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垂 直 的 制 限 に つ い て ③

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(1)

第一章公正競争阻害性の要件事実の事実上の推定の基準 まえがき

第一一章化粧品の対面販売の強制︵以上香川法学第十七巻第一号︶

第三章ブランド内競争を実質的に制限する垂直的制限 一公正競争阻害性について 四ブランド間競争の促進について

︱︱︱欧米の規制について

9 9 9 9 9 9 9 ,

J  

,ヽ9999999999999999999,

] 論 説 一

9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 ,   9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9  

香川法学第十七巻第四号︶

垂 直 的 制 限 に つ い て

第 第 第 第 七 六 五 四 章 章 章 章

戦略的な垂直的制限

専売制

自動車産業について日本の独占禁止法の優れた点

一九

一九条の整合性︵以上本号︶

E u

やドイツの規制

mEu

やドイツの選択的流通制度の問題点

z l E u

の規制

'~ーし 四不当な取引制限又は不公正な取引方法を適用

する考え方について

独禁法三条︑八条一項︑

18~1~195 (香法'98)

(2)

ミラー・タイディングス法によりシャーマン法が︑

米国

では

まず︑再販についてみてみよう︒

( 一

欧米の規制について

ブランド内競争を実質的に制限する垂直的制限に関する主要国の規制についてみてみよう︒

第三章

米国の規制

米国では︑シャーマン法一条の取引制限

( r e s t r a i o n t f   t r a d e )

を内容とする契約

( c o n t r a c t ) ︑結合

( c o m b i n a t i o n ) ︑ 共

( c o n s p i r a c y )

(これらは﹁合意﹂と総称される︶の禁止が︑ヨコの関係だけでなく︑垂直的制限のようなタテの関係

にも適当される︒そのために︑垂直的制限が違法となるためには︑﹁合意﹂が必要とされる︒

( 5 0 )  

一九一一年のドクターマイルズ事件最高裁制決で再販はシャーマン法一条に違反し当然違法の原則が適

用されるとされた︒その後︑現在まで再販が当然違法であることは判例により確立されている︒なお︑一九三七年の

一九五二年のマクガイア法により連邦取引委員会法が各々改正さ

れ︑州法で許容された再販は連邦反トラスト法の適用除外になり︑多くの州で再販許容法ができたが︑

この適用除外制度は廃止され︑州再販許容法も廃止された︒

プランド内競争を実質的に制限する垂直的制限

一九七五年に

一九

18‑1‑196 (香法'98)

(3)

垂 直 的 制 限 に つ い て(3)(大録)

面販売︶を義務づけ︑

一九

これによっても︑

メーカーは︑販売業者に一定の販売サービス

メーカーは

︵例

えば

対 ︵ 例

なお︑販売方法の制限に関しても︑コルゲート理論の趣旨から︑

メーカーが販売業者に一定の販売サービスを義務

コルゲート理論は︑ 希望再販売価格をあらかじめ提示し︑

( 5 1 )  

れた

コルゲート事件最高裁判決(‑九一九年︶

それに従わない販売店との取引を拒絶することは合意ではなく合法であるとさ

コルゲート判決の後︑判例は︑しばらくの間︑

メーカーが要望小売価格に違反した小売店に対して取引拒絶を行う

ことを超えた積極的行動をとった場合をコルゲート理論の適用外であるとして︑再販の合意の範囲を拡大し︑

ート原則を狭める方向をとった︒特に︑合意と総称されるシャーマン法一条の行為類型のなかでも結合に一方的行為

( 5 2 )  

の性格の強いものを含み得るという考え方がとられた︒

一転して︑次のように再販の合意の範囲を狭くしている︒

( 5 3 )  

一九八四年の最高裁モンサント事件判決では︑安売の苦情に応じて取引停止がなされたことだけからでは︑合意を

るとの立場を示し︑ 認定すべきではなく︑取引停止されない販売店とメーカーが独立に行動した可能性を排除するだけの証拠が必要であ

( 5 4 )  

一九八八年の最高裁シャープ事件判決では︑

メーカーと販売業者との間に販売価格についての合意があることが必要であるとされた︒

づけることを公表し︑

メーカーが小売店に対し出荷停止によって再販売価格を強制する再販の最も典型的なケースを

規制できなくするもので︑米国の垂直的制限規制の根本的な欠陥である︒

これを提供しない販売業者との取引を拒絶することは︑反トラスト法違反とされていない

えばシャープ事件最高裁判決竺九八七年︺︶︒そのために︑

セルフサービス方式の安売業者との取引を拒絶することができ︑

メーカーと苦情を寄せた販売店の合意では不十分で

しか

し︑

0

年代

以降

は︑

米国では︑再販は当然違法の類型とされるけれども︑

コル

で は

^  

メーカーカ

18‑1 ‑197 (香法'98)

(4)

出荷停止の強制によって従わせる場合を規制できないこと 安売業者を排除し︑小売価格の維持を図ることができる︒このことも︑

次に︑テリトリー制等の垂直的非価格制限についてみてみよう︒

原則によりその違法性が判断されるとしたが︑

リー制は当然違法であるとした︵当時の同社のシェアはニニ・五%︶︒しかし︑

( 5 5 )  

テリトリー制について︑初めてこの制限をとり上げたホワイトモーター事件最高裁判決(‑九六三年︶は︑合理の

( 5 6 )  

シュウィン事件最高裁判決(‑九六七年︶は︑判例を変更し︑テリト

( 5 7 )  

