マ
ン
ダ
ラ
に
見
ら
れ
る
「慈
悲
と
智
慧
の
世
界
」1
併
せ て 宝珠
と宝
瓶
と 三角
智
火
八
田
幸
雄
マ ンダラ に見ら れ る 「慈悲と智慧の世界」 （八 田） 一胎
蔵
マ ンダ
ラ
（現
図
） の世
界
ω中 台 八 葉 院 の 蓮 華 と 金 剛
杵
、 四 隅 の 宝 瓶 中 台 八 葉 院 は 中央
に 蓮華
が 大 き く 画 か れ 、 蓮葉
の 間 に 八本
の 金 剛杵
が 顔 を の ぞ か せ て い る 。 そ の 中 に 大 日 如 来 と 胎 蔵 四 仏 、 胎 蔵 四菩
薩 が 画 か れ て い る 。 大 蓮 華 は 大 悲 を示
す 。蓮
華
の 歴 史 は 古く
、 リ グ ベ ー ダ に 蓮 華 の 記 述 が あ り 、 イ ン ド神
話 の創
造 神 梵 天 は 蓮華
を 示 す 。蓮
華 は 生 命 の躍
動
を 表 わ す 。 ま た エ ジ プ ト に お い て は 「 死者
の書
の 中 に 太 陽神
と と も に 画 か れ て い る 。 太 陽神
は 太 陽 光 線 を 形 ど っ た ピ ラ ミ ッ ド に も み ら れ る 。 太 陽 が朝
東
に 登 り 、夕
方 西 に 沈 む が 、 再 び 翌 日 に 地 上 に 現 わ れ る と こ ろ か ら 、 永 遠 に 再 生 復活
す る こ と を象
徴 し て い る 。蓮
華
も ま た太
陽 が 出 る と花
を 開 き 、 太 陽 が 沈 む と 花 を 閉 じ （ 1 ） る 。 こ の よう
に 蓮 華 は 太 陽 の 大 生命
の 出 現 を 意 味 す る と とも
に 精 神 的 な面
で は 仏 陀 の 生 誕 で あり
、 更 に 仏 陀 の 心 は大
NII-Electronic Library Service 智山学 報第五十四輯 悲 の 心 に 生 き る こ と に な る 。 『 大 疏 』 十 五 は 「 蓮 華 は
吉
祥
清 浄 、 よ く 衆 心 を 悦 可 す る が 如く
、 今 秘蔵
の中
に も 亦 大 悲 胎蔵
妙
法蓮
華 を も っ て 最 深 秘吉
祥 と な す 」 （81
謎 ω 「 。 ） 。 と あ り 、 『 大 疏 』 五 に 「 蓮 華 台 は 実相
自然
の 智 慧 な り 。 蓮 華 は 之 れ 大 悲 方 便 な り 」 （ ω r ＄ 一 ． 。 ） と い っ て い る 。 し た が っ て 中台
八 葉 の 開 花 は 仏 の 大 悲 の働
く
世 界 を 示 し 、 そ れ が 大 生命
を 産 み 出 す 原 動力
と し て い る 。 一方
八 葉 の 間 に 見 え る 金 剛 杵 は 実 相自
然
の 智 慧 を表
わ す と み ら れ る 。 宝 瓶 臼 叫募
鋼 ） は 五 宝 、 五 穀、 五 薬 、 五 香 を 入 れ て 花 で飾
っ た も の で あ る 。 『 大 疏 』 八 に よ れ ば 「 ビ ル シ ャ ナ の 四徳
の 宝 な り 」 （ 。。 Φ 18 劬 b ） と あ り 、 こ れ は 菩 提 心 の 様 々 な徳
と 、 そ れ が 発 芽 し て人
格 を 完 成 し 、 一 切 の 世 界 を 豊 か に し て い く こ と を 示 し た も の であ
る 。 ω遍 知 院 の 世 界 遍 知 院 は 中 央 に 一 切 如 来 智 印 （ 三 角 智 火 ）
向
っ て 右 （ 如 来 の 左） に 大 勇 猛 菩 薩 （ 宝 珠 ↓ 智 慧 ） 左 に 仏 眼 仏 母 （ 仏 眼 ↓ 慈 悲 ） が 示 さ れ 、現
図 は そ の働
き の 発 展 と し て 大 安楽
不 空 と 七 倶 胝仏
母 が 配 さ れ て い る 。 中 央 の 三 角智
火 は 蓮 華 座 上 に 三角
火 と 五 色 の 火 焔 が輝
き 、 卍 字 が 示 さ れ て い る 。 仏 の 智慧
は 一転
し て 火 の 働 き と な る こ と を 示 し て い る 。 三角
の象
徴
は キ リ ス ト 教 の 神 を 示 す 。 こ の も と は エ ジ プ ト の ピ ラ ミ ッ ド に あ る 。 ピ ラ ミ ッ ド は 善 王 が 神 と な り 、 死 し て も太
陽 の 如 く 再 生復
活 し て こ の 世 に 生 れ る こ と を 示 し て い る 。 オ ー ス ト リ ー の チ ロ ル の首
都
イ ン ス ブ ル ッ ク の 中 央 の 教 会 に は 司 祭者
の 説 教 す る壇
上 の 天 井 が ド ー ム 状 と な っ て お り 、 そ こ に 二 角 で 神 を 示 し 、 そ の 中 に 眼 が 画 か れ て い る （ 図 − ） 。 エ ジ プ ト に 近 い ギ リ シ ア に は ピ ラ ミ ッ ド の 思 想 が 入 り 、 ギ リ シ ア系
の キ リ ス ト教
の 図 像 に は こ の 三角
が 示 さ れ て い る 。 べ ー メ の書
物 に は こ の 三角
が 示 さ れ て い る 。 卍 字 は 太 陽 の エ ネ ル ギ ー 、創
造
発
展 的 な 力 を表
わ す 。 強 力 な 智 慧 は本
性 の 宝 珠 を表
わ し 、 諸 仏 を 産 み 出 す 。 こ の 分 徳 を 示 し た の が 右 と左
に 配 さ れ た 大 勇 猛 菩 薩 で あ り 、 仏 眼 仏 母 で あ る 。 如 来 の 智慧
は 真 実 の 人 間 の 心 を 顕 一16
一 N工工一Eleotronlo Llbraryマ ンダラ に見ら れ る 「慈悲 と智 慧の世界」（八 田） わ に
す
る 。 こ の 心 は如
意 宝 珠 （曾
氤 ー 日畳
ヨ畳
4
国 巳 国 ） で あ る 。大
勇 猛 菩 薩 の 図像
は 、右
の 臂 を ま げ て 剣 を執
り 、左
の手
を 掌 に し て 宝 珠 を の せ て い る 。 剣 は 叡 智 の 働 き を 、 宝 珠 は 清 浄 な 心 を示
し 、 と も に 如 来 の 働 き の 原 動 力 と な っ て い る こ と を 示 し て い る 。 仏 眼 仏 母 に つ い て は 、清
純 な智
慧
に よ り 、真
理 の 世界
に 眼 を 開 け 、 自 己 の 心 眼 が開
か れ て い く に し た が っ て、 仏 陀 に 生 ま れ 出 る こ と を 示す
か ら 仏 母 と呼
ば れ る 。 そ れ故
仏 眼 は 大悲
の 働 き と いう
こ と に な る 。的
持
明 院 の 世界
持 明 院 は 中 台 八 葉 院 の 下 （ 西 側 ） に あ り 、 如 来 の 智慧
の 働 き は 忿 怒 明 王 の 働 き と な っ て い く こ と を 示 し て い る 。 『 大 日 経 』 で は不
