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青少年の避妊行動に及ぼすパートナーとのコミュニケーションの影響

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1. 問題の所在と研究目的  就学期における望まない妊娠は,人工妊娠中絶 や学業の中断につながりやすく,心身への大きな 負担をもたらすことや,その後のライフコースに おけるさまざまな機会の損失を引き起こすことが 予測される.望まない妊娠を防ぐためには,確実 性の高い避妊を徹底することが不可欠であるが, 現代日本における青少年の避妊の実行状況は望ま しい状況にあるとは言い難い.「青少年の性行動 全国調査」の第 8 回調査(2017 年)の結果によ ると,高校生・大学生の男女で避妊を「いつもし ている」と回答する者の割合は,大学生男女およ び高校生男子では 7 割程度であり,高校生女子に おいては 6 割程度にとどまる(日本性教育協会編… 2018).この結果から,性交経験のある高校生・ 大学生のうち,3 〜 4 割は避妊を徹底していない ことが読み取れる.  青少年の適切な避妊の実行を周知・徹底してい くためには,まずどのような青少年が避妊を実行 しているのか/していないのかについて把握した うえで,不十分な避妊がおこなわれる背景を考察 する必要がある.日本の青少年の性行動に関する 調査としては,日本性教育協会が実施する「青少 年の性行動全国調査」がある.同調査においては, 主に性教育の観点から,性に関する知識や性教育 を受けた経験と避妊行動の関連について検討され てきた(中澤…2007;…土田…2013).しかし,避妊の 実行は個人の意思のみで決定されるものではな く,パートナーとの交渉に基づき決定されるもの

論 文

青少年の避妊行動に及ぼすパートナーとの

コミュニケーションの影響

俣 野 美 咲  本稿の目的は,青少年層におけるパートナーとの避妊に関するコミュニケーションが実際の避妊行 動に及ぼす影響について検証することにある.従来,青少年の避妊行動に関しては,本人が正しい知 識を身につけているかどうかと避妊の実行の関連が重要視されてきた.しかし,避妊の実行は個人の 意思のみで決定されるものではなく,パートナーとの交渉に基づき決定されるものである.したがっ て,一方の要因に注目するだけでは不十分であり,パートナーとの間で避妊の実行について十分に意 思疎通が図れているかという点にも注目する必要がある.そこで本稿では,「青少年の性行動全国調 査」の第 7 回調査(2011 年)データを用いて,高校生・大学生男女において,パートナーとのコミュ ニケーションの円滑さと頻度が避妊の徹底にどのような影響を及ぼすかについて分析をおこなった. その結果,男子ではパートナーとのコミュニケーションの円滑さと頻度は避妊行動に影響を及ぼさな い一方で,女子では避妊に関するコミュニケーションの頻度が高いほど避妊を徹底している確率が高 いことが示された.今後,青少年の適切な避妊の実行を周知・徹底していくためには,正確な知識の 伝達に加えて,パートナーとの間で避妊についての十分な意思疎通を図ることの重要性を教授するな どの包括的な性教育が求められるだろう. 【キーワード】青少年,避妊行動,パートナー

