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Title 中国の家庭部門における燃料使用量の推計と室内空気汚染の影響評価 ( Dissertation_ 全文 ) Author(s) 郭, 敏娜 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL

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(1)

Title

中国の家庭部門における燃料使用量の推計と室内空気汚

染の影響評価( Dissertation_全文 )

Author(s)

郭, 敏娜

Citation

Kyoto University (京都大学)

Issue Date

2015-09-24

URL

https://doi.org/10.14989/doctor.k19296

Right

Type

Thesis or Dissertation

Textversion

ETD

(2)

中国の家庭部門における燃料使用量の推計と

室内空気汚染の影響評価

(3)
(4)

i

目次

第 1 章 序論 ... 1 1.1 研究の背景 ... 1 1.1.1 室内空気汚染問題 ... 1 1.1.2 家庭部門エネルギー消費からの寄与 ... 2 1.1.3 屋外の大気汚染からの寄与 ... 4 1.2 研究の目的 ... 7 1.3 研究の対象 ... 7 1.4 論文の構成 ... 8 第 2 章 既往研究と本研究の位置付け ... 11 2.1 家庭部門エネルギー消費量に関する研究 ... 11 2.1.1 中国以外の家庭部門エネルギー消費量に関する研究 ... 11 2.1.2 中国の家庭部門エネルギー消費量に関する研究 ... 13 2.2 室内空気汚染に関する研究 ... 15 2.2.1 中国以外の室内空気汚染に関する研究 ... 15 2.2.2 中国の室内空気汚染に関する研究 ... 16 2.3 室内空気汚染の曝露モデルに関する研究 ... 17 2.4 本研究の位置づけ ... 19 第 3 章 中国の地域別、都市農村別の家庭部門エネルギー消費構造と消費量の推計 .... 21 3.1 本章の目的 ... 21 3.2 推計手法 ... 21 3.2.1 全国の都市・農村別、用途別、燃料種別のエネルギー消費構造の検討 ... 22 3.2.2 全国の都市農村別、用途別家庭部門エネルギー消費割合の推計 ... 23 3.2.3 地域別、都市農村別、用途別、燃料種別のエネルギー消費量の推計方法 ... 24 3.2.4 地域別、都市農村別、用途別、燃料種別エネルギー消費構造の推計式 ... 27 3.3 入力データの整備 ... 29 3.3.1 地域別、都市・農村別、燃料種別の家庭部門エネルギー消費量 ... 29 3.3.2 地域別、都市・農村別の基本情報 ... 30 3.4 地域別、都市農村別の家庭部門エネルギー消費量の推計結果と考察 ... 37 3.4.1 暖房用エネルギー消費量 ... 37 3.4.2 調理・給湯用エネルギー消費量 ... 38 3.4.3 照明用エネルギー消費量 ... 39 3.4.4 冷房用のエネルギー消費量 ... 40 3.4.5 電化製品用のエネルギー消費量 ... 41

(5)

ii 3.5 地域別、都市・農村別、用途別のエネルギー消費構造の分析と考察 ... 43 3.5.1 地域別、都市・農村別、用途別の電力消費量 ... 43 3.5.2 地域別、都市・農村別、用途別の一人当たりのエネルギー消費量 ... 44 3.6 地域別、都市・農村別、用途別のエネルギー消費バランス表 ... 45 3.7 まとめ ... 48 第 4 章 中国の地域別家庭部門での用途別、燃料種別の汚染物質排出量 ... 50 4.1 本章の目的 ... 50 4.2 家庭での燃料燃焼に伴う室内 PM2.5 排出量の推計方法 ... 50 4.3 家庭での燃料燃焼に関する室内 PM2.5 排出係数 ... 51 4.4 家庭での燃料燃焼に伴う室内・屋外の両方へ PM2.5 排出量の結果 ... 54 4.5 まとめ ... 57 第 5 章 微環境個人曝露モデルによる曝露濃度の推計 ... 59 5.1 本章の目的 ... 59 5.2 微環境個人曝露モデル ... 59 5.3 各微環境の平均濃度の計算方法 ... 60 5.4 地域別、都市農村別の生活時間 ... 63 5.4.1 地域別、都市・農村別の屋外、室内の労働時間の推計 ... 63 5.4.2 地域別、都市・農村別の年齢属性別微環境滞在時間 ... 64 5.5 地域別、都市・農村別の住空間パラメータの設定 ... 66 5.6 微環境曝露モデルでの曝露濃度の計算結果 ... 68 5.6.1 全年齢・属性別平均の日平均曝露濃度の地域比較 ... 68 5.6.2 年齢・属性別の日平均曝露濃度 ... 70 5.7 既往の測定値との比較 ... 71 5.8 制御対策の導入による改善効果の推計結果 ... 71 5.8.1 都市と農村の石炭を天然ガスに転換するケース ... 71 5.8.2 農村のバイオマスを天然ガスに転換するケース ... 72 5.9 まとめ ... 72 第 6 章 結論 ... 74 参考文献 ... 79 付録 ... 88

(6)

iii

Figure 1.1 Global satellite-derived averaged PM2.5 over 2001-2006(van Donkelaar et al. 2010) ... 5

Figure 1.2 Simulated PM2.5 concentration in China by CMAQ Model (Hao, 2008) ... 5

Figure 1.3 Location of target area of the study ... 8

Figure 1.4 Research Framework ... 10

Figure 3.1 Energy service, device, and fuel type in Rural and Urban area of China ... 23

Figure 3.2 Per capita heating energy consumption in urban in 2007 ... 38

Figure 3.3 Per capita heating energy consumption in Rural in 2007 ... 38

Figure 3.4 Per capita cooking・hot water energy consumption in urban in 2007 ... 39

Figure 3.5 Per capita cooking and hot water energy consumption in rural in 2007 ... 39

Figure 3.6 per capita light energy consumption in urban in 2007 ... 40

Figure 3.7 per capita light energy consumption in rural in 2007 ... 40

Figure 3.8 Per household electricity power consumption for cooling in urban in 2007 ... 41

Figure 3.9 Per household electricity consumption of cooling in rural in 2007 ... 41

Figure 3.10 Per household electricity consumption for appliance energy in urban in 2007 ... 42

Figure 3.11 Per household electricity consumption for appliance energy in rural in 2007 ... 42

Figure 3.12 Penetration of household appliances of urban households in each province in 2007 ... 43

Figure 3.13 Penetration of household appliances of rural households in each province in 2007 ... 43

Figure 3.14 Per household electricity consumption by energy service in urban in 2007 ... 44

Figure 3.15 Per household electricity consumption by energy service in Rural in 2007 ... 44

Figure 3.16 Provincial per capita energy consumption by energy service in urban area in 2007 ... 45

Figure 3.17 Provincial per capita energy consumption by energy service in rural area in 2007 ... 45

Figure 4.1 Various stove for cooking and heating in rural area ... 51

Figure 5.1 PM2.5 emission map ... 61

Figure 5.2 Classification of area ... 64

Figure 5.3 Annual PM2.5 exposure concentration for urban male aged between 65~69 ... 68

Figure 5.4 Annual PM2.5 exposure concentration for rural female aged between 60~64 ... 68

Figure 5.5 Provincial average personal exposure to PM2.5 in urban area ... 69

Figure 5.6 Provincial average personal exposure to PM2.5 in rural area ... 70

Figure 5.7 National average personal exposure to PM2.5 in urban for each sex and age group ... 70

Figure 5.8 National average personal exposure to PM2.5 in rural for each sex and age group ... 71

Figure 5.9 Provincial average personal exposure to PM2.5 in rural area(Coal to natural gas) ... 71

(7)

iv

Table 1.1 Households distribution by fuel consumption type ... 4

Table 1.2 PM2.5 index in China ... 6

Table 1.3 Target area of this study ... 8

Table 2.1 Air pollutant concentration from residential cooking in Guangzhou City by fuel type ... 16

Table 3.1 Energy consumption by fuel type and energy service in rural in 1995 ... 24

Table 3.2 Energy consumption by fuel type and energy service in urban and rural ... 24

Table 3.3 Lower heating value of major fuel in China ... 30

Table 3.4 Heating and cooling degree-days in each provinces ... 32

Table 3.5 Socio-demographic attributes for urban and rural households in each province in 2007.... 33