動 明 王 と 勝 三 世 明 王 の 二尊
を 説 く が 、 現 図 で は 更 に 中 央 に 般 若 菩 薩 、 そ れ に 降 三 世 明 王 と 大 威 徳 明 王 を 加 え て 忿 怒 明 王 を も っ て 智 慧 の 働 き を 増 広 し て示
し て い る 。 不 動 明 王 は 右手
剣
、 左 手 索 を 持 ち 、 身体
は 火 焔 に 包 ま れ て い る 。 『 大 疏 』 五 は 「 羂 索 は こ れ 菩 提 心 中 の 四 摂 の 方便
なり
。 こ れ を も っ て 降伏
せ ざ る も の を執
繋 し 、 利 慧 の 刃 を も っ て そ の業
の無
窮
の 命 を 断 ず 」 （ QQ Φ 1 ω も°Q び ） と いう
。 勝 三 世 は 火 焔 の中
に 忿 怒 の姿
を 現 ず 。 経 の 具縁
品 に 「勝
三 世 は 威 猛 の 焔 に か こ ま れ 、 金 剛 を 持 せ り 。 自 の 身命
を 顧 り み ず し て 専請
し て 教 を 受 く 」 （ 一 。。 − 刈 ． げ ） と あり
、智
慧
の 働 き は 忿 怒 の 火 焔 と な っ て働
く
こ と を 示 す 。 こ れ は 同 類 の 降 三 世 と も 通 じ る 。 降 三 世 は 足 鉤 の 印 を も っ て 如来
に背
を向
け る 衆 生 に 対 し 、 大 悲 の 誓 願 は 忿 怒 の 形 に お い て 示 す の で あ る 。 如来
の大
悲 の 働 き に 反 し て 、 衆 生 の 離 反 と いう
相 反 す る も の が 一 如 に 結 ば れ る と い う 宗 教 の 真 理、 即 ち 逆 対 応 が 示 さ れ て い る 。 持明
院 の 中尊
は 般若
菩
薩
で あ る 。 図 像 は 三 目 六臂
の 密教
尊
像
で あ る 。 三 目 は 仏 蓮 金 の 三 部 を 開 く 目、 即 ち 大 定 と 慈 悲 と 智 慧 の 世界
を 開く
こ と を表
わ し 、 六臂
は 六波
羅 蜜 の働
き を 一身
に 具 え て い る こ と を 示 し て い る 。 般若
の 智慧
の 働 き は 密 教 の 立 場 で は 明 王 の諸
徳
の 現 わ れ と し て 示 さ れ て い る 。 一17
一NII-Electronic Library Service 智山学報 第五 十四輯
般
若
と い う 智 は 宇宙
万 物 す べ て 空 の 中 に 生 か さ れ る 。 そ れ は 煩 悩 を 切 り 拓 い て い く 智 で あ り 、 そ こ で 現 わ に さ れ るも
の は 如 意 宝珠
で あ る 。 こ の 関 係 は 中台
八 葉 を 貫 く 縦 の 線 で 明 ら か に 示 さ れ て い る 。文
殊
院 の 文 殊 （ 智 慧 に よ る 煩 悩 の 切 断 ） 、 遍 知 院 の 三角
智 火、 中台
八葉
の新
生命
、 持 明 院 の 般 若 の 降 伏 の 働 き、 虚 空蔵
院 の 主 奪 虚 空 蔵菩
薩 の 如 意 宝 珠 の 顕 現 に よ っ て 明 ら か と な る 。中 台 八
葉
院 の 両 側 の 観 音 院 と 金 剛手
院前
に 述 べ た 遍 知 、 持 明 の 各 院 は 中 台 八葉
の 世 界 を 実 現 し て い く 働 き で あ っ た 。 こ の 勝 れ た 世 界 は 常 に慈
悲 と 大 智覚
醒
の 働 き に満
ち て い た 。 別 の 観 方 を す れ ば 大 慈 悲 の 働 き こ そ は 中台
の 世 界 を 支 え る も の で あ り、 大 智 の覚
醒 こ そ は中
台 の 世 界 を 開 く も の で あ る 。 こ の観
点 に 立 っ て 観音
院 と 金 剛手
院 が 設定
さ れ た の で あ る 。現
図 観音
院 は 慈悲
の 面 を 強 調 し 、 『 大 日 経 』 に 示 さ れ た 蓮 華 部 の 尊 に 加 え て大
悲
の徳
を 示 す 尊 を 増 広 し 、 一 切 を 清 浄 に し 教化
し て い く こ と を 示 そ う と し て い る 。 『 大 日 経 』 具縁
品
に 「 北方
の大
精
進 の 観 自 在 者 は 、光
色 皓月
の 如 し 、 商 怯 （ 鐙 爵 耳 巴 軍 那 華 （巨
且 仁。 ）微
笑
し て白
蓮
に 坐 す 」 （ H 。。 1 。 〜 刈 ’。 ） と あり
、 『 大 疏 』 五 は 「右
方 （ 向 っ て 左 ） は こ れ如
来 の 大 悲 三昧
な り 、 よ く 万 善 の 慈 栄 せ し め る が 故 に 蓮 華 部 と 名 つ く 」 （ ω Φ 1 ⊆Q 鱒 ゜ 国 ） と あ り 、 大 悲 に 関 わ る 尊 を集
め て こ の 院 を 構 成 し て い る 。 金 剛手
院 の 金 剛薩
唾 は 右 手 に 三 股 金 剛 、 左 手 は拳
に し て 内 に向
け る 。 三 股 金 剛 は 煩 悩 を 克 服 し て いく
智
慧 の 働 き 、 拳 は 堅 固 不 抜 な 強 固 の 意 志 を表
わ し て い る 。 『 大 日経
』 具 縁 品 で は 「 持 金 剛慧
者
な り 。 プ リ ヤ ン グ （ 崗 冨鼠
白 色 の 花 を 咲 か す ） の 色 な り 、 或 い は ま た 縁 宝 の 如 し 」 （ ド ゜。 ー 『 ° 鶴 ） と あり
、 『 大 疏 』 五 は 「 金 剛 部 の 明 王 を安
置 せ よ、 金 剛 の 智 慧 に よ っ て 一 切 の 願 を 満 足 し て い く も の 也 。色
は 淡 黄 色 なり
。 浄 法 界 の 黄色
と 金 剛 の 智 慧 の 白 浄 を得
さ せ る 白色
が 一 つ に 働 く故
に そ の身
は 黄 白 色 な り 」 （ Qウ 1 GQN 畠 O ） と いう
。 伺 ． 二 重 に 配 さ れ て い る各
院 。 即 ち 文殊
は 般 若 の 智 慧 。 地 蔵 は 浄 菩 提 心 の 慈 徳 、 除 蓋 障 は清
浄 心 の 宝珠
、 虚 空 蔵 一18
一 N工工一Eleotronlo Llbraryは 宝
珠
の 徳 を表
に 出す
。 更 に 虚 空 蔵 院 は 胎蔵
マ ン ダ ラ 全体
を ま と め 、向
っ て 左 に 慈 徳 の 完 成 を 示 す 千 手観
音 、 右 に 智 徳 の 完 成 を 示 す 一百
八 臂 金 剛 蔵 王 が 大 きく
示 さ れ 、 中台
八 葉 院 の 大 日 と 三 尊 が 一 体 と な る よう
に 示 さ れ て い る 。 ま た第
三 院 の 四 隅 に 四 つ の 宝 瓶 が 示 さ れ 、 人 格 が完
成 す る こ と が 示 さ れ て い る （ 図2
∀ 。 二現
図
以
外
の胎
蔵
マ ンダ
ラ
