素描・EUにおける企業結合(会社グループ)規制構想 の変遷 : ヨーロッパコンツェルン法フォーラムの 提言とその後の展開
著者 早川 勝
雑誌名 同志社法學
巻 60
号 3
ページ 143‑198
発行年 2008‑08‑31
権利 同志社法學會
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000011460
素描・EUにおける企業結合︵会社グループ︶規制構想の変遷 一四三同志社法学 六〇巻三号
素描 ・ E U における企業結合 ︵会社グループ︶ 規制構想の変遷
︱
ヨーロッパコンツェルン法フォーラムの提言とその後の展開︱
早 川 勝
︵一〇五三︶ 目 次
第一章 序 第二章 EUにおける結合企業規制構想の推移と現状 第一節 EUコンツェルン法における規制構想の推移 第二節 EUコンツェルン法の現在 第三章 EUコンツェルン法フォーラムの提言とその後の展開 第一節 EUコンツェルン法フォーラムの基本的構想と会社
グループ概念
第二節 グループの開示 第三節 コンツェルンにおける特別検査
第四節 コンツェルン構造規制 第五節 正規のコンツェルン運営 第六節 経営危機の下における業務執行者の義務
終 章 結語に代えて
素描・EUにおける企業結合︵会社グループ︶規制構想の変遷 一四四同志社法学 六〇巻三号 ︵一〇五四︶
第一章 序 二〇〇五年︵平成一七年︶の会社法は︑親子会社の関係を実質的に捉え︑その定義に議決権数だけでなくその他の実 質的基準を採り入れた ︵
︒会社法施行規則は︑補助要件を定めて親会社の子会社支配を実質的に判断する 1︶︵
︒もっともこれ 2︶
らの規制は︑条文の文言を一読しただけでは︑両者の関係が存在するかどうか容易には判断できない︒さらに︑新規定
は︑計算書類や事業報告で開示される企業の結合関係を拡げている︒とくに︑事業報告においては︑重要な親会社及び
子会社の状況を株式会社の現況に関する事項として記載し ︵
︑株式会社が財務及び事業方針に関する決定を支配する者に 3︶
ついて基本方針を定めている場合には︑その基本方針の具体的内容について記載 ︵
︒これとは別にしなければならない︑ 4︶
結合企業会計の分野においては︑会社法よりも一足早く︑二〇〇三年︵平成一五年︶に企業結合にかかる会計基準がま
とめられ︑二〇〇六年︵平成一八年︶から強制的に適用されている ︵
︒開示の拡大と会計における充実には目を見張るも 5︶
のがあるが︑親会社の子会社支配に対する責任についてはなお手がつけられていない︒会社法における結合会社に関す
る規制は︑個々的に散在しており︑それも部分的なものにとどまっているため︑その包括的規制が将来の立法課題であ
ると正当に指摘されている ︵
︒それでは︑包括的規制が近い将来実現するのであろうか︒この点について︑法務省は︑一 6︶
九九八年︵平成一〇年︶︑立法論を検討するための方向付けを具体化するため︑﹁親子会社法制 ︵
﹂に関する意見照会をし 7︶
たが︑これに対する経済界からの強い拒絶反応にあって︑それ以来︑議論が立ち消えている︒その後︑法務省サイドか
らはこの種の発信がまったくなく︑包括的な規制の機運は薄らいだままで凍結している状態といえる︒このような観点
の下では︑突発的に特別な状況が発生しない限り︑特に親会社の支配とそれに関する責任の立法化は夢の中のまた夢の
ようなものなのかもしれない︒
素描・EUにおける企業結合︵会社グループ︶規制構想の変遷 一四五同志社法学 六〇巻三号 もっとも︑欧州連合︵以下EUという︶における会社集団規制の最近の進展状況に目を向けるとき︑このような法状
況は︑わが国だけに特有な現象ではないことに気づく︒EUでも︑企業結合規制を実現させる動きは︑現在のところ停
止状態にあるといってよい︒しかし︑学術レベルでの研究の炎は途絶えていない ︵
︒この点もわが国の状況と酷似して 8︶
いる ︵
︒EUでは︑結合企業に関する規制の構想が大幅に揺れ動き︑大転換を経験している︒今後の展開について現状分 8a︶
析しておくのは︑現在のような静止状態の方が都合が良いのかもしれない︒また検討作業は︑わが国において静止して
しまった結合規制立法化の動きを打ち破る気力と刺激を与えないとも限らない︒本稿における検討は︑ヨーロッパ・コ
ンツェルン法フォーラム︵以下EUフォーラムという︶の提言のその後の展開についてまとめることが中心となる︒学
術色の濃厚なEUフォーラムの提案の一部は︑二〇〇四年四月二一日に成立した株式公開に関する第一三指令 ︵
において 9︶
実現されている︒このことは︑EUフオーラムの構想が現実主義の観点に立っていることを明らかにする︒さらに︑二
〇〇〇一年秋に年欧州委員会が設置したハイ・レベル・グループ︵以下︑会社法専門家グループという︶は︑二〇〇一
年にEUフォーラムの提言に相応した勧告を委員会に対して行い︑その後二〇〇二年一一月に︑その最終報告書︵ヴィ
ンター報告書︶において行程計画によって委員会が将来検討すべき内容について勧告した ︵
︒その後︑欧州委員会は︑二 10︶
〇〇三年五月二一日に︑その勧告に基づいて︑行程計画書 ︵
を公表した︒これらの一連の流れは︑EUフォーラムの提案 11︶
に触発されて︑EUレベルでグループ規制の必要性の認識が広まり︑民間の研究会の︵私的な︶学術提案にすぎなかっ
たものが︑一部であれ︑EU委員会レベルに昇華して﹁公的﹂なものになったことを示している ︵
︒この行程計画書の源 12︶
は︑EUフォーラムの提言にある︒筆者は︑かつてEUフォーラムの提言の概要について紹介 ︵
し︑その後日本語訳を試 13︶
みた ︵
フUUE︑︑前提作業として︒その前にフォーラムの提言から始めたいE︑︑まず繰り返しになるが︑下では以︒ 14︶
ォーラムの提案を位置づけるため︑それまでのEUにおける結合企業規制の構想の変遷とその推移について簡単にみてお
︵一〇五五︶
素描・EUにおける企業結合︵会社グループ︶規制構想の変遷 一四六同志社法学 六〇巻三号
きたい︒︵
1︶ 会社法二条三号四号︑会社規則三条一項二項︒これは︑実質的な支配基準をすでに導入している証券取引法︵金融商品取引法︶にそろえ
たものである︒
︵
2︶ 会社規則三条二項二号イ︑ロ︑ハ︑ニ︑ホ︒
︵
3︶ 会社規則一一九条一号・一二〇条一項七号︒
