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第 5 章 微環境個人曝露モデルによる曝露濃度の推計

5.9 まとめ

本章では、第 4 章で省別に都市と農村の家庭部門の用途別、機器別・燃料種別のエネル ギー消費量を推計した結果、これに屋外大気汚染モデル、微環境個人曝露モデルを組み合 わせて中国30地域の人々を対象として、微環境毎に年齢・属性別、都市・農村別のPM2.5 一日平均曝露濃度を推定した。曝露モデルの結果から、地域により年齢属性別の曝露濃度 が大きく異なることが分かった。内陸部や東北での曝露の濃度が高く、冬季の暖房使用の 影響が大きいことが分かった。

また、本章では、都市地域の調理・給湯用の石炭消費量を推計する際に都市ガスと熱供 給インフラの普及率を考慮したことで、調理・給湯用の石炭消費量がもっと正確的に推計 できた。

また、都市における全国平均の年齢・属性別集団別 PM2.5 一日平均曝露濃度については、

女性が男性よりも小さい値となった。これは、暖房された微環境への滞在時間が男性より 短いことが原因である。すなわち暖房からの寄与は男性の方が大きく推計されている。農 村では、調理・給湯に伴う曝露濃度は女性が男性の 2 倍程度である。また、バイオマスを 大量に使用しているために、曝露濃度は都市の10倍以上となっている。

石炭およびバイオマスをそれぞれ天然ガスに転換した場合の都市・農村での曝露濃度の 低減効果を推計したところ、石炭を転換した場合には、都市・農村のそれぞれで低減効果 が期待できるが、農村の高濃度の状況を大幅に改善する効果はなかった。バイオマスを転 換することで、80%を上回る大幅な改善効果を期待できることがわかった。今後は、より具

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体的かつバイオマス燃料を有効活用できる対策の導入シナリオを考慮した計算を行うとと もに、計算結果の妥当性の検証も行う必要がある。

74 第6章 結論

中国の家庭での燃料燃焼による室内空気汚染を評価するために、まず家庭部門のエネル ギー消費の現状を把握する必要がある。中国の家庭部門のエネルギー消費の実状は各地域 固有の需要特性とエネルギー供給条件によって形成されているため、これらの多様性を考 慮しないと正確な推計は難しい。しかし、これまでに中国の地域別、都市・農村別のエネ ルギー消費構造を詳細に検討した研究は少ないのが現状である。

本研究では調理・給湯、暖房機器などの効率を考慮し、統計資料を最大限に利用して、

家庭部門のエネルギー消費量を都市・農村別、用途別、機器別に推計するとともに、時間 平均アプローチによる微環境個人曝露モデルを用いて、チベットを除く中国の30の省・直 轄市の屋内・屋外の両環境での曝露を考慮した PM2.5 の年齢・属性別の一日平均曝露濃度 を推計した。

1. 主な結果、知見

第 1 章では、中国における室内空気汚染の現状と空気汚染の原因に関する既存の情報を 分析し、本研究の目的、研究対象、目的を達成するための課題について説明した。中国の 室内空気汚染の原因には、家庭部門のエネルギー消費からの寄与と屋外からの寄与がある が、屋外の大気汚染も深刻化していることから、屋外から屋内への寄与も適切に取り扱う 必要があることを示した。また、都市・農村別の家庭部門のエネルギー消費のために排出 される汚染物質による室内空気汚染に対する寄与は燃料種によって異なるため、住居内で 調理や暖房のために使用するバイオマスや石炭などの消費量を推計する必要があることを 示した。

第 2 章では、第1 章で述べた目的に関連した既往の研究をレビューし、本研究の位置づ けについて述べた。本研究では、①家庭部門のエネルギー消費量、②室内空気汚染物質の 濃度、③室内空気汚染物質による居住者に対する曝露量、の 3 つの視点から中国や中国以 外の国を対象とした先行研究についてレビューした。その結果、これまでの先行研究は、

①用途別、燃料種別の詳細なエネルギー消費量については、特定の地域を対象にした調査 に基づくデータしか存在しない。また,中国全土を対象した研究では、エネルギー消費量 について統計年鑑などのデータを用いており、都市・農村別、用途別に分類していない。

②室内空気汚染の濃度に関し、ほとんどの先行研究では特定の農村地域について、調理・

給湯を行っている時間帯の測定しかしておらず、中国全土を対象とした都市・農村別の状 況を綱羅していない。また、③人に対する曝露量に関しても、特定の地域について曝露量 を測定したものか、測定した汚染濃度を用いて計算したものであるため、全国の状況を反 映できていないことも分かった。

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第3章では、調理・給湯、暖房機器などの効率を考慮し、統計資料を最大限に活用して、

家庭部門のエネルギー消費量を地域別、都市・農村別、用途別、機器別に推計した。考慮 した用途は、調理・給湯、暖房、照明、冷房、その他の家電製品である。考慮した家庭部 門に使用する燃料はバイオマス(薪、作物残渣)、バイオガス、石炭、灯油、LPG、天然ガス、

石炭ガス、電気、地域熱供給システムからの熱である。中国30地域の都市・農村地域別の 生活用エネルギー消費量は中国能源統計年鑑2008(国家統計能源総合局, 2008)のエネルギー バランス表に記載されているが、用途別には分類されていないため、まず都市・農村別の 家庭部門での用途・機器・燃料種の関係を詳細に分析した。その結果、石炭は調理・給湯、