一九七七年シルベニア事件最高裁判決

は︑非価格制限について合理の原則により判断すべきであると表明し︑

者との間で︑自社の製品を指定した店舗以外で販売することを禁止する契約をしたことが問題となった事件であるが︑

合法とされた

テリトリー制等の垂直的非価格制限の合理の原則について︑第一段階として︑市場支

配力を有するかどうかの判定を行い︑市場支配力が認定された場合︑第二段階として︑競争促進効果と競争阻害効果

の総合判断を行うという考え方をとっている︒しかし︑市場支配力が認定された事件はない︒

筆者は︑前述したとおり︑価格制限であれ非価格制限であれ︑上位企業と下位企業で扱いに差をつけることはブラ

米国のブランド内競争を実質的に制限する垂直的制限の規制は︑①再販等については︑

によって小売業者を従わせる場合であっても︑そうでない場合であっても︑経済的効果は同じであるにもかかわらず︑ ンド間競争を歪め︑適当でないと考える︒ その後︑判例︵下級審︶

ま ︑

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︵同

社の

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アは

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二%

︶︒

︵コ

ルゲ

ート

理論

メーカーが出荷停止の強制

は根本的な欠陥があること︑及び②テ

リトリー制等の非価格制限は︑価格制限と比べて︑社会的メリットは同じように考えられ社会的デメリットも弱いと

は言えないにもかかわらず︑垂直的価格制限は当然違法で判断され︑垂直的非価格制限は合理の原則で判断されると

シルベニア事件は︑

シルベニア社が︑小売業 コルゲート原則の欠陥の︱つである︒

一九

(5)

垂 直 的 制 限 に つ い て(3)(大録)

( 5 8 )  

いうように矛盾があることという問題点を持っている︒

筆者は︑前述したように︑ブランド内競争を実質的に制限する垂直的制限は︑垂直的制限が情報の不完全性を改善

︵垂直的制限が行われないと円滑な供給が行われなくなる︶

正競争阻害性の要件事実の事実上の推定の基準を分けて考え︑価格制限と非価格制限で扱いに区別をしないこと︑

た︑シェアの大きい企業とシェアの小さい企業で区別しないことが適当であると考える︒

ただし︑米国と日本の垂直的制限を比べると次のことが言えると考えられる︒

米国でも︑例えば医薬品︵大衆薬︶

のように︑消費者には内容や他メーカーの商品との違いがよくわからない

報の不完全性のある︶商品は︑消費者は販売業者が推奨する商品を購入するだろうし︑

的に推奨させるために︑再販等の垂直的制限を行うだろう︒自社製品を優先的に推奨させるための再販等は︑社会的

メリットは無く︑流通業者のブランド内競争を実質的に阻害する社会的デメリットが大きく規制する必要がある︒

しかし︑米国と日本の流通には次のような違いがある︒米国では︑

いる︒米国で︑小規模小売店がほとんどなくなってしまったのは︑

が︑大規模小売店舗法のような規制が無かったことも大きい︒ するのに重要な意味を持つ

一九

モータリゼーションの発達によるところが大きい

かどうかという商品特性で公

メーカーは︑自社製品を優先

日本的な小規模小売店は︑ほとんどなくなって

日本的な小規模小売店は︑価格を引き上げても顧客が無くなるわけではないという意味で地域的独占力を有し︑小

売店の推奨︵店に置いてもらうことや棚の目立つところに置いてもらうことも含まれる︶が大きな意味を持ち︑

カーは︑自社製品を優先的に推奨してもらうために再販やそれと同様の効果を持つ垂直的制限を行う誘因が大きい︒

このような再販等の垂直的制限は︑流通段階の競争︵ブランド内競争︶を実質的に制限し︑流通業者が規模の経済性

や範囲の経済性を生かす流通革新を行うことを妨げ︑日本において︑非効率な小売店を温存する効果が大きい︒

メー ︵ 情

18‑1‑199 (香法'98)

(6)

えられることに注意する必要がある︒ したがって︑米国でも︑再販等を規制する必要はあるけれど︑米国では小規模小売店がほとんどなくなっているという理由から︑再販等の垂直的制限が行われる頻度も︑それを規制する必要性も︑米国よりも日本の方が大きいと言

上述した再販は︑廉売を制限する通常の再販を考えたが︑最後に︑廉売を制限する再販でなく︑

米国では︑上限価格を制限する再販︵最高再販売価格維持︶については︑

ることとなった︒

上限価格を制限す

( 5 9 )  

一九六八年のオルブレクト事件最高裁判決

( 6 0 )  

一九九七年のステート・オイル事件最高裁判決で判例変更され︑合理の原則が適用され

筆者は︑上限価格を制限する再販は︑ブランド内競争を実質的に制限せず︑ダブルマージナリゼーションを改善す

るために行われるものであり︑小売価格を引き下げ︑消費者に利益をもたらし合法であるとしてよいと考える︒

ダブルマージナリゼーションを改善する再販は︑上限価格を制限する場合だけでなく︑廉売を制限する場合でも考

米国は︑土地が広く︑ある地域にある商品を売っている小売店が一っしかないということがあり︑上限価格を制限

してダブルマージナリゼーションを改善する再販は現実味があるのだろう︒また︑廉売を制限する再販についてみる

と︑

米国

でも

一般には小売店の競争が激しく︑価格を引き上げるだろうが︑土地が広いから︑小売店の数が少ない

地域で︑ダブルマージナリゼーションを改善し小売価格を引き下げることはあり得るかもしれない︒

しかし︑現代の日本では︑小売店の競争が激しく︑上限価格を制限してダブルマージナリゼーションを改善する再

販はほとんど考えられないし︑廉売を制限する再販についてみても︑小売店の競争が激しく︑再販がダブルマージナ で当然違法とされていたが︑ る再販についてみてみよう︒ うことができる︒ 二

00

(7)

垂 直 的 制 限 に つ い て(3){大録)

( 5 3 )

 

( 5 1 )

 

( 5 2 )

 

0

( 5 0 )

 

はダブルマージナリゼーションを改善し小売価格を引き下げることが考えられるが︑

寡占の戦略的行動を考えると︑

上限を制限する場合であれ廉売を制限する場合であれ︑

ブルマージナリゼーションを改善し小売価格を引き下げることは︑

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(1 91 1)  

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250  

U.