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である.したがって,一方の要因に注目するだけ では不十分であり,パートナーとの間で避妊の実 行について十分に意思疎通が図れているかという 点にも注目する必要がある.そこで本稿では,青 少年層におけるパートナーとの避妊に関するコ ミュニケーションが実際の避妊行動に及ぼす影響 について検証する. 2. 避妊行動とパートナーとの関係性に関する 研究動向と本稿の分析課題 2.1 パートナーとのコミュニケーションと避妊 の実行  パートナーとのコミュニケーションの程度は, とりわけ女子の避妊行動に影響を及ぼすと考えら れる.具体的には,パートナーと十分に避妊に関 する意思の疎通が図れていない場合,避妊の実行 が抑制されることが予想される.この理由には, 次のようなことが挙げられる.  日本では,高校生・大学生の男女の 9 割以上が 避妊方法にコンドーム(1)の使用を挙げており(日 本性教育協会編…2018),避妊の実践の場において イニシアティブが男子に委ねられやすい状況に ある.また,男性は女性に比べて性交渉の意味付 け に「快 楽」 を 挙 げ る 割 合 が 高 く(岩 間・ 辻… 2002),女性よりも男性のほうがコンドームに対 して性的快楽の側面で否定的な態度をとることが 報告されている(Chapman…et…al.…1990;…Campbell… et…al.…1992).したがって,女子が避妊の実行につ いて十分に意思表示をできていない場合,男子が コンドームの使用を忌避することで避妊を実行し ない確率が高くなると予測できる.  実際に,避妊を徹底していない理由に「避妊を 言いだせない」と回答する者の割合は,高校生で は男子 2.6 %に対して女子 11.1 %,大学生では男 子 0 %に対して女子 9.3 %と,圧倒的に男子より も女子で多い(日本性教育協会編…2018). 2.2 国内外の実証研究の到達点と本稿における 分析課題  欧米諸国では,青少年の避妊行動とパートナー とのコミュニケーションの関連について多くの研 究が蓄積されている.それらの研究では,青少年 の女子において,パートナーとの避妊についての 会話頻度が高いこと,また,性交に至る前に避妊 についての話をしていることは,避妊(コンドー ムの使用)の徹底を促進する効果を持つことが明 らかにされている(Crosby…et…al.…2002;…Manlove… et…al.…2003,…2004,…2007;…Davies…et…al.…2006;…Widman… et…al.…2006;…Kenyon…et…al.…2010;…Johnson…et…al.… 2015).  一方日本では,青少年の避妊行動に関する研究 が欧米と比較して乏しい.そのなかで,青少年層 におけるパートナーとの避妊に関するコミュニ ケーションと避妊行動の関連に注目した研究とし ては,永松ほか(2014)が挙げられる.永松ほか (2014)は,九州北部地域で女子大生および既婚 女性に調査を実施し,パートナーのいる 20 代の 女子大生 40 名(避妊実行群 32 名,非実行群 8 名) を対象に,避妊を実行している者としていない者 の特徴をt検定によって比較している.その結果, 避妊を実行している者のほうが,①自分でパート ナーに避妊する意思があるか確認している程度, ②自分からパートナーに避妊することを交渉して いる程度,③自分で避妊するかどうか決定してい る程度の平均値が高いことが示され,避妊を実行 している者のほうが避妊の意思決定の程度が高い ことを述べている.しかし,ここでは避妊実行群 と非実行群の間で上記のような行動に平均値レベ ルで差があることを記述するにとどまっており, パートナーとの避妊に関するコミュニケーション が避妊の実行を促進する効果を持つかどうかまで は明らかでない.また,避妊に関する正しい知識 を持っているかなど重要な変数の影響を統制して いないことも限界として挙げられる.  直接的にパートナーとのコミュニケーションに 着目した研究ではないが,パートナーとの関係性 と避妊の実行についての先行研究からも,コミュ