︵
4︶ 会社規則一二七条二号イによれば︑適切な企業集団の形成に関する特別な取組みを記載しなければならない︒
︵
5︶ 二〇〇三年︵平成一五年︶一〇月三一日に企業会計審議会は﹁企業結合に係る会計基準﹂を公表し︑二〇〇五年︵平成一七年︶一二月に
企業結合会計基準ならびに企業会計基準委員会が﹁企業結合会計基準および事業分離等会計基準に関する適用指針﹂を公表した︒これらの
基準や適用指針は
︑二〇〇六年
︵ 平成一八年︶四月一日から適用されている
︑江頭憲治郎
﹃株式会社法
︵第二版︶
﹄七四九頁
︵有斐閣
二〇〇八年︶︒
︵
6︶ 龍田節﹃会社法大意﹄一一三・一三︵有斐閣二〇〇七年︶など︒中東正文﹁企業買収・組織再編と親会社・関係会社の法的責任﹂法時七九巻
五号三七頁は︑企業結合の法的手段の柔軟化が先行し︑結合企業法制の整備が立ち遅れていることを適切に指摘し︑結合企業の形成と運営
における親会社の責任について規制を設ける必要を強調される︒会社法案を可決した国会では︑二〇〇五年︵平成一七年︶五月一七日に衆
議院法務委員会で計一三項目︑および︑同年六月二八日に参議院法務委員会において計一六項目の附帯決議が行われ︑両委員会で﹁⁝⁝親
子会社関係に係る取締役の責任の在り方等︑いわゆる企業結合法制について︑検討を行うこと﹂を決議した︑商事法務一七三二号五七頁︑同
一七三六号四三頁︵二〇〇五年︶︒
︵
7︶ 一九九八年︵平成一〇年︶七月八日法制審議会商法部会﹁親子会社法制等に関する問題点﹂商事法務一四九七号一八頁以下︵一九九八年︶︒
平成一〇年七月八日法制審議会商法部会﹁﹃親子会社法制等に関する問題点﹄の公表及び意見照会について﹂に対して経済界から強い拒絶反
応が表明された︒なお︑原田晃治ほか﹁第一部﹃親子会社法制等に関する問題点﹄の解説﹂︑﹁第二部﹃親子会社法制等に関する問題点﹄に
関する各界意見の分析﹂︑﹁第三部﹃親子会社法制等に関する問題点﹄に関する意見照会と各界意見﹂別冊商事法務二一一号︵一九九八年︶︑
親子会社特集﹁親子会社法制の立法課題﹂ジュリ一一四〇号三五頁以下︑一〇頁以下︵一九九八年︶︑法律のひろば五一巻一一号︵一九九八年︶︒
︵
8︶ ドイツの著名な権威ある法律雑誌﹁ZHR﹂は︑二〇〇七年一月に﹁資本市場法と会社法に関するZHRシンポジウム﹂を開催し︑そこ
での報告書をまとめて公表している︒当シンポジウムでは︑コンツェルン法の問題が正面から取り上げられ︑まず第一章では︑法政策︑法 ︵一〇五六︶
素描・EUにおける企業結合︵会社グループ︶規制構想の変遷 一四七同志社法学 六〇巻三号 比較及びヨーロッパの観点におけるドイツコンツェルンの基礎︑コンツェルンの資金調達と財務︑つぎに第二章では︑コンツェルンにおけ
る利益衝突の問題︑最後に第三章において︑コンツェルン租税法の改正の見通しと租税分担金の問題の分析というテーマが扱われ︑専門家
が現在直面している問題に関する議論の状況が収められている︑︵ZHR 171︵2007︶︶︒本稿は︑このシンポジウムでホプト教授が担当したE
Uコンツェルン法に関する報告に依拠している︑Hopt, Konzernrecht: Die europäische Perspektive, ZHR 171︵2007︶, 199f.︵
8a︶ 二〇〇八年︵平成一八年︶日本私法学会シンポジウム︵名古屋大学︶において︑﹁企業結合法の総合的研究﹂というテーマで企業結合の問
題が検討される予定である
︒本稿脱稿後に
︑ 研究会の膨大な成果の一部が商事法務一八三二号六頁以下
︑同一八三三号二七頁以下
︑同
一八三四号二九頁以下︑同一八三五号三二頁以下︑同一八三六号二三頁以下︵二〇〇八年︶において公表されている︒
⑴松中学﹁アメリカ
の企業結合形成過程に関する規制﹂︑
⑵北村雅史﹁イギリスの企業結合形成過程に関する規制﹂︑
⑶加藤貴仁﹁ドイツの企業結合形成過程に
関する規制﹂︑
⑷松尾健一﹁フランスの企業結合形成過程に関する規制﹂︑
⑸片木晴彦﹁企業結合の開示﹂︑
⑹岡田昇浩﹁フランスの企業結合
に関する情報開示と監査﹂︑
⑺釜田薫子﹁アメリカの親会社株主保護﹂︑
⑻河村尚志﹁イギリスの親会社株主保護﹂︑
⑼舩津浩司﹁ドイツの親
会社株主保護﹂︑
⑽清水円香﹁フランスの親会社株主保護﹂︑⑾森まどか﹁アメリカにおける子会社の少数株主・債権者保護﹂︑⑿中村康江﹁イ
ギリスにおける子会社の少数株主・債権者保護﹂︑⒀伊藤靖史﹁ドイツにおける子会社の少数株主・債権者保護﹂︑⒁斉藤真紀﹁フランスに
おける子会社の少数株主・債権者保護﹂︒また︑会社法の下で企業結合に関連する親会社取締役の責任などの重要問題について本格的な解釈
論も展開され始めている︒舩津浩司﹁﹃グループ経営﹄の義務的責任︱親会社株主保護の視点から︱
⑴・
⑵・
⑶・
⑷・未完﹂法協一二五
巻二号二二五頁以下︑同巻三号六一四頁以下︑同巻四号七八五頁以下︑同巻五号一〇五頁以下︵二〇〇七年︶は︑上位会社取締役の下位会
社経営管理義務︑上位会社取締役の下位会社監視・監督義務︑上位会社監査役の下位会社に係る監視義務︑上位会社取締役に対する責任追
及の方策について解釈論を展開する大作である︒
︵
. betreffend Übernahmeangebote, ABl EU 142 L 2004. 4.30200412. 4. 21. . Richtlinie v13/9︶ 本指令については︑北村雅史﹁EUにおける公開買
付規制﹂商事法務一七三二号四頁以下︵二〇〇五年︶︑末岡晶子﹁EU企業買収指令における敵対的企業買収防衛策の位置づけとTOB規整﹂
商事法務一七三三号三四頁以下︵二〇〇五年︶︑拙稿﹁﹃株式公開買付に関するEU第一三指令における﹄企業買収対抗措置について﹂ワー
ルドワイドビジネスレビュー七巻一号二〇頁以下︵二〇〇五年︶︑野田輝久﹁株式公開買付規制の方向性﹂神戸学院法学三五巻一号三頁以下
︵二〇〇五年︶︑同﹁EUにおける企業買収︱EU公開買付指令︱﹂法時九八二号五八頁以下︵二〇〇七年︶︑飯田秀総﹁公開買付規制に
おける対象会社株主の保護﹂法協一二三巻五号一四二頁以下︵二〇〇六年︶が詳細に論じる︒なお邦訳として︑拙訳﹁二〇〇四年四月二一
︵一〇五七︶
素描・EUにおける企業結合︵会社グループ︶規制構想の変遷 一四八同志社法学 六〇巻三号
