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ドイ ツ ・日本 の歴 史 に見 る社 会 事 業 理 論 の現 在 の争 点
岡 田 英 己子
〔要 約 〕
相 対 的後 進 国 と 自認 して い た 日独 「社 会 事 業 の近 代 化 」 を概 観 し、 成 立 指 標 と され る社 会 性 ・予 防 性 ・科 学 性 ・専 門 性 が社 会 事 業 に固 有 の もので は な い 点 を 指 摘 。 この成 立 指 標 の 証 明 の た め に、 社 会 事 業 理 論 ・教 育 は 「社 会事 業 の近 代 化 」 言 説 を駆 使 して 、 「慈善 ・博 愛 か ら社 会 事 業 へ 」 「社 会 事 業 か ら社 会 福 祉 へ」 の発 展段 階 論 を通 説 化 し、結 果 的 に社会 事 業 史 研 究 方 法 に も歪 み が生 じた。
そ の一 例 が 社 会 福 祉 発 達 史 の科 目名 の流 布 で あ る。
〔キ ー ワ ー ド〕
「社 会 事 業 の近 代 化 」言 説 、社 会 事 業 理 論 、 社会 事 業 段 階 、社 会 福 祉 発 達 史 、 ド イ ツ
序 社会事 業 を成立 させ しめ た 「 社会事 業 の近代 化 」 言説 の解 明
序 一1.問 題 の 所 在
1990年 代 に入 り西 洋 史専 攻 者 に よ る幾 つ か の ドイ ツ社 会 事 業 ・社 会 福 祉 関連 の 日本 語 論 文 ・著 書 が刊 行 され 、 こ こ3〜4年 ほ ど集 会 な どで面 識 を 持 った 方 か
ら、 専 門 用語 や 時 期 区分 の 問 い 合 わせ が 相 次 ぐよ うに な った。
2002年5月 に ドイ ツ史研 究 者 のKさ ん か ら概 念 整 理 や 用語 説 明 につ いて 目安 に な るよ うな原 稿 を、rド イ ツ研 究 』(日 本 ドイ ツ学 会 誌)に 書 い て ほ しい とい う依 頼 が入 る。 一 旦 は了 承 した もの の 、 熟 慮 の末 に内 容 的 に は社 会 福 祉 学 科 紀 要 に載 せ るの が適 切 と判 断 、従 来 の 社 会事 業 ・社 会 福 祉 史 の研 究 方 法 へ の懐 疑
も含 め て 書 くこ と に した。
結 論 を前 もって言 う と、 社 会 事 業 ・社 会 福 祉 の言 葉 につ い て は、前 段 階 の 慈 善 ・博 愛 事 業 も含 め て 、20世 紀 半 ば に概 念 と して の完 成 度 を高 め る(か に見 え る)一 国福 祉 国 家 段 階 に近 づ く程 に 、逆 に百 家争 鳴 の様 相 を呈 し、一 国 の 政 策 理 念 か ら ミクロ な援 助 方 法 に至 る まで の各 レベ ル で関 連 概 念 の論 議 が活 発 化 す る。 同 時 に ま た高 度 経 済 成 長 期 の福 祉 国 家 で は、 国家 官 僚 か ら社 会 保 険 ・福 祉 諸 団体 に至 るま で 各 組 織 の権 力 装 置 が 、社 会 事 業 ・社 会 福 祉 ・社会 保 障 な どの 概 念 ・対 象 の整 合 性 を求 め て一一斉 に稼 働 し、 出版 物 の攻 勢 や 関 連学 会 で の定 義 を錦 の御 旗 に して 、一・見 には専 門用 語 が 関係 各 位 に了 承 され る状 況 も出 て くる。
こ う した各 国 の論 争 を整 理 し、 法 や制 度 化 を基 準 に普 及 す る専 門 用 語 を 定義 し直 しな が ら、 歴 史 的背 景 まで を 説 明す る と な る と、 作 業 の膨 大 さに私 は うな 垂 れ る。 欧 米 で は キ リス ト教 慈 善 は決 定 的 な影 響 力 を持 って お り、市 民 社 会 が 創 出す る博 愛 事業 ・ボ ラ ンタ リズ ム に も、現 在 のNPO/NGOに も、そ れ が如 実 に読 み 取 れ る。 そ れ だ け にKさ ん の原 稿 依 頼 は、古 代 ・中世 西 洋史 の 門 外 漢 で あ る私 に は荷 が重 く、 困 った な とい うの が 率 直 な気 持 ちで あ った。 しか し、 お お まか な概 念 と研 究 動 向 の整 理 で よ い とのKさ ん の 要 望 に応 え て、 日本 と ドイ
ツの 社 会 事 業 とい わ れ る段 階 の研 究 上 の留 意 点 を示 す形 で 書 くこ とに した。
と い うの は近 年 、 社 会 史 ・女 性 史 の 系 譜 か ら社 会 福 祉 の歴 史 に関 心 を寄 せ る 世 代 が 出 て きて い るの だ が 、概 ね20世 紀 半 ば に よ うや く概 念 ・対 象 が 明確 にな る 「社 会 福 祉 」 の表 記 で 、19世 紀 末 か ら現 在 まで の 歴 史 叙述 を押 し通 す 傾 向 が あ るか らで あ る。 時 には中世 末 期 の救 貧法 ・救 貧行 政 や18世 紀 以 降 の博 愛 事 業 、 あ るい は教 会 慈 善 を も、社 会 的 な責 任 ・義務 の意 味 を持 って いた か の よ うに、「社 会 的救 済 」「社会 の仕 事 」「社 会 の事 業 」 と して一 括 して しま う記 述 さえ あ る。 そ の 際 に参 照 され る筆 頭 文 献 は 、 イギ リス や ア メ リカ中心 の一 国 福 祉 国 家 史 に近 い テ キ ス トや社 会 福 祉 専 攻 者 に よ る欧 米 の翻 訳 書 で あ り、 辞 典 類 の歴 史 用語 の 説 明 で あ る。 これ も一 部 の翻 訳 書 や 辞 典 を 除 けば 、 いか に専 攻 外 の歴 史 研 究者
に悪 い影 響 を与 え 、 誤 りの再 生 産 を して い る こ とか 。
む ろん 「歴 史 に 『事 実fact』 もr真 実truth』 な い、 た だ特 定 の視 角 か らの 問題 化 に よ って再 構 成 され たr現 実reality』 だ けが あ る」「歴 史 学 もま た カテ
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ゴ リー の政 治性 を め ぐる言 説 の 闘争 の場」(上 野1998:12)で あ る と して 、「無 限 に再 解 釈 を許 す言 説 の権 力 闘争 の再 確 認Jに 意 気 込 む 、(社 会)構 築 主 義 の系 譜 の歴 史 論 文 な らば 、 わ ざわ ざ反 論 をす る必 要 もな い と思 う。
しか し、 真 っ当 な 指導 を受 け て き た歴史 学 専 攻 者 の論 文 とな る と放 置 は で き な い。 若 い世 代 によ る福祉 関連 の 学会 報 告 ・論 文 で 、史 料 吟 味 は確 か な の に 、肝 心 の専 門 用語 の歴 史 性社 会 性 に余 りに も無 頓 着 最 近 で は教育 史 学 会報 告 資 料 で第2次 大 戦 中 の学 童 疎 開 を福 祉 政 策 と記 載 して い た一 な論文 が 目に つ く。 教 育 史 ・社 会 史 ・女 性 史 分 野 で 、 ナ チ期 に も社 会 福 祉 の用 語 を説 明 抜 き に用 い る 、 企 業 福 利 厚 生員 を 即 ソー シ ャル ワー カ ー とす る、 イ ギ リス旧植 民地 国 の社 会 開 発 を 社 会 福 祉 と見 な す 等 、 曖 昧 な 福 祉 概 念 が社 会 福 祉 史 の 隣 接領 域 で多 用 され 始 め て い る。一 般 名詞 と して 「社 会 福 祉 」 「福 祉 」 の表 記 を使 用 して い る だ けな の だ と好 意 的 に解 して も、 そ れ が水 準 を ク リア す る論 文 で あ る場 合 、 表 記 され
る専 門 用 語 の歴 史 性 社 会 性 に は敏 感 で あ りた い し、 あ らね ば な る ま い。