Table 3.6 Ownership of durable consumer goods per 100 urban household in 2007 ... 34

Table 3.7 Ownership of durable consumer goods per 100 rural households in 2007 ... 35

Table 3.8 Unit energy consumption ... 36

Table 3.9 The efficiency of energy consuming equipment by Urban and Rural ... 36

Table 3.10 Provincial energy consumption by service and fuel type for urban households in 2007 .. 47

Table 3.11 Provincial energy consumption by service and fuel type for rural households in 2007 .... 48

Table 4.1 Summary of emissions factor of PM ... 53

Table 4.2 Emission factors of PM2.5 used in this study ... 54

Table 4.3 PM2.5 emissions from residential sector by energy service and fuel type in 2007 ... 55

Table 4.4 PM2.5 emissions from urban households by energy service and fuel type in 2007 ... 56

Table 4.5 PM2.5 emissions from rural households by energy service and fuel type in 2007 ... 57

Table 5.1 Category of micro-environment in this study ... 60

Table 5.2 State of the art of the indoor air pollution analysis ... 62

Table 5.3 Classification of individual attributes ... 63

Table 5.4 Time use activity categories in this study ... 65

Table 5.5 Children’s daily time allocation used in this study ... 66

Table 5.6 Area setting for each micro-environment in this study ... 67

(8)

1 第1章 序論 1.1 研究の背景 1.1.1 室内空気汚染問題 大気汚染は人間の健康に対する主要なリスクであり、屋外のみならず室内における汚染 も問題となっている。また汚染による影響については、複数の先行研究が人々の生活時間 の約 80%~90%が室内での活動であると発表しており(Klepeis et al., 2001;Schweizer et al., 2007;Chen and Zhao, 2011)、特にお年寄り、幼い子ども、長期疾患による寝たきりの病人の 室内滞在時間が最も長く、室内空気汚染による健康へのリスクがさらに高まると言われて いる(Sood , 2012)。 室内での空気汚染には様々な要因が挙げられる。先進国における室内空気汚染の一例と して、日本の厚生労働省は「健康な日常生活をおくるために:シックハウス症候群の予防 と対策」(厚生労働省, 2004)において、「室内空気汚染の主たる原因は、壁紙からのホルムア ルデヒド、冬季の石油ヒータによる暖房、タバコの煙、そして調理排気である」と報告し ている。さらに、「住宅室内の高気密化などが進んだため、化学物質による空気汚染が起こ りやすくなっている。また室内空気汚染が進み、湿度が高くなると細菌、カビ、ダニが繁 殖しやすくなる」と説明している。このように、先進国では経済発展とともに室内生活の 多様化が進み、健康被害を与える要因も様々である。 一方で、発展途上国においては、先進国とは異なり室内での空気汚染の要因は、主に家 庭での生活活動(調理、暖房など)のための燃料燃焼により、排出された汚染物質であると言 われている。発展途上国の多くの地域では室内の換気が不十分な条件下で、不完全燃焼を 起こしやすい簡易な設備を用いて調理、暖房などを行う。従って有害物質が発生した後、 それが高濃度な状態で室内に留まりやすくなり、生活者の健康に悪影響を及ぼす。特に、 粒子の空気力学径が 2.5μm 以下の微小粒子状物質(PM2.5)は肺に奥深くまで入り喘息、 循環器系疾患、COPD、肺がんなど病気を引き起こす(Kurmi et al., 2012, Lim et al., 2012)。中 国の環境保護省では 2002 年 11 月 19 日に「室内空気質指標」を公表し、翌年 3 月より導入 されて室内での空気汚染による健康被害の軽減を図った(GB/T 1883-2002)。この基準による と、粒子直径が 10μm 以下の粒子状物質(PM10)は、日平均 150μg/m3を超えて摂取しては いけないと定められている。WHO (2009)によると、室内での固体燃料使用に起因する室内 空気汚染による早死者は年間 200 万人と見積られており、最も深刻な問題と認識されてい る。また、中国だけでも室内汚染による早死者数は年間約 54 万人と推計されており、室内 空気汚染は環境リスクの中でも最も影響が大きいと指摘されている。 中国の室内空気汚染は主に二つの部門による寄与が大きい。一つ目は、家庭部門エネル ギー消費によって排出された汚染物質の寄与である。二つ目は屋外の大気汚染からの寄与 である。

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2 1.1.2 家庭部門エネルギー消費からの寄与 世界の人口の 50%以上は、固形燃料を住居内で、調理や暖房のために使用している(Bruce, 2000)。発展途上国においては、家庭内で使用される燃料の大部分は石炭やバイオマス(薪、 作物残差、動物の糞)などの固形燃料である。 WHO(2002)によると家庭で固形燃料(バイオマス、石炭)を燃焼することによって排出され た煙が発展途上国の人々に対して大きな健康リスクを招くとされている。世界の疾病負担 研究(Global Burden of. Diseases, GBD)(WHO, 2010)では、調理需要を満たすのに必要な燃 料をすべて固形燃料とした場合、発生する大気汚染による早死者は推計で約 350 万人に上 ると発表した。さらに、屋外大気汚染による死亡者のうち 50 万人は、家庭での調理ための 燃料燃焼により屋外に排出された汚染物質に起因するとされている。(Bruce et al., 2014;Lim et al., 2012)。固形燃料の燃焼による室内空気汚染物質の曝露は慢性閉塞性肺疾患、肺がん、 喘息などの呼吸器系疾患、低体重児、眼病などの病気や死亡と関わっており、世界全体で は健康被害のトップ 8 に入っている(Bruce, 2000; Boy et al., 2002; Kurmi et al., 2012)。発展途 上国を対象とした研究では、5 歳以下の子供の急性下気道感染症がバイオマス燃焼と関わっ ており、30 歳以上の成人においては慢性閉塞性肺疾患が石炭の燃焼に関わっていると報告 されている(Smith et al., 2004)。

多くの先進国では調理・給湯、暖房に消費されている燃料は電気とガスに入れ替られた が、未だにアイルランド、スコットランドのような寒冷地域にある国は発展途上国と同じ ように固形燃料を暖房に使用している(Sood, 2012)。Semple et al., (2012)のの研究によると、 アイルランド、スコットランドにおける石炭、薪や動物の糞を暖房のために燃やして排出 した PM2.5 の日平均濃度は、それぞれ 7μg/m3、6μg/m3、11μg/m3と測定された。Lévesque et al., (2001)はカナダのケベック・シティーにおける暖房を使用する目的で、ペーチカ(ロシ アの暖炉兼オーブンのことをいう)で薪を燃焼し、室内に排出された CO、NO2、HCHO と PM10 濃度を測定した。その中で、測定した PM10 の一日平均濃度は 11μg/m3となっている。 中国の農村地域では家庭内で調理・給湯や暖房の用途に使用されるエネルギー源の大部 分が石炭やバイオマス(薪、作物残渣、動物の糞)などの固形燃料である。中国全土の約 7 割 の家庭が固形燃料(石炭とバイオマス)に依存していると推計されている(Smith et al., 2004)。 Zhang et al., (2007)の研究では 2001 年に中国全土の家庭部門での石炭、バイオマスを燃焼し て発生した PM2.5 はそれぞれ 0.77Tg、3.08Tg と推計があり、地域別の PM2.5 排出量では、 多い地域は山東省、河北省、広東省、河南省、江苏省であると述べた。さらに、バイオマ スの燃焼による PM 排出量は石炭より多く、最も多いのが作物残渣からの寄与であって、石 炭より約 2 倍高いと推計されている。2001 年の家庭部門において、同じ燃料を使用した場 合、改良後の調理、暖房器具から測定した PM2.5 と CO 濃度は、伝統的な器具からより 46% ~74%が小さいとの報告もあった(Chowdhury et al., 2013)。 1) 中国の都市・農村別の家庭部門エネルギー消費状況

(10)

3

中国では土地が広いため、気候、地理など条件によって地域性が多様である。そのため に、都市・農村別の家庭部門での燃料種や、地域間のエネルギー使用量が大きく異なる。 特に農村地域での家庭用燃料の使用量はその地域の資源賦存量の状況や、経済状況とイン フラ整備状況に深く関わっていることがいくつかの研究の結果として示された(Wang and Feng, 2001; Li et al., 2009a)。例えば、チベットでは化石燃料資源が少ないため、家庭では、 主にバイオマスを燃料として使用しており、燃料としての動物糞、農業残渣と電気の消費 量割合は 52.9%、46.8%、0.3%となっている(文, 土, 2011)。