日EU公開買付指令2004/25/EC L142/12︵試訳︶﹂前掲ワールドワイドビジネスレビュー七巻一号三四頁以下がある︒なお︑同指令のドイツに
おける国内法化法︵Übernahmerichtlinie-Umsetzungsgesetz v. 8. 7. 2006, BGBl. 1426.︶の邦訳として︑拙訳﹁ドイツ有価証券取得法と公開買
付法﹂同法三二三号一七五頁以下︵二〇〇七年︶がある︒
︵
10High Level Group of Company Law ExpertsHrsg., A Modern Regulatory Framework for Company Law in Europe, Report for the European ︶ ︵︶ Commission, 4.11. 2002︵zit. High Level Group︶ http://europa.eu.int/comm/internal_market/en/company/company/modern/index.htm ; Wiesner, Neue Brässeler Impluse für Corporate Governance und Gesellschaftsrecht-Zum Endbericht der Hochrangigen Expertengruppe ︵Winter-Gruppe︶, BB 2003, 213f. Maul,Vorschläge der Expertengruppe zur Reform des EU-Gesellschaftsrecht,DB 2003, 27f.その概要については︑バウム︵早川勝・
久保寛展訳︶﹁ヨーロッパ買収法および会社法の改正に関する﹃会社法専門家ハイレベル・グループ﹄の提案﹂ワールドワイドビジネスレビ
ュー五巻一号一〇四頁以下︵二〇〇三年︶参照︒なお︑行程計画に対するEU内外の広範囲にわる関係者の表明した意見の分析結果が公表
されている
︑
A working Document of DG Internal market, Synthesisog the responses to the Communication of the Commission to the Council
and European Parliament,15.11.2003.︵
11Communication from the Commission to the ︶ ﹁EUにおける会社法の現代化およびコーポレート・ガバナンスの改善︱進めるべき計画﹂
Council and the European Parliament, Modernising Company Law and Enhancing Corporate Governance in the European Union-A Plan to Move
Forward - Brussels, 21. 5. 2003, Com ︵2003︶284 final.=Mitteilung der Kommission v. 21. 5. 2003, KOM ︵2003︶284 endg. ︵zit. Aktionsplan︶; EG-
Kommission, Aktionsplan,Sonderbeilage zu NZG Heft 13/2003,
本 肯 定 計 画 書 に つ い て は
︑ vgl. Hopt, Europäisches Gesellschaftsrecht und deutsche Unternehmensverfassung - Aktionsplan und Interdependenten, ZIP 2005,461.; Bayer,Aktuelle Entwicklungen im Europäischen
Gesellschaftsrecht, BB 2004, 5f.; Habersack,Europäisches Gesellschaftsrecht im Wandel –Bemerkungen zum Aktionsplan der EG-Kommission
betreffend die Modernisierung des Gesellschaftsrechts und die Verbesserung der Corporate Governance in der Europäischen Union-, NZG
2004,1f.; ders., Das Aktiengesetz und das Europäische Recht, ZIP 2006, 4457; 本行程計画の概要については︑高橋英治=山口幸代﹁欧州におけ
るコーポレート・ガバナンスの将来像︱欧州委員会行動計画書の分析﹂商事法務一六九七号一〇一頁以下︵二〇〇四年︶︑同﹁EUにおけ
る企業法制改革の最新動向︱行動計画の実現過程およびドイツの改革状況︱上下﹂国際商事法務三四巻三号三〇一頁以下︑同巻四号
四四三頁以下︵二〇〇六年︶︑菊田秀雄﹁EUにおける会社法の現代化︱EU委員会の行動計画を中心に︱︵
1︶ ︵
2・完︶﹂法研論集︵早
稲田大学大学院︶一一〇号一〇七頁以下︑一一一号七五頁以下︵二〇〇四年︶︑上田廣美﹁EUにおける会社法の現代化﹂櫻井雅夫先生古稀 ︵一〇五八︶
素描・EUにおける企業結合︵会社グループ︶規制構想の変遷 一四九同志社法学 六〇巻三号 記念﹃国際経済法と地域協力﹄四五七頁以下︵信山社二〇〇三年︶︑ホプト︵釜田薫子訳︶﹁コーポレート・ガバナンスの基本問題﹂商事法務
一七一〇号一五頁以下︵二〇〇四年︶︑海外情報﹁EUにおける会社法現代化のためのアクション・プログラム﹂商事法務一六六八号三六頁
以下︵二〇〇三年︶︑神作裕之﹁EU法から見た新会社法﹂法時九六九号五二頁以下︵二〇〇六年︶︑正井章筰﹁EUのコーポレート・ガバ
ナンス︱最近の動向﹂早法八一巻四号一四二頁以下︵二〇〇六年︶参照︒邦訳として︑上田廣美﹁﹃EUにおける会社法の現代化と企業統
治︵gouvernement d'entreprise︶の強化﹄に関する欧州委員会報告書﹂亜細亜法学三八巻二号七五頁以下︵二〇〇四年︶がある︒
︵
︵ 12Vgl.Emmerich/Habersack, Konzernrecht, 8. Aufl. S. 18.︶ 13Forum Europaeum KonzernrechtHrsg., ZGR 1998, 672f.︶ ︵︶これについては︑参照︑拙稿﹁ヨーロッパ法の基本構想について﹂小島康裕教