S.

 300 

(1 91 9) . 

一 九

1 0

年のシュレーダー最高裁判決は︑明示であるか黙示であるかをとわず︑メーカーがすべての顧客と再販価格を守らせる協

定を行う場合には︑違法な結合

( c

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t i

o n

) があるとした

(U

Sv .  

S c

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n c . ,

 

252 

U.

S.

 8 5

 (1

92 0) ) ︒二ニ年のビーチ・

ナット・パッキング最高裁判決は︑販売業者が希望小売価格で販売するよう強圧される結果をもたらす行為は︑違法な結合を形成す

るとしている

(F

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v .  

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,  

257 

U.

S.

441  

(1 92 2) )︒本件は︑連邦取引委員会法五条の不公正な競争方法に関す る事件である︒六0年のパーク・デイビス最高裁判決では︑卸売業者をして廉売業者に供給停止させるために卸売業者に販売拒絶を

したり︑廉売業者名を卸売業者に通知したりしていることが︑コルゲート原則の範囲を超え︑そこには販売業者との結合が存在し︑

シャーマン法一条に違反すると判示されている

(U

Sv .  

Pa

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C o . ,

 

362 

U.

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465 ,  

U.

S.

 752 

(1 98 4) . 

モンサント事件では︑再販売価格協定が証拠上認められると

日本と米国の違いであるように思われる︒

以上のように︑

現代の日本では︑

米国と違って︑

ほとんど考えなくてよいように思われる︒この点 再販がダ れることはないと考えられる︒ 争を促進してしまうから︑

ダブルマージナリゼーションを改善するために再販が行わ

このような再販はブランド間競

れているときには︑

小売

店は

当該商品についての独占力が大きくなり︑ダブルマージナリゼーションが生じ︑再販 リゼーションを改善し小売価格を引き下げるとはほとんど考えられないように思われる︒

なお

テリトリー制が行わ

18‑1‑201 (香法'98)

(8)

11011 

ほ)Business Electronics Corp. v. Sharp Electronics Corp., 485 U.S. 717 (1988). 

ぼ)White Motor, 372 U.S. at 263 (quoting Northern Pac. Ry. v. United States, 356 U.S. 1, 5 (1958)). 

ぽ)United States v. Arnold, Schwin & Co., 388 U. S. 365 (1967). 

(~) Continental T. V., Inc. v. GTE Sylvania Inc., 433 U.S. 36 (1977). 

(召):="\,\,L.;\~}l--Q官垢担岱,~吾語底:;;!-{~~国択如2l兵くば母S「咄吾孟詣竪~"\'.:LII\"\~」如速-=11"'l'{<l徘'喘吾忌

苺底(Q葉語如浬母1"'l'{<l緊恥如瞑中や2内゜

(~) Albrecht v. The Herald Co., 390 U. S. 145 (1968). 

(呂)State Oil Company v. Barkat U. Kahn and Kahn & Associates, Inc., Decided November 4, 1997, Antitrust & Trade 

Regulation Report Vol. 73, No. 1935 (November 6, 1997) pp. 452‑457. 

(11) 

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(9)

垂 直 的 制 限 に つ い て(3)(大録)

反にならないとされている︒ 事業者を差別的に取扱うことを禁止している︒ 技術的若しくは経済的進歩の促進に寄与すること

メーカーが販売業者を選択する基準について︑店舗や従業員資格の基準︑提供サービスの基準︑修理や保証の基準

等質的で客観的であり︑その運営が公平で差別的でなく︑

販売業者の数等についての量的な制限がない場合は︑単純

選択的流通制度と呼ばれ八五条一項に違反しないとされている︒

売上目標︑最低在庫量等の付加的販売促進義務を伴う選択的流通制度は︑

販売業者の数を制限する効果を有し︑量的基準に該当するために八五条一項に該当するとされている︒

与え

られ

︑ 単純な選択的流通制度以外の選択的流通制度は︑八五条一項に該当するが︑八五条三項に該当する場合は︑認可が

( 6 2 )  

八五条一項の適用免除が付与される︒八五条三項の認可に当たっては︑①生産若しくは流通の改善︑又は

的達成のために必要不可欠でない制限を課すものでないこと

でないことという要件を満たさなければならない︒選択的流通制に︑並行輸入を制限する絶対的地域保護︑割り当て

られた地域外の顧客に対する販売を全面的に禁止する消極的販売の禁止︑再販︑流通業者の販路制限︵後述する交差

供給の禁止︶が含まれている場合には︑

当かつ妥当であると認められ︑ それら付加的販売促進義務が事実上承認

②消費者に対して利益の公正な配分を行うこと︑③①及び②の目

④当該製品の実質的部分について競争を排除するもの

八五条三項の認可は与えられない︒

ドイツでは︑競争制限防止法二六条二項で︑市場支配的地位又は相対的支配的地位にあるものが︑正当な理由なく

一定の質的な選別基準による選択的流通制度は︑選別基準の内容が正

かかる基準を充たすすべての流通業者に差別なく販売が認められれば︑二六条二項違

一定の質的基準のほかに︑何等かの基準を加えて取引の相手方を選択する量的選択的流

通制については︑これが認められる場合は例外的な場合に限られている︒例えば︑需要が増えないことを理由に流通

( 6 3 )  

