2019 年度 修士論文
衝撃弾性波法による RC 部材の 鉄筋付着切れ検出手法の基礎検討
首都大学東京大学院
都市環境科学研究科 都市基盤環境学域
学修番号 18851527 森 拓未
指導教員 博士(工学) 宇治 公隆
i
目次
序論 ... 1
研究背景 ... 1
研究目的 ... 2
本論文の構成 ... 3
既往の研究 ... 7
はじめに ... 7
弾性波の特性 ... 8
2.2.1 弾性波の種類 ... 8
(1) 縦波(P 波) ... 8
(2) 横波(S 波) ... 8
(3) 表面波(レイリー波) ... 8
(4) 板波(ラム波) ... 8
2.2.2 散乱と減衰 ... 9
2.2.3 弾性波の反射と音響インピーダンス ... 9
2.2.4 Snell の法則 ... 10
2.2.5 弾性波伝搬特性と損傷検出 ... 11
(1) 伝搬時間・弾性波速度 ... 11
(2) 周波数 ... 11
(3) 最大振幅 ... 11
2.2.6 衝撃弾性波法 ... 12
複合材料の弾性波速度およびコンクリートの弾性波速度に及ぼす鉄筋の 影響 13 2.3.1 複合材料の弾性波速度 ... 13
2.3.2 コンクリートの弾性波速度に及ぼす鉄筋の影響 ... 14
鉄筋腐食を発生させた電食 RC 供試体のコンクリート中の弾性波伝搬特性 に注目した実験的研究 ... 16
鉄筋腐食を発生させた電食 RC 試験体の腐食鉄筋中の弾性波伝搬特性に注 目した実験的研究 ... 16
鉄筋付着切れを模擬した石膏供試体における弾性波伝搬特性に関する実 験的研究 ... 17
電磁パルス法を用いた鉄筋腐食およびコンクリートと鉄筋の界面はく離
に関する研究 ... 17
ii
開口合成法による検討 ... 18
弾性波速度による鉄筋付着切れの有無および位置 推定の検討 ... 21
はじめに ... 21
RC 供試体中の弾性波の伝搬経路 ... 22
実験概要 ... 25
3.3.1 供試体概要 ... 25
3.3.2 衝撃弾性波法の測定方法 ... 28
3.3.3 計測システム概要 ... 29
3.3.4 弾性波速度の算出方法 ... 30
実験結果および考察 ... 31
3.4.1 コンクリート中および鉄筋中の弾性波速度の測定結果 ... 31
3.4.2 鉄筋腐食供試体での実験結果 ... 32
... 32
... 34
3.4.3 鉄筋付着切れ供試体での実験結果 ... 35
... 35
... 37
... 39
仮定条件を変えた計算値との比較 ... 39
まとめ ... 46
差分波形を用いた開口合成法による鉄筋付着切れ 検出手法の検討 ... 49
はじめに ... 49
実験概要 ... 50
4.2.1 供試体概要 ... 50
4.2.2 衝撃弾性波法の測定方法 ... 53
4.2.3 計測システム概要 ... 55
開口合成法に適用する入力波形 ... 56
4.3.1 開口合成法の概説 ... 56
4.3.2 開口合成法の入力波形に適用する差分波形 ... 57
4.3.3 差分二乗値を用いた開口合成法の概説 ... 59
iii
無筋部を参照部としたときの実験結果および考察 ... 61
4.4.1 開口合成法による解析結果の表示方法 ... 61
4.4.2 測定誤差の検討および健全鉄筋の可視化 ... 61
4.4.3 健全鉄筋部と付着切れ区間の比較 ... 64
4.4.4 供試体パラメータ(付着切れ模擬方法,鉄筋かぶり,付着切れ長 さ)による結果の違い ... 64
(5) 付着切れ模擬方法による違い ... 64
(6) 鉄筋かぶりによる違い ... 64
(7) 付着切れ長さによる違い ... 65
4.4.5 センサ配置による違い ... 65
鉄筋付着切れ検出手法の検討 ... 72
4.5.1 健全鉄筋部を参照部とした場合 ... 72
4.5.2 表示下限値を健全鉄筋部における差分値の最大値に設定した場合 77 まとめ ... 82
鉄筋腐食を生じた梁供試体における開口合成法の 適用 85 はじめに ... 85
実験概要 ... 86
5.2.1 供試体概要 ... 86
5.2.2 測定概要 ... 88
5.2.3 計測システム概要 ... 90
実験結果および考察 ... 91
5.3.1 測定誤差の検討 ... 91
5.3.2 開口合成画像一覧 ... 92
5.3.3 開口合成画像と供試体底面画像の比較 ... 94
まとめ ... 101
結論 ... 103
第 1 章 序論
1
序論
研究背景
沿岸部や寒冷地などの RC 構造物においては,飛来塩分や凍結防止剤などに よって,コンクリート外部から塩化物イオンが供給されやすい環境にあり,塩 害による鉄筋腐食が主な劣化要因となる.予防保全による維持管理の観点から,
コンクリート中の鋼材が発錆しない状態(潜伏期),もしくはコンクリート表 面に変状が現れない状態(進展期)で早期に鉄筋腐食の有無の判断が必要とな る.これは,腐食ひび割れにより鉄筋の付着切れが発生する状態(加速期)で は,コンクリート剥離などによる第三者被害の発生が懸念され,さらに劣化が 加速することで耐荷力や剛性の低下に繋がる恐れがあり,定量的な状態把握が 求められる(図 1-1)
1).しかし,塩害による鉄筋腐食では,コンクリート表面 での錆汁やひび割れが顕在化してからでないと腐食を判断することが難しい.
すなわち,鉄筋腐食およびそれに伴う鉄筋の付着切れを早期に非破壊で検出す ることが望まれる.
現状の RC 構造物の維持管理では,鉄筋腐食の可能性を把握するために土木 学会規準にて定められる自然電位法
2)が主に適用される.一方で,鉄筋とコン クリート間の付着および付着切れを非破壊にて検出することは難しく,研究段 階にていくつかの検討が進められている.たとえば,超音波速度の経時変化や 継続的な AE モニタリングによる発生頻度の傾向から鉄筋腐食あるいは付着状 態を推定する方法
3)やコンクリートから露出させた鉄筋に超音波を入力し,コ ンクリート表面で信号取得する方法
4)などである.これらは,測定期間が長期 に及ぶことやコンクリートの部分破壊を伴うなどの制約があり,完全非破壊に よる短期測定から鉄筋の付着状態を把握する技術が望まれる.
耐荷⼒、剛性の低下 進展期
Cl-
鉄筋の腐⾷開始 内部ひび割れ進展
劣化期 コンクリート⽚
剥離
加速期
Cl-
腐⾷ひび割れ 付着切れ発⽣
Cl-
潜伏期
コンクリート 鉄筋
Cl-
塩化物イオンの 浸透・蓄積
Cl- Cl-
図 1-1 塩害による RC 構造物の劣化過程
2 研究目的
近年では弾性波法を用いた非破壊試験において,コンクリート内部を伝搬し た弾性波の信号特性を分析することにより,内部に存在する欠陥(ひび割れや 空隙など)を把握する技術の研究が進んでいる.ここで,衝撃弾性波法は,鋼 球などの打撃により弾性波をコンクリート中に入力し,加速度計などのセンサ で伝搬してきた弾性波を受信する方法
5)である.この手法は,探触子を用いて 弾性波を入力する超音波法と比べ入力周波数が低く,骨材の影響を受けにくい ため,コンクリートを一様な弾性体とみなし測定ができる.さらに,測定方法 が簡便であり,短期測定が可能である.一方,弾性波の伝搬経路内に鉄筋が存 在する場合,測定結果には鉄筋の影響が少なからず含まれる.すなわち,衝撃 弾性波法を用いることでコンクリートと鉄筋の 2 層材料として扱える可能性が あり,測定波形を適切に分析することで,コンクリート内部の鉄筋の状態ある いは,コンクリートと鉄筋の付着状態を推定できる可能性がある.