授退官記念﹃現代企業法の新展開﹄四〇一頁以下︵信山社二〇〇一年︶︑同﹁︵ワークショップ︶ヨーロッパ・コンツェルン法フォーラムの
提言と我が国における企業結合規制の現状﹂私法六四号一四三頁以下︵二〇〇二年︶︑斎藤真紀﹁子会社の管理と親会社の責任⑷﹂法叢
一五〇巻三号一〇頁以下︵二〇〇一年︶︒
︵
14︶ 拙訳﹁ヨーロッパ・コンツェルン法︵
1︶ ︵ 2︶ ︵
3・完︶︱ヨーロッパ・コンツェルン法フォーラム︱﹂同法二八四号一九八頁以下︑
二八六号四〇一頁以下︵二〇〇二年︶︑二九四号三五一頁以下︵二〇〇三年︶︒
第二章 EUにおける結合企業規制構想の推移と現状 EUにおいては︑加盟国間における会社法の調整はすでに長い歴史をもつ︒その経緯は︑大きく次の四段階に区分さ
れている ︵
︒これまで紆余曲折を経験してきたEUコンツェルン法もそれと同じ運命を歩んできたとされる 15︶︵
︒伝統的な企 16︶
業結合法は︑ドイツにおいて顕著であるように︑会社法であるかまたは会社法と緊密に関連しているからである ︵
︒そこ 17︶
で︑つぎに︑両者について︑その変遷過程をたどり︑それぞれの段階における特徴を浮かび上がらせたい︒
︵一〇五九︶
素描・EUにおける企業結合︵会社グループ︶規制構想の変遷 一五〇同志社法学 六〇巻三号
第一節 EUコンツェルン法における規制構想の推移 ⑴ まず︑第一段階の会社法の調整は︑一九六八年の開示から始まる ︵
︒この段階においては︑まだ完全な調整が可能 18︶
であると信じられていた︒ドイツでは︑一九六五年に株式法が公布された︒この法律は︑当時において国際的に模範と
され︑欧州大陸法において指導的な役割を果たした︒EU本部が置かれたブリュッセルでは︑ドイツ出身者が会社法調
整 の 第 三 総 務 局 を 担 当 し
た ︵
19︶
︒ 株 式 会 社 の 機 関 組 織 の 調 整 の た め の 第 五 構 造 指 令 や 欧 州 株 式 会 社 法︵
Societas
Europaea
︶が︑ここで集中的に審議された︒しかし︑これらの試みは︑この段階で結実しなかった︒他方︑EUコンツェルン法も同様に完全な調整という構想の下で︑二つの方向が目指された︒一つは︑当初の欧州株 式会社法
︵
20︶
が︑ 従 属 会 社 の 債 権 者 と 少 数 者 の た め に 詳 細 で 広 範 な 規 定 を 定 め た︒ コ ン ツ ェ ル ン 機 関︵
organische
Konzernverafassung
︶は︑過半数の取得と同時に︑ドイツとポルトガルの契約コンツェルンと同様に︑局外社員の代償および子会社の債務に対する親子会社の共同責任を定める規定を設けた︒他の一つは当初の第九指令案で︑これはドイ
ツコンツェルン法の二分化に従い︑契約コンツェルンと事実上のコンツェルンに区分した規制を設けて︑事実上の従属
会社について詳細な保護規定を設けた︒しかし︑両者とも実現しなかった︒その後︑一九八九年の欧州株式会社法準備
提案には︑コンツェルンに関する規定は設けられず ︵
︑またコンツェルンの包括的規制を目指した第九指令 21︶︵
は︑一九八四 22︶
年・八五年の準備段階のままでお蔵入りしたため︑指令提案とする合意に達することができなかった︒
⑵ 会社法調整の第二の段階では︑加盟国の会社法の完全な調整という基本構想が瓦解し︑それに代わって︑国際私 ︵一〇六〇︶
素描・EUにおける企業結合︵会社グループ︶規制構想の変遷 一五一同志社法学 六〇巻三号 法上︑設立準拠法主義の国が会社法において容認できる構想を相互に認めるという方向へ転換した︒ドイツは︑EUに おいてむしろブレーキをかける役割を演ずるようになった︒つまり︑ドイツの︵準︶平等共同決定法 ︵
が︑株式会社の構 23︶
造や国際的合併などに関する株式法上の調整計画を妨げる元凶となった︒その結果︑欧州会社法の危機が問題となった ︵
︒ 24︶
それに対して︑EUコンツェルン法は︑コンツェルン法が加盟国の単なる私的な楽しみになってしまい︑もはやヨー
ロッパレベルでは息絶えたかのような扱いとなった︒その理由は︑とくにイギリスでは︑他の英米諸国におけるのと同
様に︑多数社員の力とコンツェルン親会社の力との間に基本的な相違がないと考えられていることによる︒そこでは︑
コンツェルン問題は︑原則として︑︵少数社員に対する︶多数社支配と︵債権者に対する︶法人の問題である︒両者の
状況は︑︵多数︶社員の行為に対して相応する義務という形で捕捉されるのである ︵
︒ 25︶
⑶ 振り子が逆に振れ戻された会社法調整の第三の段階は︑一九九二年に域内市場の統合を完成するために一丸とな
ってめざした時期である︒会社法の調整は︑中核部分の調整とその枠組みの規制という基本的な考え方に基づくことに
なった︒ドイツの影響はますます影を潜め︑七〇年代中頃からイギリスの影響が明確に現れ始めた︒その前触れは︑シ
ティー・コードやTOBのパネルを範とした一九七四年の公開買付に関するペニントン報告書︑一九七七年の有価証券
取引に関する適切な行為ルールであった︒その後の資本市場法は︑イギリスの範にならって︑株主保護︑平等取り扱い︑
内部者取引︑公開買付︑支配株の取得に関する規制を設けた︒金融制度と租税を管轄する第一五総務局はイギリスが主
導し︑後には︑この部局で会社法の調整も手がけるようになった︒そして︑まもなく欧州資本市場法が欧州会社法をし
のぐことになった︒しかしながら︑二〇〇一年に成立した欧州株式会社法︵
SE. Societas Europaea
︵︶は︑共同決定につ 26︶
いてドイツ法の状況を保障した︒したがって︑危険な贈り物︑トロイの木馬と評する者もいる ︵
︒前章で触れたように︑ 27︶
︵一〇六一︶
素描・EUにおける企業結合︵会社グループ︶規制構想の変遷 一五二同志社法学 六〇巻三号
その後︑会社法専門家グループは二〇〇二年に︑EU委員会の要請により中核部分の調整について答申した︒これを基
礎にして︑二〇〇三年には︑資本市場法的で︑英米法的な特徴を備える大綱の調整を実施するための行程計画が公表さ
れた︒二〇〇四年に︑イギリスを模範とする公開買付第一三指令が成立し︑二〇〇五年には︑妥協の末ドイツの共同決