と りわ け教 育 史 ・社 会 史 ・女 性 史 の ドイ ツ史 専 攻 者 間 で用 い られ る ソ ー シ ャ ル ワー クや社 会 福 祉 関 連 用 語 が、facetofaceの 関係 を通 じて普 及 す る傾 向 が 目に付 く。 それ だ け に真 っ当 な 指 導 を受 け て きたKさ ん が 、 用語 の 歴 史 性 社 会 性 の検 討 を不 可 欠 と考 え られ たの も無理 はな い1)。社 会 国 家/福 祉 国 家 や社 会福 祉 、 あ る い は ソー シ ャル ワー ク とい う現 代 用語 に引 き寄 せ す ぎ た概 念 を、20世 紀 初 頭 か らナ チ期 ま で一 貫 して説 明 抜 きで使 用 し続 け た り、 時 に は19世 紀 の博 愛 事 業 や 救 貧 法 に も平 気 で社 会 を冠 す る福 祉 の言 葉 を 用 い る よ うな 、 そ うい う 論 文 ・翻 訳 に対 して は、 歴 史 研 究 は もっ と注 意 を払 うべ き で あ る。
序 一2.目 的 と 課 題
と りあ え ず 本 論 文 で は19世 紀 末 か ら20世 紀 前 半 ま での 、社 会 事 業 が 成 立 し た と され る段 階 に絞 り、「慈善 ・博 愛事 業 」 と 「社 会 福 祉 」 の架 橋 に な る移 行 期 の概 念 ・対 象 の 曖 昧 さ と、 に もか か わ らず統 一 的 な社 会 事 業 イ メ ー ジが 関 係 各 位 に刻 印 され る理 由 を探 る こ とを、 検 討 課 題 に設 定 す る。 とい うの は社 会 事 業 史 専 攻 外 の人 は 、時 に は社 会 福 祉 研 究 者 で さえ も、 この移 行 期 の概 念 ・対 象 を 過 渡期 の もの にす ぎな い と して軽 視 す る傾 向 が 目立 つ か らで あ る。 また概念 ・対
象 の 混乱 は近 年刊 行 の辞 典 類 で も見 られ る ので2)、無 益 な論争 を繰 り返 さな い た め に、古 典 といえ る基 礎 文 献 ・邦 訳 論 文一 ドイ ツ で は フ ロー ラ(P.Flora)の 日本 招 待 講 演 を 、 日本 で は 岡村 重 夫 や吉 田久 一 の概 念 一 に依 拠 して説 明 す る。
ま ず1章 で 「社 会 事 業 段 階 と は何 だ った の か」 を批 判 的 に捉 え直 し、次 い で II章 で は社 会 事業 の社 会 性 ・予 防性 あ るい は権 利性 の 内実 を、rsozialな る もの」
の ドイ ツ的意 味 を通 して検 討 し、 さ らに 皿章 にお い て 「社 会 事 業 の近 代 化 」言 説 を産 出 す る拠 点 とな る社 会 事 業 学 校 を例 に出 して 、 社 会 事 業 史 の 固 有 の研 究
領 域 や 方 法 を 述 べ る こ と にす る。
な お 専 門 用 語 を い ちい ち説 明 す る と、結 局 は各 論 者 の 自説 紹 介 に陥 り、 論 議 が い たず らに複 雑 にな るだ け な の で 、 本論 文 で は発 展 段 階論 を借 用 す る形 で 図 を要 所 要 所 に載 せ る に留 め た。 これ は未 だ確 立 され て い る と は言 い難 い社 会 事 業 ・社 会 福 祉 史 の研 究方 法 論 の検 討 素 材 とな り、 同 時 に一 国 福 祉 国 家 の 自国 中 心 主 義 の歴 史 叙 述 を克 服 す るた め の一 つ の 目安 に な ろ う。
1章 「 社 会 事 業 段 階 と は何 だ った の か 」とい う問 い の 意 義
本 章 で取 りあ げ る論 点 は、 「慈 善 ・博 愛 か ら」 「社 会 福 祉 へ 」 の狭 間 にあ る社 会 事 業 段 階 と は何 か 、 で あ る。20世 紀 初 頭 に欧 米 先 進 国 で社 会 事 業 が 登場 す る 頃 、制 度 ・政 策 と して は一 国型 に収 敏 して い くの に、各 国 間 の社 会事 業 の イ メー ジに は共 通 点 が多 か った。 それ は通常 は次 の よ うに理解 され る一 社会 事 業 とは、
貧 困 問題 の予 防性 と社 会 的 な責 任 を付 与 され た 「社 会 の仕 事 」 で あ り、 同時 に、
組 織 性 ・合 理 性 ・科 学性 あ るい は専 門 性 ・専 門職 性 と い う言 葉 で 、社 会 事 業 の 機 能 が 説 明 され る と。
社 会 福 祉 の歴 史 で も、社 会 事 業 段 階 を 「社 会 事 業 の近 代 化 」 「近 代 社 会 事 業 」 と ほぽ 一 体 化 させ て説 明 す るの が通 説 に な って い る。救 貧法 な い しは慈 善 ・博 愛 事 業 に基 づ く救 済事 業 が 、 社 会 性 ・予 防 性 ・組 織 性 ・科学 性 ・専 門性 ・専 門 職 性 な どを 獲 得 す る 「発 達 」 に よ って 、 社 会 事 業 の成 立 な い しは 「社 会 事 業 の 近 代 化 」 に到 達 す るの だ と評 価 され て き た。 しか し、社 会事 業 段 階 の時 期 区分
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の 方 法 も含 め て 、 こ う した イ メ ー ジ の共 有 や 言 説 が 意 味 す る もの は 、一 体 何 だ っ た か 。
社 会 事 業 が 社 会 福 祉 の 通 史 の ど こ に 位 置 す る の か は 、 私 に も 、 そ して お そ ら く は 吉 田 久 一 の 一 連 の 著 作 で も な お 曖 昧 な 部 分 が あ る の だ が 、 ① 社 会 事 業 と社 会 福 祉 の ど こ が 違 う の か 、 ② あ る い は 対 人(援 助)サ ー ビ ス の ソ ー シ ャ ル ワ ー ク と社 会 事 業 と は 一 緒 に で き る の か 等 に 論 点 に 絞 り込 む こ と で 、 歴 史 研 究 方 法 の ミニ マ ム な 共 通 認 識 を 本 論 を 通 じて 示 せ る もの と 考 え る。
1‑1.社 会 事 業 史 は 教 育 史 ・社 会 史 ・女 性 史 と ど こ が 違 う の か ドイ ツ ・日本 の社 会 事業 史 を 四半 世紀 近 く学 ん で き た私 は、昨今 の社会 史 ブ ー ムを喜 ん で お り、 その成 果 に社 会 福 祉 が学 ぶべ き であ る こ とを否定 は しな い。 し か し、基 礎 専 攻 の差 は意 外 と大 きな 障壁 に な る。 これ は障 害 者 施 設 ・教 育 史 と ドイ ツ社 会事 業 史 の2専 攻 を、行 き来 して きた私 自身 の経験 に基 づ くもの で あ る。
施 設 史 と社 会 事 業 史 と は一 見 に は双 生 児 的 関 係 に あ る だ け に、 逆 に分 析 視 点 を め ぐる双 方 の 調 整 は難 し く、 教 育 史 的観 点 で も って社 会 事 業 を解 釈 す る誤 り も 起 こ る3)。研 究 方 法 の 混乱 が生 じや す い の で あ る。
も と よ り、 これ は社 会 史 と社 会 事 業 史 の 関 係 に も当 て は ま る よ うに思 う。 社 会 統 制 の規 律 化 の視 点 で 書 か れ た近 年 の ドイ ツ社 会 史 研 究 に は 、社 会 事 業 史 と 重 複 す る テ ー マ が 多 々 あ る。 しか し、 同 じ社 会 事 業 制 度 ・政 策 や 対 象 を 取 りあ
げ て い て も、 問題 意 識 や 分 析 視 点 が異 な れ ば 時 に は正 反 対 の結 論 が 導 き 出 され る。 奇 妙 な こ と に貧 困 者 や 障害 者 とい う、 典 型 的 な 「社 会 的弱 者 」 の実 態 や 生 活 を扱 う社 会 史 は稀 で あ る。 例 え ば 障害 学 の立 場 で の 歴 史 論 文 で は、 始 め に結 論 あ りき式 の資 料 操 作 が 目立 つ し、貧 困 を扱 う社 会 史 もせ い ぜ い社 会 的 排 除 の 例 と して 対 象 を捉 え て い るに過 ぎな い 。 この種 の著 作 を読 む た び に、 障 害 者 や 貧 困者 の 問 題 を社 会 現 象 と して認 識 す れ ば 、 そ れ で 事 は済 む の か とい う素 朴 な 疑 問 を 、 私 は い つ も持 つ 。
メ ゾか ら ミク ロ ・レベ ル の社 会 事 業 を扱 う女性 史 も同様 の問 題 が 散 見 され る。