1980 年に家庭部門エネルギー消費量は国民一人当たりに約 97.7kgce(2.9GJ)となり、2010 年になると約 258.3kgce(7.6GJ)となった。家庭部門での一人当たりのエネルギー消費量が 30 年間で約 2.6 倍に増加した(CEInet Statistics Database)。2010 年に中国の固形燃料(バイオマス、 石炭)を使用する人口比率は、都市地域において 26%~50%となり、農村地域においでは 76% ~95%となった。また、中国の農村地域においては、2010 年に調理・給湯に消費された石 炭とバイオマス(薪、作物残渣、動物の糞)の消費割合は全農村地域の約 78%を占めると推計 されました(Tang and Liao 2014)。

2) 中国での用途別家庭部門エネルギー消費状況 家庭部門のエネルギーは、主に調理・給湯、暖房、照明、冷房、家電製品に使用されて いる。用途別の燃料種から見ると、北京市、上海市のような経済が発展している都市地域 では、調理・給湯に使用する燃料は主に電気とガスとなっている。一方、中国の北部、中 部と経済発展していない農村地域において、調理・給湯と暖房に消費する主な燃料は石炭 とバイオマス(作物残渣、薪、動物の糞)となっている。 2006 年の第二次全国農業調査資料によると、22,108 万世帯を対象として、家庭部門での 調理・給湯に使われる燃料の割合は、バイオマスが高く、天然ガス、電力など品質が高い 燃料は低くなっていることが分かった、二つ以上燃料を使用した家庭では主要な燃料種だ け数える、Table 1.1 に示す(中国国家統計局編, 2008)。これはバイオマスの方が比較的入手 しやすく安価なためである。特に甘粛省と、北部に位置する吉林省において、調理にバイ オマスもしくは石炭を使用している世帯数の割合は約 95%であり、農村地域において、バ イオマスは主な生活用燃料であると言える。中国では、こうした現況が今後続くとされて いる(寇 et al., 2008)。

(11)

4

Table 1.1 Households distribution by fuel consumption type

燃焼種 世帯数(万) 全世帯割合(%) 作物残渣、薪 13,318 60.2 石炭 5,762 26.1 天然ガス、石炭ガス 2,642 11.9 電力 182 0.8 バイオガス 145 0.7 その他 59 0.3 中国の第 6 回人口センサスデータによると、2010 年に約 490 万の農村人口と 170 万の都 市人口は石炭や場バイオマスを調理に消費されている。山西省、河南省、広州省の農村地 域では、ぞれぞれ、60.0%、35.1%、34.7%の世帯が石炭を調理に使用している(Tang and Liao, 2014)。また、9 万以上の世帯を対象とした調査によると約 34.1%の世帯で集中暖房ではなく 個別暖房を使用している。この世帯数の割合を燃料種別に見ると、石炭、電気、バイオマ スを使用して暖房に使用している家庭はそれぞれ、16.7%、15.6%、12.8%のである。 1.1.3 屋外の大気汚染からの寄与 Pekey et al. (2010)の研究では先進国において室内の大気汚染は約 70%が屋外の大気汚染 からの寄与であるという結果になっており、室内空気質が屋外の大気汚染に影響されるこ とが明らかになっている。 屋外の大気汚染は、大きく人為起源、自然起源、バイオマス燃焼起源と分類されている。 その排出物質は微小粒子状物質(PM2.5)の一次粒子、NOx、SOx、および非メタン炭化水素な どがある。特に、PM2.5 は室内、屋外のいずれにおいても大気汚染物質に対する寄与の大き な物質の一つである。PM は、発生源から直接排出される一次粒子と、ガス状物質から化学 反応によって生成する二次生成粒子に分けられる。人為起源の一次粒子の主な発生源は、 化石燃料(石炭、ガソリンなど)の燃焼である。特に、空気動力学径が 2.5 ㎛以下の微小粒子 状物質(PM2.5)は、肺の奥深くまで入り呼吸器系疾患や循環器系疾患、ガンなどの病気や死 亡の原因となっている。室内、屋外のいずれの大気汚染物質の中でも寄与の大きな物質の 一つである。WHO は 2005 年に、大気汚染ガイドラインを改定し PM2.5 の指針値を年平均 10μg/m3、日平均 25μg/m3と設定した(WHO, 2005)。

van Donkelaar et al., (2010)は、アメリカ航空宇宙局 (NASA) の二つ衛星から、2001 年から 2006 年におけるグロバールの PM2.5 平均濃度の分布図を作成した (Figure 1.1) 。Figure 1.1 によると、北ヨーロッパ、東アジアと中国の PM2.5 が高い値を示した。インドの東部 PM2.5

濃度は高く、特に冬の季節に 80~100 ㎍/ mg3となっている。中国の東部での PM2.5 年平均

濃度は 60~90 ㎍/mg3となり、特に工業地域では PM2.5 の濃度は 100 ㎍/m3よりも高い値を示

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5

Figure 1.1 Global satellite-derived averaged PM2.5 over 2001-2006(van Donkelaar et al. 2010)

Hao(2008)では 2005 年に中国の北部都市の PM2.5 濃度は 80~100 ㎍/m3であり、南部都市 は 40~70 ㎍/m3であった(Figure 1.2)。これはアメリカの基準値 15 ㎍/m3の 5 倍から 6 倍であ ると指摘されている。CAMAQ(大気輸送モデル)の結果は、中国の大部分において PM2.5 の 濃度が高いことを示しており、PM2.5 汚染が中国の多くの地域にとって深刻な問題であるこ とを意味している。 mg/m3 mg/m3 mg/m3 mg/m3

Figure 1.2 Simulated PM2.5 concentration in China by CMAQ Model (Hao, 2008)

2012 年に中国の環境保護省は、環境基準として『環境大気基準(GB 3095—2012)』(2016

年 1 月 1 日から適用)を公表し、今までの大気汚染物質の規制対象である SO2、NO2、PM10

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6 大気の汚染度は一級、二級基準の 2 つに分類され、それぞれについて汚染物質の基準値が 設定されている。以下の Table 1.2 は PM2.5 の環境基準値である。一級基準は自然保護区、 風到名勝エリア、及び特殊な保護が必要な地域が汚染物質の基準値である。二級基準は都 市計画の中で確定された居住エリア、商業・交通及び住民の混合エリア、文化エリア、工 業エリア、及び農村地区の汚染物質の基準値である。

Table 1.2 PM2.5 index in China

国 年平均値 (㎍/ m3) 1 日平均値 (㎍/ m3) 排出基準 中国 <15 <35 1 級基準 <35 <75 2 級基準 しかし、近年経済の発展や都市化の進展に伴い、中国の大気汚染状況はさらに深刻と なっている。2013 年に 328 箇所の都市で観測された PM10 の年平均濃度は 98μg/m3となり、 年平均の 15μg/m3の基準値を大幅に超えた。2013 年 1 月 13 日に北京市の一部の地域では、 PM2.5 濃度が 900μg/m3を超えたことを中国の環境保護省が発表した。また、1 月 29 日に は、粒子状物質により汚染された大気の面積は、中国の国土面積の 14.9%である 143 万平 方キロに達した。北京市、天津市、河北省、河南省、山東省、江蘇省、安徽省、湖北省、 湖南省等の広い地域で高濃度の PM2.5 が観測され、「重度の汚染」状態と判断された。しか も高濃度な状態(日平均値>75 μg/m3)が数日間継続した。同日、北京市では PM2.5 の日 平均値は 354 μg/m3であり、200 メートル先までしか見通せない状况となった(中国環境保 護省, 2013)。2014 年に中国の環境保護省が京津冀(北京市、天津市、河北省)都市群と中 国全土の 74 都市の大気環境基準達成日数を発表した。報告によると、京津冀では大気環境 基準達成日数は 156 日であり、わずか 42.8%であり、環境基準を満たしていない汚染物質 は PM2.5、PM10 であった(中国環境保護省, 2014)。 中国の環境保護省は「空気指数(AQI)技術規定」に基づいて、AQI は 201~300 となった場 合「重度の汚染」、301 以上となった場合を「深刻な汚染」と定めている。北京市環境保護 部(2015)では、2015 年に「北京市重度大気汚染応急対応マニュアル」が施行された。このマ ニュアルは、数日間の大気汚染の汚染程度を予測し、それに応じて市民に注意を呼びかけ るために、警報を出すものである。警報レベルは、弱い方から順に四級(青色)、三級(黄色)、 二級(オレンジ色)、一級(赤色)の 4 段階に分類されている。青色警報は「重度の汚染」が1 日間続くことを示し、黄色警報は「深刻な汚染」もしくは 2 日間「重度の汚染」が続くこ とを、オレンジ色警報は 3 日間「重度の汚染か深刻な汚染」が続くことを、赤色警報は 3 日間以上「深刻な汚染」が続くことを表す。屋外の大気汚染の深刻化によって、「重度の汚 染」と発表される日に政府からお年寄り、子どもなど健康上で問題がある人は戸外の活動 を控えるように警告を出すようになってきた。

