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原日本呼吸ケア リハビリテーション学会誌 2016 年第 26 巻第 1 号 気管支喘息患者に対する看護師による吸入指導の効果 医療法人康曜会プラーナクリニック看護科 ₁), 医療法人康曜会プラーナクリニック呼吸器内科 ₂), 群馬大学医 ₃) 学部附属病院呼吸器 アレルギー内科 中

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(1)

気管支喘息患者に対する看護師による吸入指導 の効果

医療法人康曜会プラーナクリニック看護科₁),医療法人康曜会プラーナクリニック呼吸器内科₂),群馬大学医 学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科₃)

中井 晶子

1)

 ・ 青木 康弘

2)

 ・ 松田 智恵

1)

 ・ 鈴木 雅文

3)

原  史郎

2)

 ・ 須賀 達夫

2,3)

 ・ 前野 敏孝

3)

 ・ 倉林 正彦

3)

要 旨 気管支喘息は,気道炎症,気道過敏性の亢進,可逆性の気道閉塞を特徴とする慢性疾患である.気管支喘息の治療 では気道炎症をコントロールすることが最も重要であり,標準治療として吸入ステロイド薬が用いられる.しかし気管支 喘息患者の中には,病態理解が不十分なために,吸入ステロイド薬に対する誤った認識を持ち,自己判断で吸入を中止し てしまう患者が存在する.当院では看護師が吸入指導を行うことにより,患者の病態に対する理解度,標準治療と治療継 続の必要性に対する理解度の改善を認めた.また初回指導後 6 ヶ月~12ヶ月を経過すると,吸入アドヒアランスには問 題なくても,気管支喘息理解度の低下が見られることから,定期的な吸入指導の継続が必要と考えられた.

Key words:気管支喘息,吸入ステロイド薬,吸入指導,アドヒアランス

原 著

緖   言

 気管支喘息は気道の慢性炎症性疾患であり,組織学的 には好酸球,リンパ球,マスト細胞などの細胞浸潤と気 道上皮の剥離を特徴とする.臨床的には繰り返し起こる 咳嗽,喘鳴,呼吸困難が,また生理学的には可逆性の気 道狭窄と気道過敏性の亢進が特徴的で,気道が過敏なほ ど喘息症状が著しい傾向にある₁).気管支喘息の治療で 最も重要なことは気道炎症のコントロールであり,標準 治療には吸入ステロイド薬が用いられる.

 吸入ステロイド薬は,投与量も少なく安全に使用する ことができる.その目的は,①喘息症状の軽減,②生活 の質(QOL)および呼吸機能を改善,③気道過敏性の軽

減,④気道炎症の抑制,⑤急性増悪の回数および強度の 改善,⑥長期の吸入ステロイド薬の維持量の減少,⑦喘 息にかかる医療費の節減,⑧気道壁のリモデリングの抑 制,そして⑨喘息死の減少₂),とされている.しかし患 者の中には,気管支喘息の病態理解が不十分であるため,

吸入ステロイド薬に対する誤った認識を持ち,自己判断 で吸入治療を中止してしまう患者が存在する.

 そこで看護師による吸入指導が,気管支喘息や吸入療 法に対する患者の理解を高め,アドヒアランスの向上に 寄与するかを検討した.

対象と方法

 平成₂₅年 ₁ 月~平成₂₅年 ₇ 月に気管支喘息と診断され

アンケート③

アンケート②

アンケート①

初診 再診(2〜4週間後) 再診(4〜8週間後) 再診(6〜12ヶ月後)

図 1  吸入指導プログラム

(2)