マ ンダラ に見ら れ る 「慈悲 と智慧の世界 」 （八田）ω
『 胎 蔵 図
像
』 （ 図3
） は ］ 切 空 蓮華
瓶 （ 酌3
） と記
さ れ た 宝瓶
が 記 さ れ て い る 。 胎蔵
の 行法
を 実 修 す る に つ い て の 大 目 標 が 宝 瓶 で あ る こ と は、 人格
形 成 の 偉 大 な 目 標 が 示 さ れ て い る 。 こ れ を受
け て 胎 蔵 の 諸 尊 の 心 を 体得
し完
成 し た 行 者 は普
賢 菩 薩 と な る 。 （ 図4
） の 行者
の像
の 上 に は 宝 瓶 が あ り 、 更 に そ の 上 に 輪 宝 が 画 か れ てあ
る （ 恥 鵬 ） 。 こ れ は胎
蔵
行 法19
の修
得
が 宝 瓶 で 示 さ れ 、 人 格 形成
が 決定
さ れ た こ と を明
ら か に し て い る 。 尚 『 胎 蔵 図 像 』 の最
後 に は （ 恥 ω o 。。 ） 大 壇 外 根本
大 門 が示
さ れ 、 そ こ に も 大 き な 宝瓶
が 中 心 に 画 か れ て い る 。 こ れ を み て も 胎 蔵 の 行 法 の修
得
が 大 き く 人 格 を 形 成 し 、 そ の 有 様 を 輪 宝 （B
す 国 ） と 螺 貝 （ 巴 評 匡 ⇔ ） と 金剛
杵
（≦
富
） 示 さ れ 、 行 者 の 心 を 仏 陀 の 心 に転
回 し 、螺
貝 で 示す
慈 育 の徳
と 、 金 剛杵
で 示 す 智 慧 の 働 き が 生ず
る こ と を 示 し て い る 。 囘 『 大悲
胎蔵
三 昧耶
マ ン ダ ラ 』 石 山寺
版
は 『 大 正 図 』 二 巻 に 示 さ れ て い る 。 （ 図5
） に塔
が示
さ れ （ 恥 − ） 、 （ 図6
） に 大 日 の 仏 印 と し て 三 角 智 火 が 画 か れ 、 こ の 三角
を 金 剛杵
が とり
巻 い て い る （ 恥 2 ＞ 。 次 に （ 図 7 ） 宝 幢 、 開 敷 華 、 阿 弥 陀 、 鼓音
の胎
蔵
四 仏 が 画 か れ て い る （ 晦3
〜6
） 。 こ れ等
四 仏 は 皆 宝珠
を 中心
に し て 宝 幢 は 金 剛杵
、 開 敷華
は 開 き かけ
た 蓮 華 が 、 阿弥
陀 は 開 い た 蓮 華 が 、 鼓音
は 天 鼓 が とり
巻
い て い る 。NII-Electronic Library Service 智山学 報 第五十四輯 こ れ は 三 角 智 火 と 宝 珠 の 関
係
を も っ て 、大
日 と 胎 蔵 四 仏 を 区 分 し 、 四 仏 は 金 剛 、未
敷
蓮 、 開 蓮 、 天 鼓 に よ っ て そ れ ぞ れ 特 性 を 示 そう
と し て い る 。 こ こ に は 智 火 と そ れ に 照 ら さ れ た 宝 珠 が 、仏
智
と 菩提
心 と いう
人 間 本 性 を 開 い て い く 関 係 が 明 ら か に さ れ、 大 日 と 四 仏 の 個 性 が よ く 示 さ れ て い る 。 こ れ と 同 じ よ う な 象 徴 形式
は 『 五 部 心観
』 に も 見 ら れ る 。 こ の 大 日 と 四仏
の 標幟
印 （ 。 畔 蠧 − 日 鼠邑
は 大 日 が 三 角 智 火 を と り 巻 く 金 剛 杵 。 阿 闕 、 宝 生 、 無 量寿
、 不 空成
就 の 四 仏 は そ れ ぞ れ宝
珠
を 中 心 に、 金 剛杵
、 金 剛 宝 杵 、 金 （ 2 ） 剛 蓮 華 杵 、 羯 磨杵
が と り 囲 ん で い る 。N工工一Eleotronlo Llbrary Servloe
三
金
剛
界
マ ンダ
ラ
（現
図
） 金 剛界
マ ン ダ ラ は 、 宗 教 体 験 を 深 め 、 堅 実 な智
慧 の 主体
と な っ て自
己 を 確 立 す る 立 場 を 強調
す る 。 現 図 は 九会
と 三 面 っ て 九 つ の マ ン ダ ラ を 一 つ の セ ッ ト と し て い る 。 成身
会 は 金 剛界
全体
の 究 極 の 立 場 を 示 し た も の で 如 来 部 、 金 剛 部 、 宝 部 、 法 部 、羯
磨
部 の 五部
で 示 す 。如
来 部 は 五 部 を 統 括 す る も の で 、 後 の 四 部 は 如 来 の 世界
を 四 つ に 分 け て 示 す 。 金 剛 部 は 金 剛 と いう
大智
の 世 界 を 示 し 、 宝 部 は 大智
に 依 っ て 開 か れ る 本 性 の 宝 性 の 世 界 を 示 し 、法
部 は 蓮 華 で表
わ さ れ る 清 浄 と 慈 悲 の 世 界 を 示 し、 羯 磨部
は 大 智 の徳
が 完 成 し 金 剛 を 実 現 し て い く こ と を示
す
。 三昧
耶
会 は 金 剛 の 世 界 を 開 い て い く 如 来 の 心 を 示 し た も の で あ る 。智
慧 の 世 界 を 開 か せ る根
源 の 力 は 如 来 の 大 悲 誓 願 に他
な ら ず、 こ の 誓 願 の 在 り 方 を 各 尊 の象
徴
形 で 示 そ う と す る 。 『 五部
心 観 』 で は成
身
会
の 各 尊 の持
つ標
幟 印 を 手前
に示
し て 、 行 者 は そ の象
徴 す る 器 物 の精
神 を 心 に 体 し て い く こ と を 教 え て い る 。 微細
会
は 如 来 の 智 慧 を 自 ら の も の と し 、智
慧
の 主体
と し て行
動 し て いく
こ と を示
し た も の で あ る 。 尊 像 の 背 後 に 一20
一マ ンダラ に見ら れ る 「慈悲と智慧の世界」 （入 田） 金 剛
杵
が示
さ れ て い て 智慧
の 主 体 と し て 生 き る こ と を 示 し て い る 。 『 五 部 心観
』 で は 、 三昧
耶 会 の 示 し た 象徴
を 心 中 に納
め て 行 動 す る 図 が 示 さ れ て い る 。供
養
会 は 三 昧 耶会
に 示 さ れ た 如 来 の 本 誓 （ 慈 悲 の 心 ） に 生 か さ れ 、 微 細会
に 示 さ れ た 微 細 金 剛 （ 深 妙 な 智 慧 の 働 き ） に よ っ て 教 化 の 聖 業 に 励 む こ と を 示す
。 『 五部
心 観 』 で は美
し い 花 に 囲 ま れ て各
尊 が 成身
会
の各
尊 の象
徴 を も っ て 、 而 も 女 性 の 姿 を も っ て 供 養 の 聖 業 を な し て い る 図 で示
さ れ て い る 。 こ こ に金
剛
界
マ ン ダ ラ の 根幹
の 精神
は 全う
す
る 。 大 悲 と 大智
は 一 つ の も の と な っ て マ ン ダ ラ 世 界 は完
成 す る 。 さ れ ば 五解
脱
輪
の各