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ニケーションの程度が避妊の実行に影響を及ぼす ことが示唆される.「青少年の性行動全国調査」 の第 2 〜 4 回,第 6 回,第 7 回データを用いた俣 野(2018)は,高校生・大学生の初交時の避妊の 実行に及ぼすパートナーとの年齢差の影響につい て分析をおこない,初交相手が年上の場合,同い 年の場合に比べて,初交時に避妊を実行する確率 が有意に低いことを示している.  また,伊藤ほか(2012)は,大学および看護専 門学校に在籍する女性に調査を実施し,性交経験 のある女性 582 名を対象として,回答者自身と パートナーそれぞれの男性性・女性性と避妊行動 の関連について記述的分析をおこなっている.そ の結果,回答者がパートナーの男性性が高いと認 知している場合,コンドームの使用頻度が低いこ とが明らかになった.  パートナーとの年齢差やパートナーの男性性の 高さは,女子にとってパートナーと自身の間での 異質性の高さを表していると解釈できる.このよ うな成員間での異質性の高さは,相互のコミュニ ケーションを困難にさせる可能性を高めるため (Newcomb…1953),パートナーとの避妊につい てのコミュニケーションを阻害すると考えられ る.また,女性がパートナーを男性性と女性性の いずれも高いと認知している場合,パートナーに 対して避妊についての交渉をおこないやすいとい う知見からも(伊藤ほか…2012),パートナーとの 異質性が低いと避妊についてのコミュニケーショ ンが促進されることが示唆される.したがって, パートナーが年上である場合や,パートナーの男 性性が高い場合に避妊の実行が抑制される理由の 1 つには,パートナーと避妊についてのコミュニ ケーションをとりにくいことがあると考えられる.  また,福本・森永(2005)は,共学 4 年制大学 の大学生男女に調査を実施し,直近の半年間に愛 情を感じる相手との性交経験のある者 229 名を対 象に分析をおこなっている.その結果,コンドー ムを使用している者よりもしていない者のほう が,コンドームの使用を提案したときパートナー に拒絶されると予測する度合いの平均値が高く, この傾向は男子よりも女子で顕著であった.この ことからは,女子がパートナーに拒絶されること を恐れて,避妊についての交渉をおこなうことが できず,避妊なしの性交に至るという状況がうか がえる.  以上の先行研究の知見をふまえ,本稿では, パートナーとの避妊に関するコミュニケーション の程度が避妊の実行を促進するかどうかについて 検討する. 3. 分析 3.1 データと分析対象  本稿で用いるデータは,「青少年の性行動全国 調査」の第 7 回調査(2011 年)である.「青少年 の性行動全国調査」とは,日本全国の中学生・高 校生・大学生(2)を対象に,日本性教育協会が 1974 年からほぼ 6 年おきに実施する標本調査である. 6 年おきに調査を実施することで,中学生・高校 生・大学生の母集団が入れ替わり,日本の青少 年の性行動を切れ目なく把握することが可能と なっている(日本性教育協会編…2018).同調査 は,日本で唯一の青少年の性行動に関する全国規 模の継続調査であり,青少年の性について,生理 的,心理的,行動的側面など多岐にわたって質問 項目が設けられている.したがって,青少年の避 妊行動に及ぼすパートナーとのコミュニケーショ ンの影響について分析するために最も適したデー タである.  標本抽出は,次のような層化三段法により行っ ている.まず,従来の調査との継続性も考慮しな がら,日本全国から都市規模ごとに 11 の調査地 点を選定し,さらにこれらの地点から地域規模等 を考慮して各学校を選定している(中学校 9 校, 高校 11 校,大学 31 校).中学校・高校では,選 ばれた学校の各学年から,当該学校と相談のうえ 同意の得られた学級を対象に,自記式集合調査を 実施している.大学では,教員が教室で調査票の 配布と調査趣旨の説明を行い,調査に同意した学 生が自宅等で調査票に記入し,翌週の授業で回収

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をおこなっている.最終的なサンプルサイズは, 中学生 2,504 名,高校生 2,578 名,大学生 2,600 名 の計 7,682 名である.  分析対象は,調査時点で性交相手のいる高校生 および大学生の男女である.性交相手の有無につ いては,「あなたは,現在,セックス(性交)を している相手がいますか」という質問項目が設け られており,「1 人いる」「複数いる」「いない」 の 3 つの選択肢のうち,「1 人いる」または「複 数いる」と回答した者を性交相手ありとした.分 析対象となるケース数は 1,153 人であり(男子 404 人,女子 749 人),高校生・大学生の全回答 者の 22.3 %を占める.性交相手がいる者に限定 する理由は,避妊についての質問項目とパート ナーとのコミュニケーションについての質問項目 が,調査時点で性交相手のいる者のみに尋ねられ ているためである.また,中学生には避妊に関す る情報を尋ねていないため,分析には含めない. 3.2 変数  分析に使用する変数とその記述統計量は表 1 の とおりである.従属変数は,避妊をいつもしてい るかどうかである.「あなたは,セックス(性交) をするとき,避妊を実行していますか」という質 問項目において,「いつもしている」と回答して いる場合に 1,「いつもしていない」または「場 合による」と回答している場合に 0 の値を割り当 てた.避妊を「いつもしていない」と回答したケー スがきわめて少なく,「いつもしていない」「場合 による」「いつもしている」を区別して分析する ことが困難であることから,避妊を「いつもして いる」と回答したか否かを表す 2 値変数とした. 主たる独立変数であるパートナーとのコミュニ ケーションの程度については,2 つの変数を用い る.第 1 に,パートナーとのコミュニケーション の頻度として,避妊についての会話の頻度を用い る.避妊についての会話の頻度は,「避妊につい て,相手と話をしますか」という質問に対し,「よ くする」「ときどきする」「あまりしない」「した ことがない」の 4 つの選択肢から回答するように なっている.そのため,頻度が高いほど大きな値 をとるよう,1 から 4 の値を割り当てた.第 2 に, コミュニケーションの円滑さを表すものとして 「あなたは,セックス(性交)をしたくないとき, 相手にその気持ちを伝えることができますか」と いう質問項目を用いる.選択肢は「できる」「で きない」「場合による」の 3 つであり,「できる」 に 3,「場合による」に 2,「できない」に 1 の値 表 1 使用する変数の記述統計量 男子 女子 最小値 最大値 平均値 標準偏差 平均値 標準偏差 避妊をいつもしているか(ref.いつもしていない・場合による)  いつもしている .810 .393 .743 .437 0 1 年齢 19.587 1.936 19.245 2.036 15 25 初交時の避妊経験(ref.しなかった)  した .861 .346 .906 .293 0 1 性知識正答数 3.111 1.624 3.366 1.548 0 6 性交したくないときに 伝えられる程度 2.649 .576 2.717 .540 1 3 避妊についての 会話頻度 2.989 .864 3.109 .812 1 4 N 368 678 注:斜体はダミー変数の該当カテゴリーの回答比率,ref.は参照カテゴリーを表す.

