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青年に影響を及ぼす人々とその意味

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(1)

茨城大学教育学部教育研究所紀要20号(1988)25 一 41 25

      (注)

青年に影響を及ぼす人々とその意味

安達喜美≠・菊池龍三郎騰板垣圭一w井上佳子轡大縄和代轡 大森 泉下黒沢綾子轡椙本達ぜ撃水野友秋轡横山正巳

唾 は じ め に

 日頃,青年たちはどのような人々と,どのような関係を結んでいるのだろうか。青年たちは,その自 我形成の過程でどのような人物からどのような影響を受けているのだろうか。そのことを明らかにする ためにわれわれは,いわゆる「意味ある他者」(Significant(油ers)に着目した。意味ある他者とは,

特に青少年が自我の形成に際して,影響を受けたと当の本人が考える人物を言うが,一般には両親教 師,友人などの身近かな人物を指すとされている。しかし意味ある他者とはいっても,それはどういう 意味 での影響なのか,限られた 意味 しか持たなくなっているのではないか。本稿では,青年た ちにとって他者が持つ 意味 を探ることと,意味構造の分析を行うことを目的としている。

 最初に本研究の手続きと経過について略述しておく。まず予備調査については,学生に自我の形成に 影響を与えたと思われる人物を3位まで挙げさせ,さらにそれがどんな影響なのか,その意味を具体的 に記入してもらい,それらを整理して予備調査表を作成し,調査を実施した。その結果についでは既に

       (1}

報告済みである。予備調査における意味ある他者(他者項目)を45項目に,与える影響の意味(意味項 目)を22項目に整理して本調査表(表1)を作成した。本調査は全国9地区の青年合計1,203名を対象 に実施した。その全体の結果についても駆報告済みであ£全体の結果のうち人物ごとの順位は表2:

の通りである。全体としてみると「両親」(「父」12.8%, 「母」4.5%),「学校時代の友人」(合計で 12.7%), 「恋人j(10.4%), 「職場の人」(全体で9.1%),「教師」(全体で7.4%)などが上位を占 める。 「父」「友人」「恋人」などに比べて「教師」の持つ意味は相対的に低いように見受けられる。

 われわれはさらに因子分析を行い,表3のような結果を得た。ここから4因子が抽出された。それぞ れに「人生示範因子」「宿り木因子」「虎の威因子」「道行き因子(あるいは共生,共通運命因子)j

と名付けた。これらに含まれる意味項目は表4に示されている。

 これら4因子のそれぞれについて,どんな他者項目が選択されているか,それはなぜなのか,どんな 意味があるかについて考察するのが本稿の目的である。

 *茨城大学教育学部教育心理学研究室  魑茨城大学教育学部教育学研究室

**・茨城大学教育学部教育学科

(注)本研究は昭和60年度マツダ財団助成研究「地域における青少年教育のシステム化に関する基礎的研究」の調    査結果の一部を使用した。

(2)

26 茨城大学教育学部教育研究所紀要20号(1988)

表1 本調査の調査霜紙

本謁査はH頃,皆さんがどのような人たちとお互いに影響し合っているかを矩るためのものです。御協力をお願いします。

 胃年問題研究会 菊池龍三郎,木村 濤一,安達喜美子 性:男 女  所屡:高校 大学 会社員 自営業 無職

 次にあげたある22項目について,

中に 記入して下さい。

そのような場合に,あなたが思い浮べる人を,右から選んで思い浮かぶ順に2名あげて,その番号を( )の

1234567890123456789         11111111圭−

20 Q1

22.

自分の将来について参考になる話を聞ける人……(L  ),(2.

      ) 悩みなどを相談できる人……(L  ),(2. )

自分を認めてもらいたい人……(1. ),(2. ) あんなふうになりたいと思う人……(L ).(2. ) その入から注意,忠告されるとこたえる……(ユ. )i(2. ) その人の前に出ると緊張してしまう……(1. ),(2. ) その人と召命を共にしたい……(1. ),(2. ) その人を知っていることが誇りだ……(1. )t(2. ) その人の言うことなら無条件にしたがえる……(1. ),(2. ) 一目おいている人……(1. ),(2. )

その人からどう思われているか気になる……(1. ),(2. ) 自分の弱味を知られたくない人……(1. ),(2, )   「 自分の生き方を変えるきっかけになった人……(1. ),(2. ) 尊敬する人……(1. )、(2. )

その人の力になりたい……(1. ),(2. ) その人をのり越えたい……(1. ),(2. ) その人に対しては嘘がつけない……(1. ),(2, ) その人を知っていることで自分が大きく見せられる……(1. ),

       (2. ) 何か困ったことがあるとき,「あの人だったらどうするだろうか」と思う人       一一一 (1. )  (2. ) 世闘を知るために,自分iC力を貸してほしい人……(2. ),(2, ) その人の男らしい(女らしい)ふるまいを見て,自分もそのようになりたいと  思う人……(1. ),(2. )

何か買うときなど,一緒に行って相談にのってほしい人

      ・一・一(1. ),(2. )

191114硲1921%2629313637認404344菊4647

父2.母3.祖父母4.姉5.兄6.弟7,妹8.夫や妻

父や母のきょうだい(おじ,おば) 10.近所の人 小学時代の教師  12.中学時代の教師 13.高校時代の教師 専門学校・短大・大学時代の教師 15.画幅教師

塾・予備校の教師 17.小。中学時代の友達 ユ8,高校時代の友達 専門学校・短大・大学時代の友達 20.学校の上級生・先戴 塾・予備校の時の友達 22.恋人 23.同じ趣味・遊びの仲闘 青少駕國体活動のリーダー 25.学生運動や労働組合運動の活動家 仕事上の同僚 27.仕事上の先躍 28.仕事上の上翔