気管支喘息患者に対する看護師による吸入指導の効果

15

2回目および3回目アンケート 1.気管支喘息について、どのように理解していますか? )風邪と同じだと思っている。 )発作だけの(急性の)病気だと思っている。 )持続する(慢性の)病気だと思っている。 )よくわからない。 2.気管支喘息の治療を、どのように理解していますか? )内服治療が重要である。 )ステロイド(気管支の炎症を治す)の吸入が重要である。 )気管支拡張薬(気管支を拡げる)の吸入が重要である。 )よくわからない。 3.気管支喘息治療は、どのように使えばよいと理解していますか? )症状が無くなっても完治するまで続ける事が大切である。 )症状が無くなれば終了である。 )よくわからない。 4.生活の上での留意点 )たばこの影響は非常に大きい。 )気管支喘息はしっかり治療すると完治することがある。 わからない 5.今回、当院看護師からの吸入アドバイスについて、満足度を教えてください。 不満やや不満普通やや良い良い 6.吸入薬について、効果や使い方の満足度と、不満点を教えてください。 <吸入薬の効果> 不満やや不満普通やや良い良い <吸入機器の使い方> 不満やや不満普通やや良い良い 167.現在、たばこを吸っている方にお聞きします。 )禁煙するつもりは無い )いつかは禁煙したい )近いうちに禁煙するつもり )今回で、タバコをやめた )今回、禁煙治療を受けてみたい ご協力ありがとうございました。

13

図2−1 アンケート内容 1回目アンケート 気管支喘息について、皆さんへどのように説明・検査・治療を提案すればよいか、今後の参 考として、役立てて参ります。ご協力のほど、どうぞよろしくお願い致します。 そう思うものに全部に( )をお願い致します。 1.今まで(以前は)、気管支喘息についてどのように思っていましたか? )風邪のことだと思っていた。 )発作だけの(急性の)病気だと思っていた。 )持続する(慢性の)病気だと思っていた。 )よく知らなかった。 2.今回の説明で気管支喘息について、どのように理解しましたか? )風邪のことだとわかった。 )発作だけの(急性の)病気だとわかった。 )持続する(慢性の)病気だとわかった。 )よくわからなかった。 3.気管支喘息の治療薬を、どのように理解しましたか? )内服治療が重要である。 )ステロイド(気管支の炎症を治す)の吸入が重要である。 )気管支拡張薬(気管支を拡げる)の吸入が重要である。 )よくわからなかった。 4.気管支喘息治療薬は、どのように使えばよいと理解しましたか? )症状が無くなっても、完治となるまで続ける事が大切である。 )症状がなくなれば終了である。 )よくわからなかった。 5.生活の上での留意点 )たばこの影響は非常に大きい。 )気管支喘息はしっかり治療をすると完治することがある。 )よくわからなかった。 146.現在、たばこを吸っている方にお聞きします。 )禁煙するつもりは無い )いつかは禁煙したいと思う )近いうちに禁煙するつもり )今回、禁煙治療を受けてみたい ご協力ありがとうございました。

図 2 ― 1  アンケート内容

(3)