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を割り当てた.「青少年の性行動全国調査」には, 直接的にパートナーとの避妊に関するコミュニ ケーションの円滑さについて測定している質問項 目はないため,性にかかわることのコミュニケー ションの円滑さの指標としてこの変数を用いる.  そのほかに統制変数として,本人の年齢,初交 時の避妊経験,性知識の正答数を用いる.本人の 年齢については,年齢によって,性交経験の豊富 さや避妊をしないことによるリスクの認知が異な ることが想定され,それらは避妊行動と強く関係 する要因であると考えられるため,統制変数とし て用いる.初交時の避妊経験については,初めて 性交をしたときに避妊を実行したかどうかの質問 項目から「した」を1,「しなかった」を0にリコー ドした.初交時に避妊をしている者は,現在も避 妊を行っている割合が高いため(永田…2007),初 交時の避妊経験を統制変数に用いる.性知識の正 答数は,性に関する知識を問う質問項目での正答 数である.具体的には,「膣外射精(外出し)は, 確実な避妊の方法である」「排卵は,いつも月経 中に起こる」「精液がたまりすぎると,身体に悪 い影響がある」「クラミジアや淋病などの性感染 症を治療しないと,不妊症になる(赤ちゃんがで きなくなる)ことがある」「日本ではこの10年間, 新たにHIVに感染する人とエイズ患者は減少し 続けている」「経口避妊薬(低用量ピル)の避妊 成功率は,きわめて高い」というそれぞれの問題 に「正しい」「まちがっている」「わからない」「文 章の意味がわからない」の 4 つの選択肢から回答 するものである.これらの質問項目で正しい答え を回答した数の合計を算出しており,0 から 6 の 範囲の値をとる変数である.正しい性知識を身に つけていることと避妊の実行には正の関連が認め られるため(中澤…2007;…土田…2013),性知識の正 答数を統制変数として投入した. 3.3 分析結果  表 2,表 3 に,避妊をいつもしているか否かを 従属変数とした二項ロジスティック回帰分析の結 果を示した.まず,表 2 の男子から確認すると, 性交をしたくないときに伝えられる程度,避妊に 関する会話頻度はいずれも有意な効果を示してい ない.すなわち,パートナーとのコミュニケー ションの円滑さや頻度は,男子の避妊行動に影響 を及ぼさない.  統制変数で有意な効果を示しているのは,初交 時の避妊経験,性知識正答数である.初交時の避 妊経験は,現在避妊を徹底しているかどうかに正 の影響を及ぼしており,この結果は先行研究の知 見と整合的である(永田…2007).この結果からは, 表 2 避妊の徹底に対するパートナーとの    コミュニケーションの影響(男子) 係数 標準誤差 年齢 -.048 .078 初交時の避妊経験(ref.しなかった)  した 2.223 .346*** 性知識正答数 .257 .096** 性交したくないときに伝えられる程度 .366 .241 避妊についての会話頻度 -.150 .173 定数 -.613 1.691 -2 ×対数尤度 298.547 擬似決定係数(Nagelkerke…R2 .240 N 368 注:***…p<.001,…**…p<.01,…*…p<.05,ref.は参照カテゴリーを表す. 表 3 避妊の徹底に対するパートナーとの    コミュニケーションの影響(女子) 係数 標準誤差 年齢 .043 .049 初交時の避妊経験(ref.しなかった)  した 2.034 .293*** 性知識正答数 -.108 .065** 性交したくないときに伝えられる程度 .012 .173 避妊についての会話頻度 .446 .116*** 定数 -2.582 1.074* -2 ×対数尤度 701.174 擬似決定係数(Nagelkerke…R2 .146 N 678 注:***…p<.001,…**…p<.01,…*…p<.05,ref.は参照カテゴリーを表す.