そこで本研究では,鉄筋腐食が要因で生じるコンクリートと鉄筋の付着切れ を非破壊にて検出する手法の開発を目的とし,衝撃弾性波法による RC 部材の 鉄筋付着切れ検出手法に関する基礎検討を行った.なお実験は,コンクリート 表面にて腐食ひび割れが確認される前段階の潜伏期あるいは進展期を想定し,
コンクリートは健全な状態として行った.
3 本論文の構成
本論文は, 6 章により構成されている.
「第 1 章 序論」では,本研究の背景および目的を示した.
「第 2 章 既往の研究」では, RC 構造物の鉄筋腐食および鉄筋の付着切れの 早期発見のための既往の研究を整理したほか,本研究で主に用いた開口合成法 に関する既往の研究を整理した.
「第 3 章 弾性波速度を用いた鉄筋の付着切れ検出に関する検討」では,弾 性波速度による鉄筋腐食および鉄筋付着切れの推定を行うため, 600 × 250 ×
200mm の供試体を作製し検討を行った.供試体パラメータは鉄筋腐食の程度
(なし,腐食小,腐食大),付着切れの厚さ(なし,付着切れ薄,付着切れ厚),
付着切れ区間(なし, 25mm , 50mm , 100mm )とした.供試体上面コンクリー トの各鉄筋直上に AE センサを配置し,鋼球打撃による衝撃弾性波法により弾 性波速度を求めた.弾性波の伝搬距離を一定とし,鉄筋軸方向に測定区間を移 動させ,各測定点における弾性波速度と鉄筋腐食の有無,および付着切れ区間 との関係を検討した.その結果,鉄筋腐食の程度の差による明確な傾向は確認 されなかった.一方,付着切れの厚さが厚い場合,付着切れ区間において弾性 波速度が低下する傾向が確認された.以上のことから,弾性波速度により付着 切れの有無を推定することができる可能性が示唆された.
「第 4 章 衝撃弾性波法と開口合成法の組み合わせによる鉄筋付着切れ検出 方法の提案」では,開口合成法により付着切れ部分の可視化を試みた.実験で
は, 1000 × 600 × 150mm の版状供試体を作製し,供試体パラメータをかぶり
( 30mm, 50mm ),付着切れの模擬方法(ラップ,ビニルテープ),付着切れ区
間(なし, 50mm , 100mm , 150mm )とした.供試体上面コンクリートの各鉄 筋直上に加速度センサを配置し,鋼球打撃にて弾性波を入力し,信号検出を実 施した.また,無筋部にて同様の計測を行い,鉄筋直上での測定波形と無筋部 での測定波形の差分を開口合成法の入力波形とし,供試体断面内の累積差分値 を出力し,可視化した.その結果,付着切れ模擬鉄筋での測定結果は,健全鉄 筋部に比べ差分値が大きくなる傾向を示した.以上のことから,本実験により 付着切れ発生部を可視化できる可能性が示唆された.
「第 5 章 鉄筋腐食を生じた梁供試体における開口合成法の適用」では,鉄
筋腐食によるひび割れ発生後の供試体において上記 4 章の手法の適用性につい
て検討した.供試体は, 1460 × 80 × 140mm の梁状とし,内在塩分配置箇所の
異なる 3 体(塩分下中央,塩分下両端,塩分下全体,全て載荷試験済み)と比
較対象として健全供試体(塩分なし,載荷試験なし)の計 4 体とした.供試体
側面コンクリートの鉄筋直上に加速度センサを配置し,衝撃弾性波法を適用し
4
た.塩分供試体鉄筋直上での測定波形と健全供試体鉄筋直上での測定波形の差 分を開口合成法の入力波形とし,供試体断面内の累積差分値を出力し,可視化 した結果から適用性を検討した.
「第 6 章 結論」では,本研究により得られた知見を示した.
5 参考文献
1 )土木学会: 2018 年制定コンクリート標準示方書「維持管理編」, pp.131-134, 2018.
2 )土木学会規準 JSCE-E601-2018 :コンクリート構造物における自然電位測定 方法, 2018
3 )福冨隼人,渡辺健,西山航平,橋本親典:超音波法および AE 法による鉄筋 腐食の早期発見に関する研究,コンクリート工学年次論文集, Vol.39, No.1, pp.1795-1800, 2017.7
4 )榎園正義,谷倉泉:弾性波を用いた鉄筋とコンクリートの付着性状検査技 術の開発,コンクリート構造物の非破壊検査シンポジウム論文集 (Vol.5) ,一 般社団法人日本非破壊検査協会, pp,327~336, 2015.8
5 ) NDIS2426-2
:2014:コンクリートの非破壊試験法-弾性波法-第 2 部:衝撃弾
性波法,一般社団法人日本非破壊検査協会, 2014.9
第 2 章 既往の研究
7
既往の研究
はじめに
鉄筋コンクリート構造物における鉄筋とコンクリートの付着切れを非破壊試
験によって把握するための研究は,超音波法や AE 法および電磁パルス法など
の非破壊試験を用いた実験的な研究がなされている.本研究では衝撃弾性波法
を適用し,コンクリート中を伝搬する弾性波の弾性波伝搬速度に注目した検討
と,測定波形を重ね合わせ微弱な成分を増幅する開口合成法による検討を行っ
た.本章では主にこれらに関連した鉄筋腐食および鉄筋とコンクリートの付着
切れ検出に関する既往の研究を取りまとめた.
8 弾性波の特性
2.2.1 弾性波の種類
図 2.2-1 に弾性波の種類を示す.弾性波とは,弾性体内を伝搬する波のこと であり,非破壊試験で用いられるものには,縦波,横波,表面波および板波が ある
1).
図 2.2-1(a)に示す縦波( P 波: Primary wave )は,波の進行方向と同じ方向
( ” 縦方向 ” )に粒子が振動しながら伝わる波動のことで,疎密波または圧縮波 とも呼ばれる.固体,気体,液体を伝搬することができ,弾性波の中で最も速 く伝搬する.
図 2.2-1(b)に示す横波( S 波: Secondary wave )は,波の進行方向と垂直方
向( " 横方向 ” )に粒子が移動しながら伝わる波動のことである.表面に平行に
加えられたずれが方向を変えながら繰り返されて伝搬する波であるので,せん 断波とも呼ばれる.横波は,固体中は伝搬するが,液体および気体中ではせん 断の弾性がないため伝搬しない.
図 2.2-1(c)に示す表面波( Surface wave, Rayleigh wave )とは,材料の表面 層だけ伝搬する波のことである. Rayleigh 波の速度は横波よりも遅く,粒子は 表面に対して上下に動く成分と,表面に対し平行に動く成分があり,上下動よ りも水平動の速度の方が大きい.