例 え ば 、 ドイ ツ市 民 女 性 運 動 穏 健 派 が 「ソー シ ャル ワー ク創 出 」 に成 功 し、 職 業 的 自立 を開 拓 す る反 面 、労働 市 場 で は男女 の役 割分 担 を固定 化 した点 が、1980
年 代 か ら批 判 に 曝 さ れ て い る。 福 祉 職 員 は市 民社 会 の規 律 化 を 生 活 困窮 者 に押 しつ け た権 化 な の か 、 そ れ と も自立 支 援 者 な の か の結 論 は 、 歴 史 的 に は未 だ確 定 で き な い で い る。 私 は福 祉 国家 体 制 下 で拡 大 した対 人(援 助)サ ー ビス の専 門職 主 義 に は概 ね 批 判 的 で は あ るが 、 だ か ら とい って社 会 福 祉 専 攻 の立 場 で 見 れ ば 、安 易 な 福 祉 職 批 判 に は慎 重 で あ らね ば な らな い。 とい うの は、「社 会 事 業 か ら社 会 福 祉 へ 」 の移 行 期 にお いて 、 福 祉 職 の専 門職 化 と連 動 しな が ら、 社 会 福 祉 制 度 へ の信 頼 ・信 用 も担 保 され るか らで あ る。
要 す る に 「何 の た め に研 究 を す るの か 」 で、 分 析 視 点 も考 察 も異 な る。 フ ェ ミニ ズ ムや 障害 学 の(社 会)構 築 主 義 の立 場 か らの社 会事 業 関 連 の歴 史 解 釈 と、
マ ク ロな社 会 政 策 か ら派 生 しなが ら もメ ゾ ・レベ ル の 施 設 ・組 織 や ミク ロ ・レ ベ ル の対 人 援 助 に集 中 しや す い社 会 事 業 史 研 究 とで は 、 そ れ だ け に時 に は抜 き 差 しな らぬ意 見 対 立 も生 じ うる。 そ こで 隣接 領 域 で の さ さや か な社会 事 業 ブ ー ム が見 られ る今 こそ 、20世 紀 前 半 の 特 徴 とな る社会 事 業 段 階 に切 り込 み 、社 会 事 業 ・社 会 福 祉 史 に固 有 の研 究 方 法 を確 保 して お く必 要 が あ る と考 え る4)5)。
加 え て社 会事 業 を研 究 す る場 合 、 よ り困難 で根 源 的 な 問題 にぶ つ か る。 社 会 事 業 に は 、概 ね 「社 会 的 な る もの」 と 「人 間 的 な る もの 」 を 連 結 す る理 論 構 成 が求 め られ るか らで あ る。社 会科 学 とい わ ゆ る人 間科 学 の二 つ視 点 が競 い 合 い、
社 会 事 業 の概 念 ・対 象規 定 の混 乱 を増 幅 させ 、 そ の結 果 と して欧 米諸 国 で も 日 本 で も、広 範 さ と曖 昧 さ とが社 会 事 業 理 論 の特 徴 と な って しま う6)。必 然 的 に社 会 事 業 の概 念 ・対 象 を扱 う歴 史 もま た 、二 項 対 立 図式 で は な い形 での社 会 像 と 人 間像 の双 方 の 記 述 が要 求 され る7)。
今 、 改 め て 「社 会 事 業 と は何 だ った の か 」 を 自問 自答 す る と、 この広 範 で曖 昧 な概 念 ・対 象 を整 理 す る作 業 が、 す な わ ち社 会 事 業 理 論 史 が 、 未着 手 の ま ま で あ る事 実 に気 づ く。 理 由 は 明 白 で あ る。 従 来 の 社 会 事 業 史 が 以 下 に指 摘 す る よ うに発 展段 階論 の 多大 な影響 を受 け、社会 事 業 の成 立 を 自明 の こと と捉 え 、成 立 を 所 与 の事 実 と した上 で 歴史 研 究 を進 め て き たか らで あ る。
ドイ ツ ・日本 の歴 史 に見 る社 会事 業 理 論 の現 在 の争 点 7
1‑2.社 会 事 業 の 成 立 指 標 と社 会 事 業 理 論 ・歴 史 叙 述 の 相 互 補 完 の 関 係
1)慈 善 ・博 愛 事 業 と社 会 福祉 の狭 間 に位 置 す る社 会 事業 段 階 な るもの の不 可解 さ 欧 米 先 進 国 で社 会 事 業段 階 が始 ま るの は 、 社 会 事 業 理 論 の論 客 達 の 説 明 に よ れ ば 、19世 紀 末 か ら20世 紀 初 頭 にか け て で あ る。 ドイ ツ も この一 群 に属 す る。
そ の際 に、 慈 善 ・博 愛 事業 とは差 異 化 され る社 会 事 業 の 成 立 指 標 の 筆 頭 に来 る の が 、社 会 性 ・予 防性 で あ る。 大 々的 な公 的 救 済 の制 度 化 を明 言 し、事 後 的 で は な い予 防 的 な生 活 困窮 へ の 介 入 が始 ま る こ とが 、社 会 事 業 成 立 の証 と見 な さ れ た の で あ る。 こ こ に メ ゾ ・レベ ル の組 織 再 編 や ミク ロ ・レベ ル の援 助 方 法 の た め の 科 学 性 や専 門 性 ・専 門職 性 の成 立 指 標 も加 わ り、 慈 善 ・博 愛 事 業 段 階 と は違 う社 会 事 業 段 階 の 時期 区分 が 欧 米 で は通 説 化 され る。
しか し、「社 会事 業 とは何 か 」 の説 明 とな る と、納 得 の い く答 え は意 外 と少 な い。 マ ク ロ ・レベ ル の 国 ・地 方 自治 体 が主 流 にな る点 で は論 者 の一 致 は あ って も、援 助 の担 い手 創 出 の母 胎 とな る慈善 ・博 愛 事 業 の近 代 的再 編 に ま で踏 み込 ん だ理 論 は ほ とん どな い。 他 方 、 メ ゾか ら ミク ロ ・レベ ル の社 会 事 業 理 論 ・社 会 事 業 教 育 論 を広 め た い わ ゆ る理 論 家側 で も、社 会 事 業 の概 念 ・対 象 や援 助 方 法 を打 ち出 す こ とで 慈善 ・博愛 事 業 との相 違 は言 え て も、「社 会事 業 か ら社 会 福 祉 へ 」 の移 行 過 程 で 、 モ ザ イ ク状 に普 遍 主 義 的 で権 利 性 を強 調 す る社 会 福 祉 的 要 素 が混 入 す る点 は 、 うま く説 明 で きな い で い る。 率 直 に言 うな らば 、「社 会事 業 か ら社 会 福 祉 へ 」 の発 展 段 階 論 的 な 移 行 を 、 ス ッキ リと説 明 す る理 論 の方 が 多分 に問 題 な の か も しれ な い 。
欧米 先 進 国 で は、「残 りもの の福祉(貧 児 教 育 ・障 害 者保 護 や施 療 も含 む)」 の 対 象 者 を 国民 国 家 に社 会 統 合 させ て い く途 上 で 、教 育 や 医療 の制 度 ・政 策 よ り
も通 常 は や や遅 れ て 公 的 な意 味 合 いを 持 つ 社 会 事 業 が 成 立 す る。 ドイ ツ で まず 公 的社 会 事 業 が取 り組 むべ き対 象 者 と して 立 ち現 れ る の は 、労 働 者 家 族 向 けの 社 会 保 険 制 度 や 公教 育 制 度 か ら漏 れ た、 生 活 困窮 を 抱 え込 む女 性 ・子 ど も ・障 害 者 ・高 齢 者 で あ った。 しか し、 国 民 国 家 の一 級 市 民 育 成 の た め の公 教 育 の 公 と、二級 市 民 用 の社 会 事 業 の 公 が 、同 じ意 味合 い を持 つ こ とは稀 で あ った し、前 提 に され る市 民 的 公 共 性 の概 念 自体 も19世 紀 後 半 に は大 き く揺 い で い た。
や が て20世 紀 半 ばか ら福 祉 国 家体 制 が確 立 して い くこ とで 「残 り もの の(残 余 的)福 祉 」 は 消 滅 す る もの の 、 あ の北 欧 で さえ 障害 者施 設 で は社 会 事 業 段 階
の状 況 が 、1960年 頃 まで続 く。遅 れ て皆 保 険 ・皆 年金 体制 を と り、理論 上 は社 会事 業 段 階 を脱 す る 同 時代 の 日本 で は事 態 は よ り複 雑 で あ る。 大 半 の施 設 で利 用 者 の権 利 性 は認 識 され て は い な か った し、公 的 扶 助 へ の ステ ィグマ も強 固 で
【図 一1:「 残 り もの の 福 祉 」 と 「制 度 ・政 策 化 され た福 祉 」 の狭 間 で の 社 会 事 業 の位 置 】