アルバイト先の経営者や先輩 30.組織や組の先塑 政治家 32.作家 33.歌手 34.俳優 35.落語家

スポーツ選手

TVやラジオのパーソナリティ(司会者,タレントを含む)

知り合いの懸察官 39.知り合いの医者や看護婦

牧師 41,奉仕活動をしている人 ξ2.電話楊談の相談員の人 TVやラジオの人生相談の人

行きつけの飲み屋や喫茶店やスナックのママ・マスター ガソリンスタンドや自動車整備工場の人

その他( ) いない,わからない

御協力ありがとうございました。

表2 意味ある他者の順位 表3 因子行列

纈位 意味ある他者 顯位 意味ある他者

父………・…・・…12,8

1 而   親{母…・…・………・4.5 17.3 12 歌手 !.4

i4 おじ・おば 三.2

小。中心・・……2,6 15 スポーツ選手 三、1

2 学校時代の友人 高………5.董 ア・短・大……4.9 12.7

16 俳優 1.0

塾・予爾校……o,1 }7 近所の入 0.8

作家 0.8

3 恋人 10.4

知り含いの警察宮 0.8

上玉・一一一・・4.0

4 職 場 の 人 先輩……一一…3.3 9.互 20 アルバイト先の経営者・先羅 0.7

伺僚…一…・・…1.8 1  牧師 0.7

i

︼221

祖父母 0.6

⁝ i

小・・一  一・…LO 暴佳活動をしている人 0.6

中一……・…・一i,7

高………2.5 24 テレど・ラジオのパーソナリティー α5

5 教     師

専・短・大……1.8 7.姦

25 飲み麗・喫茶店・スナックの 0.4

家庭教踊………o.1 ママ。マスター

i 塾・予{藤校……0.3

1 26 知り合いの医煮・暦護婦 0.3

1 27

竃馬棚談の棚談員 α2

6 学校の上級生・先鐸乏 3.3

テレビ・ラジオの入生相談の人 0.2

7 趣味・遊びの伸間 3.2 ガソリンスタンドや霞動車整翻工場の

l

0.2

8 きょうだい 2.2

学生遼動・組合遼動の活動家 0.2

9 湾少年団体活動のリーダー L7 31 落語家 G.1

μ 政治家 目・7 その他 0.1

ll

縦織や組の先躍

H1

}わからない.いない }6.ヨ

蓋2 失や妻 王.4

く文くFACTOR.

 FACTOR   l

1 O,939 2 O.225 3 O.804 4 o.stg 5 O.882 6 O.169 7 O.057 8 O,242 9 O.BO6 10 O.835 11 e,e98 12 O.413 13 e,459 14 O,937 15 O.374 16 O.918 17 O.683 圭8 0.240 19 O.211 2e O.881 21 o.27Jr 22 O.151

LOADINGS(VAR!MAX ! OTA rlON/ 一  2    3

CLI66 O.12i e.930 e.112 0,320 e,r]3 一(}.099 O.556 0,283 . 0, oo9

−e,085 O,413 0,201 O.087 e.20g o.s7e e.e66 o.lo4 0,229 O.350 e,510 O.i56 0,702 O.104 0.327 o.30e

−O,069 O.126 0,396 O.103 0,2so e.20g O,298 e,049 0.244 O,875 0.880 {}.262

・e,27E O.25S e,398 O.409 0.781 O.e92

 4    5 0.on 一e,e47 C},]99 e.093.

e.355 一e.269

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{}.17g 一e,195 0.532 一e.104 0,055 一〇,224

{}.683 一〇.397 0.380 一e.262 0.453 一〇.158 e.tlg O.152 0.825 一〇.038

−o,ole u,oo3 0.630 e.047 0.120 一e,219 e.215 一e.e29 0,228 一〇.093

−e,020 一e.es7 0,s34 e.072

 6

e.138

{),066 0.04e O.5了l O.073 0.027

−o.e3g O.166 0.ges O.169 0.e17 0.e62 0,030 0,leo e.eog e,154 e.oi4 0,135 0,151 e,e4g O.728 0.034

 7

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e,oo2 e.es4 e,07s e,124 0.053

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−O.059 0.565 0.09ti o.021 0.062 e.e3s 一e,e3s O.092

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一【上035

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−O.063 0 H7 e.266 0,291

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−O.043 0.eo6 0.007 0.003 0.137 e,e41

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弓.り20 −0.015

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一〇.e2e o,eocs

表4抽出された咽銘とその鰍囎囎重岡鵬的)

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意i3。駿鱗てもら嘱オt百搬記載・緊綴躍。。、1、,.ら聯鵬綴

 味 15.その入から注意・忠1 たくない人     i

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目辱の人をの噸㌦.と虚威,、猷i2しら謝驚鍵;餐が嘱い

  2α 世1艮}を知るために臼 一緒に行って粥談1ζのヨ て,lll分もそのように}

   分に力を貸してほしい… ってほしい人    ! なりたいと思う人  l   t−AtttttttttttwwttttrLtt−tttttllwwttttttmmttttmtttr.=」ttunt..tttnvttitttttttttttt t.ttT.tnTr一....t;/.tt−ttttttttttLttttttttttttt.tT

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恋高大母小同︵人校学一・じ22 ︵の等a申趣︶⁝友の22学味L人友︶の・ 臥一入友遊 a︵入ぴ22︵の2仲 3ω 16 5

1

混6切︵人藍父恋仕

 意味項目箭号 他行項と対応する

 10%以彩︐の︑反応痢の 1父 (9、且5、17)