定法に少し歩み寄る国境を越えた合併に関する第一〇指令 ︵
が成立した︒ 28︶
他方︑EUコンツェルン法についての第三段階では︑一般的コンツェルン法ではなく︑特別なコンツェルン法が規制
の対象となった︒つまり︑少数社員の負担で取引を行う状態における多数社員だけでなく︑コンツェルン親会社自体に
ついて存在する構造的利害衝突︵少数株主の権利の縮減の問題︶を集中的に捕捉する仕方である︒さらに︑統一的指揮
をコンツェルン子会社の利益を犠牲にしても一定の場合に正当化することによって経営者の活動を容易にすることもコ
ンツェルン法の目的であるとする︒一九九二年にドイツのティッセン財団の助成を受けて創設された学術研究団体のE
Uフォーラムは ︵
︑もはやドイツコンツェルン制定法には輸出能力がないことを明確に認識した︒一九九八年に︑EUフ 29︶
ォーラムは︑最も重要な規制の課題として︑コンツェルンの透明性︑形成︑運営︑取引および解消について一連の基本
的要素からなるヨーロッパコンツェルン法を構想した ︵
︒その提言は︑五種類の異なる言語に翻訳された 30︶︵
︒その後︑その 31︶
内の一部の提言が既述したように︑資本市場法において具体化し︑欧州法となった︒他の部分も︑既述したように︑会
社法専門家グループの仲介により︑委員会の二〇〇三年の行程計画書に引き継がれている︒この段階の特徴は︑コンツ
ェルン法が学術的論議の対象にとどまったことである ︵
︒ 32︶
⑷
最後に
︑現在の第四の段階は
︑ EU 委員会のボルクシュタイン
︵
Bolkstein
︶委員と交替したマクリーヴィー
︵
McCreevy
︶委員の登場と共に始まる ︵︒この段階では︑補完性の原則と規制緩和が指導的考え方となった︒しかし︑彼 33︶ ︵一〇六二︶
素描・EUにおける企業結合︵会社グループ︶規制構想の変遷 一五三同志社法学 六〇巻三号 は︑行程計画表の計画を着手することを逡巡しており︑そのため︑欧州連合議会は二〇〇六年六月に︑行程計画表の計画の着手を要求した ︵
︒しかし︑その多くは︑信じられないことであるが︑手をつける気配がまったくみられないのであ 34︶
る︒ EUコンツェルン法についても同様に︑マクリーヴィー委員の下では︑二〇〇六年のブリュッセルでの公聴会の様子
から判断する限り︑これまで積み重ねられてきたヨーロッパコンツェルン法の計画を実行に移す機会はない︒
ホプトは︑この最後の発展段階にある現在が行程計画の実現のための歯車の動きを止めている現在の状態において
も︑ヨーロッパの観点から︑コンツェルン法について︑次の三つの点は注目に値することを指摘する︒まず︑第一に︑
ヨーロッパコンツェルン法が存在することである︒しかし︑それは︑会社の法形式が限定され︑一定の分野に限られて
おり︑計算と検査に関連するものである︒つぎに︑国際的な経済的議論は︑理論的アプローチは様々であるが︑ヨーロ
ッパ会社法の調整とコンツェルン法の調整の意義を問題にする ︵
︒コンツェルン法の調整は︑法の競争︑会社法の収斂︑ 35︶
制度の相違および法実現の重要性に関連する︒その場合︑EUフォーラムの提案︑会社法専門家グループや行程計画の
提案を詳細に検討する意味がある ︵
︒最後に︑広い意味のEUコンツェルン法の三つの発展のシナリオ︑つまり資本市場 36︶
モデル︑責任モデルおよびコンツェルン次元を含むヨーロッパ私法があると指摘する︒
第二節 EUコンツェルン法の現在 EUコンツェルン法と呼ぶことができるような体系的で包括的な法律は︑現在まだ存在していない︒しかし︑欧州株
式会社法︵以下以下SEという︶におけるように一定の形式 ︵
︑銀行や保険などの特有な業種における監督および連結決 37︶
︵一〇六三︶
素描・EUにおける企業結合︵会社グループ︶規制構想の変遷 一五四同志社法学 六〇巻三号
算とその検査については︑コンツェルン規制が部分的であるが散在している︒
① SEについてコンツェルンと関連する規制は︑例えば︑その入り口規制として︑公示期間が定められた開示︵三
二条三項︶と交換比率の検査が定められている︒検査報告書には︑特別な困難があればそれを指示し︑株式の交換比率
の相当性︑交換比率の算定方法とその適切性について説明する ︵
︒ 38︶
② さらに︑業種に特有なEUコンツェルン法として銀行︑保険および有価証券サービス事業に関する規制がある︒
規制は︑これらの事業活動をグループで行う場合の監督に関連するものである︒一九八三年の指令は︑統合した信用機
関に対して監督を開始し︑一九九二年の指令は︑銀行コンツェルンにおける監督法上の権限を当該加盟国の監督庁に割
り当て︑その後︑二〇〇〇年三月二〇日の指令 ︵
は︑連結に基づく規制を設け︑グループ内部における大口の信用付与に 39︶
関して特別規定を設けた︒対応する規制は︑保険事業にも設けられている︒しかし︑この場合は統合ではなく︑保険グ
ループに所属する保険企業の補足的監督である︒
二〇〇二年一二月一六日の指令 ︵
は︑金融コングロマリットにおける監督について規制を設け︑これによりヨーロッパ・ 40︶
アル・フィナンツ・コンツェルン法が創設された︒指令の意味における金融コングロマリットは︑少なくともグループ
内に少なくとも一社の保険会社と少なくとも一社の銀行もしくは有価証券サービス分野の会社を含むグループでなけれ
ばならない ︵
︒ 41︶
③ また会計分野においては︑ヨーロッパコンツェルン貸借対照表法とその検査法が存在する︒これについては︑第
三章二節⑶でもう少し詳しく触れるが︑おおまかには次のような制度である︒一九八三年のコンツェルン貸借対照表指
令は︑連結決算書を要求した︒さらに︑二〇〇二年のヨーロッパIAS︵
International Accounting Standards
︶命令は ︵︑ 42︶
すべての上場コンツェルンが︑二〇〇五年一月一日並びに二〇〇七年一月一日から始まる営業年度について︑国際会計 ︵一〇六四︶
素描・EUにおける企業結合︵会社グループ︶規制構想の変遷 一五五同志社法学 六〇巻三号 基準︵IAS︶に基づいて連結決算書を作成することを定める︒加盟国の規制市場に非上場の会社のコンツェルン決算
とすべての資本会社の個別決算については︑IASの適用は︑原則として︑その自由な選択に任せる︒ロンドンにある
国際会計審議会
︵I A S B
︶ は