波の進行方向に垂直な断面寸法が波長と同程度になると,側面で反射した波 が相互に干渉し合い,被導波が形成される.図 2.2-1(d)に示す板波は,板,
棒,管などに伝搬する被導波の総称であり,板で伝搬する波は特にラム波
( Lamb wave )と呼ばれる.
9 2.2.2 散乱と減衰
コンクリートを完全な弾性体とみなすと,一度励起された弾性波はいつまで も存続するはずであるが,実際のコンクリートは完全な弾性体ではないため,
コンクリート中の骨材や空隙の影響によりエネルギーが損失し,時間とともに 減衰する.高周波の波は低周波の波と比べて,すばやく減衰する.
2.2.3 弾性波の反射と音響インピーダンス
弾性波は,異なる物質の境界面に到達すると物質同士の音響インピーダンス の違いにより,その境界面で反射および屈折を起こす.音響インピーダンスお よび,物質 1 から物質 2 に弾性波が垂直に入射しその境界面で反射する際の反 射率は,以下の式で与えられる.
= (2.1)
= (2.2)
ここで, Z :音響インピーダンス, :密度, c :弾性波速度, R :物質 1 から 物質 2 に弾性波が垂直に入射したときの反射率, Z
1:物質 1 の音響インピーダ ンス, Z
2:物質 2 の音響インピーダンスである.
(a)縦波 (b)横波
(c)表面波 (d)板波
図 2.2-1 弾性波の種類
2)10
コンクリートを伝わる弾性波が内部の空隙や端部で反射する場合,音響イン ピーダンスの差が大きいためその反射率は 90% 以上となり,鉄筋とコンクリー ト間では,鉄筋の音響インピーダンスはコンクリートの音響インピーダンスの 5~6 倍となり,反射率は約 70% となる
3).
2.2.4 Snell の法則
図 2.2-2 に示すように鉄筋コンクリートのコンクリート中を伝搬する P 波
(青色矢印)は,コンクリート中に伝搬して鉄筋に到達すると,波の物理的性
質である Snell の法則に従ってコンクリートと鉄筋の境界面で屈折および反射を
起こす
4).このとき,コンクリートの P 波速度を V
1,鉄筋の P 波速度を V
2( V
1< V
2) , P 波の鉄筋への入射角を
1, P 波のコンクリートからの屈折角を
2とす ると,以下の関係が成り立つ.
= ( ≦ 90°) (2.3)
sin = (2.4)
ここに,
cは臨界角である.入射角
1が臨界角
cを超えると,鉄筋中へ弾性波 が伝搬せず,すべての成分が表面で反射する.例えば,コンクリートの P 波速 度を 4000m/s ,鉄筋の P 波速度を 5200m/s とすると,臨界角
cは式( 2.4 )より 約 50 °となる.
図 2.2-2 コンクリートと鉄筋における Snell の法則 θ
1コンクリート
θ
2 鉄筋V
2V
1( V
1< V
2)
屈折波θ
1 反射波⼊射波
(a)
1≦
cのとき
θ
1コンクリート
V
2V
1( V
1< V
2)
鉄筋
⼊射波 反射波
θ
1(b)
1>
cのとき
11 2.2.5 弾性波伝搬特性と損傷検出
弾性波を用いた非破壊検査では,弾性波の伝搬特性値が損傷部の通過後に変 化することを利用し,損傷検出を行っている
5).以下に弾性波伝搬特性と損傷 検出方法をまとめる.
図 2.2-3(a)に,弾性波が弾性体内部の損傷部を通過する際の伝搬経路の違 いを示す.構造物中に損傷部が存在する場合,弾性波は損傷部を回折して伝搬 するため伝搬経路が長くなる.このときの弾性波速度は,センサ間の直線距離 を弾性波の伝搬時間を除したもので表されるため,伝搬時間が遅くなるのに比 例し見かけ上の弾性波速度は低くなる.
図 2.2-3(b)に,弾性波が損傷部を通過する際の周波数の変化を示す.周波 数は,主に部材の共振周波数に着目して部材厚の計測に利用される.この手法 は衝撃弾性波法および超音波法として知られている.共振周波数は部材の厚み およびセンサ特性に依存するので,表面から損傷部までのコンクリートを板厚 とみなすことで,損傷検出が可能である.実験では,共振周波数を求めるため に検出信号に高速フーリエ変換( FFT )を適用し,卓越周波数と弾性波速度の 関係より( f=v/ λ )により損傷検出が行われる.
図 2.2-3(c)に,弾性波が損傷部を通過する際の振幅の減衰を示す.コンク リート中では,弾性波の伝搬過程中において,伝搬経路内のひび割れや空隙に より乱反射を生じるため,振幅は大きく減衰する.さらに,損傷部の存在によ り弾性波が回折し伝搬経路が長くなる場合にも振幅は小さく検出される.この 減衰に着目し,損傷の有無や大きさが評価可能となる.
(b)周波数の変化 (c)振幅の減衰 図 2.2-3 弾性波伝搬特性
検出点
(a)弾性波の経路
入力点
12 2.2.6 衝撃弾性波法
弾性波を用いた非破壊試験はその性質から,弾性波を励起させてその反射や
透過を論じる能動的計測手法(超音波法,衝撃弾性波法,打音法)と,外力や
内力変動が期待できる場合,構造物の欠陥箇所から励起される弾性波を計測す
る受動的計測手法(アコースティック・エミッション法( AE 法) )とに区別で
きる.能動的計測の中でも衝撃弾性波法は,コンクリート表面にセンサを配置
し,コンクリート表面あるいは鉄筋などの磁性体から弾性波をコンクリートに
入力する.弾性波の入力方法はハンマや鋼球などによる衝撃力を用いて弾性波
を入力する方法や,鉄筋などの磁性体を磁気的な力で振動させる方法(電磁パ
ルス法)など様々な手法が提案されている.本研究では,鋼球打撃により弾性
波の入力を行う衝撃弾性波法を用いた.衝撃弾性波法とは,鋼球などの打撃に
より弾性波をコンクリート中に入力し,加速度計などのセンサで伝搬してきた
弾性波を受信する方法
6)であり,入力周波数が超音波法と比較して低く,骨材
の影響や距離減衰の影響を比較的受けにくい測定手法である.
13
複合材料の弾性波速度およびコンクリートの弾性波速度に及ぼ
す鉄筋の影響
尼崎ら
7)は,複合材料の弾性波速度およびコンクリートの弾性波速度に及ぼ す鉄筋の影響について,以下のように考察している.
2.3.1 複合材料の弾性波速度
コンクリートの弾性波速度は,一般に,鋼材の弾性波速度よりも低いため,
弾性波伝搬時間の測定位置および測定方向によっては,伝搬時間の測定値が鋼 材の影響を受ける場合がある.
コンクリートと鋼材の二相からなる複合材料の弾性波伝搬モデルは, Chung が提案している
8)ように,図 2.3-1(a)のように考えることができる.すなわ ち,コンクリートと鋼材が十分に付着している場合には,両者の接点における 波動変位は等しくなくてはならないことから,接点での弾性波速度は等しく,
接点から離れていくと,それぞれ,鋼材の弾性波速度 v
sおよびコンクリートの 弾性波速度 v
cで伝搬すると考えることができる.このような弾性波速度分布の 関係は,表層部コンクリートが劣化し,弾性波速度が低下している場合も同様 と考えられる.