1恋人(7,且5、17)

尿やes.(7)

i

li

(3)

安達他:青年に影響を及ぼす人々とその意味 27

2 第三因子(人生示範因子)

 第1因子に含まれる7項目のそれぞれで挙げられた人物を男女別に比較をしてみる。

 「父」は男女共7項目,すべてにおいて1位に挙げられており,男子では「自分の将来について参考 になる話を聞ける人」 「尊敬する人」,女子でも「尊敬する人」が30%以上を占めている。この第ユ因子 は,その人を生き方のモデルにしたり目標にしたりする,人生示範型であるが,このような意味におい て,青年に影響を与える他者は,最も身近な第1生活圏である家庭における存在である「父」が選ばれ

ている。

 2位については,他者項目の順位に男女の差があるので,男女別に見ていくことにする。まず男子で は,2位に「仕事上の上司」3位に「仕事上の先輩」が挙げられており,職場内における影響が大きい。

 この両者は,家庭とは全く違った,第4生活圏から選ばれている。意味項目別に見ると,「仕事上の 先輩」については,5つの意味項目で,5%を越える出現率である。特に「自分の将来について参考に なる話を聞ける人」「一目おいている人」において高い。他方,「尊敬する人」では11位と低い。又,

「仕事上の上司」については,βつの意味項目で5%以上の出現率で見られており,「自分を認めても らいたい人」では10.4%と高い。これらのことから,職場における人間関係は,タテの関係らしいこと がわかる。 「仕事上の上司・先輩」は「その人から注意・忠告されるとこたえる」「一目おいている人」

ではあるが,必ずしも「尊敬する人」とは言えないようである。 「尊敬する」のは「父」である。次に 男子では「高校時代の教師」が第4位に挙げられている。教師については6つの他者項目があるが,そ の中で「高校時代の教師」が7つの意味項目全部において,最も高い出現率である。特に「自分の将来 について参考になる話を聞ける人jで高く,将来を決めるにあたって,高校教師の影響は大きいようで ある。第5位は「恋人」で,中でも「自分を認めてもらいたい人」においては10.4%と「父」に次ぐ高 い出現率である。又,目立ったものとして「世間を知るために自分に力を貸してほしい人」として「恋 人」が5位に挙げられており,意外な結果のように思う。ここで再び, 「父」に次いで,第1生活圏と いう,身近な他者を選んでいる。最も注目したいのは「人生廊廟」という,人生の目標・模範になる人 として,初めてヨコの人間関係である他者が出現したことである。6位以下では, 「高校時代の友達」

「学校の上級生・先輩」「大学等の友人」 「同じ趣味・遊びの仲間」 「青少年団体活動のリーダー」の 順に挙げられている。このうち5%を越える出現率を示すのは「自分を認めてもらいたい人」としての

「大学等の友人」である。又,11位に「母jが出ており, 「母」はどの意味項目においても。目立って 高い出現率はない。 「父」と同じに,第ユ生活圏の家庭に属する「母」であるが,青年期の男子におい では,物理的には最も身近に存在するにもかかわらず,人生示範という因子では,それほど意味ある他 者とはならないようである。この他,各意味項目で目立ったものを見ていくと,「一目おいている人」

で「政治家jが5位に, 「尊敬する人」では「スポーツ選手」が2位に,さらに「俳優」が4位に,「そ の人をのり越えたい」のは「政治家」で4位に挙げられている。これらの人々は,いわば,メディアを 通じて接点を持つ人達で,第5生活圏と名づけた生活圏の人々である。現代青年における,メディアの 意味の大きさを知ることができる。

 次に,女子について見ていくことにする。2位には「母」が出ており「父」の約半分の出現率である。

「母」は5つの意味項目で2位に挙げられており,女子では,同性である「母」の影響は大きいようで ある。特に「自分の将来について参考になる話を聞ける人」においては,1位の「父」とほぼ同じ出現 率である。第3位は「恋人」で, 「自分を認めてもらいたい人」では10%を越えている。以上,総和を

(4)

28 茨城大学教育学部教育研究所紀要20号(1988)

3位まで見てきたが,ここまでに出現した3つの他者項目は,全て第1生活圏から選ばれており,女子 は家庭などの身近に存在する他者を選んでいると言える。又, 「仕事上の上司」が「恋人」と同じ出現 率を示している。4位以下では「学校の上級生・先輩」 「大学等の友入」 「仕事上の先輩」 「高校時代 の友達」「大学等の教師」の順位になっていて,第2生活圏,第4生活圏から選ばれている。教師につ

いては「高校時代の教師」が男子では4位と高かったのに対して,女子はIO位で大きな差が見られる。

目立ったものでは「尊敬する人」で3位に「中学時代の教師」,4位に「高校時代の教師」が挙げられて おり,中高の教師については,両親の次に尊敬している。これに対して「大学等の教師」では「一目お いている人」において高く,教師についての位置づけの違いを見ることができる。さらに,各意味項目 に出てくる他者について見てみると,男子では「政治家」や「スポーツ選手」「俳優」なども,ある意 味項目では上位に出ていたが,女子では,こういつたメディアを通じて接する人々からは,ほとんど選 んでおらず,広い範囲からよりも,比較的身近な範囲の他者に集中しているようである。以上のことは 男女の意識空間,視野の違いを示していると言える。すなわち,こと一般的な解釈をすると,男子が,

