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柴田 英貴 論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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柴田 英貴 論文内容の要旨

主 論 文

A high glucose condition sensitizes human hepatocytes to hydrogen peroxide-induced cell death

高グルコースの環境はヒト肝細胞において、

過酸化水素水による細胞死を助長する

柴田 英貴、市川 辰樹、中尾 一彦、宮明 寿光、竹下 茂之、秋山 祖久、

藤本 真澄、三馬 聡、神田 省吾、山崎 浩則、江口 勝美 Molecular Medicine Reports・Volume1,Number3,379-385,2008

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻

(主任指導教員:江口 勝美 教授)

緒 言:酸化ストレスは非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を含む様々な肝疾患 の進行の鍵となる役割を果たすとされている。肝疾患患者はインスリン抵抗性を基礎 にしばしば高血糖を来たすことが知られており、特に NASH 患者においては 2 型糖尿 病を合併する事が多い。そこで我々は、酸化ストレスによって誘導される肝細胞死に 対して、高グルコースの環境が及ぼす影響について検討した。

法:ヒト正常肝細胞由来細胞株である Hc 細胞を使用した。Hc 細胞を標準グル コース濃度(5.5mM)のダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)と高グルコース濃度(22mM)

の DMEM 培地で培養。高濃度グルコースの環境にするだけでは培養肝細胞に細胞死は 認めなかった。この培養細胞に対し、酸化ストレス物質として Reactive oxygen species (ROS)の一つである過酸化水素水を様々な濃度(0.01-1mM)で培地に添加し 細胞死を誘導した。今回の実験では、ミトコンドリア膜透過性遷移(MPT)を妨げる 物質として知られるサイクロスポリン A(CyA)、カスパーゼ阻害剤である Z-VAD-FMK

(z-VAD)を培地に添加し同様の検討を行った。細胞の生存率は、比色法を使って測 定した。細胞死の形態は、ヘキスト 33258 染色と Sytox Green を用いた染色方法を用 い、鏡検にて評価した。

(2)

結 果:高グルコース濃度の環境下において、Hc 細胞は 0.05-0.5mM の濃度とな るように過酸化水素水を添加することで容易に細胞死をきたした。しかしながら、標 準グルコース濃度の環境では過酸化水素水 0.05-0.5mM の濃度であっても細胞死は認 めなかった。また、過酸化水素 1mM の濃度ではグルコース濃度に関わらず細胞死をき たした。この実験にインスリン 100nM を添加しても同様の結果であった。この肝細胞 死は、ヘキスト染色を用いた観察では細胞の核の凝集は認めず、むしろ膨脹している ことが確認された。さらに、Sytox Green 染色によって核膜が脆弱となっている事が 示唆された。高濃度グルコース下において CyA を添加することで 0.05mM 過酸化水素 水による肝細胞死を妨げることができた。しかし z-VAD-FMK では防ぐ事は出来なかっ た。

考 察: 我々の研究は、生体内で十分に起こりうるブドウ糖濃度の環境と、通 常培養肝細胞に細胞死が起きない程度の過酸化水素濃度の組み合わせで、ヒト正常肝 細胞由来株である Hc 細胞に細胞死をきたすことを示した。この肝細胞死は、迅速に 誘導されており、核の膨張、核膜の脆弱化、汎カスパーゼ抑制剤での細胞死救済がで きないといった特徴を認めた。これらの結果は、本実験での細胞死の機序がアポトー シスよりむしろネクローシスであったことを示唆していた。さらに、本実験で観察さ れた細胞死は CyA によって阻害されている。CyA が酸化ストレスに起因するネクロー シスの主要因であるミトコンドリア膜透過性遷移(Mitochondrial permeability transition:MPT)を減弱させることは知られており、本実験系での細胞死のメカニ ズムが MPT と関連している可能性が示唆された。我々の実験結果は高濃度のグルコー ス環境における低用量の過酸化水素の追加が MPT に関連した相乗作用を起こすという 細胞死のメカニズムを示唆していると考えられる。肝細胞にとって高濃度グルコース の環境は、過酸化水素などの ROS に対する感受性を上げる可能性が考えられた。

高濃度グルコースと過酸化水素とが共存する状況は、臨床的に非常に重要である。

例えば、食後の高血糖が NASH の早期診断を可能とするといった報告があり、様々な 糖尿病治療薬が NASH に対して効果があると報告されている。しかし、肝細胞に関す るブドウ糖濃度の影響は、基礎的検討としては十分に調査されていない。我々の実験 結果は、肝細胞が糖尿病治療薬によって食後の高血糖の改善を得る事でインスリンシ グナルとは関係なく細胞死を免れている可能性を示唆している。

また、肝臓移植をうけた患者は糖尿病にかかりやすいという報告がある。それは、

肝臓移植片が酸化ストレス(例えば虚血性 reperfusion ストレス)にさらされること がその一因とされているが、我々の実験結果を踏まえると、そのような酸化ストレス の多い環境下は糖尿病による高血糖が加わる事で移植片肝臓に肝細胞死をきたす危 険性を高めると考えられる。さらに我々の研究結果は肝臓移植術後の免疫抑制剤とし て CyA がふさわしい可能性を示しているかもしれない。本研究結果より、ROS がその 病態に関係するとされる NASH、C 型肝炎、アルコール性肝疾患、さらには肝移植術後 患者に関してブドウ糖濃度の影響についてのさらなる調査が必要であると考えた。

(備考)※日本語に限る。2000 字以内で記述。A4 版。

参照

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