鉄筋位置近傍の弾性波速度は,図 2.3-1(b)に示すように,鋼材の周辺にコ ンクリートが存在する場合の分布となり,鉄筋部分を鉄筋軸方向に伝搬する弾 性波の速度(以下,鉄筋の有効速度)は鋼材およびコンクリートの固有の弾性 波速度の間に存在すると考えられる.なお,材料固有の縦波速度が次式で与え られる.
= 1
1 1 2 (2.5)
ここで, E :ヤング係数, :密度, :ポアソン比である.一方,材料の横寸 法が弾性波の波長程度になった場合の棒材速度は次式で与えられる.
= ⁄ (2.6)
14
2.3.2 コンクリートの弾性波速度に及ぼす鉄筋の影響
鉄筋の有効速度は,一般に,コンクリートの弾性波速度よりも高いため,弾 性波伝搬時間を鉄筋軸方向と平行に測定した場合には,鉄筋の有効速度の影響 を受けることがある.
コンクリートの弾性波速度を透過法あるいは表面法で測定する場合,伝搬時 間の測定位置近傍に測定方向と平行な鉄筋が存在すると,それぞれ,図 2.3-2 に示す二つの経路,すなわちコンクリート部分を伝搬する経路①と鉄筋部分を 伝搬する経路②のうち,伝搬時間が短く最初に受振子に早く到達した弾性波の 伝搬時間を測定することになる.鋼材中心から a の距離(表面法では図心かぶ り)で測定した弾性波の伝搬時間は,経路①の伝搬時間 t
1と経路②の最小伝搬 時間 t
2min,の短い方となる.伝搬時間 t
2およびその最小時間 t
2minは,それぞれ,
次式で与えられる
9), 10).
= 2 2√
( 2.7 )
= 1
∙ 2 1 (2.8)
ここで, =V
c/V
e, V
c:コンクリートの弾性波速度, V
e:鉄筋の有効速度.
(a)鋼材とコンクリートが付着
図 2.3-1 複合材料の弾性波伝搬モデル
7)(b)鉄筋近傍の速度分布
15
コンクリートの弾性波速度が鉄筋の影響を受ける場合の側線から鉄筋までの 最大オフセット量 a
maxは,図 2.3-2 に示す経路①と②の伝搬時間が等しくなる 場合で,次式で求められる.
= / /2 (2.9)
一方,鉄筋がコンクリートの弾性波伝搬時間に影響する範囲に存在しても,
伝搬時間 l
0が次式を満足する場合には, t
1≦ t
2minとなるため,伝搬時間は鉄筋の 影響を受けないことになる.
≦ 2 / 1 (2.10)
図 2.3-2 コンクリート中の鋼材と弾性波伝搬経路
7)16
鉄筋腐食を発生させた電食 RC 供試体のコンクリート中の弾性波
伝搬特性に注目した実験的研究
内田ら
11),原田ら
4),山上ら
12),福冨ら
13), 14)は,電食試験または内在塩分
によって鉄筋腐食を発生させた RC 供試体のコンクリート表面において,セン サから弾性波を入力し,センサで受信した測定波形を分析する超音波法の表 面法を適用し,鉄筋腐食および腐食ひび割れの発生前後で,主にコンクリー ト中の弾性波の伝搬速度がどう変化するか観察し,考察している.その結果,
原田ら,山上らによると,鉄筋腐食過程の腐食ひび割れ発生前は,腐食によ る膨張圧によって表層組織が緻密化し,弾性波の伝搬速度が高くなるとされ た.内田ら,原田ら,福冨らによると,内部ひび割れおよび腐食ひび割れ発 生後は,弾性波がひび割れを迂回するなど,ひび割れの影響を受けて弾性波 の伝搬速度が低くなることが明らかにされた.
また福冨らは,欠陥などの進展に伴い発生する弾性波を取得し評価するア コースティック・エミッション法( AE 法)も併用して鉄筋腐食による劣化の 進展を評価しており,これによると,鉄筋腐食の進行に伴い AE ヒット数の急 激な増加,振幅の増加などといった挙動を示し,鉄筋腐食の進展過程を評価 できたとされている.
鉄筋腐食を発生させた電食 RC 試験体の腐食鉄筋中の弾性波伝搬
特性に注目した実験的研究
河邉ら
15)は,電食試験体の端部に露出した鉄筋に直接センサを貼付け衝撃
弾性波法を適用し,弾性波伝搬速度と腐食との関係を考察している.これに
よると,鉄筋の伝搬速度は腐食初期段階では低下し,さらに腐食ひび割れが
生じるまで腐食が進行すると上昇することを明らかにした.これは腐食初期
段階では鉄筋に対する拘束が強まるのに対し,腐食が進行し,ひび割れが進
展することにより拘束が解放されるためであると考察しており,腐食初期の
変化を捉えられる可能性を示している.
17
鉄筋付着切れを模擬した石膏供試体における弾性波伝搬特性に
関する実験的研究
榎園ら
16)は,橋梁 RC 床版の補修工事において変状箇所あるいは塩化物イオ ン等の劣化因子を含む部分を除去する「はつり処理」における,ブレーカな どの打撃による従来工法と,水圧によって除去するウォータージェット工法
( WJ 工法)を行った後の鉄筋とコンクリートの一体性(付着切れ)を超音波 法により評価する技術の開発を試みている.石膏供試体を用いた基礎実験で は,健全な供試体と,グリスとアルミ箔を用いて一部区間に鉄筋付着切れを 模擬した試験体で,露出させた鉄筋からセンサにより弾性波を入力し,鉄筋 直上のコンクリート表面でセンサを 5cm 間隔で移動させ弾性波を受信する手 法を用いて,付着切れの有無による弾性波速度の違いを検討している.その 結果,付着切れを設けた区間の直上では,健全部と比較して伝搬速度が低く なることを明らかにした.またコンクリート供試体を用いた予備実験では,
未はつりの健全な供試体と,ブレーカにより一部をはつり処理し鉄筋の付着 切れ(欠陥部)を確認した供試体で同様の実験を行った結果,欠陥部ではブ レーカによる付着切れ(緩み)が生じた範囲の影響で伝搬速度が低くなった ことが確認されたとしている.
電磁パルス法を用いた鉄筋腐食およびコンクリートと鉄筋の界
面はく離に関する研究
内田ら
11),山上ら
12)は,電食試験によって鉄筋腐食を発生させた RC 供試体
において,コンクリート表面に非接触で励磁コイルを設置し,コイルと鉄筋
の電磁相互作用によって鉄筋が振動することで生じた弾性波の振動特性を分
析する,電磁パルス法を適用し,鉄筋腐食およびコンクリートと鉄筋の界面
はく離との関係を検討している.その結果,鉄筋振動により発生する弾性波
の減衰は,腐食ひび割れの影響によるものが大きいことを明らかにした.ま
た,受振波最大振幅値を用いることにより,コンクリート表面にひび割れが
生じる前において,コンクリートと鉄筋との界面のはく離,および鉄筋近傍
のひび割れを把握できる可能性があるとしている.
18 開口合成法による検討
開口合成法は,複数の受信点で受信した反射波を重ね合わせることで反射 源を可視化する手法であり,リモートセンシングなどの分野で用いられてい る
17).大野ら
18)は,部材厚 8m の RC 供試体表面において鋼球打撃による衝撃 弾性波法を適用し,反射位置推定への開口合成法の適用性を検討している.