輪 の 四 隅 に は 如 意 宝珠
が 画 か れ 、 マ ン ダ ラ の 行 法 を 修す
る も の に 人 格 の 完 成 が期
せ ら れ る （ 図8
） 。 四印
会
は 以 上 の 諸会
を 綜 合 し て ま と め た も の で 、 一 印 会 は 更 に 全 体 を 統 一 し て 一 尊 の マ ン ダ ラ に ま と め た も の で あ る 。 『 現 図 』 で は こ の 一尊
は大
日 。 『 五 部 心 観 』 で は 金 剛 薩 唾 であ
る 。 『 現 図 』 で は 大 日 の 四 方 の 隅 に 四 宝 瓶 が 画 か れ て い る 。 こ れ マ ン ダ ラ の 観 想 の 完 成 は 人 徳 が完
成 し て い く こ と を示
し て い る の で あ る 。 『 現 図 』 は こ の 六 会 に 理 趣会
、 降 三 世 の 二会
を 加 え て 九 会 を 完成
し て い る の であ
る 。四
（ 3 ）初
会
金
剛
頂
経
（三
十
巻
本
） 『 初 会 金剛
頂
経 』 は 金 剛 界 マ ン ダ ラ の 原典
で あ る 。 金 剛 界 マ ン ダ ラ は 原 典 を も と に 発 展 し て 示 さ れ た も の であ
る か ら 、 より
精密
に 見 る 場 合 は 原 典 を 考 察 し て い か な け れ ば な ら な い 。 更 に こ の 三十
巻 本 は 金 剛界
マ ン ダ ラ を 降 三 世 品 、 遍 調 伏 品、 一 切義
成
就 品 と 発 展 し て 説 か れ て い る か ら 『 金 剛 頂 経 』 を 眺 め て い く こ と は極
め て 大 切 で あ る 。 『 初 会 金 剛 頂 経 』 は 大部
の も の で あ る が 、 そ の 内 容 を 限 ら れ た 紙 面 で 明 ら か に す る た め に は マ ン ダ ラ の各
尊 の 真 一 21 一NII-Electronic Library Service 智山学報 第五十四輯 言 文 を 比 較 対 照 し て 見 て い く こ と で 解 決 す る 。 こ の 経
典
は 仏 教 経 典 で は珍
し く 論 理的
に 思想
内 容 を 展 開 し て い る か ら 各 品 の 尊 格 の 真、 言 は 規 則 正 し く 変 化 し て い る の で 、 こ の 点 に 注 目 し て い け ば よ い と 思 わ れ る 。 し か し各
品 の尊
は 成 身会
の よ う に す べ て 三 十 七尊
に な っ て い る の で は な い か ら 、 四 大 品 そ れ ぞ れ の マ ン ダ ラ に共
通 し て い る 金 剛 界 主 要 十 六尊
に 絞 っ て み て い き た い 。 ω金
剛
界
品ω 奠 く 四 1 β 臼 倒 σq 帥 β ー ヨ 四
氤
団 凶畠
⊆芻
ヨ超
o鼠
ヨ 帥 日 帥氤
− 貯 巴BI
同 且普
（ HO ◎ 1 らQ 艀 ド 〜 団 ’ 一 〜 ｝ 宀 ． Φ 一 刈 ） 金剛
界
・ 大 マ ン ダ ラ （ 成 身 会 ） （ 一 ゜。 1 し。 心 b。 ° ρ 霽鷲
〜 H認
） 喜 愛 王 薩 ＜ ＜ ＜ ＜9
． £i
． 聖． 曾． r 『 『 門 螢 蝉 四 P l l l I ω 「 ト｛ ω畧
鬱
舞
・咢
仁 帥 笑幢
光宝 ＜ ＜ ＜ ＜ I I I ＊
扇
冨
弖
4
都ε
暫曁
P 語 因 利 法 ＜ ＜ ＜ ＜ 1 1 1 1 σ げ 昌 ⊆L にア （D 匡」 匚ア督
ε ：囂
曁
βコ・ 拳牙
護
業
＜ ＜ ＜ ＜ 【 I I I ω kl 肘 穿〒 曽 帥 ⊆） β｝ 昌 評 穿〒 H含
’芻 紹舞
（ ＊ ＜ 11 〈 巴 螽 ）金 剛 秘
密
マ ン ダ ラ （ 三昧
耶 会 ） （ ω α O 幽 o ° H 肖 ’ ω bo り 〜 ω ω 旬 ） 一22
一 N工工一Eleotronio Libraryマ ン ダラに見ら れ る 「慈 悲と智慧の世界」 （八 田） 利 く lFo 鐙 ー oq 口
ξ
Φ 因 く 1 αq ¢ξ
四 − 日き
α 巴 Φ 証 叩 く 1 Φq ロ げ 鴇 PI 冨 O 簿 1 ω 餌 日 P 望 Φ 護 く 1 ゆq ⊆ 汀 団 −訂
く 碧 ー ω 四 日 p。 《 牙 く 1 αq ロξ
p。 1 ＜ 1 α 9。 目 ω 窪 倒Iq
冨
艮 巳 寓 ● ， O ● 拳 く 1 ゆq呂
冨
−霞
亳 餌 − 日 ロ ω 口金 剛
智
・法
マ ン ダ ラ薇
細会
） （ ω 卜。 ° P 目 お ト 〜 ＝」
臆
）金
剛
事 業 マ ン ダ ラ （供
養 会 ） （ °。9
σ ゜ 口 ゜ qO ひ 〜 即 目 O ） 一23
一NII-Electronic Library Service 智山学報第五十四輯 喜 ω
巴
『 ロ ー 貯 習 鋤 ー ロ ー ω 1 屏 1 ε ω 岳 ＊ OI °。1
評 11 （ 〇 三 餌 1 ω9
母き
PI匿
同 日 四 ） 法 く ー爵
彎 ヨ 帥 鼠 1 … 日 p冨
−穿
9。 『 日 島・ 利 ロ亙
団
IO 贄 p巨
鼠・ ． ・ ヨ 倉。 『斜
o 鐙 因 〇 四す
騨 芻 冨 …冒
『 写 霞 叶 、 闘 臼 ： ・ 語 ω ロ 日 α 『 馴 − ぴ げ 倒 ω 19 α α 『 鋤 笑 ＊ 拳 牙 護 業 日聾
倒 lU陣
マ
買
鋤 ヨ＆
旨
臣
8
σ 『岩
1 ＜ 臥 蠢 −氤
ω Φ爵
8
拶 ー ヨ紹
匿
． 1 ω IOI 評 −惹
鐔
冒
切冨
IO 冨 器 轟 1 ω 1 切 ー 評 − 評 三 包 o冨
己
く 笆 餌 1 ω IOI 犀 1 σ匿
蕁穹
α冨
− 芻 筥 時 四 1 ω − OI 犀 1 ぽ 三 ¢ （ °・ − 01 屏 闘 ω ヨ 胃 ⇔鐔
−旨
冨 − 屏 贄 ヨ ） 以 上 ま と め る と 金 剛 界 マ ン ダ ラ の 根 本 の 成身
会 に 入 る た め に は 三昧
耶 会 の修
法 が 大 切 で あ る 。 三 昧 耶会
の各
尊
に は グ ヒ ヤ （碧
＝觜
） 、 サ マ ヤ （ 器B
錯 巴 の 語 があ
り
、 そ れ は如
来 の 秘 密、 大 悲 本 誓 の 立 場 が 強 調 さ れ て い る 。 次 の 微 細 会 の 大智
の 立 場 が 強 調 さ れ る 。 微 細智
（ の 穿 ω ω 日 四 − 一 諱 き ） は如
来 の 深妙
な智
慧 が 示 さ れ 、 大 悲 と 大智
の 働 く と こ ろ に は 、 そ の 綜 合 の 働 き は宗
教 実 践 の 羯磨
（ 臣琶
帥 ） が 展 開 す る 。 し た が っ て 微 細会
の各
尊 に は o ぢ （ 尊 名 ） ω O厨
日 9 1 旨習
p・ °。 p 日旨
冨
巳 の真
言 が 示 さ れ 、 そ の 他 に 理 ∋聾
