第7回
福岡大学病院と院外薬局との がん治療連携勉強会
福岡大学病院 薬剤部 上田 裕
ペメトレキセド / プラチナ
本日の内容
ペメトレキセドについて
プラチナ(シスプラチン・カルボプラチン)について
悪心・嘔吐について(制吐薬ガイドライン)
ペメトレキセド( PEM )の作用機序
ペメトレキセド(商品名:アリムタ
®)
チミジル酸合成酵素(TS)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、グリシンアミドリボヌクレオチド
ホルミルトランスフェラーゼ(GARFT)などの複数の葉酸代謝酵素を同時に阻害することにより、
DNA・RNA合成を阻害し抗腫瘍活性を示す。
服薬指導のためのくすりの効き方と作用 じほうより引用
ペメトレキセド ペメトレキセド
<用法・用量に関連する使用上の注意>
本剤による重篤な副作用の発現を軽減するために、
以下のように葉酸及びビタミンB
12を投与すること。
(1)葉酸:本剤初回投与の7日以上前から葉酸として1日1回0.5mgを連日経口 投与する。なお、本剤の投与を中止又は終了する場合には、本剤最終投与日 から 22 日まで可能な限り葉酸を投与する。
(2)ビタミンB
12:本剤初回投与の尐なくとも7日前に、ビタミンB
12として1回1mg
を筋肉内投与する。その後、本剤投与期間中及び投与中止後22日目まで9
週ごと(3コースごと)に 1 回投与する。
アリムタ® 添付文書より引用
パンビタン
®末(葉酸0.5mg / g) 1g 1×朝食後
メチコバール
®注射液500 μ g 2 A 筋肉注射
葉酸・ビタミン B 12 が補給されないと
C Niyikiza, et al. Mol Cancer Ther 2002; 1: 545-552 アリムタ® 適正使用ガイド Q&A集より引用
血中濃度 高い
低い
血中のホモシステイン濃度 ↑ メチルマロン酸濃度 ↑
PEM の副作用増強
ペメトレキセド(単独)の副作用
血液およびリンパ系障害 ヘモグロビン減尐 19.2%
白血球減尐 12.1%
好中球・顆粒球減尐 10.9%
胃腸障害 悪心 30.9%
食欲不振 21.9%
嘔吐 16.2%
口内炎・咽頭炎 14.7%
下痢 12.8%
全身障害 疲労・倦怠感 34%
皮膚および皮下組織障害 発疹 14%
アリムタ® 使用上の注意より引用
本日の内容
ペメトレキセドについて
プラチナ(シスプラチン・カルボプラチン)について
悪心・嘔吐について(制吐薬ガイドライン)
シスプラチンの作用機序
DNA鎖上のグアニン残基N7位と結合し、DNA鎖内、DNA鎖間などに架橋を 形成することによって細胞致死作用を有する
服薬指導のためのくすりの効き方と作用 じほうより引用
シスプラチンの副作用
腎毒性( 14.1% )
悪心・嘔吐(急性 90% 、遅延・遅発性 30 ~ 50% )
その他の主な副作用
・高音域聴力低下(3%):4,000~8,000Hz域の聴力低下なので日常生活に支障 をきたすことが尐ない。
1回投与量80mg/m2、総投与量300mg/m2を超えるとみられる。
・神経毒性:末梢神経障害(1~10%)総投与量200mg/m2から発現し始め、1000 mg/m2で50%、1000mg/m2を超えると全例にみられる。
・抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)
・電解質異常
・治療回数の多い例でアナフィラキシーの報告あり
シスプラチンによる腎毒性
【特徴】
・発生頻度14.1%
・用量依存性に腎毒性が増す
・腎障害は一度起こると重症な場合が多く、治療を継続出来ないことがある
【機序】
・腎血管を障害しGFRを低下させることもあるが,尿細管上皮細胞内に移行後 蓄積し,主に近位尿細管終末部を障害する1)。
・尿細管上皮のアポトーシスが,フリーラジカルスカベンジャーにより軽減されるこ とが報告されており、腎障害の発現には活性酸素が関与する2)。
【予防・対策】
・1日の尿量が2000~3000mL以上になるように化学療法開始前日から飲水 を促し、水分補給を行う。in / outバランスの確認。
・血清クレアチニン、クレアチニン・クリアランスの確認。
・投与後数日は水分を出来るだけ多く取り、尿量を増やすことによって腎障害の発 現を軽減できる。
1)Daugaard G,et al Clin Pharmacol Ther 44:164-72,1988. 2)Kim YK,et al J Appl Toxicol 25:374-82,2005.
ランダ®IFより引用
シスプラチン併用レジメンを施行された患者に
退院後も飲水を促すべきか?