図 2 ― 2  吸入指導チェックシート

18

吸入指導3回目 ID 前チェックリスト ACT ( ) 前情報をチェックする・呼吸機能検査( 医師による初診時の気管支喘息重症度分類%FEV1.0 % 軽症間欠型 %PEF % 軽症持続型 フローボリュー %V50 % □重症持続 %V25 % 管支喘息の理解 酸球(アレルギー)による慢性的な気管支の炎症と気道閉塞があること 常、症状の無い気道閉塞、症状のある気道閉塞、発作状態の気道閉塞があるこ 続した治療が喘息を治すこと、放置すると喘息は徐々に悪化していくこと 煙が重要であること、受動喫煙も避けるべきであること 入ステロイドの理 入ステロイドが気管支喘息の第一選択であること 入ステロイドは治療・予防薬で、発作止め(気管支拡張薬)ではないこと 入ステロイドは安全であるこ 療の目標の理解 、痰、喘鳴、息切れ、夜間覚醒(咳や喘鳴)睡眠障害などがなくなること 息の寛解(薬の減量や中止は可能であること、ただしピークフローが必要のことがある) 覚による判断をしないほうがよいこと(呼吸機能検査やACTを用いることが必要) 入デバイスの理解 ドエアディスカスフルタイドディスカス ムビコートパルミコート アドエアエアゾール ークフロー該当者の説明 喘息を繰り返してい・妊婦または妊娠希望 19 息を治しながら、を安全に減らしてみたい 分の気管支喘息のことを詳しく知りたい 当看護特に問題が無ければ、次回から医師の診察のみになります。 17図2−2吸入指導チェックシート 吸入指導1回目・2回目 ID 行う事 前チェックリスト 吸入療法サポートチームからのおしらせ」の概略を説明する。 気管支喘息アンケート」をお願いする。 ACT ( ) 前情報をチェックする 医師による初診時の気管支喘息重症度分類 □間欠型 軽症持続型 中等症持続 重症持続型 管支喘息の理解 酸球(アレルギー)による慢性的な気管支の炎症と気道閉塞があること 常、症状の無い気道閉塞、症状のある気道閉塞、発作状態の気道閉塞があるこ 続した治療が喘息を治すこと、放置すると喘息は徐々に悪化していくこと 煙が重要であること、受動喫煙も避けるべきであること 入ステロイドの理 入ステロイドが気管支喘息の第一選択であること 入ステロイドは治療・予防薬で、発作止め(気管支拡張薬)ではないこと 入ステロイドは安全であるこ 療の目標の理解 、痰、喘鳴、息切れ、夜間覚醒(咳や喘鳴)睡眠障害などがなくなること 息の寛解(薬の減量や中止は可能であること、ただしピークフローが必要のことがある) 覚による判断をしないほうがよいこと(呼吸機能検査やACTを用いることが必要) 入デバイスの理解 ドエアディスカスフルタイドディスカス ムビコートパルミコート アドエアエアゾール 18 吸入指導3回目 ID 前チェックリスト ACT ( ) 前情報をチェックする・呼吸機能検査( 医師による初診時の気管支喘息重症度分類%FEV1.0 % 軽症間欠型 %PEF % 軽症持続型 フローボリュー %V50 % □重症持続 %V25 % 管支喘息の理解 酸球(アレルギー)による慢性的な気管支の炎症と気道閉塞があること 常、症状の無い気道閉塞、症状のある気道閉塞、発作状態の気道閉塞があるこ 続した治療が喘息を治すこと、放置すると喘息は徐々に悪化していくこと 煙が重要であること、受動喫煙も避けるべきであること 入ステロイドの理 入ステロイドが気管支喘息の第一選択であること 入ステロイドは治療・予防薬で、発作止め(気管支拡張薬)ではないこと 入ステロイドは安全であるこ 療の目標の理解 、痰、喘鳴、息切れ、夜間覚醒(咳や喘鳴)睡眠障害などがなくなること 息の寛解(薬の減量や中止は可能であること、ただしピークフローが必要のことがある) 覚による判断をしないほうがよいこと(呼吸機能検査やACTを用いることが必要) 入デバイスの理解 ドエアディスカスフルタイドディスカス ムビコートパルミコート アドエアエアゾール ークフロー該当者の説明 喘息を繰り返してい・妊婦または妊娠希望

18

吸入指導3回目 ID 前チェックリスト ACT ( ) 前情報をチェックする・呼吸機能検査( 医師による初診時の気管支喘息重症度分類%FEV1.0 軽症間欠型 %PEF 軽症持続型 フローボリュー %V50 □重症持続 %V25 管支喘息の理解 酸球(アレルギー)による慢性的な気管支の炎症と気道閉塞があること 常、症状の無い気道閉塞、症状のある気道閉塞、発作状態の気道閉塞があるこ 続した治療が喘息を治すこと、放置すると喘息は徐々に悪化していくこと 煙が重要であること、受動喫煙も避けるべきであること 入ステロイドの理 入ステロイドが気管支喘息の第一選択であること 入ステロイドは治療・予防薬で、発作止め(気管支拡張薬)ではないこと 入ステロイドは安全であるこ 療の目標の理解 、痰、喘鳴、息切れ、夜間覚醒(咳や喘鳴)睡眠障害などがなくなること 息の寛解(薬の減量や中止は可能であること、ただしピークフローが必要のことがあ 覚による判断をしないほうがよいこと(呼吸機能検査やACTを用いることが必要) 入デバイスの理解 ドエアディスカスフルタイドディスカス ムビコートパルミコート アドエアエアゾール ークフロー該当者の説明 喘息を繰り返してい・妊婦または妊娠希望 17図2−2吸入指導チェックシート 吸入指導1回目・2回目 ID 行う事 前チェックリスト 吸入療法サポートチームからのおしらせ」の概略を説明する。 気管支喘息アンケート」をお願いする。 ACT ( ) 前情報をチェックする 医師による初診時の気管支喘息重症度分類 □間欠型 軽症持続型 中等症持続 重症持続型 管支喘息の理解 酸球(アレルギー)による慢性的な気管支の炎症と気道閉塞があること 常、症状の無い気道閉塞、症状のある気道閉塞、発作状態の気道閉塞があるこ 続した治療が喘息を治すこと、放置すると喘息は徐々に悪化していくこと 煙が重要であること、受動喫煙も避けるべきであること 入ステロイドの理 入ステロイドが気管支喘息の第一選択であること 入ステロイドは治療・予防薬で、発作止め(気管支拡張薬)ではないこと 入ステロイドは安全であるこ 療の目標の理解 、痰、喘鳴、息切れ、夜間覚醒(咳や喘鳴)睡眠障害などがなくなること 息の寛解(薬の減量や中止は可能であること、ただしピークフローが必要のことがある) 覚による判断をしないほうがよいこと(呼吸機能検査やACTを用いることが必要) 入デバイスの理解 ドエアディスカスフルタイドディスカス ムビコートパルミコート アドエアエアゾール