広い意識空間で自分とはかけ離れたものを展望するのに対し,女子は,意識空間が狭く,身近な実現可 能なもので折り合う傾向を持っているためであると考えられる。

 次に,学生と社会人という社会的区分で比較してみる。

 学生では,7つの意味項目全部において「父」が1位を占め,他の人物と比較して突出している。こ れは,第1因子が「人生示範」という名で表わされるように,7項目が自分の人生において模範とした い事を示しているものであるが,自分の最も身近かな家庭において機能している「父」が選ばれている ことを意味している。青年の目は,まだ家庭にしか向いていないことなのだろうか。

 学生で「父」以外の意味ある他者について見ていくと,小・中・高等学校,又は現在の学校での友達 上級生や先輩,あるいは教師といった人物が現われている。これは,学生という立場から考えると,取 り巻く環境が学校であるので,当然考えられる結果である。友達については現在最も多く接触する機会 の多い「専門学校・短大・大学の友達」の項目の出現率が高くなっており,次いで「高校の友達」 「小

・中学時代の友達」という順で,その人物と接触の多くあった時期から現在までの時間の長さと,反比例 の関係があるようである。これは友達は,身近かであるほどその存在意義は強く意識されるからであろ

う。これに対し教師については,「高校時代の教師」が最も出現率が高くなっている。これは現在学生 という立場では,その学生となるまでの入生の中で高校の教師が進路決定と価値観の形成という点で大 きな影響を与えているからではないか。「父」に続き2位に位置するのが「学校の上級生・先輩」である。

これは,学校生活という環境を知り慣れるためには,友達よりは,上級生・先輩といったことで上級生

。先輩から話を聞く機会が多く,その申でss人生 端的に言えばas処世術suについての話もあり影響を 受けるからである。

 このような学生の結果に対して,社会人はどうかというと,社会人においても1位は「父」である。

やはり7つの意味項目全部において1位を占めている。しかし「認めてもらいたい人」という項目では,

「父」と「仕事上の上司」の出現率がほぼ同じになっている。社会人という立場では,家庭における父 に認められるより,上司に認められた万が仕事をしている社会的立場で,自分が認められたということ になるからであろう。「尊敬する人」での「父」の出現率を見ると,社会人が学生よりその値が高くな っている。これは,社会人となり父親の今までしてきた事を体験することで,改めて父の存在を認め直 したからではないか。

 「父」以外の人では, 「仕事上の上司」,「先輩」が2位3位に位置している。社会人が自分の人生の

(5)

難蔓︾態蝉酬韓瑛蝉鵡里濡髪電罵さ︒O幽︵一⑩︒︒c︒︶

bOI

第ユ因子(人生示範因子)

図1

70 30 50

20 10 15

0 5

佳事上の上司佳事上の先輩高校時代の教師恋入学校の上級生・先輩高校時代の友達大学等の友遠同じ趣味︒遊びの仲問蒜少年団体のリーダー組織や綴の先輩母・小学時代の友達おじ・おば大学等の教師中学時代の教師佳事上の同僚

スポーツ選手近所の人小・中時代の教師作家アルバイト先の経鴬者

塾予備校の教師祖父母

160 王80

70

30 50 20

10 15 0 5

恋人学校の上級生・先輩仕事上の上司大学等の友達佳事上の先蟹

高校時代の友達

大学等の教師

高校時代の教師

仕事上の同僚同じ趣味・遊びの仲閏中学時代の教師

お姉

近政ア夫組青祖兄ノ」、小 駈治ルやや少父 学学 の家バ妻組年母 時時 人 イ

  ト   先   の   経   者

織団 の体 先の 叢り  }  ダ  ]

代代 のの友教 達士

160 180

70

30 50 20

15 10

5

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180

70

学校の上級生・先躍  50

︑尚校時代の教師

大学等の友達

高校の友達

恋人

︑学等の教師

中学校の教師

︑小中学校の友達

小学校の教師

 おじ・おば伺じ趣味・遊びの紳間政治家

アルバイト先の経営者作家スポーツ選手弟・兄組織や組の先輩

塾予備校の教師

青少年醐体のりーダー 塾予備校の友達

30 20

15 5 io

0

仕事上の上司

仕事上の先輩

恋人

仕事上の同僚

同じ趣味の仲醐

占少年活動のりーダ⁝

一組織や組の先輩

大高政お 学校冶じ のの家・

翼壁 お 男達 ば

大学等の教師学校の先輩小学校時代の教師夫・妻小中時代の友達高校時代の教師祖父母近所の人

スポーツ選手作家

社会人

(6)

30 安達他:青年に影響を及ぼす人々とその意味

モデルになるようなものを問われると,どうしても職業に関わりのある人物が浮んでくるのであろうか。

そして,それが「仕事上の上司・先輩」ということになってくる。

 学生では友達や教師が選ばれる比率が高かったか,社会入では低くなっている。そして。 「高校の友 達」と「専門学校・短大・大学の友達」の位置が逆転しているが,これはすべての被験者に,大学時代 の友達を持つ機会があったわけではない事も関係があると思われる。

 学生,社会人の両万を通して,「母」が選ばれる割合いは低かった。母親が最も身近かな存在で愛着の 対象であって,尊敬や入生のモデルの対象としては選ばれなかったのではないか。

 「恋入」の項目が「人生示範」因子においては,あまり高順位に現れるとは予測もしなかったので あるが,学生では7位,社会人では5位という位置に現れている。特に社会人において恋人が高い割合 一で選ばれているのは恋人をこれからの人生において,結婚の相手として直接考えているため,何かを教

えられる存在になっているからだと思われる。

 以上,第1因子について考えてきたが,男子と女子については意識空間の違いと,何に入生の目標を おくかによる違い粧その結果に現れているようである。社会人と学生の比較においては,生活空間の 大きな違いが結果に出ている。「人生示範」因子では,人生におけるモデルにするという人間として最 も重要な問題なので,その対象としては人間性が重視されるであろうから,環境や性差による違いはな く,男・女・社会入e学生とも同じような人々が,同じような順位で選ばれるのではないかと予測した が,予測に反し, 「父」の1位だけが共通した結果であった。その他の意味ある他者の出現を見ると,