1.社 会 事 業 の 前 段 階(岡 村1983:5‑32) 自発 的 福 祉:キ リス ト教 慈 善 、 博 愛 事 業 法 律 に よ る 福 祉:救 貧 法
II.ド イ ツ社会事 業 の成立 図式a 咳 りもの の福祉 か ら1
⇒1880年 代 の社会 保 険制度 によ る残 余 的領 域 の可 視化 ⇒1880年 代 一1890年 頃 の社 会 改良思 想 の台頭 ⇒19世 紀 末 〜20世 紀 初頭 の貧困 ・都市 問題 への社会 政策 の中で社会事 業 の制度 化 が始 ま り、公教 育 も普 及
1社会事業 は この途 上 の産 物 で、双方 の性格 を有す1
⇒ 第1次 大戦総 力戦体制 ⇒ ヴ ァイマル期 ≠ ナチズ ム期 ⇒ 西 ドイ ツ社 会国家 ⇒ 1制度 ・政策 化 され た福祉 へ1
皿.社 会事 業 の成立 図式b
双方 の性格 を有 しつつ、対 象 ・ 領 域 を拡大 し、福祉国家 への架 橋 に もな る社会事業段 階 、合 理 的 に統制可 能 とい う楽観主義
1残 りものの福 祉1→
事後 的 選別 的
ステ ィグマ
業事
← 会
社→1制 度 ・政策 化 され た福祉1 予防的
普遍的 権利性
ドイ ツ ・日本 の歴 史 に見 る社 会事 業 理 論 の現 在 の争 点 9
あ っ た 。 国 民 の 権 利 性 拡 大 が 国 家 の 義 務 性 と対 概 念 で あ る こ と が 社 会 福 祉 界 で 広 く承 認 され る の は 、 よ う や く1980年 頃 に 過 ぎ な い 。
と りあ え ず 、 こ こ で は 「残 り も の の福 祉 」 か ら 「制 度 ・政 策 化 さ れ た 福 祉 」 へ の 途 上 で 社 会 事 業 が 登 場 す る と して 、 そ の 枠 組 み を 図 一1に 示 した 。
2)「 社 会 事 業 の近 代 化 」言 説 の意 図 す る もの
上 記 の 「社 会 事 業 か ら社 会 福 祉 へ 」 の移 行 を うま く説 明 で き な い矛 盾 は、 社 会 事 業 の テ キ ス ト類 に多 用 され る社 会 事 業 段 階 に到 達 した証 拠 と され る成 立 指 標 に突 出 して顕 われ てい る。 社 会 事 業 は そ の成 立 指 標一 相 対 的 にマ ク ロ概 念 で あ る社 会 性 ・予 防 性 や組 織 性 ・合 理 性 か ら、 援 助 方 法 論 を規 定 す る ミク ロ概 念 の 科学 性 ・専 門性 ・専 門職 性 まで含 む一 を時 代 の言葉 で あ る社 会近 代 化 言 説 を 援 用す る形 で誇 示 し、慈 善 ・博愛 事 業 とは差 異 化 され る、 よ り優 れ た 「発 展 」段
階 にあ る と、 自 らを 積 極 的 に位 置 づ けて い く(図 一1参 照)。
こ う した 「社 会 事 業 の近 代 化 」 言 説 は、 何 を意 図 し、 どん な効 果 を もた ら し た の で あ ろ うか 。 「コ ロ ンブ スの 卵 」 に似 た発想 なの だ が 、次 の点 に は留 意 した
い 。
欧米 先進 国 で 「社 会 事 業 の近 代 化 」 の モ デ ル と見 な され た 国 で 、社 会 近 代 化 が至 上 命 題 にな る例 は そ う多 くはな い点 で あ る。 「社 会事 業 の近 代化 」 を徹 頭 徹 尾 、到 達 目標 に掲 げ続 け る 国 の筆 頭 は 、 で は ど こか と問 い 詰 め れ ば 、 ドイ ツ と 日本 に行 き当 た る。 ドイ ツ は 自由 ・平 等 の 国 民 国家 モ デ ル に対 す る相 対 的 後 進 国 と 自己規 定 を して き た だ け に、 歴 史 叙 述 で も未 だ果 た せ ぬ 社 会 近 代 化 の落 差 が強 調 され や す か った(岡 田2001a)。
同 じ く前 近 代 性 を克 服 す る課題 を背 負 う 日本 で は 、「社 会 的 な る もの」 の モ デ ル を まず ドイ ツ社 会政 策 とイ ギ リス救 貧 法 に求 め た。 さ らに大 正 中期 か らは ア メ リカ ・ケ ー ス ワー ク論 が 加 わ り、以 後 の 日本 の ソー シ ャル ワー ク教 育 や 福 祉 職 の在 り方 を 呪 縛 して い く8)。
「社 会 事 業 の近 代 化 」言 説 は ま た援 助者 一被 援 助 者 の 関係 形 成 を通 して 、市 民 社 会 に適 合 的 な 生 活 ・行 動 様 式 を双 方 に埋 め込 み、 そ こか ら社 会 ・国家 レベ ル に新 た に社 会 事 業 とい う制 度 の相 対 的独 自性 と、 福 祉 職 の専 門 性 ・専 門職 性 へ
の 信 頼 ・信 用 を 広 く認 知 さ せ て い く9)。こ の 個 人 一社 会 シ ス テ ム の双 方 向 か らの 社 会 関 係 の 蓄 積 に よ っ て 、 学 校 教 育 や 医 療 よ り は や や 遅 れ て 制 度 化 さ れ る に も か か わ らず 、 社 会 事 業 は 短 期 間 で 社 会 的 承 認 を 受 け 、 そ の 専 門 用 語 自体 も関 係 各 位 に さ ほ ど 問 題 に さ れ る こ と もな く受 容 さ れ て い ぐo)。 特 に 欧 米 モ デ ル を 追 い 求 め て い た 日本 で は 「社 会 事 業 な る もの 」 が 、 安 易 に 、 そ して す ん な り と受 け 入 れ られ た 。
3)社 会 福 祉 発 達 史 と い う科 目名 か ら見 え て くる もの
聖 な る領 域 に属 す る慈 善 や 、聖 俗 の双 方 の延 長 線 上 に居場 所 を確 保 す る博 愛 は 、 「善 」 の代 名 詞 と見 な され た(図 一2参 照)。 「善 」 は徳 で あ り、 「善 」 の政 策 は正 義 ・公 正 の 証 で あ った。 社 会 事 業 の制 度 ・政 策 に も同 じ倫理 が持 ち込 ま れ 、社 会 事 業 教 育 の 目的 ・理 念 や福 祉 職 の職 業 倫 理 、 さ らに援 助 の 評 価 に まで 影 響 を 及 ぼ す。 社 会事 業 の 「発 達 」 もま た、 「善 」 そ の もの とされ た 。 そ して こ の 「善 」 を 支 え 、 あ まつ さえ強 化 した の が 、 他 な らぬ社 会事 業 史 で あ った。
通 例 、 イ ギ リス お よ び イ ギ リス ・モ デ ル の 影 響 下 に あ る国 の 歴史 叙 述 に よ れ ば 、両 大 戦 間期 を 「社 会 事 業 か ら社 会 福 祉 へ 」 の 転 換 期 と見 な して い る。 対 象 が生 活 困窮 や 社 会 的 弱者 に限 定 され やす い社 会事 業 段 階 で は、 ニ ー ド充 足 は低 く設 定 され て い て今 日的 問題 は ま だ見 え て こな い 。 そ れ だ け に歴 史 研 究 も近 代 化推 進 こそが 「善 」で あ る とす る運 動 論 的性 格 を持 ちやす く、「社 会 事 業 の近 代 化 」言 説 の産 出 が続 く。 ま た社会 事 業 理 論 の 方 は1910年 頃 に最 初 の形 成 を終 え るが 、 こ こに歴 史 叙 述 が入 り込 む こ とで 、 社 会 事 業 理 論 と社 会 事 業 史 が車 の両 輪 にな って、 発 展 段 階 論 を補 強 す る相 乗 効 果 が発 揮 され る。 こ う した循 環 論 法 的 な近 代 化 言 説 に よ って 、「社 会 事 業 か ら社 会 福 祉 へ 」 の理 論 的必然 性 を演 出す る点 で は、 ドイ ツ も 日本 も、 イ ギ リス や ア メ リカ と同 じ方 略 を と った 。 た とえ ドイ ツ と 日本 に は 、「善 」 な る 「社 会 事 業 か ら社 会 福 祉 へ」 の途 上 で大 き な断 絶 が あ った と して も、 な の で あ る。
日本 で は経 済 成 長 が成 熟 段 階 に入 る頃 か ら、福 祉 系 大 学 ・学 部 で社 会 福祉 発 達 史 の科 目名 が相 次 い で採 用 され る。 この 科 目名 ほ ど 「社 会 事 業 とは何 だ った
ドイ ツ ・日本 の歴 史 に見 る社 会事 業 理 論 の現 在 の争点 11