排泄はほとんど糸球体濾過による腎排泄 CL=GFR+25(mL/min)
用量=AUC×CL
Calvert AH et al:J.Clin.Oncol.7:1748-1756,1989 Jodrell DI et al:J.Clin.Oncol.10:520-528,1992
カルボプラチンの投与規制因子は血小板減尐
カルボプラチンの副作用
CDDPとの比較
腎毒性:約80%糸球体濾過されて尿中排泄され、尿細管か らの再吸収はほとんどない。 → 軽度
悪心・嘔吐(50.5%)
食欲不振(45.4%)
造血器障害
白血球減尐(56.4%)
血小板減尐(42.7%)
プラチナアレルギーの報告あり。蓄積性と考えられ回数を重 ねるほど頻度が高くなる。
CDDPに比べると軽度
カルボプラチン®使用上の注意より引用
CDDP<CBDCA
投与3週間後に最低値を示し、回復するまでに約1~2週間要する
本日の内容
ペメトレキセドについて
プラチナ(シスプラチン・カルボプラチン)について
悪心・嘔吐について(制吐薬ガイドライン)
悪心・嘔吐のメカニズム
① CTZ を直接刺激する経路
抗がん剤が第4脳室最後野のCTZを直接 刺激し、嘔吐中枢に伝達される
※CTZには、 5-HT3受容体、 NK1受容体、ドパ ミン受容体などが存在する
②末梢性経路(消化管)
抗がん剤の投与により、消化管の腸クロ ム親和性細胞からセロトニンの分泌が亢 進し、これが消化管の5-HT3受容体に結合 し、求心性に嘔吐中枢を刺激する
③中枢性経路
抗がん剤の投与により、サブスタンスPの 分泌が亢進し、中枢神経系に多く存在す るNK1受容体に結合し、嘔吐中枢を刺激
④大脳皮質からの刺激
過去に経験した悪心・嘔吐による不快な 感情などが、大脳皮質を介して嘔吐中枢 を刺激
延髄 嘔吐中枢
悪 吐
・ 嘔 吐
大脳皮質
第4脳室最後野 CTZ
消化管 迷走神経
抗がん剤投与による 不快な感情など
抗がん剤
抗がん薬による直接障害 セロトニン→5HT3受容体 サブスタンスP→NK1受容体
発現時期による悪心・嘔吐の分類
1. 急性の悪心・嘔吐
抗がん剤投与後24時間以内 セロトニンが大きく関与
2. 遅発性の悪心・嘔吐
抗がん剤投与後24時間以降に発症し数日間持続 機序は不明であるが、セロトニンの関与は低い
3. 予測性の悪心・嘔吐
抗がん剤投与前から認める
発症には精神的要因が関与(頻度20~30%)
抗がん剤の催吐性リスク分類
日本癌治療学会分類 海外のガイドラインに
おける分類 薬剤・レジメン 高度(催吐性)リスク High emetic risk
(催吐頻度>90%) シスプラチンなど 中等度(催吐性)リスク Moderate emetic risk
(催吐頻度 30~90%)
カルボプラチンなど軽度(催吐性)リスク Low emetic risk
(催吐頻度 10~30%) ペメトレキセドなど 最小度(催吐性)リスク Minimal emetic risk
(催吐頻度<10%)
制吐薬適正使用ガイドライン2010 一般社団法人 日本癌治療学会/編
遅発期(24時間以降)
急性期
化学療法に起因する悪心・嘔吐の発現パターン
嘔 吐 の頻 度
0 1 2 3 4 5(日)
24時間以内
Wllder-Smith OHG et al. Cancer,72:2239-2241,1993 Hesketh PJ et al. Eur J Cancer,39:1074-1080,2003 セロトニン
サブスタンスP
シスプラチンの投与後
制吐剤の種類
セロトニン
サブスタンスP
5-HT
3(セロトニン)受容体拮抗薬 オンダンセトロン(ゾフラン ® )
グラニセトロン(カイトリル ® ) ラモセトロン(ナゼア ® )
アザセトロン(セロトーン ® ) トロピセトロン(ナボバン ® ) インジセトロン(シンセロン ® )
パロノセトロン(アロキシ ® )
:5-HT3受容体に対する親和性が高い半減期が長い(40時間)→遅発性嘔吐への効果
アプレピタント(イメンド ® )
:NK1受容体拮抗薬 特に遅発性嘔吐に対して有効①高度催吐性リスクに対する制吐療法
アプレピタント(mg)
5HT3受容体拮抗薬
デキサメタゾン(mg)
急性 遅発性
(抗がん薬投与前)
1 2 3 4 5 (日)
125 80 80
9.9 8 8 8 8
制吐薬適正使用ガイドライン2010 一般社団法人 日本癌治療学会/編
*
* :注射薬 :経口薬
用量はデキサメタゾン換算で表記
②中度催吐性リスクに対する制吐療法
5HT3受容体拮抗薬
デキサメタゾン(mg)
急性 遅発性
(抗がん薬投与前)
1 2 3 4 5 (日)
9.9 8 8 8
制吐薬適正使用ガイドライン2010 一般社団法人 日本癌治療学会/編
* (6.6)
デキサメタゾンを積極的に使用できない場合は、デキサメタゾン2~4日目の代わりに、
5HT3受容体拮抗薬2~4日目追加する場合もある。
アプレピタント(mg)
5HT3受容体拮抗薬
デキサメタゾン(mg)
急性 遅発性
(抗がん薬投与前)
1 2 3 4 5 (日)
125 80 80
4.95 4 4 4
②中等度催吐性リスクに対する制吐療法(オプション)
制吐薬適正使用ガイドライン2010 一般社団法人 日本癌治療学会/編
(3.3)
処方例
イメンド
®カプセル80mg 1Cap 1×朝 2日分
デカドロン ® 錠0.5mg 8錠 1×朝 (3)日分
③軽度催吐性リスクに対する制吐療法
デキサメタゾン(mg)
急性 遅発性
(抗がん薬投与前)
1 2 3 4 5 (日)
6.6
注)状況に応じてプロクロルペラジンまたはメトクロプラミド
制吐薬適正使用ガイドライン2010 一般社団法人 日本癌治療学会/編
④最小度催吐性リスクに対する制吐療法
(3.3)