その環境的な要因により大きく異なってきている。例えば,学生では意味ある他者として「学校の先輩」

や「教師」が挙げられたが,社会人においては「仕事上の上司や先輩」に変わっている。人生という大 切な事だからこそ,自分を取り巻く人の考えや行動を,自分の人生の参考にしていくという見方をすれ ば,環境による違いが出てくることも考えられる。このように「入生示範」というものが環境によって 左右されるのであるから,時代の違いによってもその意味ある他者も変わってくると予測される規そ れについては今後の調査にまちたい。

3 第2因子(宿り木因子)

 第2因子(宿り木因子)についてみると,青年にとって,最も甘えたり,依存したい存在は「恋人」

である。次いで, 「高校時代の友達」,「専門学校,短大,大学時代の友達」が挙がっている。さらに,

「同じ趣味・遊びの仲間j 「母」 「小・中学時代の友達」 「父」 「仕事上の同僚」が続く。この事から 青年にとって「恋人」は最も心理的に依存出来る対象であり,次いで学校時代の友達が意味を持ってい る。遊び仲間も学校時代の友達程度の意味を持っていることがわかる。友達に次いで心理的依存の対象 になるのは親(母,父)である。青年,とくに社会人になっている青年にとって時間的に比較的長い接 触時間を持つ「仕事上の同僚」が本因子においては,友人や両親よりも低位にランクされていることは 注目される。これは,職場での人間関係は甘え,依存する関係というより仕事を通してのより緊張し合 う関係であり,親密な関係というより競争的な関係であるためであろう。また,両親の出現率が高いこ とも注目される。現代青年は親への依存から脱け切っていない,「甘えている」とよく言われるが,こ の結果からもそのことがいえる。そして,「父」よりも「母」の方が,より甘えたり依存したい存在なの である。また,出現率は低いが家庭からは「姉」「夫や妻」,地域からは「近所の人」「青少年団体活動 のリーダー」,学校からは「高校時代の教師」「中学時代の教師」,職場からは「組織や組の先輩」 「アル

(7)

安達他:青年に及ぼす人々とその意味 31

バイト先の経営者や先輩」,メディアからは「政治家」など様々な生活圏から人物が選ばれていることも 注目される。これは,現代青年の活動範囲や付き合いの拡がりを意味しており,そのため甘え,依存し たい存在として多様な物が挙げられる結果となっていることがわかる。とはいえ,特に身近な所にいる 友達,家族志向も強い。

 次に男女差があるかどうか検討してみる。上位を占めるのは,男子も女子も「恋人(66.5%,76.8%)」

「友達」である。しかし男子は「高校時代の友達(53.1%)」の出現率が高く,女子では「大学時代の友 達(84.7%)」が高くなっている。男子は以前からの友達付き合いが続いているが,女子は昔の友達より

も最近出来は友達との付き合いの方が深いようだ。女子は「友達」と会う機会が少なくなると,その友人 関係は自然消滅の形をとるのかもしれない。「友達」というものが,「悩みなどを相談できる人」であ る一方,「自分の弱味を知られたくない人」でもあることであって,その意味でも女子の友達付き合い は両面価値をもっていることがわかる。

 次に第2因子に含まれる5項目全体で両親を比較してみると,男子は「父(32.8%)」が5位,「母

(8.3%)jが12位であり,女子は「母(52.1%)」が4位に, 「父(16.7%)」が7位にランクされて おり,男女ともに同性の親の方が上位にランクされているのがわかる。特に顕著な差がみられるのは,

「悩みなどを相談できる人」という項目である。男子は「父(10.2%)」が4位,「母(4.6%)」が 7位であるのに対して,女子は「母(17.3%)」が3位,「父(O.6%)」が15位にランクされている。

女子に同性の親へのより強い依存があることがわかる。

 青年にとって「同じ趣味・遊びの仲間」の存在が大きいことは先にも述べた。男子は「同じ趣味・遊 びの仲間(37ユ%)」が4位に,「仕事上の同僚(18.3%)」が7位に,女子では前者(24.6%)が6 位,後者(24.9%)」が5位にランクされている。女子ではあまり差はみられないが,男子では多少 差がある。同年代の仲間であるにもかかわらず,男子は職場における仲間への心理的依存は弱いようだ。

仕事をともにする仲間は,心を許し合えるまで深く付き合ったり,頼りにし合ったりする相手というよ りはむしろ,ライバルとして意識することが多いのかもしれない。職場での人間関係の特徴として言え ることは(この傾向は男女とも言えることであるが),「その人からどう思われているか気になる」 「自 分の弱味を知られたくない人」の項目で, 「仕事上の上司・同僚・先輩」が上位にランクされている。

現代青年は,仕事に関係のある肩入の目が気になるという。これは,職場の人間関係がライバル関係で あるという事を裏づける。つまり,ライバルであるが故に,その人達からの評価が気になり,弱味を知

られたくないということになる。

 次に,「知り合いの警察官(3.9%)」「政治家(2.9%)」「行きつけの飲み屋やスナックのママ・

マスター(2.2%)」が,比率こそ低いが,男子にとっては頼りになる存在として挙げられている。この ことは女子よりも男子の万が行動空間が多様化していることを意味していると考えられる。