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初交時というある一時点の経験がその後の性交に おいても持続的に影響を及ぼすと考えることもで きるが,おそらく,恒常的な避妊のしやすさの傾 向が初交時にもあらわれていたため,初交時に避 妊をした人は多くの場合現在も避妊を徹底してい る傾向にあるのだろう.  性知識の正答数は避妊の徹底に対してプラスの 効果を持ち,より正しい知識を身につけている者 ほど避妊を必ずおこなっている確率が高い.中澤 (2007)や土田(2013)の知見と同様に,避妊の 実行に際しイニシアティブを委ねられやすい男子 においては,性に関する正しい知識を持つことが 避妊の徹底につながるようである.  続いて表 3 の女子の結果をみると,避妊につい ての会話頻度が有意な正の効果を示していること から,パートナーとの避妊についてのコミュニ ケーションの頻度が高いほど,避妊を徹底してお こなっていることがわかる(3).一方,性交をした くないときに伝えられる程度については,避妊の 徹底に対して有意な影響を及ぼしていない.すな わち,避妊の徹底において重要となるのは,性に 関することについてコミュニケーションを円滑に 行えるかどうかというよりも,より直接的に,避 妊についてパートナーと意思疎通を図れるかどう かであると考えられる.  統制変数では,初交時の避妊経験が有意な効果 を示している.初交時の避妊経験は,男子と同様 の効果を示しており,初交時に避妊をしている者 は現在も避妊を徹底しておこないやすいことがわ かる.一方,性知識正答数の効果は男子の結果と は異なり,統計的に有意ではない.つまり,性に 関する正しい知識を身につけることは,女子の避 妊行動には影響を及ぼさない.この結果について も,中澤(2007)や土田(2013)の知見と一致し ており,青少年の避妊行動のメカニズムが男女で 異なることが示された. 4. 結論と今後の課題  本稿では,青少年の避妊の実行に対するパート ナーとのコミュニケーションの影響について, 「青少年の性行動全国調査」のデータを用いて分 析をおこなった.その結果,パートナーと避妊に ついて会話をする頻度が高いと女子の避妊の実行 が促進されることが明らかになった.このことに ついて,先行研究では十分に検証されていなかっ た,青少年のパートナーとのコミュニケーション の程度が女子の避妊行動へ及ぼす影響について 実証された.また,この結果は欧米諸国の先行 研究の知見とも整合的であり(Crosby…et…al.…2002;… Manlove…et…al.…2003,…2004,…2007 など),日本にお いても,青少年,とりわけ女子の避妊行動におい てパートナーとのコミュニケーションが重要な要 因となっていることが示された.  パートナーとのコミュニケーションが女子の避 妊行動にのみ影響を及ぼす理由には,避妊の実践 において,イニシアティブの所在に偏りがあるこ とが挙げられる.先にも述べたとおり,青少年の 9 割以上が避妊方法としてコンドームを用いてお り(日本性教育協会編…2018),避妊の意思決定の イニシアティブは男子に委ねられやすい.した がって,男子は自分自身が持つ性に関する知識の 正確さが適切な避妊行動に直結する一方,女子で は自分自身の知識よりもむしろ,パートナーに対 し避妊についての交渉をどれだけできるかによっ て避妊の実行が規定される.  従来,青少年の避妊行動については,本人の知 識の多寡や正確さが実際の行動を規定する要因と して重要視されてきた.しかし本稿の結果をふま えると,青少年の避妊の不徹底の背景には,単な る知識不足だけではなく,パートナーとの避妊に ついてのコミュニケーション不足もあると考えら れる.今後,青少年の適切な避妊の実行を周知・ 徹底していくためには,正確な知識の伝達に加え て,パートナーとの間で避妊についての十分な意 思疎通を図ることの重要性を教授するなどの包括 的な性教育が求められるだろう.たとえば, WHOのセクシュアリティ教育に関する指針では, 効果的な性教育の特徴の 1 つとして,コミュニ ケーションや交渉のスキルを身につける機会を設