【図̲2:「 慈 善(事 業)か ら博 愛(事 業)へ 」 の イ ギ リス ・モ デ ル の優 位 性 】
イギ リス社 会事 業 が示す 明瞭す ぎ る発展段階 論 は普遍化 され、社会事 業理 論 と社 会事業史 に よ って近代化 言説 が産 出 され てい く。 これは 日本 に留 ま らず、英語 圏 の歴史 文献 に も見 ら れ る現 象で あ る(岡 田1997:135‑138)。 イギ リス社 会事業 に高す ぎる評価 を与 え、イギ リ ス ・モ デルで他 国 の到達 度 を も評価 す る とい う、歪 んだ理論 ・歴史叙 述 を批判 した上 で、 イ ギ リス ・ボラ ンタ リズムの基盤 で ある博愛事 業 の図を こ こに示 す。
なお私 は ドイ ツ・中欧 でイギ リス的博 愛事業 が なか った とは断 定 していな い。 「聖」なる慈 善 を世 俗 に繋 げ る架橋 とな る博愛 思想 か ら社会事 業思 想 が育成 され る条 件 はハ ンブル クや ベル リンに はあ った。社 会事 業 が成立 した と確 実 視 され る1910年 前 後 か ら、 ドイツで も社 会事業 の概念 ・対象 を説 明す るための理論形成 が始 ま る。 ドイ ツでは、イギ リスやア メ リカ の よ うな市民主導 型 ボ ラ ンタ リズ ムは副次 的 で しかな い と見 な され るが、 ドイ ツの市民 的公 共 性 はイ ギ リスの系 譜 か らの影 響 も結 構 あ った。 イ ギ リスの18世 紀半 ばか らの 「博 愛 の時 代 」の表 明は、貧 困問題 への市民社会 の責任 ・義務 の表 明 と して意図的 に宣伝 され たので あ るが、 こ こでの 「聖 と俗 の 中間 に博愛(事 業)」 を位 置づ け る福祉思想 は(図 一2参 照) 、19 世紀 か ら 「sozialなる もの」 の制 度化 へ と繋 が ってい く。 しか もイギ リスや ア メ リカと同様 に、 相対 的後 進国 と 自認 す る ドイツ市 民 もまた、 「博愛事 業 か ら社会 事業 へ」 を開拓 す るの は、 同一人物 ・同一集 団 の場合 が多 く、社会事 業教育 や実践 での連続性 は極 め て高 い。今後 も ドイ ツ ・中欧の地 方史 研究 が進 展す れ ば、イギ リス ・モデル に呪縛 され た社会事 業史 の通 説 は大 幅 な修正 を余 儀 な くされ る反 面、イギ リス的博愛事業 と同種 の系譜 が ドイ ツ・中欧 ・北
欧の教養市 民層 にあ った ことが実証 され よ う(岡 田1997:146‑147)(岡 田2000b:228)。
国 家
例:エ リザベス救貧法
「国 家権 力 か らの 自由 」
個 の 自立\
コ ー ポ ラ テ ィ ズ ム と対 立
聖 と俗 の中間 に 博愛(事 業)
価値 倫理
規律化
カ トリック教会 慈善(事 業)
「聖 な る もの か らの 自 由 」
工 業 化 の 早 い イ ギ リ ス の ジ ェ ン トル マ ン ・ レデ ィ
① イ ギ リス ・モ デ ル と 「博 愛 の 時 代 」(18世 紀 半 ば 〜)と の 一 体 化 に 注 目。
② 他 の ヨ ー ロ ッパ 諸 国 で の 博 愛 事 業 の 興 隆 は19世 紀 に 入 っ て か らで 、特 に19世 紀 後 半 〜 。
③ ① と② はNPO/NGOの 原 型 と な る が 、 ドイ ツ ・中 欧 で は ① の 影 響 は地 域 格 差 が あ る 。
の か」 を 端 的 に物 語 る もの は な い と、 私 は思 う。 一 体 、 何 が 「発 達 」 した とい うの か 。 この 素 朴 な疑 問 に 、社 会 事業 ・社 会 福 祉 史 は応 答 して き た の か。 どん な論 拠 で、 「慈 善(事 業)か ら博 愛(事 業)へ 」 「慈 善 ・博 愛 事 業 か ら社会 事 業 へ 」 「社 会 事 業 か ら社 会 福 祉 へ 」、 さ らに 「社 会 福 祉 か ら福 祉 国家 へ 」 の 図式 が 通 説 化 され た の か 。 そ もそ も社 会 福 祉 発 達 史 とい う科 目名 自体 が 、 欧 米近 代 の 価 値 規 範 と一 枚 岩 的 にな ってい るの で はな い か。近 代 化 を単純 に 「発達 」「進 歩 」
とみ な す こ とで 、 社 会 事 業 史 自体 が 「社 会 事 業 の近 代 化 」言 説 を 産 出す る道 具 に化 した の で は な いか 。 福 祉 系 大 学 に お い て 社 会 福 祉 発 達 史 の 科 目名 が 採 用 さ れ、 な お使 用 され て い る現 状 。 こ こに 日本 の社 会 事 業 史 の研 究 方 法 の弱 さが、引 い て は社 会 事 業 理 論 な る もの の弱 さが凝 縮 して い るの で は なか ろ うか。
か く して社 会 事 業 界 を牛 耳 る大 御 所 の 「理 論 な る もの」 と、 福 祉 職 員 ・ボ ラ ンテ ィア の献 身 性 ・無 償 性 を前 提 とす る実 践 が接 合 され て 、 社 会 事 業 理 論 が量 産 され 、 さ らに そ れ を鵜 呑 み にす る歴 史 叙 述 が 「社 会 事 業 か ら社 会 福祉 へ」 の 連 続 性 の強 調 に加 担 し、社 会 事 業 が 内包 す る 「弱者 」 排 除 の援 助 の 仕組 み を捉 え る感 受 性 を鈍 化 させ て い く。 そ して今 、20世 紀 を振 り返 れ ば 、 国民 国 家 の最 良 の 選 択 肢 で あ った福 祉 国家 にお い て も、 国民 の権 利 性 は 限定 的 で 相対 的 な も の で しか な か った こ とを痛 感 せ ざ る を え な い 。
それ だ け に社 会 福祉 発 達 史 とい う科 目名 へ の疑 問 を持 つ こ とで 、「福 祉 国 家 へ の道 」 の途 上 で 制 度 化 され た社 会事 業 に付 着 す る他 者 排 除 の仕 組 み と、 それ を 隠 蔽 して きた 社 会 事 業 理 論 の 役 割 も見 え て くる はず で あ る(岡 田2001a)。
II章 何 が 社 会 事 業 のrsozialな る もの 」 か
社 会 事 業 の 社 会 性 ・予 防 性 と国 家 責 任
社 会 福 祉 は福 祉 に冠 す る 「社 会 」 に意 味 が あ り、社 会 事 業 と共 に20世 紀 に初 め て 普 及 す る言 葉 で あ る。 ドイ ツ でrsozia!な る もの」 を生 活 関連 施 策 と連 結 させ 社 会 近 代 化 を推 進 す る発 想 法 は、 社 会 政 策 学 会 の研 究 者 ・官 僚 の社 会 政 策 へ の 関 与 か ら始 ま り、1880年 代 の社 会 保 険 制 度 に よ って定 着 す る。社 会 事業 の 語 義 に従 え ば 、 「社 会 の事 業 」 「社 会 の仕 事 」 「社 会 的援 助 」 と直 訳 で き るが 、 ド
ドイ ツ ・日本 の歴 史 に 見 る社会 事 業理 論 の現 在 の争 点 13
イ ツ 的 なrsozialな る も の 」 は 、 社 会 保 険 制 度 か ら漏 れ た 一 群 が 対 象 に な る と い う歴 史 の事 実 か ら11)、国 民 の 権 利 性 拡 大 や 、 「公 的 扶 助vs社 会 保 険 」 の 乖 離 を 縮 小 す る社 会 手 当 に 繋 が り う る広 義 の 意 味 もあ る12)。こ の 権 利 性 は 国 家 責 任 と 対 概 念 を な して い る だ け に 、 「社 会 事 業 か ら社 会 福 祉 へ 」 の途 上 で 断 絶 が あ る ドイ ツ 社 会 事 業 史 で は 、 イ ギ リス や 北 欧 と は 別 の 見 地 か ら の 考 察 を 要 す る 。
本 章 で は と り あ え ず ドイ ツ のrsozialな る もの 」 と援 助 と の 組 み 合 わ せ に 限 定 して 、 各 対 人 援 助 サ ー ビ ス が 構 造 的 に制 度 ・政 策 化 さ れ る 経 緯 を 概 観 し て お く。 権 利 性 に つ い て は 、 戦 後 史 と の 関 連 で 述 べ た い の で 後 日 に 回 す 。 な お 図 一 2、 図 一3、 図 一4で も、 「sozialな る も の 」 の 説 明 を して い る の で 参 照 さ れ た い 。