(4)

気管支喘息患者に対する看護師による吸入指導の効果

吸入療法が開始となった症例のうち,看護師による吸入 指導を行った₄₃例を対象に,アンケートを行った.

 図 ₁ に看護師による吸入指導プログラムを示す.初診 で医師の診察を受けた後に ₁ 回目のアンケートを行い,

その後看護師による吸入指導を約₃₀分かけて行った.指 導時にはACTを使用し,症状変化の確認を行った.再診 時には,まず看護師による吸入指導を₃₀分程度行い,続 いて ₂ 回目のアンケートを行った後に,医師の診察を受 けた.なお,治療経過が良好で症状が安定している場合 は,治療ステップダウンを考慮し, ₃ 回目の受診時に ピークフロメーターを用いた気管支喘息の管理方法を指 導した.そして初診から ₆ ~₁₂ヶ月経過した時点で ₃ 回 目のアンケートを行い,引き続き吸入指導を行った.

 図 ₂ - ₁ にアンケートの内容を示す.これには「疾患の 理解」「薬剤と治療の理解」「日常生活での留意点の理解」

などを含めた. ₂ 回目および ₃ 回目に行うアンケートに は,「治療についての満足度」の項目を追加した.

 図 ₂ - ₂ に吸入指導のチェックシートを示す.初回の指 導はアンケートの結果を基に行い,患者が疾患や薬剤,

治療についてどこまで理解できたかを確認した.具体的 には,気管支喘息の発症機序や治療方針,継続治療の必 要性,日常生活の注意点などをそれぞれ関連付けて解説 し,患者にみられる症状がどのような状態を意味するの かを説明した.また気管支の模型やパンフレットを使用 し,視覚からの情報も取り入れ,患者が理解しやすいよ うな工夫をした.吸入デバイスを用いた指導は看護師が 実際に使用法を示し,その後患者に実践させた. ₂ 回目 の指導時には,気管支喘息の説明を繰り返すことによっ てさらなる理解を促し,患者にデバイスを実際に操作さ せて正しく使用できているかどうかを確認した. ₆ ~

₁₂ヶ月後の指導では,患者が気管支喘息についてどの程 度記憶しているかを確認し,知識が低下している部分を 補足した.さらに全患者を対象にデバイスチェックを行 い,正しく吸入出来ているかを再度確認した.

 アンケート結果をもとに,疾患の理解度,再診率,吸入 指導の満足度を解析した.なお,患者は初回受診後に ₂ 週 間~ ₄ 週間後の再診の指示を受けたが,指示通り受診した 場合を継続,受診をしなかった場合を脱落と判定した.

 なお,測定値は平均値±標準偏差で表示した.

倫理的配慮

 全ての患者に本研究の主旨および目的に関する説明を 行い,患者の同意を得た.

結   果

 患者背景を治療継続群と脱落群に分けて示した(表

₁ ).吸入指導を行った₄₃名のうち₃₇名が治療継続となっ た(率₈₆%).継続群と脱落群では,年齢や呼吸機能検査 結果などの患者背景に明らかな差を認めなかったが,

ACTは脱落群で低い傾向だった.治療継続群では,患者 の申告に基づく吸入アドヒアランスは₉₃.₄%,満足度は

₅ 点満点中₄.₉点であった.