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けていることが挙げられている(PAHO…and… WHO…2000).また,世界各国で利用されている 「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」では, ジェンダー平等に基づく人間関係スキルの習得を 目標の 1 つに掲げている(UNESCO…2009=2017). このような国際的な動向を参考に,日本において も新たな性教育の方針について検討する必要があ るだろう.  最後に,今後の課題として,青少年の避妊行動 の規定要因について,より総合的にメカニズムを 解明する必要性が指摘できる.本稿の分析では, 従来注目されてきた性知識とは独立して,パート ナーとのコミュニケーション頻度が避妊行動に影 響を及ぼすことが明らかになった.このことか ら,青少年の避妊行動のメカニズムは多元的であ ることが示唆され,さまざまな文脈からとらえる ことが必要であると考えられる.たとえば,欧米 では親の社会経済的地位や家族構造など,家族的 背景が及ぼす避妊行動への影響についても非常 に多くの研究が蓄積されている(Miller…et…al.… 2001;…Miller…2002;…Manlove…et…al.…2003).今後, 日本においても,本人の知識やリスク認知だけで はなく,パートナーとの関係性や家庭背景に着目 した分析および議論が求められるだろう. 謝辞 …本稿の執筆にあたり,査読者の方々より大変有益なコメ ントをいただいた.心より感謝申し上げる.  二次分析にあたり,東京大学社会科学研究所附属社会調 査・データアーカイブ研究センターSSJデータアーカイブ から「第 7 回青少年の性行動全国調査(JASE…SSJDA版), 2011」(青少年の性行動全国調査研究会)の個票データの 提供を受けた.記して感謝申し上げる. 注 (1) 本稿における「コンドーム」とは,男性用コンドーム を意味する. (2) 中学生が調査対象に加えられたのは第 3 回調査以降で あり,第 1 〜 5 回調査までは短大生,第 6 回調査でのみ 専門学校生が調査対象に含まれている(日本性教育協会 編…2018). (3) 避妊に関するコミュニケーションが避妊の徹底に及 ぼす効果の男女差についての統計的検定のため,男女で モデルを区別せず,女子ダミーと避妊についてのコミュ ニケーションに関する変数の交互作用項を投入して分析 した.その結果,避妊についての会話頻度と性交したく ないときに伝えられる程度の主効果は有意な効果を示さ ず,女子ダミーと避妊についての会話頻度の交互作用項 のみ 5 %水準で有意な正の効果が示された. 文献 Campbell,…S.…M.,…L.…A.…Peplau,…and…S.…C.…DeBro,…1992,… “Women,…Men,…and…Condoms:…Attitudes…and…Experiences… of…Heterosexual…College…Students,”…Psychology of Women Quarterly,…16(3):…273-88. Chapman,…S.,…L.…Stoker,…M.…Ward,…D.…Porritt,…and…P.… Fahey,…1990,…“Discriminant…Attitudes…and…Beliefs…about… Condoms…in…Young,…Multi-Partner…Heterosexuals,”… International Journal of STD & AIDS,…1(6):…422-8. Crosby,…R.…A.,…R.…J.…DiClemente,…G.…M.Wingood,…B.…K.…Cobb,…

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The Effect of Communication about Contraception with Sexual Partners on Contraceptive Behavior among Japanese Adolescents

MATANO Misaki  The…purpose…of…this…paper…is…to…examine…the…effect…of…communication…about…contraception…with… their…sexual…partner…on…contraceptive…behavior…among…Japanese…adolescents,…using…data…from…National… Survey…of…Japanese…Adolescentsʼ…Sexual…Behavior…conducted…by…the…Japanese…Association…for…Sex… Education.……The…results…of…binomial…logistic…regression…indicate…that…the…frequency…of…communication… about…contraception…with…their…sexual…partner…has…a…statistically…significant…positive…effect…on…femaleʼs… contraceptive…behavior…among…high…school…and…university…students.……On…the…other…hand,…the… communication…about…contraception…with…their…sexual…partner…does…not…affect…contraceptive…behavior… among…male…students.……In…order…to…protect…adolescents…from…the…disadvantages…of…unwanted… pregnancies,…in…addition…to…providing…them…with…accurate…knowledge…of…contraception,…comprehensive… sex…education…is…required…to…enable…adolescents…and…their…sexual…partners…to…communicate…sufficiently… about…contraception.… Keywords: adolescents,…contraceptive…use,…sexual…relationships

参照

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