その結果,開口合成法に P 波速度を用いた場合,反射波に含まれる P 波成分 の振幅が小さいため,反射位置の推定精度は十分ではなかったとした一方,
振幅の大きい反射 S 波の影響を考慮し,開口合成法に入力 P 波速度と反射 S 波
速度の平均値を用いることで,部材厚相当の位置で高い反射強度を得られた
としている.
19 参考文献
1 )大野健太郎:アコースティック・エミッション法の波形解析によるコンク リート破壊機構解明に関する研究,学位論文, pp.21-22, 2009
2)Thorne Lay, T. C. Wallace: Modern Global Seismology, Academic Press, pp4-6, 1995.1
3 )渡辺健,橋本親典,大津政康,水口裕之:インパクトエコー法における鉄 筋の影響に関する考察,コンクリート工学年次論文集, Vol.27, No.1, pp.1699- 1704, 2005
4 )原田和樹,渡辺健,橋本親典,石丸啓輔:鉄筋コンクリート内を伝播する 超音波を用いた鉄筋腐食の評価に関する検討,コンクリート工学年次論文集,
Vol. 35, No. 1, pp1879-1884, 2013.7
5 )(社)日本非破壊検査協会:新コンクリートの非破壊試験, pp61-84
6 ) NDIS2426-2
:2014:コンクリートの非破壊試験法-弾性波法-第 2 部:衝撃弾
性波法,一般社団法人日本非破壊検査協会, 2014.9
7 )尼崎省司,山本尚志:コンクリートの弾性波速度に及ぼす鉄筋の影響,コ ンクリート工学論文集, Vol. 18, No. 2, pp95-102, 2007
8)Chung, H. W.: Effects of embedded steel bars upon ultrasonic testing of concrete, Magazine of Concrete Research, Vol. 30, No. 102, pp. 19-25, March 1978.
9 )明石外世樹:コンクリートの非破壊試験に関する研究,土木学会論文集,
第 390 号 /V-8 , pp.1-22 , 1988 年 2 月
10)Y. Lin, T. Liou and C Hsiao : Influence of Reinforcing Bars on Crack Depth Measurement by Stress Waves, ACI Materials Journal, pp.407-418, July-August 1998 11 )内田慎哉,鎌田敏郎,稲熊唯史,長谷川昌明:鉄筋腐食に伴うコンクリー
ト表層部の変状調査への非破壊試験の適用,コンクリート工学年次論文集,
Vol.30, No.2, pp.823-828, 2008
12 )山上晶子,松本浩嗣,二羽淳一郎:鉄筋断面内腐食分布と各種非破壊試験 手法の関連に関する基礎研究,コンクリート工学年次論文集, Vol.36, No.1, pp.2080-2085, 2014.7
13 )福冨隼人,渡辺健,宮崎一樹,橋本親典:超音波法による鉄筋腐食の早期 発見に関する実験的研究,コンクリ ート工学年次論文集, Vol.38, No.1, pp.2169-2174, 2016.7
14 )福冨隼人,渡辺健,西山航平,橋本親典:超音波法および AE 法による鉄
筋腐食の早期発見に関する研究,コンクリート工学年次論文集, Vol.39, No.1,
pp.1795-1800, 2017.7
20
15 )河邉亮太,国枝稔,三浦泰人,中村光: RC 部材の腐食鉄筋中を伝搬する 弾性波特性に関する検討,コンクリ ート工学年次論文集, Vol.36, No.1, pp.1168-1173, 2014.7
16 )榎園正義,谷倉泉:弾性波を用いた鉄筋とコンクリートの付着性状検査技 術の開発,コンクリート構造物の非破壊検査シンポジウム論文集 (Vol.5) ,一 般社団法人日本非破壊検査協会, pp,327-336, 2015.8
17 )たとえば,岩立次郎,田中雅人,舘石和雄,三木千壽:回転探触子を用い た開口合成システムによる超音波探傷の分解能向上の試み,土木学会論文集,
Vol.1995, No.507/I-30, pp.121-127, 1995.1
18 )大野健太郎,内田慎哉,岩野聡史:衝撃弾性波法による部材厚 8m の RC 供 試体の反射源可視化への開口合成法の適用,コンクリート工学年次論文集,
Vol.41, No.1, pp.1787-1792, 2019.7
第 3 章 弾性波速度による鉄筋付着切れ有無および位置推定
の検討
21
弾性波速度による鉄筋付着切れの有無および位置推
定の検討
はじめに
本研究では,鉄筋コンクリートにおいて鉄筋腐食によりひび割れが生じる前 までの状況下にて,鉄筋付着切れが発生したことを想定して供試体を作製し,
実験を行った.本章では, 2 章で紹介した既往の研究のうち主に 2.3 の考え方 および 2.6 の実験を参考にし,あらかじめ腐食させた鉄筋を配置した供試体と,
意図的に鉄筋に付着切れ区間を設けた供試体を作製し,コンクリート表面にて
鋼球打撃による衝撃弾性波法を適用し,弾性波速度を評価指標とした検討結果
を示す.
22 RC 供試体中の弾性波の伝搬経路
2.2.4 で紹介した Snell の法則および,2.3 の複合材料の弾性波速度およびコ ンクリートの弾性波速度に及ぼす鉄筋の影響で紹介した考え方に従って,弾性 波を鉄筋コンクリート表面の打撃点から入力し,センサで受信するときの最短 伝搬経路を考えたとき,図 3.1-1 に示すような 2 通りの伝搬経路になると考え られる.一方はコンクリートのみを伝わる場合で,青色破線で示すコンクリー ト表層付近を伝わる波(直達波と称する)の経路である.また,もう一方はコ ンクリートの P 波速度と比較してその速度が高い鉄筋を経由して伝わる場合で ある.この場合,オレンジ色実線で示すようにコンクリート表面から鉄筋に臨 界角で弾性波が入射し,鉄筋を伝搬した後,臨界角でコンクリートに戻り受信 センサまで伝搬する波(鉄筋経由波と称する)の経路である.ここで,衝撃弾 性波法の測定で算出する見かけの弾性波速度(弾性波速度と称する)は,打撃 点最寄りのトリガセンサから受信センサまでの距離を, 2 センサ間を伝搬する のに要した時間で除したものになる.すなわち,トリガセンサでの弾性波到達 時刻を t
0,他方の受信センサに直達波が到達する時刻を t
Dとすると,直達波の 弾性波速度は,次のように表せる.
= (3.1)
ここに, V
D:直達波の弾性波速度, L
0:打撃点からトリガセンサまでの距離,
L :打撃点から受信センサまでの距離, t
0:トリガセンサでの弾性波到達時刻,
t
D:受信センサにおける直達波の初動到達時刻である.
同様に,鉄筋経由波の経路を伝搬した場合の受信センサで記録される初動到 達時刻 t
R,およびこれから算出される鉄筋経由波の弾性波速度は,次のように 表せる.
= 2 2√
( 3.2 )
= (3.3)
ここに, t
D:受信センサにおける直達波の初動到達時刻, x :弾性波の入力点か
ら鉄筋の臨界角地点までの水平距離,および受信センサ近傍の臨界角地点から
23
受信センサまでの水平距離, c :鉄筋かぶり, V
r:鉄筋の弾性波速度, V
c:コン クリートの弾性波速度, V
D:鉄筋経由波の弾性波速度である.