■‑1.ド イ ツ の 「社 会 的 援 助 」 の 特 徴(1)
一 博 愛 ・社 会 事 業 思 想 と 女 性 文 化 の 緊 密 な 関 係
前 述 の よ う に ドイ ツ で 、 貧 困 問 題 の 解 決 は 国 家 ・社 会 の 責 任 で あ る と の 認 識 が 芽 生 え 、 社 会 改 良 運 動 が 起 こ り、 社 会 改 良 政 策 の 到 達 度 を 測 定 す る た め に 社 会 性 ・予 防 性 の 概 念 が 導 入 さ れ る の は 、1880年 頃 で あ る 。 こ の 段 階 で 文 化 国 家 ドイ ツ は 、 さ ら に 「社 会 的 な る もの 」 と 「文 化 的 な る も の 」 と の あ る 種 の 幸 せ な 出 会 い の 演 出 に も努 め て い る 。 そ れ が 、"socialeArbeit(社 会 的 領 域 の 活 動 や 社 会 の た め に な る仕 事)nの 「社 会 的 援 助 」 と い う意 味 を 強 調 す る新 た な 社 会 改 良 政 策 の 登 場 に繋 が る。
社 会 改 良 の 指 針 を 掲 げ る に 当 た って は 、 シ ュ タ イ ン(LorenzvonStein1815
‑1890)の 著 書r社 会 的 領 域 で の 女 性(DieFrauaufdemsocialenGebiete)』
(1880年 刊 行)の 役 割 が 何 と言 っ て も大 き い 。 表 題 が 物 語 る よ う に 、 シ ュ タ イ ン は 女 性 に 、 新 生 ドイ ツ 国 民 国 家 の新 た な 文 化 の 担 い 手 た る こ と を 期 待 し て い た 。 しか し、 そ こで は 同 時 に 、社 会 問 題 の 思 索 を 男 性 が"Traegerdessocialen
Gedankens"、 生 活 感 情 の 問 題 の 担 い 手 は 女 性 が"Traegerdessocialen
Gefuehls"と い う性 別 役 割 の 規 範 が 仕 掛 け られ て お り、そ の 上 で"socialeArbeit"
に 関 わ る 個 々人 の 義 務 と責 任 が 説 か れ て い る(Stein1880:52‑58)。
rsozia1な る も の 」 と 「文 化 的 な る もの 」 が 融 合 さ れ て 、 旧 来 の 教 会 支 配 の 慈 善 や 貧 児 教 育 の 単 な る手 伝 い で は な い 、 市 民 女 性 が 果 た す べ き 社 会 的 貢 献 が 描
か れ て い た 。 貧 困 者 や 弱 者 の た め に 奉 仕 す る 、 そ れ こ そ が 女 性 が 創 出 す る 女 性 文 化 そ の も の に な る の だ と説 か れ て い た 。 新 生 ドイ ツ 国 民 国 家 を 第 一 級 の 文 化 国 家 た ら しめ る女 性 の 役 割 を 、 か く も高 く評 価 して い る 著 作 は な い 。1880年 代 後 半 か ら90年 代 に か け て ドイ ツ 各 都 市 に相 次 い で 市 民 女 性 団 体 の 手 で 各 種 対 人 援 助 の 施 設 ・機 関 が 開 所 さ れ る の も、 本 書 に触 発 さ れ た 中 期 フ ェ ミニ ズ ム運 動 家 一 ドイ ツ ・中 欧 の フ ェ ミニ ズ ム運 動 は 、 第 一 派 ・第 二 派 で は 分 け 難 く、 第 一 派 を 私 は い つ も 「初 期 フ ェ ミニ ズ ムvs中 期 フ ェ ミニ ズ ム 」 の 図 式 で 示 して き た (岡 田2000a)(岡 田2000b)一 の 提 言 に拠 る と こ ろ が 大 き い 。 そ れ だ け に 、 本 書 は 、「社 会 の た め に な る仕 事 」 を 模 索 す る 市 民 女 性 に と っ て は、 バ イ ブ ル で あ っ だ3)。
こ の 脈 絡 か ら見 れ ば 、SozialeArbeit(こ こ か ら連 結 語Sazialarbeit=社 会 事 業 が 出 て くる 、 英 語 圏 ソ ー シ ャル ワ ー ク と 同 じ)だ け が 、 社 会 的 活 動 で は な
【図 一3:P.フ ロ ー ラ に 依 拠 し た ド イ ツ 社 会 国 家 の 構 造 】
ドイ ツ ・中欧 の福祉 思想 と慈善 ・博愛事業 一社会事業 一社会福 祉 一社 会国家(福 祉 国家)の 特 徴 を知 るため に、P.フ ロー ラに依 拠 して 国際比較 の視 点か ら図式化 した ものを示す。 い
わ ゆ る発展 段 階論 を批 判す る観 点か ら描 いた図 で あ る。 図 は実 は フ ロー ラの原 型 を留 めて はい ない。 に もかかわ らず、 フロー ラに私 が こだわ り、邦訳論 文 を出典 に示す の は、イギ リ スや アメ リカの発展 段階論 と比較す る上 で、 ドイツ ・中欧の内実 を経験 知 と して体 得 してい る フロー ラ見解 が重 要 な手 がか りにな る考 え るか らであ る。
また国際比較 で見 れ ば、図 一1の 「残 りものの福祉」 か ら 「制度 ・政 策化 された福祉」へ の架 橋 に、 まず博 愛事 業 ブ ームが起 こ り、社会 的分 化 に即 した救 済 システ ムの再 編 が始 ま る。 さ らに生 活問題 の解決策 と して社会保 険が導入 され 、結果 と して保 険が カバ ーで きな い 生活 困難 へ の公 的介入 も活発 にな る。 この時期か ら、政 策 目標 や運動理念 を有利 にす るため にrsozia1な る もの」を まず博愛事業 に(岡 田2000b:228)、 次 いで社会事 業 の概念 に も果 敢 に取 り入 れ て い くの で あ るが 、 こ こで のrsozialな る もの 」 の神 話 形 成 に 歴 史 叙 述 が果 た した役割 には留意 したい。 こ う して19世 紀 後半か ら急 にrsozialな る もの」が正 義 と公正 の 代名 詞 に持 ち上 げ られ 、保守主 義者 か ら社会 改良主義 者 まで社会政 策を標榜 す る時代 が始 ま る。1880年 代 ドイツの ビスマル ク社 会保険 が、1890年 代 フラ ンスの社会 連帯思想 が、20世 紀初 頭 イギ リス自由党 に よる社 会改良政 策が と言 った具合 で あ る。
ドイ ツ ・日本 の歴 史 に見 る社 会事 業理 論 の 現在 の争 点 15
【図 一3a国 家主 導 の貫徹度 と社会 的分化 】
国家主導の貫徹度
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1文 化 シ ス テ ム i
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1
国家組織
1
宗 教 ・犀 族 地域 政 治共 同 体 階 級
共 同 体 政 治 シ ステ ム ・
,,塾o
\L
.'li
・宗 教 集 団i
身券集団 経済 シ㌘ ムi
社会文化的分化 分 化 社会経済的分化
橡 叢 ・撚纈
【図 一3bド イツ国民 国家(社 会国 家)の 規律 化 と相互 扶助 】
国 家
(社団国 家 の伝 統) 教 会
(宗教 ・民 族 共 同体)
社会文化的分化
規律化
市民社会
家 族 共 同体(型 福 祉 国 家) 自立
利 益 団体
(階級 ・職 業 団 体 ・身分 集 団)
社会経済的分化
(博 愛 ・恩 情 主 義)
相互扶助
出 典:ペ ー タ ー ・フ ロ ー ラ,毛 利 健 三 訳(1989)「 工 業 社 会 型 福 祉 国 家 か ら脱 工 業 社 会 型 福 祉 国 家 へ?」
『社 会 科 学 研 究 』(東 大 社 会 科 学 研 究 所)41巻1号p.211を 大 幅 に 修 正
【図 一4:ド イ ツの 国 一社 会 の 関 係 と補 完 性 の原 理 ・共 同 体 論 の 伝 統 】
カ ウ フ マ ン(F,‑X.Kaufmann)は 、エ ス ピ ン グeア ン デ ル セ ン(G.Esping‑Andersen)