 初回および ₂ 回目のアンケートの結果から,吸入指導 前後での各項目の理解度の変化を解析した(図 ₃ ).病 態・原因の理解度については,「気管支喘息が慢性疾患で あることが分かった」と答えた患者が₈₈.₄%から₉₄.₆%

に増加した.標準治療の理解度では重複回答を許したが,

少なくとも「吸入ステロイド薬が重要」と答えた患者の 割合が₆₀.₅%から₈₆.₅%に増加し,「気管支拡張薬が重 要」と答えた患者が₆₉.₈%から₅₉.₅%へと減少した(重 複回答を有りとした).治療継続の理解度では,「治療継 続が重要」と答えた患者が₈₁.₄%から₉₇.₃%に増加した.

脱落群での理解度についても同様の解析を行ったが,症 例数が少なく,治療継続群と明らかな差を認めなかった.

ただし,標準治療の理解度において ₆ 人中 ₄ 人が「気管 支拡張薬が重要」と答えていた.

 次に ₂ 回目と ₃ 回目のアンケートを比較した(表 ₂ ).

長期的な吸入アドヒアランスは₈₉.₇%から₉₀.₀%と保た

風邪や感冒 発作性・急性の疾患 慢性の疾患 よく分からない

88.4% 94.6%

後 導 指 前

導 指

図 3 ― 1  病態/疾患の理解度(再診群)

表 1  患者背景

初診時 継続群 脱落群

患者数 ₄₃ ₃₇

年齢(y) ₅₁.₃±₁₇.₁ ₅₁.₅±₁₅.₈ ₄₉.₅±₂₅.₇

%FEV₁.₀ ₉₃.₄±₂₄.₁ ₉₂.₂±₂₃.₄ ₉₈.₈±₂₈.₁

%PEF ₆₄.₅±₁₈.₄ ₆₃.₈±₁₇.₂ ₆₇.₈±₂₄.₆ 吸入アドヒアランス

(自己申告使用率) ₉₃.₄±₁₄.₀

吸入指導 満足度

( ₅ 点満点) ₄.₉±₀.₄

(5)

指導前

気管支拡張薬

よく分からない

指導後

図 3 ― 2  標準治療の理解度(再診群)

ば終了 よく分からない

指導後 指導前

図 3 ― 3  治療継続の理解度(再診群)

標準治療の理解度 内服治療

吸入ステロイド 気管支拡張薬 よく分からない 病態/疾患の理解度

風邪や感冒 発作性・急性の疾患 慢性の疾患 よく分からない

治療継続の理解度

治療継続が重要 症状が無くなれば終了 よく分からない

図 3 ― 4  脱落群の理解度( 6 例)

れており,看護師による吸入指導の患者満足度は₄.₉点

( ₅ 点満点中)と高値であった.しかしながら気管支喘息 の病態理解については,「気管支喘息は発作だけの病気で ある」と答えた患者が₄.₅%から₂₁.₇%に増えていた(表

₃ - ₁ ).標準治療の理解については,「吸入ステロイドが 重要」と答えた患者が₈₁.₈%から₇₃.₉%へ(表 ₃ - ₂ ),

治療継続性の理解は「炎症が消失するまで治療継続が必 要」と答えた患者が₉₀.₉%から₈₂.₆%へと減っていた

表 2  患者背景

初診時 再診時 半年~ ₁ 年後

患者数 ₂₃ ₂₂ ₂₃

年齢(y) ₅₁.₉±₁₈.₉

%FEV₁.₀(%) ₈₇.₁±₂₂.₁ ₉₆.₉±₂₁.₀ *

%PEF(%) ₆₂.₁±₁₈.₇ ₇₄.₄±₁₇.₈ * 吸入アドヒアランス

(自己申告による) ₈₉.₇±₁₂.₆ ₉₀.₀±₁₇.₀ 吸入指導 満足度

( ₅ 点満点) ₄.₇±₀.₆ ₄.₉±₀.₂

*:アンケート時に測定者少数のため省略

表 3 ― 1  気管支喘息の病態理解

吸入指導後 半年~ ₁ 年後

風邪と同じ ₀ % ₀ %

発作の疾患 ₄.₅% ₂₁.₇%

慢性の疾患 ₈₆.₃% ₉₁.₃%

分からない ₁₃.₆% ₄.₃%

複数回答あり

表 3-2  標準治療の理解

吸入指導後 半年~ ₁ 年後

内服 ₄.₅% ₄.₃%

ステロイド吸入 ₈₁.₈% ₇₃.₉%

気管支拡張薬吸入 ₅₉.₁% ₅₂.₂%

分からない ₁₃.₆% ₁₃.₀%

複数回答あり

(表 ₃ - ₃ ).