業者の数を制限することが認められたことがある︒また︑判決は︑最低購入量を決めることは︑客観的であることを

0

18‑1 ‑203 (香法'98)

(10)

︑ ︒

ょ し E

u

とドイツとの違いの大きな点は︑ドイツが市場支配的地位あるいは相対的市場支配的地位を供給者が有してい

ない場合は︑規制をしていない点である︒

一九

0

九年競争制限防止法第五次改正によって︑大規模小売業者が取引拒絶さ

れても︑競争制限防止法上の問題は生じないこととされた︒この点も︑

E

やドイツの選択的流通制度の大きな問題点は二つある︒U

その一っ目は︑取引拒絶が自由でない点であり︑二つ目は︑選択的流通制度を認める商品の範囲に適当でないもの

︱つ目の取引拒絶が自由でない点についてみてみよう︒

取引拒絶を規制し︑取引を強制することは︑必然的に合理的な理由のない差別を規制するというような形で︑差別

対価の規制も含まれるだろう︒

E

やドイツの選択的流通制のように︑取引拒絶︵あるいは差別対価︶を規制することは︑次のような二つの問題U

を生

ずる

︱つ目は︑取引拒絶︵あるいは差別対価︶

E u

と異

なる

の規制が流通業者間の競争を阻害することである︒

メーカーがある地区で流通業者二つを置くことは無理と考え流通業者一っと取引することにした場合を想定しても

よいし︑あるいは︑

メーカーがある地区で同社の製品を扱う流通業者は相当数存在し得ると考えた場合を想定しても

メーカーは売上げの伸びそうな流通業者を選別して取引し︑ ま

ず ︑

が含まれている点である︒ また︑ドイツの選択的流通制度は︑

( 6 4 )  

根拠に正当であるとしている︒

また︑継続的取引の途中でも︑流通業者の売上が落ち 二

0

(11)

垂 直 的 制 限 に つ い て(3)(大録)

合は︑二つのケースが考えられる︒ き︑そうでない流通業者は︑ てくれば︑取引を停止して︑別の流通業者と取引しようとするだろう︒

優れた内容や安い価格でサービスを消費者に提供できる流通業者は︑

がで

き︑

そうでない流通業者は︑

メーカーにとって有利な条件を提示できない︒逆からみれば︑優れた内容や安い価 格でサービスを消費者に提供できる流通業者は︑当該流通業者にとって有利な条件をメーカーから引き出すことがで

これを引き出すことができないということもできる︒

取引拒絶や差別取扱いは︑流通業者の競争を促進し︑流通業者の提供するサービスの内容や価格の改善に役立つ︒

このようにして︑優れた内容や安い価格でサービスを消費者に提供できる流通業者は事業を拡大する︒取引拒絶や差

別対価を規制することは流通業者の競争を阻害してしまう︒

E u

やドイツの選択的流通制のように取引拒絶︵あるいは差別対価︶

な販売サービスをさせる場合︑文書化したり基準を作成したりすることが困難であることである

メーカーは︑販売店に重要な販売サービスを熱心にきめ細かく努力してやってもらいたいと考えたとしよう︒しかし︑

努力するとかきめ細かい対応をするとかいうようなことは︑基準や契約に書いたとしても実行性が上がるわけではな い︒契約による取引をうまく行うことができないのは︑非標準的な財・サービスの取引の場合である︒このような場

︱つは︑当事者間の情報の非対称性のため︑うまく契約を作れないか︑あるいは︑

取引主体間では情報の非対称性がなくとも第三者︵例えば裁判所︶

的確に実行することはできない︒

ない

か︑

また

は︑

0

メーカーにとって有利な条件を提示すること を規制する問題点の二つ目は︑販売店に重要

にそれを示すことができないケースである︒例え

ば︑努力をするというような条項を契約に入れても︑外見による証拠だけでは︑モラルハザードを生じ︵手抜きをし︶︑

また︑生じうる状況の可能性があまりに多く複雑なために︑契約を作ることができ たとえ︑契約が可能であっても契約を的確に実行することが困難であるケースもある︒契約による

︵契

約の

不完

備性

︶︒

18‑1  205 (香法'98)

(12)

取引をうまく行うことができない場合には︑継続的取引の方法が使われる︒

ときには︑評判等を参考として努力してくれそうな流通業者を選別し︑ メーカーは新たに流通業者と取引をする

また︑流通業者と継続的取引を行い︑流通業

者を観察して︑努力を怠るところとは取引を停止しようとするだろう︒重要な販売サービスについて何らかの基準を

作らせて︑基準と合致するところとはすべて取引させようとするのは無理である︒

一定の取引分野の競争 一般に︑取引拒絶や差別対価・差別取扱いが自由でなければ︑市場経済はうまく機能しないだろう︒取引拒絶や差

別取扱いを規制する必要があるのは︑それが一定の取引分野の競争の実質的制限を引き起こす場合だけである︒取引

拒絶や差別取扱いが一定の取引分野の競争の実質的制限を引き起こさない場合には規制する必要はない︒︵なお︑後述

するように取引拒絶︑差別対価︑差別取扱いは︑専売制等の手段として用いられる場合には︑

の実質的制限のおそれの段階で規制した方がよいと考えるが︑この場合も独占禁止法上の弊害は一定の取引分野の競

争を実質的に制限することによって生ずるものであって︑独占禁止法は一定の取引分野の競争の実質的制限に関心を

持っているということに変わりはなく︑本章では︑この場合も含めて︑独占禁止法は一定の取引分野の競争の実質的

制限を引き起こす場合に規制する必要があるという表現を用いる︶︒

日本の独占禁止法の不公正な取引方法の公正競争阻害性の判断としては︑販売方法の制限︵選択的流通制︶が認められる場合であっても、取引相手との取引拒絶や取引価格•取引条件の差別は自由に行われるべきであろう。

