中雁木 : 新潟県上越市高田における町家の新しい 住まい方の提案
著者 後藤 智史
出版者 法政大学大学院デザイン工学研究科
雑誌名 法政大学大学院紀要. デザイン工学研究科編
巻 6
ページ 1‑3
発行年 2017‑03‑24
URL http://doi.org/10.15002/00013698
法政大学大学院デザイン工学研究科紀要 Vol.6(2017 年 3 月 )
1. はじめに
A MIDDLE COVERED ALLEY
SUGGESTION OF THE NEW MACHIYA IN THE TOWN IN TAKADA,JOETSUSHI,NIIGATA 後藤智史
Satoshi GOTO
主査 渡辺真理 副査 岩佐明彦・北山恒
法政大学大学院デザイン工学研究科建築学専攻修士課程Progress of motorization with decreased population due to the location in the large retail and housing development on the outskirts of cities.As a result, declining commercial and operational
functions, is increasing.So, in thinking about utilizing the history of that community to increase livability in the downtown area of new community-building back the hustle and bustle of the city.
Key Words : GANGI,MACHIYA,Public Space
まちの賑やかさとはなんだろうか。地方都市は多くの 観光客を集めようと必死であり、観光資源を全面に押し 出し、イベントなどで賑やかなまちを創出しようとする。
しかし、観光地化だけがまちの賑わいではないのではな く、住宅地でもコミュニティのかたち次第でまちには住 民たちのオリジナルの賑わいが生まれる。
近隣住民同士の会話が絶えないまち、家の外にふるまい が溢れるまち、そんな賑やかさが生活を豊かにするよう
なまちを提案する。 (1)敷地 : 新潟県上越市高田
敷地は、かつて商業の街として栄えてきた新潟県上越 市高田の中心市街地である。高田地区の商店街は、古 くから商業のまちとして市民の生活を支えてきた。
郊外型大型店の出店が 相次ぐ状況や、平成 17 年の 市町村合併による市の面積拡大後においても、本 町 3〜5 丁目商店街並びに高田駅前通りをはじめと した高田地区中心市街地には市全体の 12.3% にあ たる 312 の小売店舗が集まっている。
このまちには歴史的建築物として「町家」と「雁 木」がある。間口は狭く奥行きが長い町家は商業 のまちとして暮らしやすく、雪国特有の雁木は冬 の交通に欠かせないものであった。
高田の中心市街地には 3 本の雁木通りがあり、
それぞれは大町通りの「朝」、本町商店街の「昼」、
仲町通り飲食街の「夜」というような特徴がある。
2. 研究概要
3. 事前研究
かつてにぎやかであった地方都市の街なか(中心市街 地)はモータリゼーションの進展に伴い、郊外での住宅 開発や大型小売店の立地等により人口が減少し、商業や 業務機能が衰退し、空洞化が深刻化している。その結果、
空き地の増加、建物の老朽化等による町並みの崩壊、コ ミュニティの劣化、空家・空き店舗の増加によるまちの 活力の低下等が進んでいる。新潟県上越市もそのような 社会問題を抱えるまちである。
少子・高齢化社会や環境問題への対応を考えると、街 なかにコンパクトに居住することが求められる。また、
地域の歴史や文化を後世に継承するためにも、街なか居 住を進めていくことが必要である。
これらのことを踏まえた上で、中心市街地での居住性 を高めるために、そのまちの歴史を生かした新しいコ ミュニティ作りをし、街の賑わいを取り戻すことを考え る。
中雁木
- 新潟県上越市高田における町家の新しい住まい方の提案 -
法政大学
図 1 観光地として賑やかな横浜中華街 図 2 食堂付きアパート