 第2因子(宿り木因子)において,男女の差はあまり大きくはない。上位に「恋人」 「友達(小・中

・高・大学等)」「同じ趣味・遊びの仲間」がランクされており,青年にとって甘え,依存したい存在は,

身近な生活空間にいる人間であるということになる。

 次に,学生と社会入とを比較してみる。生活圏の違いにより学生と社会人とでは悩みなどを共有して もらったり,心の拠り所としている人物に差がみられる。全体的にみると,学生は「専門学校・短大・

大学時代の友達(90.4%)」「高校時代の友達(71.2%)」「恋人(64.9%)」の順で,特にこれらの 人物に集中している。また, 「母(27.6%)」「父(21,6%)」「姉(10.0%)」といった家族の出現 率も高くなっている。社会人では「恋人(67.6%)」「高校時代の友達(44.0%)」 「仕事上の同僚

(8)

32 茨城大学教育学部教育研究所紀要20号(1988)

(39.3%)」の順になっている。また6位に「仕事上の上司(29.3%)」8位に「仕事上の先輩(20.8%)」

が挙げられている。社会入も学生と同様に「父(30,4%)」「母(25.7%)」「姉(8.3%)」といっ た家族の出現率が高くなっている。つまり,学生には学生の,社会人には社会人の生活空聞があり,そ れぞれの生活空間に存在する身近な人物をおおいに頼りにしていることがうかがえる。続いて,それら の人物について比較してみる。

 学生・社会人ともに「恋人」の出現率が高くなっている。これは現代青年にとって「恋人」は心の拠 り所として重要な意味を持っていることを示している。しかし,そのような存在でありながら,「その 人からどう思われているか気になる」「自分の弱味を知られたくない人」の項目でも上位にランクされ ている。このことは「恋人」から嫌われたくないとか,自分を価値あるものとして印象づけたいとする 意識の表われであると考えられる。現代青年にとって「恋人」は,自分を支えてくれたり,甘えたい存 在でありながら,見栄をはって自分の弱点は知られたくない存在でもあるといえようか。

 青年にとって「恋人」よりも,心を開いて打ちとけ合える存在として「友達」が意味ある人物として 挙げられている。学生も社会人もf高校時代の友達」が高い出現率を持っている。学生にとって「高校 時代の友達(71.2%)」 「専門学校e短大・大学時代の友達(90. 4%)」は,学生の現在の生活空間に おける人間関係であり,しかも同じような立場にある人間として,悩みを分かち合ったり,悩みを相談

したりできる存在であるのは当然のことだろう。社会人の同じ生活空間にいる存在として,学生の「友 達」に対応するものが「仕事上の同僚」ということになる。しかしながら,社会人にとって心の拠り所

となるのは「仕事上の同僚」よりも「友達」や「同じ趣味・遊びの仲間(35.1%)」の方なのである。

社会人は職場における複雑な人間関係の申で,「仕事上の上司・同僚・先輩」からどう思われているか 気になったり,弱味を握られたくなかったりするのである。このことは,職場の人間関係の厳しさを示 しているように思える。職場の人間関係は依存的関係ではなく,ライバル意識を含む人間関係なのであ る。したがって,社会人が「悩みなどを相談できる入」として,職場を離れた「高校時代の友達(17.1

%)」 「同じ趣味e遊iびの仲間(10.2%)」 「母(9.4%)」「小・中学時代の友達(8.7%)Jという ような人達を選んでいることは,学生時代に心の拠り所とした友達を,社会人となってお互いの生活空 間は違っても,依然として頼りにしているということになる。学生時代に出来た信頼関係は,社会人に なっても長く続いていくということがうかがえる。

 また,「何か買うときなど,一緒に行って相談にのってほしい人」という項目において,学生は気軽 に友達同士で行く傾向がある。他方,社会人は,「仕事上の同僚」よりも「恋人(18.5%)」 「同じ趣 味・遊びの仲間(9.8%)」「高校時代の友達(9。4%)」といった仕事から離れた空間にいる親密な人 と行こうとする傾向がやはりある。

 学生が依存したい存在としで「学生時代の教師」も挙げられているが,圧倒的に「友達」の出現率が 高く,青年にとって「学生時代の教師」はそれほど重要な存在ではないようだ。学生にとってそれほど 意味を持っていないが,社会人には意味ある他者として存在しているのが「近所の人」である。特に「そ の人からどう思われているか気になる」という項目では, 「恋入」「仕事上の上司・同僚・先輩」に次 いでランクされている。学生時代にはあまり意識した存在ではなかった「近所の人」も,社会人となり 社会に出ることによって,今まで意識していなかった「世間」というものの存在に気付くようである。

 学生において,少数ではあるが「知り合いの警察官(2.4%)」や「アルバイト先の経営者や先輩(2.

9%)」が挙げられている。最近,アルバイトをする学生が多いようであるが,社会の一部を体験し,自 分とは違う生活圏にいる人々を参考にしたり,依存しているのであろう。

(9)

黙鷺汁態蝉酬緑嶺蝉酬単醤翠諮罵さ︒品£ΦG︒c︒︶ωGQ

第2因子(宿り木因子)

図2

90 70

60 50

40 30

20 15

恋人高校時代の友達

小中時代の友達同趣味・遊びの仲間

.学時代の友達

仕事上の同僚

仕事上の上司

夫・妻仕事土の先輩

90 7a

60 5Q

30 25

20 15

大学時代の友達

恋人高校時代の友達

仕事圭の同僚瞬趣味・遊びの伸醐

小中時代の友達

学校の先薙

仕事上のーー一司

仕事上の先輩

男一[T→一

5 10

中ス政大猟知兄姉お妹高組近N学 学ナ治学譲り  じ 校織駈 校 教ッ家の年あ  ・ ののの の 師ク 教りい  お 教先人 先

 マ師1のば師輩輩

 マ  ダ警  ・  }官  マ  ス タ

 l e       s lo

中小弟組ア毒高大お   妹 学学・織ル少校学じ

・時時兄のバ年時時・

代代 先イリ代代お のの 輩ト1ののば 教教  先ダ教教 師師  の1師師

90 80

70 60

so 30 40

25 20

1r)

