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Academic year: 2021

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EMmain:<2019/10/16>(8:50) : 5/316

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まえがき

電磁気学は,力学とならんで,物理の根本に至る主要な街道の役割を果たし てきた.同時に,エネルギーやエレクトロニクスといった現代社会を支える技 術の基盤でもある.その重要性は,あらためて強調するまでもないだろう. しかし,電磁気学は多くの理工系の学生たちにとって高いハードルになって いるようである.異口同音に言われることは,初学者にとって電磁気学は,出 てくる数学が難しいために,根本を理解する前に挫折してしまう.「難しい」と いう苦情の内容は,「ベクトル」なるものが現れて,その代数演算や微分・積分 をしなくてはならない,そのことの複雑さ,不可解さを訴えるものである.も し「だれにでもわかる電磁気学」というものがあるとするなら,それはできる だけ数学を使わず,電磁現象を直感に訴えながら説明するようなものだと考え られることが多い.しかし,これは物理と数学の強いつながりを学ぶせっかく の好機を台無しにする思想である.ガリレオの有名な言葉を思い出そう.「自 然は数学の言葉で書かれた書物である.」これを読む力を涵養し,自然の根本 原理を理解できるようになるために,電磁気学は格好の題材なのである. 本書の目的は,電磁気学という「織物」を見ることで,物理学という縦糸 と,数学という横糸がどのように絡み合うのかを理解することである.縦糸・ 横糸といったが,それぞれの「糸」はそれぞれに独立した大きな文脈をもって いる.例えば,電磁波という物理の糸はそれだけで大著になるような膨大な物 理や工学のテーマをつないでいる.あるいは微分形式という数学の糸もさまざ まな理論へ延びていく長大な道である.本書が注目するのは,それぞれの「素 材」のアレンジメントである.それらを何かある閉じた主題に帰属させるので はなく,アレンジメントとして見渡したい. 数学の教科書として見ると,本書は異色かもしれない.伝統的な数学書は, 数学と物理の交差点 全9巻 【2】巻 電磁気学とベクトル解析 谷島 賢二編・吉田 善章著 https://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookdetail/9784320114029

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EMmain:<2019/10/16>(8:50) : 6/316

kbdbook10<2017/03/06 v10beta keibundou.corp. n.miyakawa>: upLaTeX2e<2011/05/07u00>+0 (based on LaTeX2e<2016/03/31>+0): 電磁気学とベクトル

vi まえがき 十全な準備から始めて,その上に理論を展開していく.しかし本書では,必要 に応じて基盤を築きながら前へ進む.例えば「ベクトル」という概念は,幾度 も定義し直され,それぞれの局面で意味づけられる.それは「泥縄」というも のだと謗りを受けるかもしれない.しかし,数学の本が(物理や工学を学ぶ人 にとって)わかりにくいのは,さまざまな道具概念の意味が「必要性」として 理解しにくいからだ.意味は目的によって生じてくる.私たちは,様々な電磁 現象を理解し応用するという目的のもとで,数学の諸概念の実践的な意味を理 解することを目指そう. 本書は三つの章で構成され,それぞれ(1)物理学,(2)幾何学,(3)解析学の 視点を紹介している.ベクトル場,カレント,時空,メトリックといった概念 が,それぞれの視点からどのようにテーマ化されるのかを説明する.統一を目 指すのではなく,多様性を学ぶことが目標である.電磁気学という街道をたど りながら,幾多の「交差点」の風景を描きたい.そこには,力学,熱力学,流 体物理,さらには量子論の諸概念も立ち現れる.電磁気を閉じた領域として記 述することは物理の感性をゆがめることになる.電磁気と交流する諸分野は, それぞれ深い内容をもつ学問であるから,直ちにそれらの内奥を理解すること は難しいかもしれない.それでも,まずは多様な「文化」に触れ,それらを記 憶にとどめながら街道を進めばよい.諸概念のアレンジメントを見渡すことを 最大の目的として,本書を読んでもらいたい. 2019年8月 吉田善章 数学と物理の交差点 全9巻 【2】巻 電磁気学とベクトル解析 谷島 賢二編・吉田 善章著 https://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookdetail/9784320114029

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