E

U

やドイツの選択的流通制度の問題点の二つ目は︑選択的流通制度を認める商品の範囲に適当でないものが含ま

れている点である︒このために︑選択的流通制度が︑

販売方法の制限については︑米国と違って︑ メーカーの安売り防止のために使われるという弊害を生ずる︒

E

U

やドイツは︑制限できる場合︵選択的流通制度︶に関して商品特

性による制限がある︒

E u

では︑選択的流通制度について︑販売業者が︑事業者及びスタッフの技術上の資格や営業 二

0

(13)

垂直的制限について(3)(大録)

メーカーが行った方が適当であると思われる︒ は︑メーカーが修理を行い︑ 施設に関連した質的で客観的な基準に基づいて選択され︑準の内容が正当かつ妥当であり︑

︵単

純選

択的

流通

制度

︶ その基準がすべての参加希望販売業者に画一的に設定され は ︑

E u

競争法八五条一項に違反しないとされる︒質的で客

観的な基準は︑当該商品の販売において合理的に必要なものに限られるとされ︑

クトロニクス製品のような高度技術品やぜいた<品について認められるとされる︒ドイツの選択的流通制も︑選別基

かかる基準を充たすすべての流通業者に差別なく販売が認められることが︑合法の 要件とされるが︑高度技術品やぜいた<品について︑対面販売︑修理業務を含めた合理的なアフターサービス︑店舗

設備︑商品展ホに関する基準が正当かつ妥当な選別基準とされる︒

このように︑販売方法を制限できる場合︵選択的流通制度︶

うに制限がない場合に比べれば︑販売方法の制限を再販禁止の脱法行為と使うことを防止するという観点から︑評価

することができる︒しかし︑ について商品特性による制限があることは︑米国のよ

E u

やドイツの選択的流通制度を行うことが許容される商品は問題があるものがある︒

まず︑高度技術品についてみてみよう︒

E u

やドイツでは︑家電製品は︑家電メーカーが︑対面販売を行い︑また︑

( 6 5 )  

修理能力︵技術者と修理作業者︶を備えた小売業者とだけ取引することが選択的流通制度として認められている︒

現代の家電についてこのような選択的流通制度を認める必要があるだろうか︒

0

七 現代の家電製品は︑操作も簡単になり︑小売店の詳細な情報提供は必要なくなり︑また︑故障しにくくなったため︑

小売店の詳細な情報提供やきめ細かいアフターサービスは不要で︑修理はメーカー修理で十分である︒現代の家電で

これが︑迅速︑正確な修理を可能にし︑ かつ非差別的に適用されるもの

またメーカーが故障の原因や消費者の使い方の

意向を把握して商品開発能力を向上させることに役立っていると考えられ︑修理については︑販売業者が行うよりも

そのため︑選択的流通制度は︑

エレ

18‑1 ‑207 (香法'98)

(14)

が適当であると思われる︒ 家電について

E u

やドイツのような選択的流通制度を認めると︑家電製品の修理についてメーカーが行った方が効

率的

であ

り︑

また故障の原因や消費者の使い方を直接把握できるために商品開発能力が向上して望ましい場合であっ

ても︵そのことがメーカーにわかっている場合であっても︶︑

のを防止するため︑修理拠点と要員を備えた流通業者と取引するような選択的流通制度を採用する︒

できないために商品開発能力が低下するということを生ずる︒これは︑家電産業の国際競争力も低下させる︒家電に

関する

E

Uやドイツの選択的流通制度は︑国際競争で

E

Uやドイツの家電産業が日本の家電産業に敗退する一要因に

このように︑選択的流通制度を認める商品の範囲が適当でないと︑

売されないように選択的流通制度を使い︑経済効率性︵一般消費者の利益︶を損なうような歪んだ事態を生じ︑大き

な社会的弊害を生ずる︒

本稿では︑取引拒絶が自由でない

E

Uやドイツの選択的流通制にとらわれることなく︑

売方法を制限し︑

それを行う販売業者を選択して販売させる方法を広く選択的流通制ということにしよう︵取引拒絶

が自由である場合も含める︒これは︑販売方法の制限というのと同じである︶︒

販売方法の制限︵選択的流通制︶

販売方法の制限︵選択的流通制︶ メーカーはディスカウンターに商品が流れて安

メーカー等が販売業者の販

についても︑他の垂直的制限と同様︑次のような商品特性による基準を考えるの

は消費者に内容・品質がよくわからない商品であって︑販売店の販売サービスが

重要で垂直的制限により消費者がブランドを信用すれば統一された品質・内容のものを購入することが重要な意味を なったように思われる︒ ーカーが修理を行わず非効率な流通業者の修理が行われ︑また︑メーカーが故障の原因や消費者の使い方を直接把握 メーカーはディスカウンターに商品が流れて安売される

その

ため

に︑

0

(15)

垂 直 的 制 限 に つ い て(3)(大録)