図 3 空洞化により崩れた町並み 図 4 商店街の劣化 図 5 本町 6 丁目の町家
雁木通り 雁木 雁木
新しい雁木空間
今までの雁木空間
4. 設計
(2)職住一体の町家
店としての機能を残す町家の多くはドマやミセの部分 で行っている。ドマを広く取り陳列棚を設置し小売店を している家や、ミセを作業場として使う表具店ではトオ リニワからミセの壁に展示された掛け軸を見て購入す る。
(3)雪国特有の雁木
約16km に及ぶ高田の雁木通りは日本一の長さで、
城下町高田を象徴する景観であるとともに、「ゆずり合 い、助け合い」の心が形になった文化遺産でもある。「雁 木」は雪国の冬期間の通路として造られたものである。
雁木は、町家で生活を営む各戸が私有地を提供し、雪 国における生活通路として重要な役割をはたしている。
雁木は私有地でありながらパブリックな空間であるの で、その住宅の個性を表す場でもある。植木を並べるこ とで通りに彩りをもたらしたり、ベンチを置くことで ちょっとした休憩場所にしたりと、まちのための空間に なっている。
(1)コンセプト
若者が郊外に移動していき、中心市街地で高齢化 が進んでいる。高齢者にとって町家の高さは必要 ないんじゃないか、単身者にとって町家の長さは 必要ないんじゃないか。
また、モータリゼーションによって雁木は歯抜け 状態になってしまった。しかし、雪国にとって、
地方都市にとって、雁木も自動車もなくてはなら ないものなのではないか。
そこで、町家の空間を分割する、今までとは異な る新しい「雁木的空間」を考える。
図 6 高田駅周辺航空写真
図 7 雁木とアーケードの違い
図 8 ダイアグラム
かつて敷地いっぱいに建っていた町家。
雁木通りは歩行者であふれていた。
モータリゼーションが進み雁木通りも裏側 も車道として発展していった。また建て替 えの際、セットバックなどによって建物は 短くなっていった。
雪国にとって必要な「雁木」。
地方都市にとって必要な「車」。
両立するために新しい雁木空間をつくる。
高田公園 旧高田城 高田駅
site
中心市街地 雁木通り アーケード 大町通り
本町通り 仲町通り
私有地 公有地
Public Private Public Private
私有地 公有地
5. おわりに
6. 謝辞
参考文献
(2)設計手法
a) 雁木を内側に持ってくる
道路側につくっていた雁木を内側に持ってくる。
雁木側を車に譲り、新たな徒歩空間を内側につく る。それにより空間を分割する。
各住戸にできた新しい雁木的空間をつなげる。
雁木本来が持つ「全員一致の原則」を使う。
雪の日でも歩いて通ることのできる道とする。
ある部分は通路幅程度の空間。
ある部分は広場の空間。
「流れ・溜まり」により多様な空間をつくる。
b) 内側にできた雁木をつなぐ
d)「流れ」と「溜まり」をつくる
かつては1世帯=1住戸だった町家も様々な年齢層、
世帯、ライフスタイルが混在するようになる。1 人になっ てしまった高齢者を老人ホームに押し込むのではなく、
若者と一緒に暮らすことでずっと住み慣れた土地で生き 続けることができる。
中に雁木を持ってきたことで、生活の一部を開きやすく なる。中にできた雁木が隣家との関係を結び、街区全体 を 1 つの集合住宅にする。趣味の空間には各住戸の個 性が溢れ、中雁木の空間にはふるまいが生まれる。
かつての雁木では通路でしかなかったものが、コ ミュニティ空間になる。
中雁木がコミュニケーションツールになる。
本研究を進めるにあたり、様々なご指導いただいた渡 辺真理教授に感謝いたします。先生には修士設計だけで なく、研究室のプロジェクトでも多くのことを学ばせて いただきました。また、設計指導の飯田善彦先生、副査 の岩佐明彦教授、北山恒教授には短い間でしたが、大変 お世話になりました。
協力していただいた皆様には大変感謝しています。
有り難うございました。
1) 日本建築学会大会学術講演梗概集 2006 年 9 月 2) 小林秀樹 集住のなわばり学 彰国社 1992
参考 HP
3) 上越市ホームページhttp://www.city.joetsu.niigata.jp/
図 9 G 街区モデル
雁木 車道 車道
雁木 車道 車道
雁木 車道 車道
趣味の空間 溜まり 流れ