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7 1.2 研究の目的 2008 年に中国で実施された生活時間利用調査(2008)によると、生活時間の 80%~90%を室 内で過ごしているとの調査結果を報告している(国家統計局社科司, 2009)。汚染物質の発生 源が室内にある場合には、室内空気の汚染濃度は屋外の大気汚染物質濃度より高くなる場 合が多い。そのため、長時間室内に滞在する傾向の高い子供、妊婦、お年寄りと病人たち の健康リスクが高くなる。また子供は体重比での呼吸量が成人より 50%も多いことと、子 供の生活時間の 80%以上が室内であることから、成人より室内空気汚染に対する健康リス クが高いと言える。 室内空気汚染物質を減少させるためには家庭内で生活用固形燃料(石炭、バイオマス)を減 らすのが一つの手段である。しかし、単純に生活用固形燃料の使用量を減らすだけでは、 生活に支障をきたす。家庭内で調理・給湯、冷暖房など人々の生活活動の需要を満たすと 共に、室内空気汚染を減少するためには、家庭部門エネルギーの構造と需要を把握する必 要がある。そのためには、家庭部門用途別エネルギーがどのぐらい必要なのかを把握する 必要があるため、地域別、用途別、燃料種別の家庭部門エネルギー消費量の現状を明らか にすることが課題となっている。 以上より、本研究は、以下の目的で分析を行う。 (1) 調理・給湯、暖房機器などの効率を考慮し、統計資料を最大限に活用して、家庭 部門のエネルギー消費量を地域別、都市・農村別、用途別、燃料種別に推計する。 (2) 室内での PM2.5 排出係数を収集し、家庭部門エネルギー消費による PM2.5 の排出 量を推計する。 (3) 時間平均アプローチによる微環境個人曝露モデルを用いて、室内・屋外の両方か らの曝露を考慮した PM2.5 の年齢属性別の曝露濃度を示す。 (4) 制御対策の導入による改善効果を示す 1.3 研究の対象 1) 対象地域 使用した統計データ「中国能源統計年鑑 2008」にはチベットの情報が記載されていない ため、本研究の対象省は、Table 1.3 に挙げる香港、台湾、マカオとチベットを除いた中国の 30 省(都市・農村を含む)とする。都市・農村別で計算すると合計 60 箇所を対象地域とする。 各省の位置は Figure 1.3 に示す。

(15)

8

Table 1.3 Target area of this study 対象地域 北京市 天津市 上海市 河北省 内蒙古自治区 遼寧省 吉林省 山東省 山西省 黒竜江省 海南省 雲南省 陝西省 浙江省 江蘇省 安徽省 湖北省 湖南省 河南省 広東省 福建省 四川省 重慶市 江西省 寧夏回族自治区 新疆 青海 甘粛省 貴州省 広西省

Figure 1.3 Location of target area of the study

2) 対象年 現況の分析年:2007 年 3) 対象物質 家庭部門のエネルギー消費による排出された PM2.5 とする 1.4 論文の構成 本論文の構成を Figure 1.4 に示す。 第 1 章では、中国における室内空気汚染の現状とその原因に関する既存の情報を分析し、 本研究の目的、研究対象、目的を達成するための課題について説明した。中国の室内空気 汚染の原因には、家庭部門のエネルギー消費からの寄与と屋外からの寄与があり、屋外の 大気汚染も深刻化していることから、屋外から屋内への寄与も適切に取り扱う必要がある ことを示した。また、都市・農村別の家庭部門のエネルギー消費による排出される汚染物 質が室内空気汚染に対する寄与は燃料種によって異なるため、住居内で調理や暖房のため に使用するバイオマスや石炭などの消費量を推計する必要があることを示した。

(16)

9 第 2 章では、第 1 章で述べた目的に関連して、家庭部門エネルギー消費量、室内空気汚 染物質濃度と室内空気汚染による曝露量に関する中国や中国以外の国を対象とした先行研 究についてレビューし、本研究の位置づけを述べた。 第 3 章では、調理・給湯、暖房機器などの効率を考慮し、統計資料を最大限に活用して、 家庭部門のエネルギー消費量を地域別、都市・農村別、用途別、機器別に推計した。これ は、まず、都市農村別の家庭部門での用途別、機器、燃料種の関係を詳細に分析した上で、 用途別・燃料種別のエネルギー消費量の推計手法を検討する。次に、全国の都市・農村別、 用途別、燃料種別エネルギー消費構造を分析して、調理・給湯と暖房に消費された石炭と バイオマスの割合を推計した。最後に、用途別、燃料種別のエネルギー消費量の推計式を 用いて、地域別、都市・農村別、用途別、燃料種別のエネルギー消費量を推計した。 第 4 章では、家庭部門からの PM2.5 排出量を評価する。本章ではまず家庭での燃料を燃 焼に伴う PM2.5 排出量の推計方法を検討し、推計式を示す。そして、PM2.5 排出量を推計 するために必要な PM2.5 排出係数を文献から収集する。ここでは収集した PM2.5 排出係数 がどの程度中国の室内汚染状況の実態を反映できるのかについて検討し、決定した PM2.5 排出係数を用いて都市・農村別、燃料種別、用途別の PM2.5 排出量を推計する。最後に、 都市・農村別、用途別、燃料種別の PM2.5 排出量について図表で示し、考察する。 第 5 章では、まず微環境個人曝露モデル(以下曝露モデルと呼ぶ)について説明し、設定し た微環境の扱いと各微環境における平均濃度の計算方法を式で説明する。次に、曝露モデ ルに必要な子ども・大人別の生活時間、微環境別の換気回数、地域別、都市・農村別の微 環境の容積など住空間パラメータの扱いと設定について述べる。最後に、第 4 章での地域 別、都市・農村別、燃料種別、用途別の家庭部門燃料の燃焼による PM2.5 排出量を用いて、 年齢・属性別の微環境滞在時間と合わせて、時間平均アプローチによる微環境個人曝露モ デルを適用し、都市・農村別、年齢・属性別の人々の全曝露量に占める各発生源からの寄 与を推計する上に、既往研究の結果を比較する。 最後に、第 6 章では各章から得られた主な結果、知見についてまとめる。

(17)

10

(18)

11 第2章 既往研究と本研究の位置付け

2.1 家庭部門エネルギー消費量に関する研究

2.1.1 中国以外の家庭部門エネルギー消費量に関する研究

アメリカは家庭部門エネルギー消費量に早い段階から注目してきた国の一つである。 Energy Information Administration (以下 EIA)が 1978 年から毎年、家庭部門エネルギー消費量 について調査しており(Residential Energy Consumption Survey, RECS) 、世界の中でも家庭部 門エネルギー消費に関するデータが整っている。近年では 2009 年に 12,083 世帯のサンプル を対象にした調査実施された。EIA はこの調査で家庭部門エネルギー消費量を用途別に得る ことにより、アメリカ国内における家庭部門のエネルギー消費の詳細な分析を行った。こ の調査・分析結果により、家庭部門の省エネルギー対策について、より具体的な考察が可 能になった。