の 提 起 す る 「自 由 主 義 」 「保 守 主 義 」 「社 会 民 主 主 義 」 モ デ ル と三 つ の 家 族 類 型 の 組 み 合 わ せ に ドイ ツ が 適 し て い な い こ と 、 特 に20世 紀 半 ば に 確 立 す る に す ぎ な い 西 ヨ ー ロ ッパ 政 党 政 策 と福 祉 国 家 類 型 を 直 結 しす ぎ る 点 を 批 判 して い る(Kaufmann2002:50)。 ま た 通 例 で は
(イ ギ リス 市 民 社 会 を 基 盤 と す る)「 社 会 の 国 家 化 」vs(ド イ ツ の 社 会 保 険 を 主 軸 に す る)「 国 家 の 社 会 化 」 が 、 比 較 類 型 と さ れ や す い の で あ る が 、 で は ドイ ツ 社 会 国 家 一 イ ギ リス と対 置 さ れ る が 福 祉 国 家 概 念 で 括 れ る一 は ど の よ う な 特 徴 を 持 っ の だ ろ う か 。 と り あ え ず こ こ
で は 、 図 ‐4abで 中 世 末 期 か ら顕 著 な 共 同 体 論 を 、 図 一3に 記 し た 家 族 共 同 体(型 福 祉 国 家) と 連 動 す る 形 で 提 示 して お く。 補 完 性 の 原 理 へ の 着 目 は 、90年 代 の 福 祉 国 家 国 際 比 較 史 の 研 究 動 向 か ら 出 て き た もの で あ る 。
元 来 、 宗 教 改 革 の 発 信 地 ドイ ツ は 、 共 同 体 論 の 救 済 思 想 が 根 強 く、 国 家 国 家 形 成 の 遅 れ も あ っ て 、 イ ギ リ ス ・ア メ リ カ の 個 の 自立 と 労 働 生 産 性 を 重 ん じ る救 済 思 想 と は 対 照 的 な 、 共 同 体 論 ・家 族 主 義 に 発 す る 連 帯 思 想 が 重 視 さ れ て き た 。 し か も社 団 国 家 ・分 邦 主 義 の ドイ ツ の 国 一社 会 の 関 係 か ら、共 同 体 論 は 地 域 福 祉 に 久 し く留 ま っ た 。 ドイ ツ で 家 族 共 同 体 型 福 祉 思 想 が 国 民 国 家 版 に 拡 大 解 釈 さ れ る 契 機 は 、1891年 カ ト リ ッ ク 回 勅 が つ く る 。 回 勅 が 重 視 す る補 完 性 の 原 理 は 、 トマ ス ・ア ク ィ ナ ス(ThomasAquinas1225‑1274)の 慈 善 ・カ リ タ ス 論 と 、 自 助 一 互 助 一 公 助 の 地 域 福 祉 救 済 を 統 合 さ せ た も の で(吉 田/岡 田2000:41‑
43)、19世 紀 後 半 の カ ト リ ッ ク社 会 倫 理 の 中 核 を 成 し て い た 。 こ の 回 勅 は 、 本 来 は 対 概 念 で あ る は ず の 権 利 性 ・義 務 性 の 在 り方 や 、 救 済 の 公 私 関 係(図 一4bな ら び に 図 一3ab参 照)の 理 論 形 成 に も影 響 を 及 ぽ し、 結 果 的 に は 「残 り も の の 福 祉 」 か ら貧 児 教 育 ・障 害 児 保 護 が 公 教 育 制 度 に 組 み 込 ま れ 、 さ ら に 社 会 事 業 制 度 が 成 立 して い く際 の ドイ ツ 的 特 徴 を つ く り 出 す 。
と 同 時 に 、 ドイ ツ社 会 事 業 理 論 家 の 第 一 世 代 は 、相 対 的 後 進 国 ドイ ツ の 権 威 主 義 的 傾 向 を 批 判 し、 イ ギ リス や ア メ リ カ で 始 ま っ て い た 社 会 事 業 実 践 を 尊 ぶ 風 潮 も あ っ た 。 そ れ だ け に 官 か ら も 国 家 か ら も距 離 を 置 く市 民 的 公 共 性 の 領 域 にrsozialな る も の 」 と して 「社 会 事 業 」 を 位 置 づ け る 意 向 は 強 か った 。 む ろ ん ドイ ツ の 国 一 社 会 の 関 係 や 、共 同 体 論 の 伝 統 を 反 映 し て 、 彼(彼 女)ら が 提 唱 す る 社 会 事 業 理 論 は 二 元 論 的 な 公 私 関 係 が 成 立 し難 く 、 幾 つ も の rsozia1な る も の 」 の 解 釈 が 輩 出 し、納 得 の い く説 明 は 少 な か っ た の で あ る が 。 そ し て こ こ で も 、イ ギ リ ス や ア メ リ カ と は 異 な る社 団 国 家 ドイ ツ のrsozialな る もの 」の 伝 統 が 、 中 間 組 織 の 分 化 の 在 り方 社 会 文 化 的 分 化 と 社 会 経 済 的 分 化 を 左 右 し た の で あ る 。
ドイ ツ ・日本 の歴 史 に見 る社 会 事 業理 論 の現 在 の争 点 17
【図 ‐4a補 完 性 の原 理 に よ る ドイ ツ ・中欧 ・北 欧 の共 同体 論 】
【図 一4b援 助 の形 と公私 関係論 】
1.援 助 の 形
① 自助
2.公 的
私的
②互助(共助)③公助
・ ・
国家 集団 一
一 個 個
公助
i
互助(共 助)
i
カ リ タ ス
い こ とが わ か る。 そ も そ も欧 米 圏 で 広 ま っ て い た 社 会 改 良 思 想 ・運 動 に は 右 派 も左 派 も あ る し 、 上 か ら の 官 僚 主 導 の 改 革 や 社 会 主 義 革 命 の 手 段 に 至 る ま で 、 社 会 的 活 動 の 意 味 は 幅 広 くあ り う る 。 社 会 化 と 同 義 語 に近 い も の と して 規 律 化 も こ こ に あ げ て よ か ろ う。
つ ま りrsozialな る も の 」 に は 、 様 々 な 問 題 意 識 と 実 践 手 段 の 組 み 合 わ せ が あ り、 そ の 一 部 がrsozial」 を 冠 す る対 人 援 助 の 職 業 化 の 要 求 に繋 が る の だ と理
解 す る べ き で あ ろ う。 これ と歩 を 合 わ せ て 、Sozialpaedagogik=社 会 教 育(学)、
SozialePathologie=社 会 病 理 学 、SozialeHygiene=社 会 衛 生 学 と い う連 結 語 も、 従 来 の 言 葉Paedagogik=教 育(学)、Pathologie=病 理 学 、Hygiene
=衛 生 学 に 、rsozialな る もの 」 の 意 味 づ け を 付 加 しな が ら、 ま ず 教 育 や 保 健 衛 生 分 野 で 、 少 し遅 れ て 社 会 事 業 分 野 で 、 各 々 の 職 業 像 と援 助 方 法 や 教 育 論 を 確 保 して い く。 こ う して 相 互 補 完 的 に 、 しか も競 合 しな が ら、20世 紀 初 頭 か らヴ ァ
イ マ ル 期 に か け て 、 新 興 の 職 業 群 は 国 民 国 家 の 正 義 に 適 い 、 社 会 近 代 化 を 推 進 す る 担 い 手 で あ る と して 、 社 会 的 認 知 を 受 け て い っ た 。
こ れ らは そ の 援 助 対 象 の 広 大 さ と 保 健 医 療 や 教 育 の 活 動 領 域 に も及 ぶ こ と か ら 、 通 常 社 会 事 業 と 了 解 さ れ る 概 念 を 超 え て お り、 後 述 さ れ る社 会 保 険 制 度 と セ ッ トに な っ て 、 む しろ 「社 会 的 援 助(SozialeDienste)」 と い う範 疇 一 常 用 され て い る現 代 的 表 記 で は社 会 サ ー ビ ス な い しは 対 人 社 会 サ ー ビ スー で 括 る の が よ く、 戦 後 西 ドイ ツ 社 会 国 家 組 織 運 営 の 手 足 に な る もの と、 位 置 づ け られ
る(Kaufmann2002:54‑56)。
な お 女 性 文 化 と 家 族 共 同 体 型 福 祉 思 想 の 関 連 で 、 ドイ ツ の 国 一 社 会 の 関 係 を 見 る に は 図 一3abを 、 社 会 国 家 の 基 礎 で あ る 補 完 性 の 原 理 ・共 同 体 論 と、 援 助 の 公 私 関 係 は 図 一4abを 参 照 され た い 。 ドイ ツ の 「社 会 的 援 助 」 の 特 徴 は 、 社 会 国 家 の 構 造 そ れ 自体 か ら発 生 して い る も の で あ る の だ か ら。