おじ・おば大学時代の教師    5高校時代の教師近所の人毒少年リーダーアルバイト先の経営者       夫・妻 大学晧代の友達高校時代の友達恋人小中時代の友達同趣味・遊びの仲醐学校の先輩

ノ\

佳ス仕小仕組教兄バお中姉大近高姉 事ポ事学事漁師 イじ学 学所校 上1上時上の

のツの代の先 周回上の先輩 僚手鋼教輩    師

ト・時 時の時 先お代 代人代 のばの の の 経 教 教 教 営 師 師 師

90 80

70 60

49 50 30

2r)

恋人

高校時代のな達

仕事

lz

同趣味・遊びの紳醐

1ト﹇・

i

I A

  20

小大 中学 時時 代代 のの 友友 達達

仕事

10 15

0 5

社会人 夫●妻近所の人酵少年リーダー組織の先躍学校の先輩おじ・おば

知り合いの繁官

政治家弟 賞同校時代の教師スナックのママ・マスター中学時代の教師

(10)

34 安達他:青年に影響を及ぼす人々とその意味

 学生も社会人も,その行動範囲は拡がってはいるが,複雑な人間関係の中では心を許し合い,頼れる 人物となるのはごく限られた範囲の人達になる。とりわけ社会人は,学生に比べてより生活圏が拡がり 多様な人間と付き合っているにもかかわらず,学生時代からの「友達」との友人関係に頼っているとい

う,人間関係の狭さがうかがえる。

4 第3因子(虎の威因子)

 第3因子(虎の威因子)の意味項目の骨組みは,その人に同一化・同一視することで自我の拡大をは かるということであり,同一化の対象となるものとしては,権威・権力・有名・有能または華やかさで

.ある。事実この因子において選ばれた人々をみると「仕事上の上司・先輩」(第3生活圏),「学校の教 師・先輩」(第2生活圏), 「歌手」「俳優」 「政治家」(第5生活圏)などが上位を占めており,それ がよく表されている。しかしここで注目されるのは,第3因子の他者項目がこれらだけではなく,第1 生活圏(家庭)における「父」「恋人」特た女子だけであるが「母」にも高い出現率がみられるという ことである。また「青年団体のり一ダーj(第4生活圏)が比較的上位にランクされていることも注目 に値する。意味項目の内容からみても,「権威・権力のある人」や「有名な人」が上位を占めるとい

うことに対して意外な感じはしないが,第1生活圏の「父」「母」「恋人」が上位にランクされている というのは,多少意外な感じがする。これは,意識空間の拡大が十分でないために,第1生活圏の比重 が大きくなってしまった結果ではなかろうか。

 全体的にみると先に述べrcようなことが考えられるが,男女別にみると,男子で上位にランクされて いる他者項目は, 「父」 「政治家」 「歌手」 「スポーツ選手」などであり,女子では「学校の上級生」

「仕事上の上司」「仕事上の先輩」「大学教師」「大学の友人」「母」「恋人」などである。男子は,

第5生活圏である(メディア)から選ばれているものが多く,女子は第1.第2.第3生活圏である家 庭・学校・職場から選ばれているものが多い。つまり男子は,普段直接には接することができない人物 が多く,女子は,普段から身近におりいつでも接することのできる人物が多いということである。これ は男子に比べ女子の方が現実的な認識をする傾向があるということ,言い換えれば女子の方が意識空間 が狭いということであるかもしれない。

 次に意味項目別に男女比較をしてみたい。まず「あんなふうになりたいと思う人」であるが,男子は

「父」「スポーツ選手」「政治家」「歌手」が上位であり,女子は「学校の上級生」「母」「仕事上の 先輩」 「大学の教師」 「大学の友人」 「恋人」が上位である。男子は社会的・公的に評価される入物に なることを望み,女子は身近な人物に憧れるということであろう。ここで男子は「父」に憧れ,女子は

「母」に憧れるという傾向が出ているが,これは青年期が同性の親を同一化の対象として性役割を習得 する時期であることを考えれば納得のいくところである。しかし「父」が,2番目にランクされている  「スポーツ選手」の倍の出現率を示しているというのは意外であった。先に男子に比べ女子の方が狭い

意識空間の申で生活しているためであろうかと述べたが,これをみた限りでは男子の意識空間の拡がり が女子より大きいとしても,その差は指摘されるほど大きくはないであろうと考えられる。

  「その入の前に出ると緊張してしまう」では,男女ともに「仕事上の上司」「大学教師」「恋人」な どが上位にランクされており,同じような意識を持っていると思われる一面がある。しかし男子の方で は「歌手」「政治家」など第5生活圏(メディア)の人物が上位にランクされており,女子の方ではあ まりそのような傾向が表れていないところをみると,意識空間の拡がりの差が感じられる。ここで意外

(11)

安達他:青年に影響を及ぼす人々とその意味 35

に感じるのは「父」や「恋入」が上位にランクされているところである。 「恋人」においては,自分を 良く評価してほしいという気持ちからくるということも考えられるが, 「父」においてはまったく理解 できないのである。なぜ「父」の前で緊張するのだろうか。家父長制の時代ならいざしらず,今でも父 の権威をそれほどまでに認めているのだろうか。