︑ I A S 並 びに二〇〇三年六月からは
IFRS
︵
International Financial Reporting
Standards
︶を公表している︒個々の基準と解釈は︑自動的にヨーロッパ法に継受されるのではなく︑EU委員会が︑ 命令︵V erordnung
︶によって決定する︒二〇〇六年六月一四日の指令は︑行程計画を実施して︑連結決算書と連結状 況報告書の作成と開示を加盟国に義務づけた ︵︒ 43︶
ヨーロッパコンツェルン会計法は︑ヨーロッパコンツェルン決算検査法によって補充される︒年度決算書および連結
決算書の決算検査に関する二〇〇六年五月一七日の指令は︑連結決算書の決算検査について詳細な規定を新設してい
る︒それは︑検査士コンツェルン法であり︑コンツェルン決算書の検査士は︑連結決算書に対する確認の付記について
完全な責任を負う ︵
︒ 44︶
以上︑EUにおけるコンツェルン規制の基本構想の推移と変遷およびEUにおいて存在しているコンツェルン法につ
いて概観した︒つぎに章を変えて︑狭い意味におけるEUコンツェルン法に焦点をあて︑EUフォーラムの提言のうち
﹁グループの開示﹂︑﹁コンツェルンにおける特別検査﹂︑﹁コンツェルン構造規制﹂︑﹁正規のコンツェルン運営﹂︑および︑
﹁経営危機の下における業務執行者の義務﹂の部分について︑その後の展開をみることにする︒
︵
15461 ff.; 978 Rdn. 27, Konzernrecht 2004, Europäisches Gesellschaftsrecht, ; , 2005, ZIP 11Fn., , Europäisches Grundmann§HoptHabersack︶ ︶︵
Gesellschaftsrecht, 3. Aufl. 2006, Konzernrecht §4 Rdn. 15, 38 f., §12 Rdn. 45.︵
︵ 16Hopt, Fn.81712007, 202.. ZHR ︵︶︶ ︵︶ 17Legal Issues and Questions of Policy in the Comparative Regulation ︶ ホプト︵拙訳︶﹁結合企業の比較法制における法的問題と政策問題﹂︵原題
︵一〇六五︶
素描・EUにおける企業結合︵会社グループ︶規制構想の変遷 一五六同志社法学 六〇巻三号 of Groups︶国際商事法務二四巻七号六八八頁︵一九九六年︶︒
︵
18︶ 森本滋﹃EC会社法の形成と展開﹄五八頁以下︵商事法務研究会一九八四年︶︒
︵
19Schwarz,Gleichmann︶ である︒
︵
20︶ 森本・前掲書︵注
18︶五八頁以下︑同﹁ヨーロッパ株式会社のコンツェルン法﹂民商七八巻一号三二頁以下︵一九七八年︶参照︒
︵
21︶ 正井章筰﹃EC国際企業法︱超国家的企業形態と労働者参加制度﹄二八一頁以下︵中央経済社一九九四年︶︒なお︑参照︑森本滋﹁第二
次ヨーロッパコンツェルン法案について﹂商事法務七二三号二頁以下︵一九七六年︶︑石黒徹﹁EC会社法の現状とヨーロッパ株式会社⑵︱⑹﹂
商事法務一一九七号二六頁以下︑一一九八号二六頁以下︑一二〇〇号二六頁以下︑一二〇一号二四頁以下︵一九八九年︶︑藤原雄三﹃支配株
主の責任と少数株主の保護﹄八九頁以下︵北海道大学図書刊行一九九二年︶︒
︵
22Verbundene ︶ 本指令草案は︑ヴュルディンガー・ハンブルグ大学教授︵ドイツ︶が一九七〇年に作成した﹁結合企業﹂に関する作業報告書︵
Gesellschaften, Arbeitsdokument von Prof. Würdinger, Sonderberater der Kommission, DOK. KOM. 15. 524/XIV/70-D, Brüssel, 1970
︶に遡る
︒
第九指令準備草案は︑一九七四年︵第一部︶と一九七五年︵第二部︶に提出された︑これについての詳細な検討は︑森本滋﹁ヨーロッパ会
社法セミナーの概要︱コンツェルン法︵上︶︵下︶︱メストメッカー教授を招聘して﹂商事法務八八九号一九頁以下︑八九〇号二三頁以下
︵一九八〇年︶参照︒この準備草案に対する強い批判に直面して︑委員会は︑一九八〇年に第二次提案を準備した︑これについての検討は︑
拙稿﹁ECにおける企業結合に関する会社法の調整︱第九ディレクティブ第二次提案を中心として︱﹂服部栄三先生古稀記念﹃商法学に
おける論証と省察﹄七八五頁以下︵商事法務研究会一九九〇年︶︑松山三和子﹁従属会社の保護︱ヨーロッパ共同体のコンツェルン法・第
九ディレクティブの修正提案﹂新報九六巻三・四号三三五頁以下︵一九九〇年︶︑拙稿﹁企業結合に関するヨーロッパ会社法と株式公開買付
規制の調整﹂ジュリ一一〇四号五四頁以下︵一九九七年︶参照︒なお第九指令草案の邦訳として拙訳﹁企業結合に関するEC第九ディレク
ティブ草案︵試訳︶﹂産大法学二三巻二号一頁以下︵一九八九年︶がある︒
︵
23︶ 正井章筰﹃共同決定法と会社法の交錯﹄︵成文堂一九九〇年︶︑ケストラー﹁ドイツにおけるコーポレート・ガバナンスと共同決定﹂監査役
四九六号五二頁以下︵二〇〇五年︶など︒
︵
︵ 24Vgl.,Europäisches Gesellschaftsrecht –Krise und neue Anläufe, ZIP 1998,96f.Hopt︶
︵ 25171, .Fn.814, ZHR f. u.Fn.,2007202Hopt︶︶ ︶︵︵
26︶ 二〇〇六年に初めてドイツの損害保険会社アリアンツが利用し︵日本経済新聞二〇〇六年二月九日付︶︑二〇〇七年五月までに六四のSE ︵一〇六六︶
素描・EUにおける企業結合︵会社グループ︶規制構想の変遷 一五七同志社法学 六〇巻三号 が設立されている︒ドイツで二三件︑スェーデンで四件︑イギリスとフランスで三件となっており︑かなり多用されているように思われる︑
http://www.seeurope-network.org︵
︵ 27,Fn.81712007, 201., ZHR Hopt︵︶︶ ︵︶
28︶ これについては︑拙稿﹁EUにおける国境を越えた合併︱EU第一〇指令を中心として︱﹂同法三一七号一頁以下︵二〇〇六年︶︒本
指令の邦訳として拙訳﹁異なる加盟国の資本会社の合併に関する二〇〇五年一〇月二六日のEU欧州議会と閣僚理事会の指令2005/56︵ABl.