これを整理すると,直達波と鉄筋経由波どちらが先に受信センサに到達する かは,コンクリートと鉄筋のそれぞれの P 波速度,鉄筋かぶりおよび打撃点と 受信センサ間の距離(打撃-受信間距離 L と称する)によって決まる.
図 3.1-2 は,式( 3.1 )および式( 3.3 )において V
c=4000m/s , V
r=5200m/s ,鉄 筋かぶりを 50mm と仮定した場合に,測定時の打撃-受信間距離 L と算出され る P 波速度 V の関係を計算した結果である.図より,打撃-受信間距離が
250~300mm 以上になると得られる P 波速度が速くなることがわかる.これは,
直達波よりも鉄筋経由波の方が早く到達することを意味する.本検討では,こ の直達波と鉄筋経由波の見かけの弾性波速度の差に着目して実験を行い,付着 切れ有無やその位置を推定する検討を行った.すなわち,鉄筋経由波の経路が 弾性波の最短伝搬経路になる条件下で,鉄筋とコンクリートの付着状態が悪い 箇所でコンクリートから鉄筋,あるいは鉄筋からコンクリートに弾性波が伝わ りづらくなることで,測定される弾性波速度が健全な場合と比較して低くなる と考えられ,これによって鉄筋の付着切れ箇所を推定できる可能性がある.
( )鉄筋経由波
( )直達波
打撃点 受信センサ
V c コンクリート
鉄筋
L
x x V r
トリガセンサ
c L 0
図 3.1-1 弾性波の伝搬経路と弾性波速度の算出方法
24 3800
4000 4200 4400 4600
100 200 300 400 500
P
波速度V (m /s)
打撃点-受信センサ間距離
L (mm)
直達波鉄筋経由波
図 3.1-2 打撃-受信間距離 L と P 波速度 V の計算値
( V
c=4000m/s, V
r=5200m/s, c =50mm と仮定した場合)
25 実験概要
3.3.1 供試体概要
供試体は写真 3.3-1 に示すように, 250 × 600 × 200mm の角柱供試体とし,鉄 筋(異形棒鋼 D13 を 1 本)をコンクリート表面からかぶり 50mm として配置し た.コンクリートの使用材料を表 3.3-1 に,コンクリートの計画配合を表 3.3- 2 に示す.
コンクリート打込み前の供試体を写真 3.3-2 に示す.供試体は,塩害による 劣化の初期および後期を模擬し,あらかじめ電食により腐食させた長さ 700mm の鉄筋を配置した鉄筋腐食供試体を 2 体,鉄筋のまわりにビニルテープ(基 材:塩化ビニル)を所定の回数( 1 回巻き(厚さ 0.18mm ), 3 回巻き(厚さ
0.54mm )),および所定の長さ( 25mm , 50mm , 100mm )に巻いて鉄筋とコン
クリートの付着切れを模擬した付着切れ模擬供試体を 2 体作製した.併せて鉄 筋の腐食および付着切れ区間を設けていない健全な鉄筋を埋設した供試体を 1 体作製し,供試体を合計 3 体作製した.供試体名一覧を表 3.3-3 に示す.供試 体は,鉄筋かぶり側の測定面が型枠面になるようにコンクリートを打込み,材 齢 2 日において脱型し,材齢 28 日まで湿布養生した.材齢 28 日におけるコン クリートの圧縮強度は 32.6N/mm
2,静弾性係数は 25.0kN/mm
2であった.
写真 3.3-1 供試体概要
26
粗骨材の スランプ 水セメント比 空気量 細骨材率
最大寸法 sl W/C Air s/a 水 セメント 細骨材 粗骨材 混和剤 Gmax(mm) (cm) (%) (%) (%) W C S G Ad
20 8.0 55 4.5 46.6 172 313 819 953 1.252
単位量(kg/m³)
表 3.3-2 コンクリートの計画配合
材料 記号 摘要
水
W
上水道水セメント
C
普通ポルトランドセメント(密度:3.16g/cm³
)細骨材
S
相模原市産砕砂(表乾密度:2.57g/cm³
,粗粒率:2.89
) 粗骨材G
相模原市産砕石(表乾密度:2.61g/cm³
,実積率:59.8%
)AE
減水剤「マスターエアNo.70
」(変形リグニンスルホン酸化合物とポリオールの複合体を主成分とする)
空気連行剤「マスターエア
303A
」(アルキルアリルスルホン酸化合物系および陰イオン界面活性剤を主成分とする)
Ad
- 混和剤
表 3.3-1 コンクリートの使用材料
表 3.3-3 供試体名一覧
供試体名 鉄筋腐食模擬方法 付着切れ模擬方法
健全 なし なし
腐食小 電食48時間 -
腐食大 電食96時間 -
付着切れ小 - ビニルテープ1回巻き
( 0.18mm 厚)
付着切れ大 - ビニルテープ3回巻き
( 0.54mm 厚)
27
(a)健全
写真 3.3-2 コンクリート打込み前の型枠写真
(e)付着切れ大
(d)付着切れ小
(b)腐食小 (c)腐食大
28 3.3.2 衝撃弾性波法の測定方法
衝撃弾性波法の測定では,供試体表面の鉄筋直上にセンサを固定し,打撃点
で直径 4.0mm の鋼球を打撃することにより弾性波を入力し,打撃点近傍のトリ
ガセンサおよび受信センサで弾性波を受信した.センサには 60kHz 共振型 AE センサを使用し,ホットメルト接着剤を用いてコンクリート表面に固定した.
入力した弾性波はトリガセンサで弾性波の初動を受信した時刻から 10% のプリ トリガを設定して記録を開始し,各センサで受信した弾性波はプリアンプにて 60dB 増幅後,サンプリング時間間隔 0.1s (サンプリング周波数 10MHz ) ,サ ンプリング数 5004 個の振幅値データとして記録した.
鉄筋腐食供試体における測定では,図 3.3-1 に示すように打撃点を定めて AE センサを配置し(打撃-受信間距離 L=200, 250, 300, 350, 400, 450, 500mm ) , 20 回打撃分のデータの測定を1箇所で行った.
付着切れ供試体における測定では,図 3.3-2 に示すように打撃点を定めて AE センサを配置し( L=350, 400, 450, 500mm ),鉄筋腐食供試体と同様に測定を行 った.ただし,測定箇所は複数あり,打撃点から各受信センサまでを計測範囲 としたとき,計測範囲を供試体の端部から他方の端部まで図中の x 軸方向に 10mm ずつ移動させながら各測定箇所で 20 回打撃分のデータを測定した.測定 箇所は合計 24 箇所である.
[unit : mm]
(Φ=4.0mm鋼球 )
300 50@3=150
50
100 50 25
150 150
150 50 150
60kHz共振型 AEセンサ
付着切れ区間 コンクリート 鉄筋D13
x
図 3.3-2 供試体概要およびセンサ配置(鉄筋付着切れ供試体)
[unit : mm]
(Φ=4.0mm鋼球 )
150 50@6=300
50
50
60kHz共振型 AEセンサ
コンクリート 鉄筋D13
(電⾷済み)
50 50
図 3.3-1 供試体概要およびセンサ配置(鉄筋腐食供試体)
29 3.3.3 計測システム概要
計測システム概要を写真 3.3-3 および図 3.3-3 に示す.