鋤 （ 自 性 ） 、耳
自 P耳
α錯
餌 （ 心 髄 ） の語
が 示 さ れ、 供 養 会 の各
尊 に は薯
冨 1 ω ロ蟇
蠢蠧
犀 穹 ヨ 餌 の 語 が 付 け ら れ て い る 。 大 悲 と 大 智 に よ る 働 き が 大 き な 宗 教 実 践 と な っ て いく
こ と が 明 ら か に さ れ て い る 。 図 降 三 世 品 ω 奠 く 四 − 鐙 臼偲
p。 鼠 1 ＜ 鉱 蠢 ー ω 鋤 ヨ N 気 o畠
ヨ 帥B
国 匿 ー 尻 巴 ρ 9。 − 蕁 冨 ’7 （ ω ゜ O ° H 宀 ゜ 一 〜 Hb ρ O ）降 三 世 大 マ ン ダ ラ （ 成
身
会
に 相 当 ） （ ω 刈9P
＝ ° °。 謡 〜 口 ゜ Q。 °。 O ） 一24
一 N工工一Eleotronio Libraryマ ンダラ に見 ら れる 「慈 悲 と智慧の世 界」 （八 田）
灘
．
⊥
糊
雛
陛
金 剛 忿 怒
秘
密
マ ン ダ ラ （ 三昧
耶
会 に 相当
） （ °。 °。 H ． げ』
° δ O °。 〜 δ 嵩 ）金
剛 部 法 智 三昧
耶
マ ン ダ ラ （ 微 細 会 ） （ ω ゜。 °。 ° ρ 口 」 O置
〜 国」
O °。 ド ） 髄25
一NII-Electronic Library Service 智山学報第五 十 四 輯
金 剛 部 羯 磨 マ ン ダ ラ （ 供
養
会
） （ qQoQ ゜P
】 田 ゜ μ 昌 し○ 艀 〜 ＝ ’ 目 一 し⇔ 刈 ） 一26
一 N工工一Eleotronio Libraryマ ンダ ラ に見られる 「慈悲 と智慧の世 界」 （八 田） 語
く 1 ＜
躍
− 菊 − 菊 ＊ 幻 − 幻 11 （ 憎 四 旭 四 Φ 1 『 四 旭 四 曽 《 9 ）拳
＜ 1訂
鬯 ヨ 四 − 目 ロ ω ユ ω 匡 7鴇
降 三 世 品 は 何故
忿 怒 の智
慧 を も っ て 降伏
の 働 き に 出 る の か 。経
典 で は 五 類 諸 天 を傘
下 に 置 く 大自
在
天 は 諸悪
有 情 （ 4 ） の代
表
的
存 在 で あ る 。 こ の よう
な 有 情 の 教 化 は 忿 怒 に よ ら な け れ ば な ら ぬ と す る 。経
典
の 記 述 を簡
略 に 述 べ れ ば次
の 通 り で あ る 。 世尊
大 日 は 大 自 在 天 の 降 伏 は 大方
便
智 金 剛 の 心 に 入 り自
我
を 克 服 （ 5 ）す
る根
本明
（ 真 一 ゜。 °。 b。 ）9
ヨ を も っ て 降 三世
の 働 き に 励 ま ね ば な ら ぬ とす
る 。 世尊
の 教 え を受
け た 金 剛手
は 大 自 在 天 に 三 宝 に 帰 依 せ よ と 迫 る 。大
自
在
天 は 三 界 の 主 な り と い っ て 金 剛 手 に 対 決 。 金 剛 手 は 金 剛杵
を 取 り 上げ
て 大 マ ン ダ ラ に 入 れ と 。 大自
在 天 は何
故
金 剛 手 が 教勅
を命
じ る の か 。 世 尊 は 大自
在
天 に 「 三 宝 に 帰 依 せ よ 。 で な い と 金 剛 手 は暴
悪 威 猛 の 姿 で 降 伏 す 」 。 大 自 在 天 は 「 我 は 三 界 の 主 な り 。 故 に 汝 に 教勅
を 授 く 。 我 に依
れ 。 」 金 剛手
は 大自
在 天 に 「汝
は 下 賤 の 生 れ 、 所 行 も 悪 く どう
し て 汝 の 教 行 と 同 じ く 出 来 る か 。 」 大 自在
天 は大
忿 怒 と な り 「 我 は 我 の 信 念 と行
動
に 基 づ く 。 」 金 剛 手 は 大 忿 怒 と な り 世尊
に 教 化 の 方法
を 問う
。 「 大 自 在 天 は自
己 の智
力
を 恃 み 、清
浄 な る 教 え （ 6 ） に耳
を 傾 けず
、信
じ な い の を 如 何 に す べ き か 。 」 世 尊 は 殺害
の 真 言（ 真 瞳
9
「降
三 世 金 剛 よ 、 フ ム プ ハ ッ ト 」 （ 殺 害 せ よ ） を 授 け 、 金 剛手
は 自 心 の真
言冨
已 （ 殺 害 ） を 唱 え殺
害
に向
う
。 こ の と き 大自
在
天 は じ め 三 界 の諸
天 は 迷 悶 苦 悩 し 立 て な く な っ た 。 世 尊 は 三 界 諸 天 を救
済
す る よう
に告
ぐ 。 大 自在
天 を除
き 他 の 諸 天 は 教 勅 に 従う
。 金 剛 手 は 教 勅 に従
っ たも
の に 金 剛 の 心 を 起 こ さ せ る 教 化 を な し 、 諸 天 に安
慰
を与
え 、 次 い で護
命
の業
に 励 む 。 金 剛 手 は 教勅
に従
わ な い 大自
在 天 に つ め寄
る 。大
自 在 天 は 暴 悪大
忿 怒 と な っ て 金 剛 手 に 対 決 す る 。 金 剛手
は ア ヌ7
） （ 8 ） チ ャ ラ 忿 怒 大 明 （ 真 ♂ ω ー σ ） を も っ て 大自
在
天 を 降 伏 し 、 更 に 大自
在
天 を 清 浄 な ら し め る た め の真
言（ 真
9
ω 1 一27
一NII-Electronic Library Service 智 由学報 第五十四輯 。 ） を 唱 え 、
次
い で 金 剛 手 は 左 足 で 大自
在
天 を踏
み 、 右 足 で ウ マ 妃 を 踏 み つ け る 。 こ ・ に 遂 に大
自在
天 と ウ マ 妃 は （ 9 ） 降 伏 さ れ る 。 時 に世
尊 は 大 自在
天 の た め に 勝 上 の大
悲 心 を 起 こ し て 一 切 仏 慈 護 心大
明（ 真
89
を 説 き 、 慈 悲 の 心 を も っ て 救 済 す る 。 続 い て 大自
在 天 始 め 五 類 諸 天 に 金 剛 の 潅 頂 名 を与
え る 。 こ の章
で 金 剛 手 が 忿 怒 降 三 世 と な る の は 、 仏 の 慈 悲 が 強 烈 と な り 、 智 慧 が 怒 り と な っ て根
強 い 主 我 性 を 克 服 し 、清
浄
な 人 間 性 に 立 ち 帰 ら せ る 大 慈 悲 の在
り 方 を 示 し た も の と い え る 。 こ の 精神
内 容 の 転 換 を 様 々 に 解 い た も の が 降 三世
の 各 マ ン ダ ラ と い え る 。降
三 世 大 マ ン ダ ラ の 各 尊 は 金 剛 界 大 マ ン ダ ラ の尊
に 忿 怒す
○ α匿
が 付 せ ら れ 、忿
怒尊
と し て働
く こ と が 示 さ れ て い る 。 金剛
忿 怒 秘 密 マ ン ダ ラ の各
尊
は 忿 怒ξ
o自
ρHo °・ 曽 が
付
け ら れ 、 ま た 女 性 形 の 語 が あ り 、 忿 怒 の中
に も 引 入 の 慈 徳 があ