Schaffrin and Reibling(2015)は、欧州連合における気候変動緩和の代表的な対策の1つが、 家庭部門のエネルギー消費を削減することであると論じている。この研究では、収入や生 活状態の違いを考慮した生活光熱費の分析を行った。その結果、収入は生活光熱費に大き く影響することが分かり、高所得者は低所得者よりも、エネルギー消費がはるかに多いこ とが報告された。また、低所得者は支出に対する光熱費の割合が大きいことも分かった。 Bonjour et al., (2013)は家庭内の調理のうち、固形燃料使用による室内空気汚染及び人体へ の健康被害を世界全地域について評価した。具体的には、各国の経済状況、及び各家庭の 収入や生活状況の違いを考慮するため、マルチレベルモデリングによって各階層について 分析し、家庭部門の調理における固形燃料消費量を評価した。この研究で使用した固形燃 料消費データは世界 155 ヶ国の過去 30 年の間で収集したもので、対象地域として、世界を アフリカ、アメリカ、東地中海、ヨ-ロッパ、東南アジアと西太平洋の 6 地域に分けてい る。この結果、世界全地域について 1980 年は調理に使用する全燃料のうち固形燃料の使用 率は 62%であったが、2010 年に 41%まで減少したことが分かった。特にアフリカと東南ア ジアでは固形燃料を使用する家庭が多く、固形燃料を使用する世帯は 6 割以上を占める。 一方、西太平洋、東地中海についてはそれぞれ約 46%と 35%と、アフリカと東南アジアに 比べて少ない。アメリカとヨ-ロッパにおける固形燃料の使用世帯は 2 割に留まり、高収 入の世帯では固形燃料の使用は 5%以下と、さらに少なくなることが分かった。 Wilhite et al., (1996)らは、福岡県と、ノルウェーの首都オスロを対象に、家庭内での生活 におけるエネルギー消費と文化との関係について調査した。その結果、ノルウェーでの家 庭部門のエネルギー消費は主に暖房と照明に限定されたが、日本では入浴の習慣があるた め、給湯に使用するエネルギーが家庭部門のエネルギー消費量に大きく寄与していること が分かった。この研究により、経済レベルがほぼ同じ二つの先進国の都市において、家庭 部門のエネルギー消費は文化や生活習慣によって用途が異なることが分かった。 Haas et al. (1998)は、オーストリアを対象とし家庭での電化製品に消費する電力消費量に

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12 ついて、1960 年~1995 年までの電力消費量に影響する因子について時系列分析法と横断面 分析法を両方用いて分析し比較した。その結果、家庭収入が家庭部門の電力消費量を増加 させる主な因子であることが分かった。また電化製品の電力消費効率が向上することで家 庭部門での電力消費量を抑えられることも明らかになった。 Semple et al. (2012)ではアイルランドを対象とした固形燃料消費に関する研究を行った。 寒冷な地域であるアイルランドの家庭では暖房設備が整っており、家庭部門のエネルギー 消費は暖房によるものが多い。アイルランドにおける 2009 年の家庭部門エネルギー消費量 の推計によると、家庭部門エネルギー消費のうち固形燃料によるエネルギー消費は 18%で あり、また全世帯のうち 17%の家庭は暖房用に固形燃料を使用することが分かった。暖房 は寒冷時期に家庭生活を快適に過ごそうとする時に使用するため、実質の暖房需要量、暖 房デグリーデー、住宅のタイプなどの要素がエネルギー消費量と関係している。

Isaac and van Vuuren (2009)は気候変動に伴い、将来の家庭内における冷暖房需要の変化を 評価する研究を行った。この研究では世界全地域をアフリカ、アメリカ、カナダ、インド、 中国など合計 11 カ国に分割し、最終エネルギー需要モデルを利用して、冷暖房のエネルギ ー需要を 2000 年から 2100 年まで推計した。この研究では国別の人口、住宅別延べ床面積、 暖冷房ディグリーデー、(暖房用の有効エネルギー強度)を文献から収集している。冷暖房 によるエネルギー需要は 2030 年までは世帯収入の増加に伴って増加し、その後は安定する と予測されている。推計結果によると、冷暖房のエネルギー需要について、2100 年までに 暖房のエネルギー需要が 34%減少し、冷房のエネルギー需要は 72%増加すると予測されて いる。特に東南アジアにおいては、気候変動がない場合を想定したシナリオと比較して、 気候変動の影響を考慮したシナリオでは、家庭の冷暖房エネルギー需要は 50%も増加する 可能性があることを報告している。

新興工業国であるインドは中国と同様に人口が多く、National sample survey Organization (2007,2010)によると、2004 年及び 2005 年におけるインドの家庭でバイオマス燃料を使用し て調理する世帯は 75%を占め、2007 年から 2008 年にかけては 3%増加したという報告があ った。インドの農村地域では、家庭のエネルギー消費は、調理に使用するエネルギー消費 に大きく影響を受けることから、Pandey and Chaubal (2011)は調理に使用する燃料の選択に 影響する要因を明らかにするため、79,298 世帯の調査資料を対象としロジスティック回帰 分析を行った。その結果、毎月の収入と支出、家庭教育、女性の教育レベルが、家庭での 使用燃料の選択に関係していることが分かった。 以上のようにヨーロッパ、アメリカを始めとする先進国では家庭部門のエネルギー消費 及びその削減に関する研究が進んでいる。先進国では細かい調査が進められており、デー タも豊富に揃っている。そのため使用燃料、用途、収入など家庭環境の違いを考慮したエ ネルギー消費を正確に評価でき、具体的な省エネルギー対策も提案できる。近年、中国で は急激な経済成長及び人口増加の結果、特に家庭部門におけるエネルギー消費量が増加す るとされている。現在、中国では家庭部門のエネルギー消費の調査が進み、具体的な省エ

(20)

13 ネルギー対策の研究が進んでいる。 2.1.2 中国の家庭部門エネルギー消費量に関する研究 上でも述べたように、中国では家庭部門エネルギー調査と統計作業は先進国に比べて遥 かに遅れている。初めの家庭部門エネルギー消費量の調査は 1989 年に「中国建築節能経済 技術研究チーム」により行われた。この調査は家庭部門エネルギー消費量を把握して、建 築節能作業の実況を調べる目的として実施され、暖房を使用する北部地域、長江沿岸にあ る重慶、武漢、南京、宜昌を対象地域とした。この調査結果によると、中国の都市地域の 熱環境とエネルギー消費状況を明確にし、家庭部門での省エネルギー対策に有力なデータ が得られた(涂, 1991)。 中国の各部門のエネルギー消費量データは国家統計局によって調査され作成されている。 特に家庭部門エネルギー消費量については国家統計局だけでなく農業局の発表した内容も 参考にしている。家庭部門エネルギー消費量については、トップダウンのエネルギーバラ ンス法でまとめたものである。例えば、家庭部門での石炭消費量は、全国での石炭生産量 から工業、発電、都市地域での熱供給などの各部門の消費量を引いて得られたものである。 しかし、清華大学建築節能研究中心 (2012)によると家庭部門での用途別のエネルギー消費 量などの詳細なデータは不足しており、家庭部門における具体的なエネルギー消費を定量 的に把握することが困難であると指摘している。 Yang (2009)は民生用建築のエネルギー消費量を推計するため、ボトムアップ式の中国建築

エネルギー消費モデル(China’s Building Energy Model, 以下 CBEM と呼ぶ)を構築した。民用 建築とは家庭部門と業務部門を合わせたエネルギー消費部門のことである。CBEM モデル では、地域別のエネルギーバランス表を用いて、都市・農村別の家庭部門エネルギー消費 量を計算した。さらに家庭部門におけるエネルギー消費の特徴や、サンプル調査で得られ たデータから、用途別のエネルギー消費量を推計した。しかし、この研究では、家庭部門 エネルギー消費量のマクロ計算からミクロ計算までのパラメータの設定について、統一さ れた基準がなく、地域別、用途別の家庭部門エネルギー消費量の結果を同時に把握・比較 することが困難である。 (1) 都市の家庭部門エネルギー消費量に関する研究 樊 et al., (2010)の研究では、1986 年から都市地域において家庭部門の石炭の消費量が減少 しつつあると述べている。1986 年の家庭部門における使用燃料のうち石炭の使用率は 89% であるのに対し、2007 年には 13%まで減少した。天然ガス、石油及び地域熱供給システム の普及により、それらが都市地域における主な家庭部門での燃料として普及したためであ る。郭と王 (2002)は、LEAP モデルを用いて生活用エネルギーを分析した。LEAP モデルと はストックホルムの環境省で開発されたモデルで、自治体レベル、地域レベルの大気汚染 物質やエネルギー消費を分析するモデルである。生活用エネルギーは調理、給湯、暖房、