 「その人を知っていることが誇りだ」では,男子の上位には「政治家」「歌手」など第5生活圏の入 物が選ばれている。これに比べて女子の方の上位には,第5生活圏の入物があまりみうけられない。こ れも意識空間の差なのであろうか。ここで意外なのは,やはり「父」や「恋人」が上位にランクされて いることである。この項目で「父」を挙げる意味が理解できない。 立派な父 の子どもであるという ことが誇りであると答えているのだろうか。これに比べれば「恋人」の方が理解できる。但しその場合,

「誇り」ということの意味は異性を「所有」していることを同じ年代の同性に対して「自慢する」こと と同義であると考える。しかしいずれにせよ,この項目では,知っているという言葉の意味のとり方に よって結果の解釈も変わってくるのであろう。

 たとえばお互いに交流を持つことのできるという意味での知っていると,こちらが一方的に知ってい るだけという意味での知っているの2つである。この場合,男子の方で上位にある「政治家」 「歌手」

などは,一方的に知っていることにあたると考えられ,ただ男子の方が憧れの気持ちが大きく,女子の 方がより現実的なためであるとも言えるのではないか。

 「その人を知っていることで自分を大きく見せられる」では,男女ともに大きな違いはみられず,「政 治家」などの権力を持った人物, 「歌手」などの有名・有能な人物に収敏している。ここでは「父」

「恋人」などの出現率は,他の項目に比べると多少は低い。しかしそれでもこの項目だけの場合,「父」

や「恋人」は上位にランクされており,同じ疑問が持たれる。この項目は前述の「その人を知っている ことが誇りだ」という質問と類似した質問であるためであろうか,出現する他者項目も類似している。

 「その人の男らしい(女らしい)ふるまいを見て自分もそのようになりたいと思う人」では,男女と もに大きな違いはみられず,男子は「父」女子は「母」に憧れるという傾向が出ている。 この項目は

「あんなふうになりたいと思う人」と質問も類似しており,出現する他者項目・傾向ともに類似してい る。違いと言えば,第5生活圏の人物が上位にランクされていることである。

 次に学生・社会人別にみると,学生で上位にランクされている他者項目は「学校の上級生」 「大学教 師」「父」である。社会人では「仕事上の上司」「仕事上の先輩」「父」が上位にランクされている。

これをみると学生は第2生活圏から選ばれているものが多く,社会人は第4生活圏から選ばれているも のが多い。共通点は,どちらも「父」が高い意味を持っているということ,身近な権威者や先輩が高い 意味を持っていることである。学生と社会人の違いは,社会人の場合,第3生活圏の「青少年団体活動 のリーダー」が上位にランクされているのに対し,学生ではそれがほとんどみられないこと,また学生 では教師が上位にランクされているが,社会人ではそれほどでもないということである。

 意味項目別にみると「あんなふうになりたいと思う入」では,出現する他者項目は学生と社会人は似 ているが,ただ異なるのは上位には学生の場合第2生活圏の入物が多いのに対し,社会人では第4生活 圏の人物が多いことである。しかし,どちらも自分の身近にいる人物であることを考えると,青年たち は同一化のモデルを家庭以外の自分を中心とした狭い意識空間の申から選んでいることがわかる。さら にここでの大きな違いは,社会人には「青少年団体活動のリーダー」など第3生活圏の人物が上位にラ ンクされているのに対し,学生の場合はそれらのランクが低いことである。これは学生と社会人の行動 空間の違いではないかと思われる。

(12)

ω①兇蟷汁二選鵡磁鶉謝謝彰醤翠識燗b︒O如︵一Φo︒c︒︶

第3因子(虎の威因子)

図3

40 30

15 20 5 1

0

政治家

歌手スポーツ選手

仕事上の上司

恋人

30 40 20

苛少年礪体活動のりーダー

俳優仕事上の先輩

繕大高・学校 組等時織の代 の教の先師教 難 師

高校時代の友達

作家

同じ趣味・遊びの伸開

知り合いの警察官

中学時代の教師学校の上級生

大学等の友達

//// N 祖お近奉 T教 父じ所仕 V師 母・の活パ・

 お人動1ラ  ば をソジ    しナオ   てりの    いテ    るイ   人1

10 工5 5

0

学校の上級生

1.仕婁上の上司

 仕事上の先輩

\大学等の教師 大学等の友達 恋人 母

高校時代の友達TV・ラジオの   パーソナリティー同じ趣味︒選びの仲閤高校時代の教師俳優−歌重中学時代の教師

40 30

15 0 10

艶月少年國体活動のリーダー

政治家おじ・おば

作家スポーツ選手父・組織の先羅小中時代の友達バイト先の経営者作家奉佳漉動をしている人同僚

5 0

一学校の上級生

大学等の教師

歌手

大学等の友達

恋人

高校時代の教師

スポーツ選手

中学時代の教師

俳優・政治家

高校蒔代の友達

\小学時代の教師

\作家

40 30

20 15

  ノミ   イ   ト   先   の   経   営   者

先・

10

 小中学時代の友達r組・組織の先導 おじ・おば 同じ趣味・選び仲間

−舷目少年団体活動のりーダー

/牧師/TV・ラジオの    パーソナリティー

学生 近所の人

0 5

仕事上の上司

仕事上の先輩

政治家

恋人柱一3少年団体活動のりーダi

同じ趣味・遊び仲閤紐・組織の先輩

俳優

歌手大学等の教師

\ス水ーッ選f

学校の上級生

学生・労働運動の活動家

同僚高校時代の友達

奉仕活動をしている人

作家知り合いの警察官

中学時代の教師

小43学時代の友達

おじ・おばTV・ラジオの   パーソナリティー

祖父母

社会人

参照

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