写真 3.3-3 計測システム概要
鋼球
供試体 AE センサ
プリアンプ
スコープ オシロ
記録⽤ PC プリアンプ
電源
:⼊⼒ :出⼒
サンプリング時間間隔 0.1s
(サンプリング周波数 10MHz )
図 3.3-3 計測システム概要
30 3.3.4 弾性波速度の算出方法
弾性波速度の算出は,トリガセンサと各受信センサで受信した測定波形の初 動到達時刻の差と,トリガセンサと各受信センサとの距離を用いて算出した.
各センサの測定波形における初動到達時刻は,赤池情報量規準
1)により自動的 に決定し,これにより弾性波の伝搬時間を取得した.測定 1 地点にて 20 回分の 伝搬時間を平均し,対応する伝搬距離から伝搬時間を除して弾性波速度を算出 した.
コンクリート単体の弾性波速度は,鉄筋直上における表面法の適用時に鉄筋 の影響を受けないと考えられる打撃-受信距離 200mm で測定した結果を用いた ほか,写真 3.3-4 に示すように透過法における打撃-受信間距離 250mm での測 定も行った.
鉄筋単体の弾性波速度は,コンクリート打設後に写真 3.3-5 に示すようにセ ンサを配置し,打撃-受信間距離 700mm として測定した.
写真 3.3-4 コンクリートの弾性波速度測定(透過法)
写真 3.3-5 鉄筋の弾性波速度測定
31 実験結果および考察
3.4.1 コンクリート中および鉄筋中の弾性波速度の測定結果
コンクリート中および鉄筋中の弾性波速度の測定結果を表 3.4-1 に示す.コ ンクリート中の弾性波速度は供試体の違いによる多少のばらつきが見られ,表 面法による測定結果では,健全供試体の速度が他の供試体と比較して低くなっ た.これはコンクリート打設の際に5つの供試体全てに同じバッチのコンクリ ートを打ち込むことができず,品質に多少のばらつきが生じたことに起因する と考えられる.また,表面法( L=200mm )と透過法( L=250mm )の結果を比較 すると透過法での速度の方が全体的に速くなっていることがわかるが,これは 打撃点から入力した P 波の振動方向と受信センサ内の振動子の振動方向が一致 する透過法での測定の方が,表面法では捉えられない P 波の小さな振幅を捉え ることができ,より正確な P 波速度を測定できたということを示唆していると 考えられる.
表面法
(
L =200mm
)(m/s)
透過法
(L
=250mm
)(m/s)
健全
3979 4299 5182
腐食小4213 4432 5130
腐食大4249 4348 5138
付着切れ小4213 4299 5231
付着切れ大4121 4331 5330
平均4155 4342 5202
供試体名コンクリートの
弾性波速度
V
c 鉄筋の 弾性波速度V
r(L
=700mm
)(m/s)
表 3.4-1 コンクリート中および鉄筋中の弾性波速度
32 3.4.2 鉄筋腐食供試体での実験結果
図 3.4-1 に健全,腐食小および腐食大供試体の上面で測定した結果を示す.
縦軸は P 波速度 V ,横軸は打撃-受信間距離 L である.すべての供試体で打撃
-受信間距離が長くなるにつれて P 波速度が速くなっていることがわかる.こ こで図 3.4-2 に,写真 3.4-1 に示すように供試体側面で同様に測定した結果を 示す.側面での測定では鉄筋までのかぶりが大きく,鉄筋の影響を受けていな いと考えられた.測定結果においてもそれが表れており,打撃-受信間距離の 増加に伴う P 波速度の増加等は確認できず,一定の速度を有することが確認で きる.よって供試体上面での測定結果は,測定間距離が大きい場合に鉄筋の影 響を受けている可能性が示唆された.また,本傾向は鉄筋腐食の有無に関係せ ず,コンクリートから鉄筋へ弾性波が伝搬していることを裏付けるものであり,
鉄筋とコンクリート間の付着が十分に確保されていると推察される.本供試体 の作製では,事前に鉄筋を腐食させたのち,コンクリートを打込んだため,鉄 筋-コンクリート間の付着が十分に得られたと考えられる.
3800 3900 4000 4100 4200 4300 4400 4500 4600
200 250 300 350 400 450 500
P
波速度V (m /s)
打撃-受信間距離
L (mm)
健全腐食小 腐食大
図 3.4-1 P 波速度測定結果(上面)
33
写真 3.4-1 供試体側面における測定 3800
3900 4000 4100 4200 4300 4400 4500 4600
200 250 300 350 400 450 500
P
波速度V (m /s)
打撃-受信間距離
L (mm)
健全腐食小 腐食大
図 3.4-2 P 波速度測定結果(側面)
34
続いて供試体ごとのコンクリート中の弾性波速度の差の影響を除いて比較す るために,各供試体の結果において,鉄筋の影響を受けていないと考えられる L=200mm での P 波速度を V
0としたときの P 波速度比 V/V
0を算出した.図 3.4- 3 に算出結果のグラフを示す.これによると, P 波速度と同様に,打撃-受信間 距離が長くなるにつれてすべての供試体における P 波速度比が大きくなってい ることがわかる.図 3.1-2 に示した数値実験の結果のように,すべての供試体
で L=300mm 付近から鉄筋経由波の P 波速度が速くなっていたことに着目する
と,鉄筋-コンクリート間の付着は確保されていると考えられる.また,各供 試体の P 波速度比の差が小さいことから,腐食により生じた錆が P 波速度に及 ぼす影響は小さいと推察される.
0.95 1 1.05 1.1 1.15
200 250 300 350 400 450 500
P
波速度比V / V
0打撃-受信間距離
L (mm)
健全腐食小 腐食大
図 3.4-3 P 波速度比 V / V
0の算出結果
35 3.4.3 鉄筋付着切れ供試体での実験結果
3.2.2 で述べた弾性波の伝搬経路についてより詳しく説明する.図 3.4-4 に 鉄筋付着切れ供試体における弾性波の伝搬経路のイメージおよび P 波速度の予 想模式図を示す.伝搬経路のイメージ図では,上の図から下の図に行くにつれ てセンサ群を x 軸方向に走査している様子を示しており,青色点線矢印は直達 波を,オレンジ色実線矢印は鉄筋経由を示している.図 3.4-4(a)(b)には打 撃点下付近に付着切れがある場合,および受信センサ下付近に付着切れがある 場合を示している.図 3.4-4(c)(d)には打撃点下付近に付着切れがある場合,
および受信センサ下付近に付着切れがある場合の P 波速度の予想模式図を示し ている.図中の青色斜線の範囲は付着切れの影響を受けると予想した区間(付 着切れ影響区間)を示している.縦軸は P 波速度 V ,横軸は打撃点の x 座標で ある.なお,付着切れ区間では弾性波がコンクリートから鉄筋に伝搬しないと 仮定する.