(21)

14 照明、家電の 5 つの部門に分けて分析した。その結果、照明に使用する総電力は約 461 億 kWh で、都市地域の 39%を占める。都市地域における調理・給湯に使うエネルギーは全て 商業エネルギーであり、世帯当たりの天然ガス、LPG と石炭ガスの消費量は約 0.4tce(11.7GJ)、 0.26tce(7.6GJ)、0.2tce(5.9GJ)となっている。 Zhang (2004)は中国での家庭燃料使用量が気候と関係していることを考慮し、中国の 31 省、直轄市を 7 つの区分に分けて、エネルギー消費量を分析した。分析には中国都市統計 年鑑に記載されている電力、LPG、石炭、石炭ガス、天然ガスの年間消費量を使用し、それ を 7 つの区分の都市家庭部門に分類して求めた。また、世帯当たりエネルギー消費量と暖 房デグリーデーの関係を分析し、日本、カナダ、アメリカでの家庭エネルギー消費量と暖 房デグリーデーの回帰分析した結果を用いて比較した。その結果、1990 年から石炭の使用 量が減少し、電気とガスが増加する傾向が見られた。また、1997 年における中国の都市地 域の家庭部門エネルギー消費量は 17.2GJ となり、これは日本、アメリカとカナダのそれぞ れに対して 39%、16%、12%を占めることがわかった。 また、特定の都市、特定の用途に関するエネルギー消費についても研究されている。例 えば、李 et al., (2007)の北京市内の住宅マンションのエアコンによる電力消費に関する研究、 胡 et al., (2004)の湖北省の都市地域の住宅に関するエネルギー消費の研究などである。 (2) 農村の家庭部門のエネルギー消費に関する研究 農村地域の家庭部門のエネルギー消費量に関する研究は、主に中国の農村全体の家庭部 門エネルギー消費量を対象とした研究と特定の農村についてのエネルギー消費量を対象と した研究がある。 Zhang et al., (2009)は、農務省から公表された 1991 年~2007 年まで、農村全地域の家庭部 門エネルギー (石炭、LPG、バイオマスなど) データを用いて、農村全地域の家庭部門エネ ルギー消費の特徴を分析した。その結果、農村全地域では、1991 年から 2007 年にかけてバ イオマスの使用割合が 70.79%から 30.95%に減少していることが明らかになった。一方、石 炭とバイオマスが家庭部門のエネルギー消費に使用されるようになり、2007 年において、 農村全地域の全エネルギー消費の 70%を占めたと分かった。2007 年に全地域での一人当た り家庭部門エネルギー消費量は 0.54tce から 2.69tce となっている。また、福建省、青海省、 江西省、海南省、貴州省では、一人あたりエネルギー消費量が低く、北京、内モンゴルで は一人当たり家庭エネルギー消費が高いと分かった。 北部にある地域のエネルギー消費量については、Wang et al., (2002)は 1998 年に瀋陽の農 村地域にある 12 個村の 384 世帯について経済状況、年齢、性別、家庭で使用された燃料種 と消費量などについてアンケート調査を行った。得られた 13,440 世帯のサンプル調査のデ ータによると、経済状況が豊かな地域ではエネルギー需要が相当高いことと、約 60%の家 庭は同時に二種類の燃料種を使用していることが分かった。また、瀋陽の農村地域では、 家庭部門において、主な燃料は作物残渣であることが分かった。一人当たり平均エネルギ

(22)

15 ー消費量は家庭収入、農産物の産出量、家畜数の増加に伴って増加し、世帯人数が減少す るにつれて減少する傾向が見られた。 Ning et al., (2012)は 2008 年から 2009 年にかけて中国の遼寧省、黒竜江省と吉林省の農村 地域 180 世帯において、用途別 (暖房、調理、給湯、照明) 、燃料種別の家庭部門エネルギ ー消費量と電力消費について調査した。調査された三つの農村地域の使用燃料種は主に薪、 作物残渣、LPG、電気となっている。使用燃料種は最も多いのが作物残渣と薪であり、その 次は石炭である。電気と LPG の消費量が一番少なく、全体の家庭部門エネルギー消費量の 約 2.9%~6.9%に占めた。また、用途別のエネルギー消費量について、調理用のエネルギー 消費量の割合が最も多く、41.2%~51.0%を占める。その次は暖房であり、32.8%~44.4%を 占めた。

Wang et al., (2005)の研究では 2003 年 5 月に江蘇省の農村地域にある LianShui 県の 312 世帯の経済状況、エネルギー消費量とバイオガス発生タンクの構造などに関する調査を実 施した。調査された地域では、調理、給湯、家畜の飼育に使用されている家庭部門の燃料 消費量がその土地のバイオマス(薪、作物残渣)の産出量によって変化していることが明らか になった。作物残渣、薪とバイオガスの割合はそれぞれ家庭部門全体のエネルギー消費の 54.83%、20.07%と 9.50%を占めた。また LianShui 県を含む中国の南部地域ではバイオガス 発生タンクを持っているのが特徴的で、バイオガス発生タンクを持たない家庭とのエネル ギー消費量を比較した。比較した結果、バイオガス発生タンクを持つ家庭での一人当たり エネルギー消費量は約 9.9GJ であり、タンクを持たない家庭より約 3.4GJ 少ないことが分か った。この結果からもわかるようにバイオガスは熱効率が高く、バイオガス発生タンクを 使用することで一人当たりエネルギー消費量は減少する。 2.2 室内空気汚染に関する研究 2.2.1 中国以外の室内空気汚染に関する研究 Semple et al., (2012)は先進国における住宅の屋内 PM2.5 や汚染物質などの濃度状況を調査 した。2009 年の冬から 2010 年の春にかけて、スコットランドとアイルランドの 102 軒の住 宅で、室内 PM2.5、CO、 CO2、 NO2の調査を行った。これらの住宅は工業都市から 80km 以上はなれたところに位置し、石炭、泥炭、薪、ガスを暖房、調理などに使用しており、 冬から春にかけて燃料使用量がもっとも多い。調査の結果、一般の住宅の屋内日平均 PM2.5 濃度は石炭使用の場合 7 µg/m3、薪使用の場合 6 µg/m3、ガスコンロの場合 7µg/m3、泥炭使 用の場合 11 µg/m3であり、WHO の基準値を下回っていた。しかし喫煙者が住んでいる住宅 では、日平均濃度 99 µg/m3と WHO の基準値を大きく上回り、室内空気汚染が最も大きな 健康リスクであった。 Andresen et al., (2005)はインドのマイソールに居住する 30 人の女性を対象に、夏と冬にお いて、LPG と灯油を使用して調理する時の PM2.5 曝露濃度及びその時の室内濃度を測定し

(23)

16 た。その結果、灯油を使用する場合、冬の方が夏よりも PM2.5 曝露濃度は著しく高かった のに対し、LPG を使用する場合は夏と冬に大きな差は見られなかった。また、灯油を使用 する場合の方が LPG を使用する場合よりも PM2.5 曝露濃度は高かった。 Steinle et al., (2015)は各微環境の個人 PM2.5 曝露濃度の違いを評価するためには、人々が 日々各微環境に滞在する時間を把握する必要があると指摘した。 2.2.2 中国の室内空気汚染に関する研究 蔡 et al. (2000)は広州市の石炭と石炭ガスを使用している家庭について室内空気質を測定 した。測定時間は昼食と夜食を調理する前の 30 分間、調理している 30 分間、調理後 30 分 間であった。その結果、石炭を使用している家庭では、排出した汚染物質は主に PM10、SO2、 CO であり、石炭ガスを使用している家庭では、排出した汚染物質は主に NO2であった。Table 2.1 は燃料別の調理中における屋内大気汚染濃度である。これによると、石炭と石炭ガス共 に調理中の汚染濃度は高いことがわかる。また、調理 30 分後には汚染物質濃度は調理前の 濃度に近づくことが分かった。

Table 2.1 Air pollutant concentration from residential cooking in Guangzhou City by fuel type