る こ と を 示 し て い る 。金
剛
智
法 マ ン ダ ラ の 尊 は 微細
智
゜。罫
ω 巳 四 、 忿 怒ζ
oO匿
の 語 が 付 け ら れ微
細 智 忿 怒 の性
格
が よ く で て い る 。 金剛
羯 磨 マ ン ダ ラ の 各 尊 は 羯磨
、 三 昧 耶 評 穹 ヨ 鉾 ω 四B
曙 或 い は く 四 雪 犀自
ロ鉄
農
Φ 鼠 ゜q 四旨
等
の 行動
実 践 の語
が つ け 加 え ら れ 、 供 養 の 働 き が 示 さ れ て い る 。 囘 教 勅 マ ン ダ ラ巳
1 δ臣
Io ロす
国 − 日 9 げ 9− ー ヨ 帥 壱 O 巴 ⇔ 1 〈 置 ぼ 1 幺 ω 富冨
’7 （ もQQo ゜ o 〜 剛 山 ． 目 boO 〜 ） 降 三 世 品 の第
一 章 の 始 め に 諸 天 が 降 伏 さ れ 、 世 尊 は 諸 天 を 鉤 召 し て マ ン ダ ラ に 遍 入 さ せ る 。 教 勅 マ ン ダ ラ の章
の （ 10 ） 最 初 に 諸 天 が 遍 入 さ れ る と き、 い か な る 性 格 が採
り
入 れ ら れ た か が 示 さ れ る 。 こ れ は 一 切 衆 生 が 清 浄 な 本 性 に 立 ち か え っ た と き、 そ の 衆 生 の 個 性 は 何 か と いう
こ と が 示 さ れ て 興 味 深 い 。繁
を 避 け て 明 王衆
の ナ ラ エ ン 等 の グ ル ー プ を 見 て み た い 。 （ 11 ）鼠
螽巻
ロ 鋤↓ ＜
a
冨 IB 曙 ⇔ 1 く 置 穹 鐙巻
一28
一 N工工一Eleotronlo Llbraryマ ン ダラ に見 られる 「慈悲 と智 慧の世 界」 （八 田）
ω
穹
讐 1ざ
ヨ 習 餌 ↓ ＜骨
卿 − °q冨
三 帥 − 冨蠧
◎
野
9
日き
↓
＜ 鉱 蠢 IB
瞿
轟
− 日魯
倒 1 げ 鐔 富H
巳
冨↓
＜ 曽 冒．
碧
巳
鼠
1 α聾
鋤冨
教 勅 マ ン ダ ラ に 示 さ れ た 四 つ の マ ン ダ ラ は 諸 天 の 働 き は 世尊
の 示 し た 金剛
界 マ ン ダ ラ と 等 し い こ と が 示 さ れ て い る 。 こ れ は い う ま で も なく
衆 生 の 心 は 降 伏 さ れ た と き 、 如来
の 大 我 の 心 に 生 き 、 聖 な る 忿 怒 の 教 化 に よ っ て 、 仏 陀 の道
を歩
む こ と を 示 し た も の で あ る 。 世 尊 一 切 如 来 は 金 剛 手 が 大 自 在 天 を 降伏
さ れ た の を 見 て 、 大 自在
天 を 釈 放 す る こ と を説
く 。 死 者 意識
鉤 召 心明
（ 12 ） （ 真 ド 撃 ら。 ） を 説 い た と き 、 大 自在
天 は 灰 に 覆 わ れ た 世界
の 中 に 灰自
在
音
如
来
切匿
の 巳 Φ珍
母 mI 巳鴣
『 o 夥 と し て活
命
復
活 す る 。 こ の 時 金 剛手
は 挙 足 大 明 （ 真 一 同 。 。 宀 ） 「 ＜ 鉱 蠢 ヨ9
金 剛 の 解 放 よ 」 を も っ て 大 自 在 天 を 解 放 す る 。 金 剛手
は 。旨
−時
o け 富 冨菩
提
心 の光
と な り 、 そ の 光 が 大 自 在 天 の 頂 に 輝 き 潅 頂 が な さ れ る 。 こ こ に 大自
在 天 は 金 剛 最 上 明 菩 薩 く 鋤 冒 9・ （ 13 ） 1 ≦身
o 暮 四 ヨ 四 と な る 。 こ の よう
に し て 大自
在
天 が 金 剛 界 マ ン ダ ラ の 主尊
の 位 置 に 入 れ ら れ る と 他 の 五 類 諸 天 も そ れ ぞ れ マ ン ダ ラ の 中 に （ 14 ） と り 入 れ ら れ る 。 ナ ラ エ ン等
の 明 王 衆 の 四 天 は 東方
輪 に 組 み 入 れ ら れ 、 ア ミ リ タ ク ン ダ リ 等 の 忿 怒 衆 は 南 方 輪 に組
み 入 れ ら れ 、 マ ド マ ッ タ等
の 大 魔 王 は 四 方 門 の 尊 と な り 、 コ ー シ ャ パ ー ラ 等 の 金 剛 使 者 の 尊 は 南方
輪
に組
み 入 れ ら れ 、 ヴ ァ ラ ー ハ ー等
の 四尊
は 北 方輪
に 組 み 入 れ ら れ 、 金剛
界
マ ン ダ ラ が 完 成 す る こ と に な る 。 教勅
マ ン ダ ラ も 金 剛 界 品 と同
様 に 四種
の マ ン ダ ラ が 説 か れ て い る が 、 内 容 を精
査 す る と あ ま り 顕著
な 変化
が 見 ら れ な い の で 相 違 を示
す こ と は さ し ひ か え る 。遍 調
伏
品 ゜。 髯 く oI 富 昏鼠
讐 印 −穿
胃 日 四 − 畧 日 帥醤
鼠
日 鋤 ヨ聾
倒 − 即 巴 ロ 帥 −愚
曁
（ 目 QQ ー ω OO ◎ 四 ． H 屮 H 蔭 Oo 〜 H ◎OQoO ） 一 29 一NII-Electronic Library Service 智 山学報 第五 十四輯
調
伏
一 切 世 問 大 マ ン ダ ラ （ 成身
会
に 相 当 ） （ 仁 OO ． 鋤 ゜ 一 宀 ゜ 一 一 QQ 〜 一 卜o 刈 ）蓮 華
秘
密 印 マ ン ダ ラ （ 三 昧 耶 会 に相
当 ） （ 蒔 O 心 ’ σ 。 団 ゜ H 卜o 〜 ］ 田 ゜ 同 Q◎ Qo ） 一30
一 N工工一Eleotronio Libraryマ ン ダ ラ に見ら れ る 「慈悲と智慧の世界 」 （八 田） 語
冨
巳
穹
91鼠
ω巨
O O 拳 b巴
B9
。 ー ヨ 昜 訂 ● ．法 智 マ ン ダ ラ （ 微 細 会 に 相 当 ） （ ら O 刈 ゜ O ° ｝ 宀 ゜ 昌 刈 ド リ 〜 一 刈 卜ob 二 ）
蓮 華
羯
磨
マ ン ダ ラ （ 供 養 会 に 相 当 ） （ 卜8
° σ ゜ 口」
♂ H 〜 国 ゜ 嵩2
） 一31
一NII-Electronic Library Service 智 山学報 第五 十四輯 語 因 利 b
巴
ヨ 曽 1ζ
「B
四 − 屏 ロ 日 倒 甑 b巴
目 ゆ ー臣
HB 鋤 −畠
＆鴇
巳 b巴
目 91冨
H 日 曽 ー σ 団 げ巳
拳 牙 護 b巴
ヨ 国 ー 鑓冨
oI 閃 母 日 餌冨
匹 日 餌 −紆
巳 ω け 鼠 −冨
同 日 倉・ 1冨
ユ冨
O 日 国 −冨
「 日 薗 ー 日昜
甑 遍 調 伏 品 の ま と め 遍 調 伏 品 は 世 界 の 本 性 は す べ て 清 浄 な る こ と を 体験
さ せ よう
と し た も の で あ る 。 こ こ で は 煩 悩 は 捨 て 去 る べ き も の で は な く、 よ く コ ン ト ロ ー ル す れ ば す べ て 清 浄 な働
き と な る こ と を 示 す 。 そ れ を 蓮華