ように取引拒絶が自由でない点は問題がある︶︒ 報の不完全性を改善する垂直的制限︶ ︵垂直的制限を行わなければ円滑な供給が行われなくなる︶場合には︑独占禁止法上許容され

を改善する垂直的制限︶︑

そうでない場合には独占禁止法上許容されない︒

販売方法の制限︵選択的流通制︶

が︑上の情報の不完全性を改善する垂直的制限の基準に該当し独占禁止法上許容 される場合︑取引拒絶や差別対価は自由に行われるべきであると考える︒また︑筆者は︑上の情報の不完全性を改善 する垂直的制限の基準に該当する場合には︑垂直的制限は︑価格制限であれ非価格制限であれ独占禁止法上許容され ると考える︒前述したように︑現代の工業製品で︑上の情報の不完全性を改善する垂直的制限の基準に該当するのは

例外的な場合だろう︒

前述の家電の対面販売や修理に関する販売方法の制限︵選択的流通制︶

0

九 ︵ただし前述した ︵情報の不完全性

は上の情報の不完全性を改善する垂直的制

販売方法の制限︵選択的流通制︶を認めるかどうかは︑高度技術品であるかどうかという基準よりも︑

に該当するかどうかで考えるのが適当であると思われる︒

次に︑ぜいた<品についてみてみよう︒

EU

やドイツの選択的流通制を認める商品にぜいた<品という範疇がある︒

しかし︑販売方法の制限︵選択的流通制︶を認めるかどうかは︑ぜいた<品であるかどうかという基準よりも︑上の

基準︵情報の不完全性を改善する垂直的制限に該当するかどうか︶で考えるのが適当であると思われる︒

E u

やドイツで︑宝飾品の販売について販売方法の制限︵選択的流通制︶

準︵情報の不完全性を改善する垂直的制限に該当するかどうか︶からみて適当であると考えられる

宝飾品は︑消費者に品質がよくわからず︑欺される可能性がある︒ 限の基準に該当しないと考えられる︒ 持

上の基準︵情

が許されているのは︑上の商品特性の基

18‑1‑209 (香法'98)

(16)

事業

者︶

宝飾品のように消費者に品質がよくわからない商品については︑販売サービスの品質・内容の管理が重要で垂直的

制限により消費者がブランドを信用すれば統一された品質・内容のものを購入できることが重要な意味を持つ

的制限を行わなければ円滑な供給が行われなくなる︶場合に該当し︑

公正競争阻害性がないと考えるのが適当だろう︵情報の不完全性を改善する垂直的制限︶︒

宝飾品のように︑ぜいた<品は︑消費者に内容・品質がよくわからない商品が多いから︑上の情報の不完全性を改

善する垂直的制限の基準に該当する場合が多いだろう︒しかし︑ぜいた<品であるからといって︑

制限︵選択的流通制︶を認めると︑

ぜいた<品であっても︑上の基準︵情報の不完全性を改善する垂直的制限︶に該当しなければ︑販売方法の制限︵選

択的流通制︶を認めず︑

性を改善する垂直的制限︶

上の

よう

に︑

︵情報の不完全性を改善する垂直的制限︶も両者で差はない︒ の制限という点で︑ われるおそれがある︒ 日本法でも販売方法の制限︵選択的流通制︶

それが︑安売りされないようにするために使われ︑再販禁止の脱法行使として使

また︑ぜいた<品でなくとも︵例えば︑

に該当すれば︑販売方法の制限︵選択的流通制︶

択的流通制︶を認めるべきであると考える︒

すべて販売方法の

を認めるべきであると考える︒販売方法

フランチャイズも選択的流通制でも変わりはなく︑販売方法の制限を認めた方がよい商品の基準

ぜいた<品であるからといって一概に販売方法の制限︵選択的流通制︶を認めるというのは適当でな

く︑またぜいた<品でなくとも︑上の情報の不完全性を改善する垂直的制限の基準に該当すれば︑販売方法の制限︵選

一九

年のドイツの競争制限法第五次改正では︑相対的市場支配的事業者の不当な差別行為の被侵害企業︵従属九

0

の範囲から大規模企業を除外し︑中小事業者に限定する改正を行った︒これによって︑ドイツでは︑メーカ ハンバーガーであっても︶︑上の基準︵情報の不完全

︵ 垂

二 ︱

o

(17)

垂 直 的 制 限 に つ い て(3)(大録)

E u

の規制

( 6 1 )

 

売り防止のために使われ︑

ゞ ︑ ーカ

選択的流通制を使って︑

EC

競争法八五条一項は︑加盟国間の通商に影響を与えるおそれがあり︑

か つ

廉価で大量販売する量販店との取引を拒否することが容易となり︑

流通の革新を阻害する危険性が一層高くなったと考えられる︒

選択的流通制の濫用が問題となったものとして︑次のような事例がある︒

AEG

は︑家電製品の販売について単純選択的販売制度を採用し︑

E uに届け出て委員会のネガティブ・クリアランスを得ていた が︑質的基準に適合する者であっても最低価格を守らないような販売業者は選定からはずして基準を差別的に運用し︑またシステム 内の販売業者には最低価格を守るよう要請して価格を高く維持し︑これが︑八五条一項違反とされた︒

A E Gは︑この決定を

E

C

判所に提訴したが︑

E

C裁判所は

E C委員会の決定を支持した

(A EG v .   C o m m . , a   C s e   107 /82 

(1 98 2) , 

EC R 1

549)