  ₂ 回目および ₃ 回目の指導時に,全ての患者にデバイ スチェックを行ったところ,数名誤った使用方法を行っ ていた患者がみられたため,全員に再指導を行った.

(6)

気管支喘息患者に対する看護師による吸入指導の効果

考   察

 従来,気管支喘息患者に対する教育および指導は,医 師が限られた外来診療時間内に病態の解説,治療法と治 療継続の必要性などを説明していた.そのため,医師が 患者一人一人の理解度を充分に把握することは困難で あった.駒瀬らによれば,「患者は,医師に対してはあま り治療に対する不満や服薬を守っていないことを言わな い」₃)という傾向がある.そのため今回,看護師が吸入指 導という形で積極的に治療に関わることによって,喘息 患者の治療経過にどのような効果を与えられるかを検討 した.

 初回吸入指導時には,診察後に行ったアンケート内容 から,患者が何を理解し,何を理解していないのかを確 認することに重点を置いた. ₂ 回目の指導は ₁ 回目と同 じ看護師が行うよう配慮した.初回指導時に理解したと 反応した患者に対しても,初回と同じ内容を繰り返し ゆっくりと時間をかけて説明した.また患者一人一人で 理解のペースが異なるため,どこまで理解できたかをそ の都度確認し,振り返りながら説明した.このように看 護師が時間を掛けて指導することにより,患者の思いを 傾聴し,それに沿った治療方法を提案することが可能に なった.再診率やアドヒアランス,満足度の上昇は,症 状や呼吸機能が改善し日常生活が楽になったことが影響 した可能性はあるものの,看護師による吸入指導が患者 の気管支喘息についての知識や理解度を深め,治療の必 要性を充分に認識させたことが影響したと考えられる.

 喘息予防・管理ハンドブックは,患者の治療アドヒア ランスを高める条件として,喘息は常に治療を必要とす る疾患であることを患者が認識すること,処方された治 療薬が安全であることを患者が認識すること,自分の症 状が治療により改善していることを患者が実感できるこ と,医療関係者と患者が信頼関係を築くこと,身につけ た対処法を患者自身が評価し自己管理能力に自信をもつ ようになること₂),を挙げている.さらに駒瀬らは,吸

入手技だけではなく,患者のアドヒアランスにも気を配 り,患者自身が積極的に治療に参加し,アドヒアランス が保てる吸入療法を提唱していくことが大切である₃)と している.当院の吸入指導においても,初回指導時に気 管支喘息の病態,治療,継続治療の必要性,症状などを 相互に関連付けて説明することにより,疾患についての 説明が受け入れやすい状態になったと考えられる.そし て単に吸入方法を説明するのではなく,患者が納得する ように指導することが重要と考えた.これが達成されな ければアドヒアランスは向上せず,患者は症状が治まる と治療を自己判断で中断してしまう可能性があるためで ある.

 こうした配慮の下で患者指導を行っても, ₂ ~ ₃ 回の 吸入指導ではアドヒアランスが向上しない患者が存在し た.そのような患者には,診断に納得がいかない,薬剤 の必要性に対する認識が低い,吸入治療薬が生活の一部 として組み込まれずに忘れてしまう,などの特徴が見ら れた.このような場合は患者が困っている症状に焦点を 当て,自覚症状と呼吸機能検査結果を照らし合わせて説 明し,どうすればその症状が軽減・緩和されるのかとい う観点から治療方針を提案した.さらに,指導を行う中 でどうすれば忘れずに吸入薬を使用できるかを,患者の 生活習慣をもとにして患者と一緒に考えた.このような 工夫によって,僅かではあるがアドヒアランスが向上し たと考えられた.一般に気管支喘息の治療は長期にわた るため,患者の立場に立ち,患者を取り巻く医療者すべ てがアドヒアランスを意識することで,長期にわたる治 療を患者と共に行っていくことが出来るようになる₄)と されるため,私たちは患者のそばに寄り添い,支えとな ることが必要であると考えた.アドヒアランスが不良な 患者の場合には,指示通りに吸入を含む服薬が出来てい るかどうか,正しい吸入方法を実行しているか,増悪因 子(喫煙,アレルゲンなど)の回避,増悪を来す合併症