II‑2.ド イ ツ の 「社 会 的 援 助 」 の 特 徴(2)
対 人 援 助 の 各 種 職 業 を 「構 造 化 さ れ た 援 助 」 に 配 置 ヨmッ パ 大 陸 で は、制 度 間 の ズ レか ら福 祉 職 の所 属 や名 称 も区 々 とは いえ 、 福 祉 国家 体 制 を と る ドイ ツ ・中欧 ・北 欧 に あ って は 、福 祉 職 の地 位 には共 通 項 が 多 い。 そ こで は公 務 員 型 ワー カー の職 業 像 ・職 業 倫 理 が モ デル と され やす く、
関 連 職 種 もそ れ に準 拠 して職 業 像 や 理 論 形 成 を す る傾 向 が見 られ る。
で は、 対 人(援 助)サ ー ビス全 般 の専 門分 化 の 過 程 で、 ドイ ツの福 祉 職 は競 合 す る職 業 と どん な関 係 を保 ちな が ら、 固有 の職 業 倫 理 と理 論 を形 成 して い く
の で あ ろ うか。
社 会 行 政 の権 力 装 置 が真 っ先 に作 動 す る官 僚 国 家 ドイ ツ で は 、新 興 の職 業 集
ドイ ツ ・日本 の歴 史 に見 る社 会事 業 理論 の現 在 の争 点 19
団 で あれ ば あ る ほ ど、 官 の承 認 の効 果 を計 算 せ ざる を え な い。 お り しも工 科 大 学 ・商 科 専 門大 学 が 設 立 ラ ッシ ュに入 る20世 紀 初 め の ドイ ツで は、法 に基 づ く 国 家 試 験 ・資格 付 与 と、公 務 員 な い しは そ れ に準拠 す る職 業 モ デ ル が 、 商 工 業 部 門 で相 次 い で 出 て き て い た 。 対 人(援 助)サ ー ビス とて 、職 業 ス テ イ タ ス を つ くる方 略 は 同 じで あ る。
つ ま り ドイ ツ にあ って は 、先 行 す る類 似 の職 業 の対 象 ・活 動 範 囲 が 、 後 発 組 み の対 人(援 助)サ ー ビス の職 業 像 を 限 定 的 に規 定 す る傾 向が あ った 。 か っ 社 団 国家 ・分 邦 主 義 の伝 統 も根 強 い ドイ ツ で は(図 ‐3b参 照)、 中 間諸 団 体 で 自 主 的 に他 職 種 との 棲 み分 け策 も採 られ て い た 。 それ だ か らこそ新 興 の職 業 集 団 は活 路 を求 め て 自 らの専 門性 ・専 門 職 性 を早 々 と標 榜 し、行 政 官 僚 に擦 り寄 り な が ら、 職 業 ス テ イ タ ス を確 保 す る戦 術 に 出 て くる。 ア メ リカ の プ ロ フ ェ シ ョ ナ リズ ムが 市 民 社 会 の 自 由主 義 を職 業 倫理 に掲 げ 、 イ ギ リス や北 欧 で は対 人 援 助 の分 野 は原 則 と して市 民 主 導 に託 され る の とは、 これ は好 対 照 を な す 。 以 下
に 、幾 つ か例 を 示 そ う。
例 ①:ド イ ツの 対 人(援 助)サ ー ビス の第 一 番 目の職 業 化 の 特 徴 と して、 先 行 す る教 育 モ デ ル に影 響 され や す い点 が挙 げ られ る。 義 務 就 学 が早 期 に確 立 す る プ ロイ セ ン ・ ドイ ツ で は 、教 育 学 研 究 の系 譜 が理 論 面 で は圧 倒 的 な強 さを も つ 。 ア カ デ ミズ ム以 外 の分 野 で も、 事 態 は 同 じで あ る。 例 え ば フ レー ベ ル 幼児 教 育 の 系 譜 は、 乳 幼 児 か ら学 童 保 護 ま での 職 業 化 の 主導 権 を握 り続 け た。 そ の た め に20世 紀 初 頭 に社 会 事 業 が登 場 した 頃 、先行 す る社 会 教 育 の領 域 で す で に 保 母 や児 童 指 導 員 と して働 い て い る女性 と、新 た に女 子 社 会事 業 学 校 で学 び、福 祉]職に就 きた い者 との 間 で 、 仕 事 の脇 分 け と 自己 の職 業 像 の確 保 を め ぐる困惑
と混 乱 が生 じや す か った。
例 ②:職 業 化 の 第 二 番 目の ドイ ツ的特 徴 は、医 療 モ デル の強 さで あ る。 「徴 兵 制 の 国」 プ ロイ セ ンの 軍 教 育 の影 響 は、 衛 生 学 で 「清 潔 」 や身 体 の 規 律 化 を徹 底 的 に看 護 婦 や看 護 助 手 に 叩 き込 む教 育 方 針 の形 で 出て くる。 加 え て国 家 統 一 の戦 争 に動 員 され る看 護 婦 の養 成 教 育 が 先 行 す る分 、 後発 組 み の他 の 対 人 援 助
の職 業 が規 制 を受 けや す くな り、 新 規 参 入 の社 会 事 業 で は まず 乳幼 児 ・母 性 保 護 に強 い統 制 が か け られ て い く。 これ は第1次 大 戦 期 に女子 社 会 事業 学校 の入 学 資 格 要 件 に 、保 母 資 格 と看 護 婦 の卒 業 資 格 を 同 時 に要 求 す る と い う、衛 生 行 政 の意 向 に如 実 に示 され て い る。r社 会 的援 助 」 の職業 専 門 学校 で あ る はず の女 子 社 会 事 業 学 校 の 入 学 要 件 と して 、何 と 「清 潔 」 を最 重 要 視 す る看護 婦 の実 務 経 験 が 要 求 され た か らで あ る。 これ は戦 時 下 とい う特 異 な状 況 下 で の衛 生 行 政 官 僚 の強 い 要 望 で あ った とは い え 、 医 療 モ デ ル の発 想 が い か に ドイ ツ で は他 職 種 の専 門性 を圧 迫 して い た の か を 、 よ く物 語 って い る。
確 か に他 国 で も対 人(援 助)サ ー ビスで は、 医療 モ デ ル と教 育 モ デ ル が 先 行 す るの が 通 例 で あ ろ う。 しか し、 医者 ・法 律 家 ・聖 職 者 とい う伝 統 的 な専 門 職 モ デ ル を掲 げ 、 そ の下 に新 興 の対 人 援 助 の 職 業 を従 属 的 に配 置 す る官 僚 国 家 ド イ ツで は 、職 業 序 列 は一 目瞭 然 で あ り、 それ な の に行 政 官 僚 は 「弱者 」 を対 象
とす る福 祉 職 や 関 連 職 種 の資 格 認 定 に は関 心 が薄 か った とい う実状 か ら、 新 興 の各 種 職 業 団体 に お い て は資 格 制 度 の確 立 こそ が死 活 問題 と映 って い た 。 各 団 体 は他 職 種 に勝 て る最 善 の方 法 と して 、固有 の専 門性 ・専 門職 性一 細 分 化 され た対 人 援 助 の制 度 化 を 目 ざす 一 を打 ち 出 し、 社会 行 政 ・官 僚 制 に擦 り寄 って 、 地 位 ・給 与 の 向上 戦 略 に走 る。 こ こで は国 民 の権 利 性 と国 家 の義 務 性 の対 概 念 を媒 介 す るは ず の対 人 援 助 の 本来 の職 業 倫 理 は看 過 され やす く、「構 造 化 され た 援 助 」 の 序 列 の位 置 づ け に の み 関心 を寄 せ る職 業 団体 の 利害 が優 先 され が ち で あ った 。
以 来 、他 職 種 との 棲 み分 け に は有利 な対 人 援 助 の教育 養 成 制 度 が一 女 子 社 会 事 業 学 校 ・福 祉 系 大 学 や 障害 児 学 校 教 員 養成 課 程 ・教 員 養 成 系大 学 一1960年 代 ま で 西 ドイ ツ で 肥 大 化 の一 途 を辿 り、結 果 と して福 祉 国 家体 制 下 で の歯 止 め な き専 門 分 化 と専 門職 至 上主 義 を増 長 ざせ た の で あ る。
以 上 、 社 会 事 業 思 想 がrsozialな る もの 」 と 「文 化 的 な る もの 」 の 結 合 物 で あ り 、 フ ェ ミニ ズ ム運 動 の 系 譜 が 福 祉 職 創 出 を 果 た す 点 を 述 べ 、 さ らに 「構 造 化 さ れ た 援 助 」 の 序 列 の 枠 組 み の ど こ に 福 祉 職 が 位 置 す る の か ま で を 概 観 して