(mg/m3) SO2 NO2 CO PM 石炭 0.487 0.062 18.190 0.706 石炭ガス 0.056 0.076 3.240 0.424 屋外 0.011 0.010 0.920 0.069 出典:蔡 et al., (2000) 潘 et al. (2001)は、安徽省安慶市の農村地域 189 世帯を対象として、冬季の室内・屋外の 大気汚染物質濃度を測定し、更に対象とした世帯の人の健康状況についてのアンケート調 査を行った。対象汚染物質は PM10、CO、SO2とした。対象世帯の寝室、厨房、庭、田畑に 6 時から 18 時まで、一時間ごとに測定を行った。その結果、厨房と寝室の時間平均 PM10 濃度はそれぞれ 518μg/m3、340μg/m3となっており、屋外の PM10 濃度の 270μg/m3より高い ことが分かった。また、室内の PM10 濃度は 150μg/m3より低い家庭は僅か 2.7%であり、 450μg/m3より高い家庭では 38%があったことから、農村地域の家庭において、PM10 は室内 の主な汚染物質の一つであることが分かった。調理している時の厨房と調理していない時 の厨房の PM10 濃度を比較した結果、調理している時の厨房における PM10 濃度は調理して いない時の厨房より約 4 倍高く、それぞれ 1251μg/m3、332μg/m3となっており、調理をして いる時の PM10 濃度が最大 40000μg/m3であるという結果もあった。更にこの研究では、測 定した濃度と時間を用いて、時間加重で人々の曝露濃度を推計した。その結果、PM10 の日 平均曝露濃度は男性(556μg/m3)より女性(659μg/m3)が多いことが分かった。

(24)

17

Qin et al. (1991)は承徳市、上海市、瀋陽市、武漢市を対象として、1987 年の夏と 1988 年 の冬にこれら 4 市の室内汚染濃度を測定した。測定した物質は RP(Respirable Particulates)、

SO2、CO、NO2の 4 種類、用途は調理と暖房、燃料は石炭とガス・LPG とした。その結果、

室内での主な汚染物質は石炭を燃焼して排出された RP、SO2、CO であることが分かった。

石炭コンロを使用した厨房では、RP、SO2、NO2、CO それぞれの汚染物質濃度が 665μg/m3、

860μg/m3、100μg/m3、14.07mg/m3に達し、寝室ではそれぞれ 270μg/m3、520μg/m3、71μg/m3

13.68 mg/m3に達したという結果が出た。また、石炭コンロからの汚染物質濃度はガスコン

ロより 1~13 倍高いことが分かった。

Fischer and Koshland (2007)は 2001 年、2003 年と 2004 年の冬季における室内空気汚染と CO 曝露量について吉林省の農村地域において、37 世帯を対象に調査を行った。その結果、

1 日の平均 PM10 濃度は約 312μg/m3となっており、1 時間値のピークは 1880μg/m3に達した。

また、暖房時の濃度は、日平均で約 1700μg/m3となっていた。

Jiang and Bell (2008)は 2006 年 5 月に瀋陽市の都市農村別、合計 6 世帯に対して室内の PM10 濃度と人への曝露量を 1 日 14 時間、5 日間連続で測定した。調理・給湯における燃料の種 類は、農村地域ではバイオマスが中心であり、都市では電気と天然ガスが中心であった。 農村地域の厨房における PM10 濃度は、都市地域の 3 倍であることが分かった。調理・給湯 を行う時の PM10 濃度については、農村地域は都市地域の約 6.1 倍となっていた。また、10 人を対象にして、30 分間隔で PM2.5 の曝露量を測定した結果、調理する者の PM2.5 曝露量 は、調理しない人と比較して、都市では約 2.8~3.6 倍高く、農村では約 5.4 倍高かった。ま た、農村地域の調理時間は都市地域よりも 1 日当たり 2.5 時間多く、曝露時間が長いことも 分かった。 Jin et al. (2005)は家庭での燃料燃焼による室内大気汚染物質の曝露量を評価するために、 甘粛省、貴州省、内モンゴル自治区、陝西省にある 457 世帯のキッチンと居間の PM4、CO と SO2の濃度をモニタリングした。PM4 濃度についてはバイオマスを主要な燃料とした内 モンゴル自治区と甘粛省が高く、石炭を主要な燃料とした貴州省と陝西省が低い結果とな った。内モンゴル自治区では暖房時の PM4 濃度は 719μg/m3に達し、甘粛省のキッチンと居 間ではそれぞれ 661μg/m3、457μg/m3に達した。He et al., (2005)も貴州省と陝西省を対象とし、 暖房時のキッチンと居間について PM4、CO と SO2濃度をモニタリングした。貴州省におい

てキッチンの PM4 濃度は 1944μg/m3と高い値となっている。Fischer and Koshland (2007)は、

吉林省の農村地域の 70 世帯について、暖房時の固形燃料、電気、ガスを使用するキッチン

と居間の PM4、CO を観測した。その結果、24 時間平均の濃度は約 518μg/m3であり、1 時

間値の最大値は 1880μg/m3となっていることが分かった。

2.3 室内空気汚染の曝露モデルに関する研究

IAQM(indoor air quality model)モデルは個々の微環境の室内汚染物質濃度を予測するモデ ルである。このモデルは室内にある微環境の空気は一様であると仮定して大気汚染濃度を

(25)

18 評価するものである。 Hayes (1989)は 10 個の室内空間と 56 個の集落についてオゾンを観測して、室内空気質量 モデルを開発した。このモデルによると、室内空気を一定濃度と仮定することで、大気汚 染物質による人体への曝露を評価できる。また、このモデルは 1-コンパートメントとマル チコンパートメントの二つのバージョンがある。1-コンパートメントモデルは室内空間をま とめて一つの箱として考え、影響を評価するモデルである。このモデルでは汚染物質の外 部からの浸透、外部発生、室内発生、HVAC(Heating ventilation air-conditioning)による再循環、 表面付着の程度について考慮する。その 1-コンパートメントモデルの方程式は式(3.1)の通 りである。 0 0

(

)

(

)

(

1)

( / )

/

i M i F F i R R i i

dc

ka

c

c

ka

E c

c

ka E

c

kK A V c

S V

dt

(式 3.1) Ci:室内汚染物質の濃度(mg/m3) C0:室外汚染物質の濃度(mg/m3) k:混合速度定数 aM:流入出率(1/h) aF:外部からの流入速度定数(1/h) EF:屋外から室内への流入率 aR:再循環空気の比率 ER:再循環空気の集じん率 S:汚染物質の室内発生率 (μg/h) K:汚染物質の表面付着率 V:部屋の容積(m3) A : 部屋の表面積(m2) k の混合速度定数とは単位時間当たりに室内空気と完全に混合する大気汚染物質量のこと である。 Esmen (1978)は化学反応を起こさない汚染物質が室内に流入する質量と排出する質量は 等しいと仮定して、一般的な質量保存法のモデルを開発した。開発した室内空気汚染モデ ルは Hayes(1989; 1991)とよく似ているが、汚染物質の反応性と空気の損失を考慮していなか った。Dockery and Spengler (1981)は室内の PM 物質と SO2について調査し、質量保存を基づ

いたモデルを開発した(式 3.2)。 0

(1

)

i

dQ

 

F qC dt

qC dt

KQdt

Sdt

(式 3.2) この式の両辺を部屋の容積 V で割り、室内濃度、室外濃度及び排出強度の時間平均をとり、 両辺を時間積分すると次のようになる(式 3.3)。 浸透 屋外から流入する空気 再循環 表面付着 室内発生

(26)

19 0

( )

(0)

(

)

/

i s i t s

C t

C

paC

a k C

S V

t

 

(式 3.3) これを平均室内空気濃度について式を整理したとき、室内の初期濃度と最終的な濃度の差 は無視できるくらい小さい。 従って式は次のようになる(式 3.4)。

1

(

)

(

)

t i

Pa

C

C

S

a

K

V a

K

 