EU Nr. L 310 S.1︶︵試訳︶﹂︵前掲︶同法三一七号四二頁以下がある︒
︵
29︶ その構成は︑約三〇名の教授︑企業の専門家などから成り︑ドイツ︑フランスなど一〇カ国の出身者である︑参照︑ホプト教授のEUフ
ォーラムの拙訳に対する﹁まえがき﹂同法二八四号一九六頁以下︵二〇〇二年︶︒
︵
30,Europäisches Konzernrecht –Thesen und Vorschläge- in: FS.f. Volhard,1996,S.74.Hopt︶ 提言にまとめられる過程における構想については︑な
お拙稿﹁ヨーロッパコンツェルン法の新たな展開とその方向﹂同法二五四号二五三頁以下︵一九九八年︶参照︑ホプト︵拙訳︶︵前掲注
17︶国
際商事法務二四巻七号六八八頁以下︑ders., Konzernrecht für Europa –Zur Disskussion und die Vorschläge des Forum Europaem Konzernrecht-
,in: Aufbruch nach Europa,75 Jahre Max-Planck-Institut für Privatrecht,2001, S. 17f;ders., Europäisches Konzernrecht: Zu den Vorschläge und
Thesen des Forum Europaeum Konzernrecht,in: FS.f. Buxbaum, 2000, S. 299f.︵
31︶ フランス語
Revue des societies 1999, 43, 285;
イタリア語
Revista de Derecho Mercantil 1999, 445;
英語
Forum European Corporate
Group Law, Corporate Group Law for Europe, I EBOR, 165︵2000︶;イタリア語 Rivista delle Società 2001, 341; Nr. 284.日本語︵拙訳︶前掲︵注
14; ︶同志社法学二八四号一九八頁以下︵二〇〇二年︶二八六号四〇一頁以下︵二〇〇三年︶︑二九四号三五一頁以下︵二〇〇三年︶︒さらに︑
オーストラリア︑Kluver, European and Australian prpposal for Corporate Group Law: a comparative an alysis, IEBOR, 287︵2000︶︑および︑ア
ルゼンチン︑Manóvil, Forum Europaem sobre derecho de grupos: algunas de sus propuetas vistas desde la perspective sudamericana,in: FS 75 Jahre Max-Planck-Institut für Privatrecht, 2001, S. 215f. において検討されている︒
︵
32204Hopt,Fn.8, ZHR 1712007., UEしかし︑この評価は謙遜しすぎのように思える︒ホプト教授は︑︵︶︶ ︶︵フォーラムにおけるリーダーの一
人であり︑会社法専門家委員会の構成員でもあり︑提言のEU法化に非常に力を注ぎ︑行程計画に取り入れられるのに多大な貢献があった
からである︒
︵
33McCreevy︶ マクリーヴィー︵︶委員は︑アイルランド出身で︑二〇〇四年に選任され︑その任期は五年で︑域内市場とサービスを扱う総務
︵一〇六七︶
素描・EUにおける企業結合︵会社グループ︶規制構想の変遷 一五八同志社法学 六〇巻三号 局︵General direction Binnenmarkt und Dienstleistungen, GD Markt︶の責任者である︒この部局は︑共同体の域内市場政策を調整し決定する︒
当該総務局は︑より大きな欧州市場の統合を確保し︑自由なサービス取引︑資本取引および支店開設の自由の分野における障害を除去する
ことを主たる任務とする︒さらに︑補助的に︑共同市場を発展させ︑会社法とコーポレート・ガバナンス︑計算と決算の検査などの分野に
関してヨーロッパの法的枠組みを創設する権限を有する︒
︵
︵ 34Europäisches Parlament, Entschliessung v. 4. 7. 2006 zum Gesellschaftsrecht, A60229/2006.︶
︵ 36Hopt, Fn.8, ZHR 1712007, 209f.︶ ︵︶︵︶ 37︶
SE においてはコンツェルンにドイツの共同決定制度が認められている
︑これについては
︑
Habersack, Konzernrechtliche Aspekte der
Mitbestimmung in der Societas Europea, Der Konzern 2006, 105f.︵
︵ 38Hopt,Fn.81712007, 205f., ZHR ︵︶︶ ︵︶ 39. . 1/126 L 2000. 526 über die Aufnahme und Ausübung der Tätigkeit der Kreditinstitute, ABl EG 2000. 3. 20. Richtlinie v︶ 四九条︑五二条以下︒
銀行に対する監督は︑相当な自己資本を備えているかどうかについては︑親会社による子会社の完全統合︵第五編第三章五二条から五六条︶︑
親会社による子会社に対する大口の信用付与の限界については︑金融機関の自己資本の二〇%を限度とすること︵五〇条︑四九条二項︶︑最
後に︑グループ内の取引に関する規制である︒
︵
︵ 40Richtlinie v2.1/35 L 2003. . . , ABl EU 2002. 12. 1611︶
︵ 41Vgl.2007.207206, 171, ZHR 8Fn., Hopt︶ ︶︶︱︵︵