図 3.4-4(a)の打撃点下付近に付着切れ区間がある場合,供試体端部からセ ンサ群を走査していくと,鉄筋経由波の経路においては付着切れ区間に阻まれ,
弾性波が Snell の法則における臨界角で鉄筋に伝わらなくなる.すると弾性波は,
付着切れ区間外の部分から鉄筋に伝わることになり,鉄筋経由波の伝搬経路が 長くなることで直達波の方が早く到達するため,測定される P 波速度は直達波 の速度,すなわちコンクリートの P 波速度になるまで低下する.さらにセンサ 群を走査させていくと,再び弾性波が臨界角で鉄筋に伝わるようになる結果,
P 波速度が回復する.この一連の流れは図 3.4-4(c)の P 波速度の予想模式図 でも示している.図 3.4-4(b)の受信センサ下付近に付着切れ区間がある場合 は,鉄筋からコンクリートに弾性波が伝わる際に同様の考え方ができ, P 波速 度の予想模式図は図 3.4-4(d)のようになると考えた.
また,健全部と付着切れ区間での P 波速度の差は,コンクリートと鉄筋の弾
性波速度の差が大きいほど,鉄筋のかぶりが小さいほど,打撃-受信間距離が
長いほど大きくなると予想され,付着切れ区間の推定をしやすくなると考えら
れる.しかし,打撃-受信間距離が長いほど弾性波は減衰するため,最適な打
撃-受信間距離を検証する必要がある.
36
(d)受信センサ下付近に 付着切れがある場合の
P 波速度の予想模式図
P波速度V(m/s)
打撃点x座標(mm) 計算値
付着切れ影響区間
図 3.4-4 弾性波の伝搬経路のイメージおよび P 波速度の予想模式図
(c)打撃点下付近に 付着切れがある場合の
P 波速度の予想模式図
P波速度V(m/s)
打撃点x座標(mm) 計算値
付着切れ影響区間
θc θc
θc θc
θc
θc
x
(a)打撃点下付近に 付着切れがある場合の
伝搬経路のイメージ
θc θc
θc θc
θc θc
x
(b)受信センサ下付近に 付着切れがある場合の
伝搬経路のイメージ
37
測定結果を図 3.4-5 に示す.図 3.4-5(a)には供試体概要およびセンサ配置 を再掲する. P 波速度は打撃-受信間距離 L ごとに示している.図中の青色斜 線部は付着切れ影響区間であり,ビニルテープによる付着切れ区間 100mm の影 響を受けると予想した区間である.打撃-受信間距離によって P 波速度が途中 から切れている結果があるのは, x 軸方向に沿ってセンサ群を走査させていく と距離によっては受信センサが供試体の端部まで到達し,それ以降は測定でき ないためである.
すべての供試体での計測結果から,打撃-受信間距離が長いほど, P 波速度 が速くなっている傾向が確認できる.これは,3.2.2 の図 3.2-3 でも述べたよ うに,鉄筋の影響により打撃-受信間距離が長くなるにつれて算出される P 波 速度が速くなるからと考えられる.図 3.4-5(b)に示す健全供試体での結果で は,付着切れ区間がないものの P 波速度は多少変動しているように見える.こ れは,測定時の鋼球打撃位置の精度や,打撃強さを一定に保てないことなどの 測定上の誤差や,供試体中の骨材や空隙の影響によるものと考えられ,今後測 定精度の向上が必要である.
図 3.4-5(d)の付着切れ厚供試体での結果に注目すると,打撃点 x 座標が付 着切れ影響区間に差しかかるにつれ, P 波速度が低下していることがわかる.
しかし事前の予想とは異なり,コンクリートの速度まで低下することはなかっ た.これは,ビニルテープを貼り付けた付着切れ区間からも少なからず弾性波 が鉄筋に伝搬した可能性が考えられるほか,臨界角を超えるような場合でも,
鉄筋の節の部分から弾性波が鉄筋に伝搬した可能性などが考えられる.なお,
図 3.4-5(c)の付着切れ薄供試体での結果では P 波速度が落ちる傾向は小さか
った.これはビニルテープの厚さが比較して薄く,付着切れ区間からも鉄筋に
弾性波が伝搬したためであると考えられる.
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4000 4100 4200 4300 4400 4500 4600 4700
0 50 100 150 200 250
P波速度V(m/s)
打撃点x座標(mm)
L= 350mm L= 400mm L= 450mm L= 500mm
(b)健全
図 3.4-5 P 波速度測定結果と供試体概要およびセンサ配置
(c)付着切れ薄
4000 4100 4200 4300 4400 4500 4600 4700
0 50 100 150 200 250
P波速度V(m/s)
打撃点x座標(mm)
L= 350mm L= 400mm L= 450mm L= 500mm
付着切れ影響区間
(d)付着切れ厚
4000 4100 4200 4300 4400 4500 4600 4700
0 50 100 150 200 250
P波速度V(m/s)
打撃点x座標(mm)
L= 350mm L= 400mm
L= 450mm L= 500mm
付着切れ影響区間
[unit : mm]
300 50@3=150
50
100 50 25
150 150
150 50 150
x
(a)供試体概要およびセンサ配置
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P 波速度の測定結果と Snell の法則を用いた計算モデルにて算出した結果を併 せて図 3.4-6~3.4-8 に示す. P 波速度の計算値は, (1)で述べた考え方のもと,
表 3.4-1 に示した各供試体のコンクリートおよび鉄筋の弾性波速度用いて計算 した.図 3.4-6 に示す健全供試体での結果では, P 波速度はどの打撃-受信間 距離でも概ね計算値に近い値を推移していることがわかる.一方,図 3.4-7,
図 3.4-8 に示す付着切れ薄および付着切れ厚供試体での結果では,複数ある付 着切れ区間の影響を複合的に受けることを加味したため,打撃-受信間距離に よっては計算値のグラフが複雑に推移している.しかし,付着切れ区間の影響 を加味して低下する計算値と比較して,実際の測定結果の低下は限定的なこと がわかる.このため,計算値算出時の仮定が誤っている可能性が考えられたた め,仮定を変えて計算値を算出することを試みた.
仮定条件を変えた計算値との比較
弾性波がコンクリートと鉄筋の間を臨界角以下で出入りするという仮定をや め,図 3.4-9 に示すように,何らかの影響で臨界角を上回る場合でも付着切れ 区間の反対側から弾性波が鉄筋に出入りできるという仮定のもとで計算値を算 出した.
P 波速度の測定結果と新しいモデルでの計算結果を併せて図 3.4-10,図 3.4-
11 に示す.新しい仮定のもとでの計算値は,速度の推移が小さく,付着切れ薄
および付着切れ厚供試体のどの打撃-受信間距離においても,計算値と実際の
測定結果の推移が概ね一致しているように見える.このことから,実験前の予
想とは異なり,必ずしも Snell の法則が成り立つとは言えないと考えられ,さら
なる検討が必要である.また,健全部と付着切れ区間での P 波速度の差が小さ
く,測定上の変動が大きいことから,この手法により付着切れ区間の推定を行
うことは困難であると考えられる.
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4000 4100 4200 4300 4400 4500 4600 4700
0 50 100 150 200 250
P波速度V(m/s)
打撃点x座標(mm)
L= 350mm 計算値
(a)L=350mm
4000 4100 4200 4300 4400 4500 4600 4700
0 50 100 150 200 250
P波速度V(m/s)
打撃点x座標(mm)
L= 400mm 計算値
(b)L=400mm
4000 4100 4200 4300 4400 4500 4600 4700
0 50 100 150 200 250
P波速度V(m/s)
打撃点x座標(mm)
L= 450mm 計算値
(c)L=450mm
4000 4100 4200 4300 4400 4500 4600 4700
0 50 100 150 200 250
P波速度V(m/s)
打撃点x座標(mm)
L= 500mm 計算値