(アレルギー性鼻炎,好酸球性副鼻腔炎,アスピリン喘息 など)への対応ができているかなどを確認する必要があ り₅),患者背景を含めた吸入指導も重要になる.

 興味深いことに,初回指導後より ₆ ~₁₂ヶ月経過する と,アドヒアランスは低下していないものの,喘息の理 解度が低下していることが明らかとなった.一般に,気 管支喘息患者の吸入治療は,治療期間が長くなるとアド ヒアランスが低下するといわれている.今回の検討から,

アドヒアランス低下前には気管支喘息の理解度低下が先 行する可能性があり,これは気管支喘息の病態や標準治 表 3 ― 3  治療継続性の理解

吸入指導後 半年~ ₁ 年後

症状消失後も継続 ₉₀.₉%

炎症が消失するまで

₈₂.₆%

気管支が拡張するまで

₃₉.₁%

症状消失で終了 ₀.₀% ₀.₀%

分からない ₉.₁% ₄.₃%

複数回答あり

(7)

 今回の検討では₄₃人中 ₆ 人が再診しなかった.自覚症 状の強さについて継続群と脱落群のACTを比較したとこ ろ,脱落群に低い傾向が認められた.脱落群が受診しな かった理由については推測の域を出ないが,初回治療に よって自覚症状がある程度改善し満足したため,再診し なかった可能性が考えられる.

結   論

 看護師による吸入指導を行った結果,吸入ステロイド 薬に対する理解度と再診率が向上し,満足度が高値で あった.脱落群では吸入ステロイド薬の理解が乏しい傾 向にあった.吸入指導には十分に時間をかけ,患者とと もに病態や標準治療を確認し,それぞれに合った具体的 な吸入指導を行った.こうした配慮によって患者の理解 と治療への参加意欲が高まったことが,アドヒアランス が良好となった一因と考えられた.さらにアドヒアラン ス良好な患者であっても,定期的な吸入指導により気管 支喘息病態や標準治療の知識の再確認を行うことが,長 期アドヒアランスの低下を防ぐ上で重要であると考えら れた.

Effects of patients' education including inhaler technique training by nurses on asthma management

Akiko Nakai₁), Yasuhiro Aoki₂), Chie Matsuda₁), Masafumi Suzuki₃), Shiro Hara₂), Tatsuo Suga₂,₃), Toshitaka Maeno₃), Masahiko Kurabayashi₃)

₁)Nnrsing department, Prana Clinic, ₂)Department of Respira- tory Medicine, Prana Clinic, ₃)Allergy and Respiratory Medicine, Department of Medicine and Molecular Science, Gunma Univer- sity Graduate School of Medicine

文   献

₁)社団法人日本アレルギー学会喘息ガイドライン専門部会監 修:喘息予防・管理ガイドライン₂₀₁₂,協和企画,東京,

₂₀₁₂.

₂)社団法人日本アレルギー学会喘息ガイドライン専門部会監 修:喘息予防・管理ハンドブック―成人編―₂₀₁₀,恒陽社 印刷所,東京,₂₀₁₀.

₃)駒瀬裕子,向井秀人:薬剤師,医師,看護師のための明日 からできる実践吸入指導,メディカルレビュー社,東京,

₂₀₁₂.

₄)駒瀬裕子,松岡光明:薬剤師,医師,看護師のための明日 からできる実践吸入指導改訂第 ₂ 版,メディカルレビュー 社,東京,₂₀₁₅.

₅)大田 健,今井 良:特集 ステロイド薬(含吸入薬)の 基礎と呼吸器疾患への臨床応用  ₃ .気管支喘息.日胸臨 

₇₄: ₃₉₁-₄₀₃, ₂₀₁₅.

図 2 ― 2  吸入指導チェックシート

参照

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