部
の 徳 を 主 る 観 自 在 菩 薩 を 中 心 に し て 説 き 示 す の で あ る 。 そ の た め調 伏 一 切 世 間 大 マ ン ダ ラ の
章
の各
尊 は 金 剛界
マ ン ダ ラ の 各尊
に冨
α ∋ を 付 し た も の と な っ て い る 。 ま た 蓮 華 秘 密 印 マ ン ダ ラ の各
尊 に も冨
α 白 四 の 語 が 付 け ら れ て い る 。法 智 マ ン ダ ラ の
各
尊
に は冨
血 ヨ 餌 − 旨習
四 の語
が あ り 、蓮 華 羯 磨 マ ン ダ ラ の
各
尊
に は o巴
目 国 − 貯 胃 日 四 の 語 が あ り 、 蓮華
部
の 徳 が 根 底 に あ っ て 大 悲 の 働 き 、大
智
の 働 き、 慈 と 智 の 融 合 す る 供 養 の 立場
が 明 ら か に さ れ て い る 。 ω 一 切義
成 就 品 ω 贄 く 節 18 け90q
讐 oI 評 穹 ヨ ¢。 1 慈 ヨ 四 讐 昌 91 ∋ 2。 巳 9。冨
− 貯 9。 一Bl
螽 冨 げ （ 虧 一 H ’ o ． ｝ 宀 凾 HoO ω H 〜 ｝ 宀 ゜ MW μ ω （ ） ）一 切
義
成 就 大 マ ン ダ ラ （ 成身
会 に相
当
） （ 心 一 QQ ° 四 ゜ ｝ ｛ 幽 HQQ 刈 μ 〜 H 宀 ゜ 一 〇QQ ◎ 恥 ）32
N工工一Eleotronlo Llbraryマ ンダラに見ら れる 「慈悲と智慧の世界」 （八 田）
蜘
劉
引
翻
奮
法 秘
密
印
マ ン ダ ラ （ 三 昧耶
会 に相
当 ） （畦
9
ρ 国」
譯
〜 出」
Φ ゜。 ）宝 智 マ ン ダ ラ （
微
細会
に 相 当 ） （ 念 ． げ ゜ 口』
Oホ
〜 NOお
） 宝 一 口 倒 P 倒 σ げ 一 ω Φ 屏 ⇔33
NII-Electronic Library Service 智山学報 第五 十四輯
轗
∴
宝 羯 磨 マ ン ダ ラ （ 供 養 会 に 相 巳 僧 【 冖 昌 1 』 昌 9HF 曽 1 ω 仁 『 鴇 四 ● 日 曽 ＝ 凶 1 」 隊 倒 昌 餌 − 畠 げ く 曽 」 P ， 巳 国 昌 一 1 」 識 倒 局 鋤 け け 鋤 ー げ 倒 ω 螢 O ● ● h 口 四 昌 一 − 』 諏 倒 目 鋤 − 口 目 け 団 固 1 ， ・ ヨ 曽 昌 一 1 』 諏 倒 目 曽 − 同 国 評 ω 四 〇 ・ 日 四 ロ 一 1 』 諏 鋤 昌 901 《 鋤 屏 の pρ 目 P 四 ロ 一 1 』 諏 帥 口 帥 IH5 鐸 ω 口 O ． 当 ） （
畠
H
σ 。 口』
8
一 〜 ＝』
O逡
） b ε 9 一 切 義 成 就品
の ま と め 一34
一 N工工一Eleotronio Libraryマ ンダ ラ に見 ら れる 「慈 悲と智慧の世界」 （八 田） 一 切
義
成
就
品 は 降 三 世 品 で 煩 悩 が降
伏
さ れ、 遍 調 伏 品 で 煩 悩 が コ ン ト ロ ー ル さ れ 、 人 間 のす
べ て の 働 き が清
浄 に し て 大 生命
の 蓮 華 に 生 き る こ と が 説 示 さ れ た か ら 、 こ こ に 一転
し て 宝珠
が 顕 わ れ 大 生命
が体
得
さ れ る こ と を 示 そう
と す る 。世
界
が す べ て 清 浄 で あ れ ば 宝部
の光
の 中 に あ り、 人 問 本 性 の珠
玉 が 輝 き、 す べ て の所
願 が成
就 さ れ て い く こ と を示
す
。 こ の 宝 の世
界 を 示 す た め に 世尊
は 虚 空 蔵菩
薩 と な っ て 一 切衆
生 が 永遠
の 精神
の 世 界 を観
見 し 、自
ら そ の 宝 を 把 握 さ せ よう
とす
る 。一
切
義
成 就 大 マ ン ダ ラ の 各尊
は 概 ねBp
旦
蠢9
四 が 付 せ ら れ 宝 珠 、 或 は 宝 の意
が 明 ら か に さ れ て い る 。宝 秘 密 印 マ ン ダ ラ で は 、 日 p
量
鐔B
国 が付
せ ら れ 女性
形 の 立 場 が示
さ れ 大 悲 の 性格
が裏
に あ る こ と が示
さ れ て い る 。 宝 秘密
マ ン ダ ラ の各
尊 に は ヨき
押 冒 習 国 の 語 が付
せ ら れ宝
珠 の 徳 と 智慧
の 徳 が 示 さ れ て い る 。宝
羯
磨 マ ン ダ ラ の 尊 は概
ね 巳 ⇔ 巳 − 鑓 臼 四 と ω 9 日 9・ 団 Φ 又 は bo 』 Φ の よう
に 女性
形 の語
が 付 せ ら れ て 供養
の働
き を 示 し て い る 。五
む
す
び
「 慈 悲 と智
慧 の 世 界 」 は慈
悲 に は 智 慧 を含
み 、 智 慧 に は 慈 悲 を 内 に 秘 め て お か ね ば な ら ぬ 『 金 剛 頂 経 』 に は 例 え ば 降 三 世 大 マ ン ダ ラ を 説 い た 後 、種
々 の 観 想 法 が説
か れ 最 後 に 「 秘密
忿怒
印 智 蠢 げ p。 °・巻
1す
o自
⇔ ・ 目 ¢ α 鼠 − 旨習
゜。 を 説 き 、特
に 篩冨
ω旨
（ 秘 密 ） は 同 意 義 の σq ロ身
弾 と は 異 っ て 男 女 の 合 一 に 喩 え て 瑜 伽 の境
地 を 表 わ し て い る 。 「 吽 〔 15 ） 字 〈 『 O 日 〉 相 応 せ し め れ ば 蓮華
（ 悲 ） と 金 剛 （ 智 ） の 二 根 は 相 応 し て 、 そ の命
を 破 解 す る 」 と あり
、悲
智 一 如 に 働 く と こ ろ に 真 の働
き が あ る と いう
。 次 に 慈 悲 を表
に す る 教 化 の 働 き が 何 故 に 忿 怒 と 一 体 と な る の で あ ろう
か 。 そ れ は 既 に 降 三 世 大 マ ン ダ ラ の 章 と 教 一35
一NII-Electronic Library Service 智 山学 報 第五 十四輯
勅
マ ン ダ ラ の 章 の 初 め に 経 の内
容
を詳
しく
述 べ た 。 こ の 問 題 を 宗 教 哲 学 の 問 題 に 照 ら し て み て み よ う 。 宗 教 哲学
者 、 波多
野 精 一 は 『 時 と 永 遠 』 に お い て愛
の性
格
を ギ リ シ ア の プ ラ ト ン 的 な 愛 エ ロ ス （男
○ ω ） と 、 プ ロ テ ィ ヌ ス か ら ア ウ グ ス チ ヌ ス に か け て 発 展 し た 愛 ア ガ ベ ー （ 〉 °Q8 ） を 対 比 し 、 聖 な る 世 界 の 愛 は ア ガ ベ ー で あ （ 16 ） る と さ れ る 。 ア ガ ペ ー の第
一 の特
徴 は 「 媒 介 す る あ ら ゆ る 規定
原 理 を 超 越 な い し 克 服 し て無