(式 3.4) Q:室内汚染物質質量(μg) F:屋外から室内に流入する時の浸透率(-) P :(1-F)のことであり、屋外から室内に流入する時の浸透率(-) q:流入と流出の空気量(m3/h) V:部屋の容積(m3) t :時間(h) K:速度定数(1/h) a:換気回数(a=q/v, 1/h) S:室内汚染物質の排出強度(μg/h) Co:屋外大気濃度(μg/m3) Ct:室内空気濃度(μg/m3) 2.4 本研究の位置づけ 中国の室内空気汚染の原因には、家庭部門エネルギー消費からの寄与と、屋外からの寄 与がある。本研究では主に中国の家庭部門エネルギー消費からの寄与を対象とする。 本章では、①家庭部門のエネルギー消費量、②室内空気汚染物質の濃度、③室内空気汚 染物質による居住者に対する曝露量、の 3 つ視点から中国国内外の先行研究をレビューし、 以下の 3 つのことが明らかになった。 ①特定の地域を対象にした、用途別、燃料種別の先行研究があるが、中国の全地域での都 市・農村別の状況を網羅できていない。 ②室内空気汚染の濃度に関し、ほとんどの先行研究では特定の農村地域について、調理・ 給湯を行っている時間帯での測定しかしておらず、中国全土を対象とした都市・農村別 の状況を把握できない。 ③人に対する曝露量に関して、特定の地域についての曝露量を測定したものか、測定した 汚染濃度を用いて計算したものであるため、全国の状況を反映できていない。

(27)

20 そこで、本研究では、調理・給湯、暖房機器などの効率を考慮し、統計資料を最大限に 活用して家庭部門のエネルギー消費量を都市・農村別、用途別、燃料種別に推計する。そ して、時間平均アプローチによる微環境個人曝露モデルを用いて、チベットを除く中国の 30 の省・直轄市の室内・屋外の両環境における PM2.5 の年齢・属性別の一日平均曝露濃度 を推計することを目的とする。 本研究によって、性別・年齢・就業状態によって分類される個人の生活時間の使い方、 家庭での燃料の使い方、エネルギー消費量および世帯の人員や住居の広さの地域による違 いを考慮した詳細な室内空気汚染物質による曝露評価が可能となる。将来の大気汚染物質 による中国の各地方の人々への影響を、定量的に予測するには有用な情報を得られると考 えられる。 さらに、今後この手法を用いて、中国以外のアジア各国を対象に推計を行い、アジア各 国の人々のライフスタイルや社会の変化、電化によるエネルギー消費構造の変化による将 来予測が可能なツールへと展開させていくことが可能になると考えられる。

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21 第3章 中国の地域別、都市・農村別の家庭部門エネルギー消費構造と消費量の推計 本章の要約 中国 30 地域、都市・農村別の家庭部門エネルギー消費量は、中国統計年鑑(2008)のエネ ルギーバランス表に記載されているが、用途別には分類されていない。そこで、まず用途 別・燃料種別のエネルギー消費量を推計する方法を検討した。次に、統計データを用いて 地域別、都市・農村別、燃料種別、用途別のエネルギー消費量を推計した。考慮した用途 は、調理・給湯、暖房、照明、冷房、電化製品である。考慮した地域別、用途別の家庭部 門燃料はバイオマス(薪、作物残渣)、バイオガス、石炭、灯油、LPG、天然ガス、石炭ガス、 電気、熱である。 3.1 本章の目的 中国は寒冷地域から温帯地域まで広い国土を持つため、気候条件が暖房、冷房の消費量 に影響しやすい(Ogawa et al., 2005)。そのため、家庭部門エネルギー需給状況は気候、地理 などの条件によって地域性が多様である。家庭部門エネルギー消費実態は地域固有の需要 特性とエネルギー供給条件によって形成されているため、これらの多様性を考慮しないと、 正確な推計は難しい。これまでに中国地域別、都市・農村別のエネルギー構造を詳細に検 討した研究は少ないのが現状である。 本研究では、有効エネルギーを用いて、家庭部門エネルギー需要を計算した上に、機器 別の効率で実際に消費したエネルギー消費量を計算する。そこで、本章では、調理・給湯、 暖房機器などの効率を考慮し、統計資料を最大限に活用して、家庭部門のエネルギー消費 量を省別、都市・農村別、用途別、機器別に推計する。考慮した用途は、調理・給湯、暖 房、照明、冷房、電化製品である。考慮した地域別の用途別の燃料はバイオマス(薪、作物 残渣)、バイオガス、石炭、灯油、LPG、天然ガス、石炭ガス、電気、地域熱供給システム からの熱である。 3.2 推計手法 チベットを除く中国 30 省・直轄市(以下地域と呼ぶ)の都市農村の家庭部門エネルギー消 費量は、「中国統計年鑑 2008」(国家統計能源総合局, 2008)のエネルギーバランス表に記載さ れているが、用途別には分類されていない。そこで、以下のステップで地域別、都市農村 別、用途別、燃料種別のエネルギー消費量を推計する。 ステップ(1):都市・農村別、用途別、燃料種別のエネルギー消費構造を把握する。 ステップ(2):全国の都市・農村別、用途別、燃料種別のエネルギー消費割合を推計する。 ステップ(3):地域別、都市・農村別、用途別、燃料種別のエネルギー消費量の推計方法を 検討して、推計式を示す。 ステップ(4):地域別、都市・農村別、用途別、燃料種別のエネルギー消費量を推計する。

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22 3.2.1 全国の都市・農村別、用途別、燃料種別のエネルギー消費構造の検討 家庭部門エネルギー消費量は用途別で分類すると、都市農村共に、主に調理・給湯、暖 房、照明、冷房、電化製品である。しかし、家庭部門エネルギー消費構造は燃料の種類や、 供給ルートや、経済発展の状況などに左右され、都市と農村によって異なる。都市農村別 の家庭部門エネルギーの用途、機器、燃料種の関係は、Figure 3.1 に示した通りである。冷 房と電化製品のために使用するエネルギーは都市農村共に電気である。燃料種から見ると、 石炭は調理・給湯、暖房に使われている。石炭ガス、LPG と天然ガスは調理・給湯のみに 使用される。用途別、機器別、燃料種別の構造を都市農村別に見ると、都市の暖房消費量 については、北京市、吉林省、黒龍江省など寒冷時期に気温が低い地域では集中的に熱の 供給しているため、地域暖房と分散暖房の両方を考慮する必要がある。農村ではその地域 の資源賦存量の状況や、経済状況とインフラ整備状況によって使用する燃料種が異なるた め、商品エネルギー(石炭、LPG、天然ガス、灯油、電気)以外に、バイオマス(薪、作物残渣) が調理・給湯と暖房に使用されている。冷房と電化製品のために使用するエネルギーは都 市農村共に電気である。 しかし、「中国統計年鑑 2008」(国家統計能源総合局, 2008)のエネルギーバランス表には燃 料種別の消費量は記載されているが、用途別には分類されていない。ここでは、用途別に 分類する必要がある。

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23

Figure 3.1 Energy service, device, and fuel type in Rural and Urban area of China

3.2.2 全国の都市農村別、用途別家庭部門エネルギー消費割合の推計 用途別、燃料種別のエネルギー消費量を推計するためには、まず石炭とバイオマスがど のぐらい調理・給湯と暖房に消費されたのかを明らかにする必要がある。都市部における 家庭用石炭に占める調理・給湯と暖房の消費割合について「中国建築節能年度発展研究報 告書 2009」(清華大学建築節能研究中心, 2009)によれば、都市では約 460 万トンの石炭を調 理・給湯に消費している。 都市における家庭部門の全石炭消費量に占める調理・給湯用、暖房の石炭割合を以下の 手順で推計した。 ① 中国能源統計年鑑 2006 に記載されている 2004 年の一人当たり生活用石炭の量 (63kg/人)に都市人口(54283 万人)を乗じて、都市全人口の生活用石炭の量を 3419.829 万トン と求めた。 ② 「中国建築節能年度発展研究報告書 2009」(清華大学建築節能研究中心, 2009)には 「都市では約 460 万トンの石炭を調理・給湯に消費している」という記載があり、これを 都市全人口の生活用石炭の量(3419.829 万トン)で除し、14%の石炭を調理・給湯に使用して

Figure 3.1 Energy service, device, and fuel type in Rural and Urban area of China
Table 3.1 Energy consumption by fuel type and energy service in rural in 1995
Table 3.3 Lower heating value of major fuel in China
Table 3.5 Socio-demographic attributes for urban and rural households in each province in 2007
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参照

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