(6 2) Eu

の選択的流通制のリーディングケースは︑メトロ︵第一次︶

E C裁判所判決である︒この事件は次のようなものである︒

家電メーカーのサバは︑質的基準のほか︑一定の販売高の達成・一定の在庫維持などの制限を含む選択的流通制を行うこととし︑

八五条一二項の個別認可を

E u委員会から受けた︒これに対して︑セルフサービス方式の大型小売店のメトロがサバのシステムヘの参 加ができなくなるとし︑この決定の取引を求めて

E C裁判所に提訴した︒

E C裁判所は︑選択的流通制度により流通組織へのアクセ スが制約され︑価格競争が強調されなくなっても︑異なる類型の競争態様に基づく新しい流通チャネルの形成は︑消費者利益に適合 するとして委員会の認可を支持した

( M e t r o v .   C o m m . , a   C s e   2 7

 /76 

(1 97 7) , 

EC R 

1875 

(1 97 8)

)

( 6 3 )   S p o r t T o t  

0

事件︑高等裁判所一九七七年五月二五日

WuW高等裁判所判決集一九四八頁以下︒

( 6 4 )   R o h r n e t z a r m a t u r e n 事件︑ベルリン高等裁判所一九八四年七月︱

1 0

日 ︑ WuW

高等裁判所決集三二八八頁以下︒

(6 5) Eu で︑家電メーカーのこのような選択的流通制を認めた事件として︑メトロ︵第一次︶

E C裁判所判決︵一九七七年︶︑メトロ

E C裁判所判決(‑九八六年︶がある

( M e t r o v .   C o m m i s s i o n   ( N o .  

1 )  

1977 

EC

R 1

87 5.

M  

e t r o

  v .  

C o m m i s s i o n   ( N o .   2) 

1986 

EC

R 3

02 1.

)

競争

を阻

止︑

制限あるいは歪曲す 選択的流通制が安

18‑1 ‑211 (香法'98)

(18)

該行

動は

テリトリー制ということにしよう︶︒ る目的ないし効果を持つ事業者間の協定︑事業者団体の決定︑

︵筆者は︑これを絶対的 ︵自動車販売では八五条三項による適用除

または相互協調行為を禁止している︒

E

競争法八五条一項は︑米国のシャーマン法一条と同じく︑ヨコの関係だけでなく︑タテの関係にも適用される︒

C

米国の再販規制と違って︑

外規制が認けられている︶

は八五条一項に違反し︑

E C

は ︑

八五条一項について︑縦の合意を極めて広い範囲で認める︒

八五条一項の解釈として前述したような選択的流通制が認められている

が ︑

E

の選択的流通制度の問題点は︑

C

検討したので︑ここでは省略し︑ ドイツの選択的流通制度の問題点と併せて︑前に

それ以外の論点について検討しよう︒

( 6 6 )  

E

競争法では︑並行輸入を制限する絶対的地域保護︑並行輸入阻止︑再販売価格維持行為︑及び交差供給の禁止

C

八五条三項による適用免除は困難であると考えられている︒

E

競争法では︑地域外での積極的な販売活動を禁止する積極的販売の禁止と地域外での顧客に対する販売を全面

C

的に禁止する消極的販売の禁止の区別が重要であり︑積極的販売の禁止は許容されるが︑消極的な販売の禁止は︑八

( 6 7 )  

五条一項に違反するとされ︑八五条三項による適用免除が行われない︒

E

C

競争法では︑ブランド内競争を完全に排

除する地域制限を︑絶対的地域保護

( a b s o l u t t e e r r i t o r i a l   p

r o t e c t i o n )

と呼び︑禁止している

並行輸入阻止については︑契約等の形で書面によって合意の存在が明らかな場合だけでなく︑

メーカーと販売業者間の協定または協調行為と構成され︑ メーカーから販売業

者に対する書状の送付や並行輸入品の買い上げ行為に基づいて並行輸入を阻害する行為がとられている場合にも︑当

( 6 8 )  

八五条一項違反とされる︒

交差供給の禁止とは︑卸売業者に対しては卸売業者間での取引を禁じ小売業者とのみ取り引きすることを義務づけ︑

小売業者に対しては小売業者同士及び卸売業者への供給を禁じ︑最終消費者に対してのみ販売することを義務づける

(19)

垂 直 的 制 限 に つ い て(3)(大録)

国ごとの価格差別︵地域による価格差別︶ 択的流通制度の考え方で貫かれている︒ ことである︒交差供給の禁止は︑製品を必要とする流通業者に向けての製品の移動や国境間での製品の移動を制限す

上述の考え方は︑ ることにより競争制限的効果を持つと考えられている︒

( 6 9 )

7 0

)  

八五条三項による排他的流通契約やフランチャイズ契約の一括適用除外規制及び前述のような選 E

Cの競争法が︑絶対的テリトリー制︵絶対的地域保護︶や並行輸入阻止に対して厳しいことについて︑

E C市場 統合が完成するまでの過渡的なものであるとか︑下位メーカーが実施する絶対的テリトリー制︵絶対的地域保護︶は 小売店の販促意欲を伸ばすことにより流通効率とブランド間競争を促進する効果があるにもかかわらず︑効率よりも 域内市場統合を重視してメーカーの有力性の程度に関わらず一律に適用するところに問題があり︑市場統合が進行し

( 7 2 )  

ていけば︑硬直的な規制方法は改められるだろうという考え方がある︒

しかし︑筆者は︑現代の工業製品については︑これらの見方とは逆の評価をする︒

一般に重要な問題 一般に︑現代の工業製品についてみると︑国際的なテリトリー制は︑国内のテリトリー制とは違った問題を生ずる︒現代の工業製品についてみると︑国内のテリトリー制︵厳格なテリトリー制︶わ