制 約 的 に 他者
を 原 理 と す る点
（ ℃ ° 嵩e
」 。 第 二 の特
徴 は 「 自 己放
棄 、 犠 牲、 献 身 、去
私
、 没 我等
の 語 に よ っ て 言 い表
わ さ れ た る 主 体 の 態 度 」 （ 勺 ゜ 嵩 ） 。 自 己 性 を投
げ
だ し て 他者
に お い て他
者
よ り し て 生 き る と こ ろ に 人 格性
は 成り
立 つ 」 〔 勺 ． 一 ） と い う 。 神 と の 共 同 に 入 る も の は 先 づ自
ら 神 の 面前
に 立 た ね ば な ら ぬ 。 … 人 間 的 主体
は共
同 に 入 る と と も に す で に 先 づ 神 と 直 接 に 接 觸 せ ね ば な ら ぬ 。 し か る に こ の こ と は … 壊滅
を 意 味 す る 他 は な い で あ ろう
。 何 も の を も 焼 き 尽 く さ ね ば な ら ぬ 神 聖 性 の 猛 火 の 中 に 灰 燼 に帰
し た 主 体性
は い か に し て 生 の 中 心 、 働 き の出
発
点
と し て の 実 在 性 、 主 体性
を 保 有 しう
る で あ ろう
か 」 （ 勺 ゜ δ O ） 。 と 述 べ 、 「 完 全 な る愛
と 、 感 謝 と 歓 喜 、 こ こ に 永 遠 に 生 き る も の の 尽 き ぬ 浄 福 は 存 す る 」 （ 閏 b。 ω じ 。 こ こ に は 降 三 世 品 に あ る 大 自 在 天 が 灰 自 在音
如 来 と し て活
命 さ れ 、 金 剛 最 上 明 菩薩
と し て 生 か さ れ る こ と と対
応 し て 眺 め れ ば よ く 分 る と 思 わ れ る 。 そ し て 最 後 に 胎 蔵 マ ン ダ ラ の 究 極 は 虚 空 蔵 菩薩
の 示 す 宝 珠 の 生 き る 世 界 、 『 初 会 金 剛 頂 経 』 の 最 後 が 虚 空 蔵菩
薩 の 展 開 す る ヨ 曽 巳 − 蕁 臼 国 宝 珠 の 世 界 も 、慈
悲
と 慈 悲 の 究 極 の 働 き が 、 人 格 が完
成 さ れ て い く こ と を示
し て い る の で あ る 。 （ 17 ） こ の よう
に 見 れ ば 金 剛 峯寺
金 堂 の 尊 像 の 配位
（ 図9
） 、 東 寺 講 堂 の 自 性 輪 身 、 正法
輪
身 、 教命
輪
身 の 諸尊
の 配位
も （ 図10
） 宗 教哲
学
の 最 重 要 な 世 界 を 示 し た も の と い え よう
。 一36
一 N工工一Eleotronlo Llbraryマ ンダ ラに見 ら れ る 「慈 悲と智慧の世界」 （八 田） 注 （
1
） 栂 尾 祥 雲 者 『 曼 荼 羅 の 研 究 』 昭 32 、 高 野 山 大 学 五 二 頁 、 蓮 華 座 の 起 源 及 び 発 達 参 照 。 （2
） 八 田 幸 雄 著 『 五 部 心 観 の 研 究 』 昭56
、 法 蔵 館 図 版 （1
〜 5 ） （3
） 大 正 一 〇。 1 ω 自 ” 〜 堀 内 寛 仁 編 著 『 初 会 金 剛 頂 経 の 研 究 』 昭58
、 密 教 文 化 研 究 所 。 こ れ は 梵 本 の 校 訂 本 で あ り、 目 に 分 け て 一 連 の 番 号 を 付 し て い る 。 （ 串 這 ） と 略 記 す る 。 （4
） 大 正 一 ゜。 IQ 。 詞 〜 ω お 甲 刈 顧 〜 刈 譯 の 記 述 を 要 約 し て 記 す 。 （5V
（ 真 一 ゜。 °。 N ） 八 田 幸 雄 著 『 真 言 事 典 』 平 河 出 版 社、 昭 和 60、 真 言 文 の 検 索 が 便 利 。 一 ゜。 °。 卜。 は 上 掲 本 の 二 三一 二 頁、 訳、 意 味 を 解 説 。 以 下 同 じ 。 こ の 部 分 は （ ω 刈 O ° σ ゜ 甲 ｛ ． 朝 O ） （6
） 大 正 一 ゜。 1 °。 刈 一 。 げ ゜ 甲 Q。 ω （7
） 大 正 一 ゜。 1 °。 鳶 ゜ 9 国 ゜ 認 O （ 真 ω ひ ω ゜ げ ） （8
） 大 正 一 ゜。 1 ω 謎 ゜ p 甲 認 卜。 （ 真 い ひ Po ） （9
） 大 正 目 ゜。 1 °。 話 ゜ げ 「 国 ’ 謡 （ 真 ひ OO ） （10
） 大 正 目 ゜。 1 °。 蕊 。 餌 〜 げ ． 国 ゜ 置 〜 諸 尊 の 特 性 （11
） 大 正 Hc 。 1 ω ρ 『 国 ゜ 這 ω 〜 自 ゜ 旨 ω ゜。 例 犬 自 在 天 ↓ 忿 怒 金 剛 （12
） 大 正 目 。。 1 ら。 『 卜 。 ’ グ 胃 這 匡 ゆ 冨 の 巳 募 く 国 蕁 巳 お O °。 ゆ （13
） 大 正 昌 ゜。 − °。 O ρ σ ． 国 。 這 も。 °。 （14
） 大 正 Hc 。 1 も。 認 』 〜 げ ゜ 円 這 竃 〜 這 ゜ 。 窃 諸 天 の マ ン ダ ラ 遍 入 （15
） 大 正 目 Q。 1 ω 謬 』 ’ 霽 爲 〜 ら。 ω （16
） 波 多 野 精 一 著 『 時 と 永 遠 』 岩 波 書 店 昭 18、 ＝ 二 五 頁 以 下 、 第 七 章 永 遠 性 と 愛 （17
） 高 田 修 著 『 仏 教 美 術 史 論 考 』 中 央 公 論 美 術 出 版 、 お ＄、 三 七 四 頁 の 論 説 に よ る 配 位 。 主 要 項 出 典、 一37
一NII-Electronic Library Service 智山学報第五十四輯 太 陽の信仰 図 1 五部心観大 日 遍 知三角 印 胎 蔵 全 図 図 2 持国 宝 瓶 鵬 院 ）
羨
宝 瓶 （釈迦 院）馨
（ 地 蔵 院 ） 地 蔵 （遍 知 院） 遍 知蔭
霊 障肇
除 霊 障 多 関 （ 最 外 院 ）観
観 音 自 院 在 ） 宝（中 台八葉 院 ）宝 瓶 ／ 瓶春
宝 宝 瓶 瓶釜
金掣
蹕
） 増 長叢
外堕
（持 明院 ）槃
＿ （虚 空 蔵 院） 一季
鏖
蔬
｛
観 蔵 宝 瓶章
（蘇悉 地 院） ” 王 ） 宝 瓶 広 目 一
38
一N工工一Eleotronlo Llbrary Servloe
幺
こ
、／
u
、
ミ
こ
／ σ7
ハ
＼
＼
〉
キリスト教 神の光と眼 胎蔵図像No
．3
一切空蓮華瓶 図マ ンダラに見 ら れ る 「慈 悲 と智慧の世界」 （八 田） 図 4 胎 蔵 図 像 （ 賭 o ］ ω ） 図 7 図 6 図 5 「三昧耶マ ンダラ」の 五仏
6
観 音 5 阿弥陀 4 開敷 華 3 宝 幢 2 如 来 印騨
一39
一NII-Electronic Library Service 〈 キ ー ワ ー ド 〉 慈 悲 と 智 慧 の 働 き は 表 裏 の 関 係 、 問 本 性 の 開 顕 ） 、 宝 瓶 （ 人 格 の 完 成 ） こ の 働 き は 忿 怒 ξ o
