られ るために,等温線 が凹面下流の角部 (3‑ 8近傍)に集 中す ることにな り,局所 ヌセル ト数 は 他の場合 と比べて著 しく大 きな値 を とる.それ以外の平 板部分(0<β<2お よび8<β<10)で も大 きな値 を保 ちつつ再び凹面に到着す るために,凹面で局所 ヌセル ト 数の値が一時的に小 さくなるものの,平均的には平板 間 流路の場合 よ りも大きな値 とな りNum/Nupは 1よ りも 大き くなるのである. したがって, ここで も凹凸面内部
34 足立高弘 ・長谷川省悟
に存在す る 2次渦の非 定常運動が主流 と凹凸面の熱 交換 に著 しく寄与 してい る ことがわか る.
100
80
60
40
20
0
loo
80
60
40
20
0
0 2 4 6
∫
(a)m‑ 1
0 5 10 15 20
∫
(b)m ‑2
0 5 10 15 20
∫
(C)rTJL‑3
0つJ
25
図16 局所 ヌセル ト数
図16(b),(C)に示 され る,m ‑2お よび3の場合 につ いて もm =1の場合 と同様 の理 由に よ り,流れ が振動 流の場合 には角部お よび平板部分 で局所 ヌセル ト数 が上 昇す る. したが って,Nun/Nupの値 は 1よ りも大 き く なる.
圧力損失 の増加 率 に対す るヌセル ト数の増加率 を調べ ることは工学的 に重要 で ある.そ こで,rlを次式の よ う
に定義す る.
17=Nun/Nup
Ap/App (18) す なわ ち,7日まその値 が 1よ り大 きいほ ど平行平板 間流 路 に比べて熱伝達が増加 し,その増加 率が圧 力損失の増 加率 を上回 ることを示す.本研 究では,同一流路形状 に 対 して,異な る3つのモー ドに応 じた振動解 が得 られ て いる・そのため,それ ぞれ の流れ のモー ドに応 じた りの 挙動 を調べ ることは興味深 い.
図17に 上壁 面 と下壁 面 を平均 したrlと, レイ ノル ズ数Reとの関係 を示す.図17に示 され るよ うに, m =
1,2お よび3のいずれの場合 も,流れが定常流(Re<Rec)
の場合 には11<1とな るか ら,平行 平板 間流路 に対 し て伝熱性能が劣 るこ とがわか る. しか し,流れが振動流 (Re> Re。)になる と急激 に7日ま増加 し,Tl>1とな り それぞれの流れ のモー ドに応 じてその値 が変化す る.な お,平面ポアズイユ流の臨界点はRec‑5772なので,本 研究 にお ける レイ ノル ズ数 の範 囲では,平面ポアズイユ 流 を定常流 として扱 ってい ることに注意 を要す る.
2.2 2 1.8 1.6 gT 1.4 1.2 1 0.8 0.6
50 100 150 200 250 300 350 400 Re
図17 上壁 面 と下壁面 を平均 した効率r7 5.実験結果
前節 の数値計算では流れ場 と温度場の状態 を同時 に取 り扱 った.それ に対 して, ここでは熱移動 を伴わない流 れ の可視化 を行い,流れ場の状態 を実験的 に求 めること で,数値計算で得 られ た結果 との比較 を行 う.
5.1定常流
図18に定常流にお けるRe‑ 50,200の流れ のパ タ‑
ンを,流路要素1つ分お よび2つ分 について示す.左側 は可視化写真 を,右側 には数値計算 で得 られ た流線 を示 す.Re‑ 50お よび200のいずれ の場合 も,可視化 写真 と数値計算で得 られた流線 は良 く一致 している.また,疏 路要素2つ分について示 した場合(b),(d)か ら,左右 の 流路要素で流れのパ ター ンが同一で あ るため,定常流 に お ける流れ の周期 は流路の周期 と同 じ周期 をもつ ことが わか る.
5.2振動流
図19に振動流にお ける流路要素2つ分 の可視化写真 を 左側 に,数値計算で得 られ たRe‑ 230の流線 を右側 に, 任意の時刻t‑t。か ら6分の 1周期ずっ半周期 にわた り