れる

又は︑寡占企業の戦略的行動として使われる寡占の協調を強める

れが

ある

違い︑競争状況の違いによって︑ は自社製品の優先的推奨のために行

︵ブランド間競争を実質的に制限するおそ

というのが最も重要な理由であると考えられるが︑国際的なテリトリー制︵厳格なテリトリー制︶は︑各

のために行われるというのが最も重要な理由である︒国際間では︑需要の

メーカーからみると︑各国市場ごとに需要の価格弾力性が異なり︑国際的なテリト リー制では︑各国市場ごとに価格差を生じる各国間の価格差別が最も重要な問題となる︒これに対して国内の市場で

は︑各地域で需要や競争状況は大きくは違わず︑国内のテリトリー制では地域ごとの価格差別は︑

~

18  1~213 (香法'98)

(20)

うかがポイントとなる︒

︵垂直的制限を行わないと円滑な供給が

一般に︑地域外の顧客に対する販売を全面的に禁止

国際的なテリトリー制によって各国市場ごとの価格差別をすることができるかどうかは︑並行輸入が行われるかど

現代の工業製品に関しては︑国際的テリトリー制については︑

すること

を活 発に し︑

すと考えられる︒

筆者は︑絶対的テリトリー制や並行輸入阻止は︑販売店が重要な販売サービスを行い︑消費者がブランドを信用す れば販売店の販売サービスも含めて統一された品質・内容のものを購入できることが重要な意味を持つ を行わなければ円滑な供給が行われなくなる︶場合は︑独占禁止法上許容されると考える

る垂直的制限︶︒しかし︑現代の工業製品については︑このような場合は、例外的であろう。公取委事務局の流通•取

( 7 3 )  

引慣行ガイドラインは︑並行輸入阻害は価格を維持するために行われる場合には独占禁止法に違反するとする︒しか し︑並行輸入阻止が価格を維持するためか︑それ以外の目的のために行われたかを判断するのは難しいだろう︒筆者

は︑並行輸入阻止は︑販売店が重要な販売サービスを行い︑

も含めて統一された品質・内容のものを購入できることが重要な意味を持つ

行われなくなる︶場合︵情報の不完全を改善する垂直的制限︶

は︑公正競争阻害性の要件事実が事実上推定されると考える︒現代の工業製品は一般に後者に当たる︒

一般

に︑

︵消極的販売の禁止︶を内容とする絶対的テリトリー制や並行輸入阻止を規制することは︑ブランド内競争 また︑各国市場のブランド間競争を活発にして︑独占.寡占の弊害を減少させ︑消費者に利益をもたら

では

ない

は独占禁止法上許容されるのに対し︑ 二︱四

︵垂直的制限

︵情報の不完全性を改善す

メーカーのブランドを信用すれば販売店の販売サービス

そうでない場合 工業製品について︑絶対的テリトリー制や並行輸入阻止のような市場統合に反する行為を規制することの

(21)

垂 直 的 制 限 に つ い て(3)(大録)

する不当な取引制限︵独占禁止法三条︶

二︱

定し

この問題は︑再販等に対 び一般指定一五項の不当な取引妨害︶ 重要性は︑市場が統合されていくにつれ︑益々増大するだろうし︑は︑今後世界市場の統合が進んでいく場合の規範になっていくと思われる︒この意味で︑現代の工業製品に関しては︑

E

C

競争法の絶対的テリトリー制や並行輸入阻止の厳格な規制は︑先進的な意味があると思われる︒

なお︑絶対的テリトリー制や並行輸入阻止は︑

は協調行為と構成されて違反となるが︑

E C

争法

では

︑ 日本法では︑不公正な取引方法︵一般指定一三項の不当な拘束条件付取引及

の問題とされる︒筆者は︑後述するように︑

カルテル規制は︑

タテの関係に適当しないのが適当であり︑日本法の適用の方が優れていると考える︒

の適用の問題と共通する問題であり︑後で検討することにしよう︒

(6

6)

EC

競争法八五条一項の﹁加盟国の通商に影響を及ぼす﹂という要件は︑﹁認識可能なものである﹂

( a

p p

r e

c i

a b

l e

) 程度にゆるく解

加盟国間の通商への影響要件がこのように緩やかに解釈されているため︑再販売価格維持行為に対する規制は︑厳格なものになっ

ている︒純粋に国内的な効果にとどまる再販売価格維持行為は︑

E C競争法の規制対象ではない︒しかし︑再販売価格維持協定が︑

輸出入禁止等の条項を伴っていない場合においても︑八五条一項の適用対象となりうることを

Ge

ro

fa

br

ie

k 事件決定は示した

(G

ER

O

F

ab

ri

ek

h

OJ

 1977 

L l 6   ; 

0 9 7 7 )

CMLR  D35)。同〗訳{疋では、輸出禁止がない場合でも、再販売価格維持は、自由に価格P

が設定される場合に当然である経路からの貿易の流れを歪めることによって加盟国間の通商への貿易に影響を及ぽすとされた︒し香

たがって︑直接的に輸出入禁止等の条項を伴っていない場合であっても︑輸出入に関連している製品を対象とした再販売価格維持行5

為であれば加盟国間の通商に影響を及ぽすといえる︒この程度の効果の認定で︑加盟国間の影響要件が充足されるとすれば︑

E

C

争法上許容される再販売価格維持行為は︑事実上当該加盟国内でも極めて限定された地域的な再販売価格維持行為ということになー

る ︒

ョコの関係に限 八五条一項によるメーカーと販売業者間の協定又 ま

た︑

このことに関する

E

C

競争法の厳格な規制

参照

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