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「豊臣期大坂図屏風」デジタルコンテンツの制作に ついて

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「豊臣期大坂図屏風」デジタルコンテンツの制作に ついて

著者 井浦 崇

雑誌名 阡陵 : 関西大学博物館彙報

巻 64

ページ 4‑5

発行年 2012‑03‑31

URL http://hdl.handle.net/10112/00023887

(2)

「 豊臣期大坂図屏風」 デジタルコンテンツの制作について

井 浦 崇

「豊臣期大坂図屏風」は、現存例の極めて少 ない「平和に繁栄する豊臣期の大坂を描いた作 品」である。オーストリアで発見され、 2007 年に関西大学なにわ・大阪文化遺産学研究セン

ターと大阪城天守閣、オーストリアの州立博物 館ヨアネウムの三者間で研究協定が結ばれ、共

同研究が行われた。

2011年の 7月 に 開 催 さ れ た 国 際 シ ン ポ ジ ウ ム、「再び『豊臣期大坂図屏風

J

を読む一人物・

意匠・城郭• 生業・年中行事一」で屏風の細部 を検討するにあたって、参加者に基本的な知識 を周知させるためのデジタルコンテンツを制作 した。制作にあたっては所蔵先のエッゲンベル ク城博物館の協力を得た。このコンテンツを使 用して内田吉哉氏(関西大学大阪都市遺産研究 センター特別任用研究員)とともに「屏風案内」

を行った。その後8月には堂島リバーフォーラ ムで行われた「ナレッジキャピタルトライアル 2011」において別バージョンを出品し、現在も 引き続き改良を加えながら Webコンテンツと

して一般公開を予定している。

国際シンポジウムのための「屏風案内」は、

15分程度で簡潔に屏風を解説することを目標と してFlashで制作した。主に3つのパー トに分 けられ、それぞれ屏風がヨーロッパでたどった 経緯、屏風全体の画面構成、屏風に描かれた景 観について解説している。

まず最初のパートでは、現在屏風を所蔵して

歴代城主の説明画面

いるオース トリ ア・エッゲンベルク城の地理情 報から展示状況、歴代城主と屏風との関係など

をまとめている。

そ し て 屏 風 を 現 代 地 図 と 照 ら し 合 わ せ な が ら描かれた次の場所の地理的関係を図説した。

・大坂城 ・八軒家の船着場 ・高麗橋 ・住 吉大社 ・四天王寺 ・宇治平等院 ・石清水 八幡宮 ・天王山(宝積寺)

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池理的関係を図説

地理的関係や建築の外見は屏風の中で大きく デフォルメされており、容易に現在の大阪と重 ね合わせることができない。そこで屏風の画像 と地図が連動したインタラクテイプなシステム を使った図説を行なった。特に京都〜大坂間が

描かれた第8扇は距離、方位ともに歪みが大き

. 

いため、別画面で図示した。そして最後に、屏 風に描かれた景観で場所が特定されたものを、

現在の風景写真と対比しながら解説している。

「ナレッジキャピタルトライアル2011」では 24面タイルド・ディスプレイによる高解像度表 示を生かした別バージョンを展示した。

ェッゲンベルク城は現在世界遺産であり、城 内の壁にはめ込まれているこの屏風絵は、日本 で実物を鑑賞することができない。そこで実物 以上に拡大した画像を合計409611520ピクセ ルの高解像度で鑑賞できるコンテンツを制作し た。さらに

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屏風案内」で制作したコンテンツ をもとに、地理的関係図説と、現在風景との対 比の解説表示を組み込むことで鑑賞者に屏風の

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24面タイルド・ディスプレイ展示風景 解説を行っている。会場ではiPodを使ったマ ルチタッチコントローラーを操作して、解説者 と鑑賞者が屏風の表示操作を行った。

Webバージョンでは国際シンポジウムの屏 風案内」において口頭で説明していた内容が文 章で表示され、ユーザーがインタラクティブに 操作できるようにしている。

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Webバージョンのトップページ

特に地理的関係と現在風景との対比を一つの インターフェイス画面に収めることで、描かれ た内容をわかりやすく解説することに努めてい る。まず各地名のボタンを押すことで地図上の 位置関係が表示され、横の「現在の風景との比 較」 ボタンを押すことで現在の写真との比較に

「現在の風景との比較」画面

5‑

Webバージョンの地理図説 切り替わる

屏風の視点が北側から大坂城を見ていたため 地理関係がわかりにくかった点も、北を下とし た地図の表示で解消を試みた。

これら一連のデジタルコンテンツは、もとも と国際シンポジウムの入門解説用として準備し たこともあり、情報を整理して教育的効果を高 める工夫が重ねられている。複雑な来歴を持ち、

未だ不明な点も多い屏風であるが、明らかにな った要素を丁寧に図示することを重視した。

今後の課題としては、新しい研究成果を盛り 込む過程で、増えていく情報を整理する工夫が必 要となる。そのためには、情報の分類と配置を常 に再検討することが重要だと考えられる。たとえ ば「エッゲンベルク家の家系図」という項目が今 はトップのメニューにあるが、他の情報が増え てくると「屏風についての詳細」の一部に組み込 むか、あるいは他のエッゲンベルク城の紹介情報 と一緒にまとめるといった再絹が考えられる。

今後の発展性としては、「デジタル洛中洛外 図屏風島根県美本」(淡交社)のように鑑賞ブ ラウザのインターフェイスに統合検索システム を組み込むような高度なシステム開発も考えら れる。 しかし、新発見の「豊臣期大坂圏屏風」

は来歴や全体構図などの基本情報をまず充分に 解説する必要があり、教育的効果を特に優先す ることになった。その結果、情報の種類ごとに 適したナビゲーションを検討し、ユーザーが自 然に扱える形態となった。今後もこの手法を展 開していく場合は、常に柔軟な発想で情報伝達 のためのデザインを考えることが重要といえる だろう。

総合情報学部助教 大阪都市 遣産研究センター研究貝

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