暖房のみに使用されること、LPG、天然ガス、都市ガス、バイオガスは調理・給湯のみに使 用されることを確認した。都市においては、北京市、黒龍江省など冬季に気温が低い地域 では地域熱供給システムで熱の供給をしているため、暖房について地域暖房と分散暖房の 両方を考慮する必要がある。農村では、その地域の資源賦存量の状況や、経済状況とイン フラ整備状況によって使用する燃料種が異なり、商品エネルギー(石炭、LPG、天然ガス、

灯油、電気)以外に、バイオマス(薪、作物残渣)が調理・給湯と暖房に使用されている。

用途別・燃焼種別のエネルギー消費量を推計するために、まず調理・給湯と暖房に消費 された石炭とバイオマスの割合を推計した。これは、「中国建築節能年度発展研究報告書

2009、2012」(清華大学建築節能研究中心, 2009, 2012) 、「中国温室気体減排技術及び対策評

価」(胡 と 姜 1995)と「中国統計年鑑」(中国国家統計局, 2008)を用いて、全国の都市・農 村別、用途別、燃料種別のエネルギー消費構造を分析して求めた(Table 6.1)。

Table 6.1 Energy consumption by fuel type and energy service in urban and rural

調理・給湯 暖房 調理・給湯 暖房 石炭 14% 86% 56% 44%

薪 - - 31% 69%

作物残渣 - - 32% 68%

都市 農村

燃焼種

次に地域別、用途別、燃焼種別のエネルギー消費量を推計する。暖房のエネルギー消費 量は暖房の使用日数と関わっていることから、本研究では暖房用燃料種別のエネルギー消 費量は暖房デグリーデーを用いて、ボトムアップ手法で暖房需要を推計した。これが統計 のデータから推計した地域別、都市・農村別の暖房用エネルギー消費量と等しくなるよう に地域別、都市・農村別の全燃料種別の暖房用エネルギー消費割合を推計した。これと全 国の都市・農村別、燃料種別の暖房用エネルギー割合と合わせて推計した、地域別、都市・

農村別、燃料種別の暖房用エネルギー消費割合を用いて、地域別、都市・農村別、燃料種 別の暖房用エネルギー消費量を推計した。そして、調理・給湯用の固形燃料(石炭、バイオ マス)消費量は「中国能源統計年鑑2008」(国家統計能源総合局, 2008)のエネルギーバランス

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表に記載されている固形燃料の総量と暖房用の固形燃料消費量の差から推計した。各用途 の電力消費量は電化製品の保有量と機器別の消費原単位から推計した。なお、冷暖房につ いては、冷暖房デグリーデーを考慮した。

そして、地域別、都市・農村別、用途別、燃焼種別のエネルギー消費量を計算した結果、

暖房については、都市においては地域暖房のための熱供給の割合が高いのに対して、河南 省、湖北省、湖南省、四川省などでは分散暖房が中心のためには主に石炭が使用される。

農村については、北京市以外の地域では、暖房用のバイオマスの消費量が石炭消費量の 5 倍~10 倍もあることが分かった。一般にガスの価格の方が高く、社会インフラの普及率と も関連するために、調理・給湯については、北京市、天津市、上海市、江蘇省、広東省な ど沿岸部の経済発展が進んでおり、LPG、天然ガス、石炭ガスの利用率が高い地域では、石 炭消費量が少ない傾向がある。用途別の電力消費量については、北京市、天津市、上海市 など経済が発展している地域で高い傾向が見られる。南部の広東省、上海市、浙江省と福 建省の冷房の電力消費量は黒龍江省、吉林省、遼寧省など気候が寒い気候の地域より約 10 倍大きいことが分かった。また、照明、調理・給湯の電力消費量は都市において地域差が あまりなかった。推計した地域別、都市・農村別、燃料種別の消費量を用いて、既往研究 での特定の地域の調査結果と比較した結果、本研究の推計方法で得られた結果が妥当であ ると確認できた。

第4章では、家庭部門エネルギー燃焼による PM2.5 の寄与を評価する。室内での燃料燃

焼によりPM2.5が発生する燃料種はバイオマス(薪、作物残渣)、石炭、灯油、LPG、天然ガ

スと都市ガスである。冷房、その他家電製品に使用するエネルギーは電気だけであるため、

PM2.5 が発生しない。従って、家庭部門からPM2.5 排出量を推計するために考慮した用途

は調理・給湯、暖房、照明となる。そのため、本章ではまず家庭での燃料燃焼に伴うPM2.5 排出量を用途別・燃料種別のエネルギー消費量と PM2.5 排出係数を乗じて推計した。次に

PM2.5 排出量を推計するために必要なPM2.5 排出係数を文献から収集した。PM2.5 排出係

数は燃料種、燃焼機器、燃焼方法と測定方法などに左右されることを先行研究から確認し た。そして、ここでは収集した PM2.5 排出係数がどの程度中国の室内汚染状況の実態を反 映できるのかについて検討し、決定した PM2.5 排出係数を用いて都市農村別・燃料種別・

用途別のPM2.5排出量を推計した。最後に都市農村別・用途別・燃料種別のPM2.5排出量

について、燃料種別で考察した。その結果、農村では、2007年において家庭部門からのPM2.5 排出量は都市より24倍も高くなった。都市地域では天然ガス、LPG、石炭ガスなど比較的 クリーンなエネルギー使用していたため、PM2.5 の排出量は農村より小さい、年間約 1900 トンであることが分かった。また、都市農村いずれも、暖房より調理・給湯の PM2.5 排出 量が高いのは、調理・給湯に消費される固形燃料が暖房より多い原因であることが分かっ た。また、調理・給湯用の石炭とバイオマスからの PM2.5 排出量を比較すると、バイオマ スからの寄与は石炭より大きく、これはバイオマスからの PM2.5 排出係数が石炭より大き