︵ 42IAS-VO v9.1/243 L 2002. . . , ABl EG 2002. 7. 1911︶
︵ 43Richtlinie v8.1/224 L 2006. . . , ABl EU 2006. 6. 1416︶
44, ZHR .209, 20071718Fn., Hopt︶︶ ︵︶︵ ︵一〇六八︶
素描・EUにおける企業結合︵会社グループ︶規制構想の変遷 一五九同志社法学 六〇巻三号 第三章 EUフォーラムの提言とその後の展開 第一節 EUフォーラムの基本的構想と会社グループ概念 EUフォーラムの提言は︑前章で触れたように︑全体の流れの中では︑第三発展段階で行われたものである︒この発
展段階において︑コンツェルン規制は︑従来の構想から大きく方向転換している︒そこで︑転換された構想の内容と絞
られ規制の対象について︑ここで簡単に再述することにする︒
⑴ E U フォーラムの基本的構想
ドイツコンツェルン法の影響下にあった構想が結実しなかった後に︑EU加盟国の増大とEUにおける域内市場の統
合化に向けた大きな進展は︑多くの分野で将来の一層の経済統合へのプログラムと従来の実現方法を見直す契機になっ
た︒このような背景の下で︑EUフォーラムは現実的な構想を打ち立て︑もはや欧州連合による包括的なコンツェルン
法の調整は不可能であるだけでなく︑その意味もないという明確な認識の下で︑むしろ域内市場における公平な土俵
︵
equal legal playing field
︶にとって必要である限りにおいて︑その中核部分だけ調整して大綱を示す︒そして︑周辺のその他の規制については︑各加盟国の裁量に委ねて︑企業の設立場所として選ばれることを目指す加盟国間の競争に任
せることにした ︵
︒この基本的構想の転換は︑基本的にはドイツコンツェルン法から完全に離脱することを意味する︒E 45︶
Uフォーラムの個々の提案に対して︑ドイツにおいて種々の意見が主張されているが︑このような方向性は支持されて
いる ︵
︒体系的で包括的なEUコンツェルン法を創設しないことがEUにおいて唯一可能なアプローチであると現実的な 46︶
︵一〇六九︶
素描・EUにおける企業結合︵会社グループ︶規制構想の変遷 一六〇同志社法学 六〇巻三号
判断が下されたのである ︵
︒既に触れたように︑多数の加盟国においては︑コンツェルン問題は︑基本的には︑多数者支 47︶
配と法人の問題であり︑それは︑社員のそれに対応した義務と行為に対する規制で十分であるとされる︒とくに︑イギ
リスにおけるように︑支配社員の力とコンツェルン親会社の力との間には相違がないからである ︵
︒これに対して︑特別 48︶
なコンツェルン法は︑少数社員を犠牲にした取引を求められる一定の状態において生ずる構造的な利益衝突を標的にす
るのである︒さらに︑経営者に統一的指揮ができるようにしてその業務執行を容易にするということをコンツェルン法
の目的として認めるのである ︵
︒ 49︶
EUフォーラムは︑ドイツで使用されているコンツェルンまたは企業結合という名称は使用せず︑﹁グループ﹂とい
う名称を用いる︒グループの概念については︑その内容がまだ固まっておらずまた概念的にも確定されていないことが
その理由である︒この﹁グループ﹂と﹁コンツェルン﹂は︑一九六八年のEU第一会社法指令 ︵
第一条の意味における会 50︶
社である︒したがって︑株式会社︑株式合資会社および有限会社・私会社である ︵
︒しかし︑本稿では︑名称については︑ 51︶
グループという用語に統一しない︒現在のところ︑コンツェルン︑結合企業︑企業グループ︑企業集団など種々の用語
が多用されているので︑便宜上その時々で異なる名称を適宜使うことにする︒
⑵ E U フォーラムにおけるグループ概念
EUフォーラムの提案は︑グループの経営および子会社の資本投資者︑少数社員と債権者の保護に関する若干の最低
基準を定めることを目的とする︒このための規制は︑会社法上の問題に焦点を絞るもので︑体系的な規制を創設しよう
とするものではない︒あくまで︑EUの域内市場の統合が前提にあるのである︒
企業グループの概念については︑法的安定性および多数のEU加盟国の法律と合致するという理由によって︑第七E ︵一〇七〇︶
素描・EUにおける企業結合︵会社グループ︶規制構想の変遷 一六一同志社法学 六〇巻三号 U指令︵コンツェルン決算︶一条一項および二条において定義されるコントロール概念に基礎を置く ︵
︒﹁コントロール﹂ 52︶
概念は︑多くのEU加盟国において︑すでに長年に亘って︑連結計算の実務においても用いられてきている︒
さらに︑加盟国は︑EU会社法第二指令二四条aと第七EU指令一条二項と同様︑統一的指揮の場合に︑子会社に対 する親会社の事実上の支配がグループを構成するものとみなし︑これを規制する ︵
︒ 53︶
第二節 グループの開示 ヨーロッパ共同体規模ですでに実現されているコンツェルン法の中心にあるのは︑既述したように︑貸借対照表に関
する第四指令と連結決算に関する第七指令である︒指令は︑会計と開示の分野を規制することによって︑市場の活動と
同様にグループ内部で行おうとする活動を透明にすることを企図していた︒同時に︑これらの規制は︑共同体における︑
コンツェルンのヨーロッパ法を実質的に前進させた︒しかし︑これらの指令は︑グループの内部に現れる危険と晒され
る責任を完全に捉えて︑これを写しだし︑さらに︑とくに従属会社のコンツェルン内部の本当の姿をそのまま描きだす
ためには適切ではない︒
⑴ E U フォーラムの提言
EUフォーラムは︑グループ開示について特別の提案していない︒しかし︑第七指令には︑親会社についてだけでな
く︑集団内部の危険および責任引当金と下位のコンツェルン会社のコンツェルン内部の状況に関する開示がないことを
指摘した︒この点に関しては︑国際財務報告基準︵IFRS︶に問題の検討が委ねられるので︑EUフォーラムは︑具
︵一〇七一︶